イッシュの吸血鬼戦争   作:ぽっきー。

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12年後

みんな。初めまして。

 

私は博士をやっている、“ブロード”という者です。

 

“博士”と聞くと、ポケモンの博士だと思うだろうね。

 

でも私は違うんだ。

 

私が研究しているのは、今この世界を騒がせている“吸血鬼(ヴァンパイア)”について、さ。

 

吸血鬼が初めて確認されたのは二十年前。

 

かつては、ポケモンと人間の血を狙うということで恐れられたものの、ある地方の小さな郊外で発見されただけで、皆対岸の火事としか思っていなかった。

 

それからというもの、十年間ほどは目撃証言すらほとんどなくなってしまい、私たちの警戒も薄れてきていた。

 

そして十年前、吸血鬼は突然爆発的に全世界で見られるようになった。

 

各地方で目撃情報が相次ぎ、警察や一流のポケモントレーナーでも手を焼く始末。

 

おまけに、小さな町や森深くのポケモンを襲って繁殖していたらしく、数万倍ともいえる数まで増えていた。

 

さらに、我々の警戒の怠りは「吸血鬼が未だ不明瞭である」という障害をもたらした。

 

「人間やポケモンの血を狙い、血を吸われると命を落とすものもいれば、吸血鬼になってしまうものもいる。」

 

これが今分かっている吸血鬼の情報ほとんどであり、何年たっても未だに解明されていないことが多すぎるんだ。

 

我々は吸血鬼に対抗するため、武器の製造が進んだものの、それは人間同士の争いやポケモンを狩って商売をする悪いハンターを助けることになってしまい…

 

今、世界は「ポケモン」「人間」「吸血鬼(ヴァンパイア)」という分けられ方をし、混沌の最中なんだ。

 

おっと失礼、前置きが長くなってしまったね。

 

私が住んでいるのはイッシュ地方、ヒオウギシティ。

 

ここでこの地方のポケモン博士、アララギ博士の協力を得つつ、吸血鬼(ヴァンパイア)を研究をしている。

 

とはいっても、彼らは通常の知能をもち、なおかつ浮遊能力、元の身体よりも増した身体能力に加えて回復能力まであり、生け捕りにするどころか、目撃することすらできない。

 

ポケモンがになった場合、元の技が何倍にもなるので、たった一匹でも油断は禁物。

 

目撃情報をもとに、調査にむかったり生息地を割り出そうと研究するものの、一筋縄ではいかないものだった。

 

かなり重要な会議などには出席して情報を交換しているものの、吸血鬼に怯える生活は一向に先の見えないものだった。

 

おっと、そうだった。今日は私の古くから知り合いの子供がここに来るんだった。

 

その子供は15歳で、10歳になってからの5年間、シンオウ地方を旅していたそうだ。

 

私がポケモン博士だった頃、彼が幼少期の時から面倒を見ている仲だった。

 

彼は今、旅を経験し、どんな子に育ったのか。とても会うのが楽しみだ。

 

 

──────────────

 

 

「やっと着いたか!ヒウンシティ。」

 

俺は船での長旅を終えて、イッシュ最大の町ヒウンシティに到着しようとしていた。

 

ここから案内人のポケモンに乗って、ブロード博士のいるヒオウギシティへと向かう予定だ。

 

フェリーの乗務員に促され、ゆっくりと進んで行く。

 

もう何十時間と外の空気を吸っていない。

 

一刻も早く外に出たい感情を押さえ、やっとの思いで外に出ると…。

 

そこに見えるはヒウンの大きなビル街…

 

そして、灰色の空と、自分の前を上から下へと通る雫の束だった。

 

天候はあいにく、雨であった。

 

俺は空を一睨みすると、ポケモンセンターに向けて走り出した。

 

始めてきた街なのだから、それがどこにあるか分からないので、雨にうたれながら看板を凝視する。

 

どうやらここからもっと東に行ったところにあるらしい。

 

俺は再度走り出した。

 

大雨の中、俺の他にポケモンセンターに駆け込む人が何人か見えた。

 

中に入ると、雨宿りのために来たトレーナーたちがたくさんいた。

 

俺が外を眺めていると、ジョーイさんが話しかけてきた。

 

ジョーイ「ポケモンの回復は大丈夫ですか?」

 

俺がポケモンセンターに来たのに突っ立っていたままだったからか、ジョージさんが来た。

 

俺「ああ…はい。今、手持ちがいないので。」

 

ジョーイ「手持ちがいない?旅のお方では?」

 

彼女は心配して尋ねてくれる。

 

俺「実は…フェリーでシンオウから到着したばかりなんです。」

 

手持ちは全て、シンオウに置いてきたのだった。

 

ジョーイ「ああ…。では今から、旅をされるおつもりで?」

 

俺「特に決まってはないですね。ただ、ヒオウギシティに知り合いの博士がいて…その手伝いをしようと思っています。」

 

ジョーイさんは感心した様子だ。

 

ジョーイ「まあ…若いのに偉いわね!将来の夢はポケモン博士?」

 

俺「いや…その知り合いの博士が研究しているのは…。」

 

「“ヴァンパイア”の方なんです。」

 

彼らを研究している人は数少ない。ポケモン博士は新人トレーナー育成を手助けしたり、ポケモン図鑑の完成などを目標としているが、吸血鬼を研究するといっても具体的なことは何もないからである。

 

ジョーイ「最近また目撃情報が増えていますから…心配ですね。」

 

俺「はい…この街でも?」

 

ジョーイ「ええ…この前も街中で突然ヴァンパイアになった人が周囲の人を襲ったらしくて…。」

 

「いくら私たちでも、ヴァンパイアをどうにかする方法は分かりませんから…。」

 

ジョーイさんはひどく不安がっている。

 

俺はついでにもう一つ聞くことにした。

 

俺「あの…ヒウンシティのジムってどこにありますか?そこが集合場所になっていて。」

 

ジョーイ「ヒウンジムは…ここからずっと西に行ったところよ。もう行くの?」

 

俺がリュックを背負いなおしたのを見て、ジョーイさんは少し驚いて尋ねる。

 

俺「小雨になってきたので…失礼します。」

 

これくらいの雨なら大丈夫だろうと判断し、ポケモンセンターを出た。

 

街を見回すと、傘を差し、電話をしている人が目に入った。

 

流石、イッシュの会社が集まっている街だ。

 

こんなところでポケモンの吸血鬼が出現すれば大パニックになる。

 

俺はそのことを危惧しながら西へ歩いた。

 

一般に、吸血鬼には二種類存在する。

 

まず一つが、人間の吸血鬼だ。

 

これはいたってシンプル。ただ吸血鬼に血を吸われた人間が一定の確率で吸血鬼になってしまった者。

 

正確には、吸血鬼に血を吸われる量だとか、血液型だとか、吸血鬼になる条件が存在するらしいが…定かではない。

 

人間が吸血鬼になった場合、力も強くなるので常人では歯が立たない。それに、空を飛ぶことさえあるので、厄介だ。

 

しかし、もう一方に比べれば楽な方だ。

 

二つ目は、ポケモンの吸血鬼である。

 

ポケモンの吸血鬼が危険な点は、力が強くなるのにそのポケモンの技が含まれることだ。

 

人間は力が少し強くなるだけだが、ポケモンの吸血鬼は技の力も上がり、災害レベルの技を起こすこともある。

 

トレーナーに特訓されたポケモンが吸血鬼になれば、恐ろしいことになる。

 

そのため、ポケモントレーナーは特に吸血鬼を恐れているのだ。

 

また雨が強くなってきた。

 

俺はさっきよりも急いで向かうが…西側の果てが見えてきた時、ジムらしき建物は見当たらなかった。

 

(どうしよう…いつ曲がるのか聞いておくべきだった…。)

 

とりあえず、自分が立っていた細い道を進むことにした。

 

他の曲道とは違い、少し狭い。

 

奥の方にはカフェのようなものもあり、左手にはゴミ箱が見える。

 

雨は更に勢いを増す。洪水を引き起こすのではないかと思うほどに。

 

俺は水分を含んだ体を前へと動かす。

 

カフェの人にでも聞いてみよう…、

 

その時、建物と建物の隙間に、何かが視界の端に現れた。

 

俺はそっちを見る。

 

俺「グ、グレイシア…?」

 

間違いない。シンオウの雪山で見たことがある、グレイシアだ。

 

そのグレイシアはぐったりとした様子で倒れており、冷たい雨が体を伝って流れている。

 

動く気配は、全くなかった。

 

俺「こんなところで、何故…?」

 

ゆっくりと近づいたところで、俺は気づいてしまった。

 

こいつは…吸血鬼である。

 

通常、吸血鬼かそうでないかの違いは、歯だったり、目の色や翼などで判断する。

 

しかし、このグレイシアには翼はおろか、歯も普通である。

 

なぜ自分で吸血鬼だと思ったのか分からないが、そう確信させる何かがあった。

 

俺「まずい…。」

 

こんな場所でポケモンの吸血鬼が現れれば、街中の人を襲い、街を凍らせたり、ビルが倒れたりと影響がでるかもしれない。

 

しかし、誰もいないこんな路地裏の狭い道に、人など現れるわけもない。

 

自分で何とかするしかないのだ。

 

雨の影響か、ポケモンの吸血鬼に対するものかは分からないが、手は震えていた。

 

そっとグレイシアの身体と地面の間に腕を入れて、抱き上げた。

 

ぐったりとした様子で、死んでいるのではないかと思うほどだ。

 

首辺りを優しく触ってみる。

 

脈はあるので、生きてはいるようだ。

 

持ち上げたはいいものの、ここからどうすればいいのか。

 

ポケモンセンターで回復させられる保証ないし、仮に元気になって人を襲ったら取り返しがつかない。

 

かといって、ここに放置はもっと危険だ。

 

(…そうだ。博士に見せればいい。)

 

俺は閃いた。街の西側に来たのだ、ジムは近いはず。

 

そこから案内人のポケモンの“空を飛ぶ”でヒオウギシティに向かう。

 

それまでにこの子が目を覚ますかは分からないが…博士に見せるのが一番いい。

 

俺はまた走り出した。靴の中に雨が入って気持ちが悪い。

 

走っている間、俺は思った。

 

この判断は、正しいのだろうか。

 

今思えばあの場でとどめを刺すことも、周りの人を呼びに行って全員で押さえつけ、警察などを呼ぶこともできたはずだ。

 

今ここでこのグレイシアが目を覚まし、俺を襲い、他を襲うかもしれない。

 

しかし、博士に届ければ間違いなく研究に繋がる。

 

危険を冒してまでする価値がある。そう思った。

 

だが、それだけではなかった。

 

この子…グレイシアには、何故だか手出しできなかった。

 

吸血鬼は許せないが、この子だけは…憎めない・恨めない・助けてあげたい…。

 

そんな感情が芽生えていた気がする。

 

俺は緑色の中にモンスターボールが描かれた看板を見つけ、その前に立つトレーナーを見つけ、何と説明しようか考えながら一歩一歩踏み出した。

 

“メイ”というトレーナーがイッシュの伝説となった12年後のお話である。




お読みいただきありがとうございました。
続きの方もよろしくお願い致します。
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