俺がジムの前に近づくと、大雨の中待たされていた男は話しかけてきた。
トレーナー「君がレイ君だね?」
俺「はい…そうですが…急いで博士のところに向かってくれますか!?」
トレーナー「ああ。準備はできてる。出てこいウォーグル!」
男はモンスターボールを慣れた手つきで投げた。
白い光と共に大きな鷲、翼を広げて威嚇するウォーグルが現れた。
トレーナー「さあ、乗って!」
俺は拾ったグレイシアのことを言う暇もなく、そのトレーナーに促され、ウォーグルに乗った。
大雨で、グレイシアを抱えていたということもあり、落ちないようにしがみつくのに必死で、とうてい景色など楽しむ時間はなかった。
飛んでいる途中、いつの間にか雨はやんでいて、太陽が見えていた。
トレーナー「ヒオウギシティ、見えてきたよ!」
トレーナーがそう言うと、俺は自分が海の遥か上を飛んでいることをようやく自覚した。
だんだん高度が下がっていき、ヒオウギの街並みが確認できるときにはスピードも落ちていた。
トレーナー「到着だよ。」
俺はウォーグルの翼を蹴らないようにそっと降りて、地面を踏む。
多くの住宅地が並び、ポケモンセンターが見える。
ヒオウギシティだった。
トレーナー「研究所は、あっちだよ。」
そのトレーナーは俺が辺りを見回しているうちに、ウォーグルをしまって俺を呼んだ。
俺は腕の中のグレイシアが意識を失っているままなのを確認して、トレーナーについていった。
俺たちが向かっている建物の前に、丸眼鏡をかけた少し背の高い白衣を着た男性が立っている。
ブロード博士「やあ、レイ君!久しぶり!大きくなったね!」
俺「お久しぶりです、ブロード博士!」
俺は博士に駆け寄って、強い握手を交わした。
博士は丸眼鏡をかけているが、顔は悪くない。
彼が若いころからずっと面倒を見てもらっていたが、知識も豊富で博士としては名が知れている。
俺は早速グレイシアのことを話した。
俺「いきなりですみません、ヒウンシティの路地裏で拾ったこの子を見てほしいんです。」
未だぐったりした様子のグレイシアを見せた。
博士はグレイシアを一目見て俺に問う。
ブロード博士「この子は…
俺「博士もそう思いますよね。」
ブロード博士「ああ…。でも不思議だ、何故そう思ったのか分からない。翼も生えていなければ牙も出ていない…。言葉は?」
俺「分かりません…起きた所を見ていないので。」
吸血鬼の特徴として、言葉が話せなくなることも挙げられる。
声帯が変化するらしく、うめき声しか上げられなくなるらしい。
それも吸血鬼かそうでないかを見分ける大事な判断材料なのだ。
ブロード博士「じゃあとりあえず、隔離して目覚めるまで様子を見よう。死んではいないが、弱っているようだね。」
俺「助かるんですか?手当の仕方も分からないのに…。」
ブロード博士「大丈夫。きっと助かるよ。」
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俺と博士はグレイシアを研究員に預けて、その後丸い机で出されたお茶を飲みながら話をしていた。
ブロード博士「それにしても、レイ君大きくなったね。最後に会ったときからもう五年か…。」
「言葉遣いも大人になって、驚いたよ。」
最後に会ったのは俺が旅に出る五年前、博士が丁度その時にイッシュに研究所を移したのだった。
俺「昔は仲のいい兄貴くらいに思ってましたが…旅をして、博士の名前を何度か聞いて…それですごい人だって知りました。」
ブロード博士「ははは。そりゃ十歳で研究内容が理解出来ることの方が珍しいからね。」
吸血鬼の研究は今、ポケモンの研究以上に求められているのは言うまでもない。
俺「ところで…前から尋ねたかったのですが…。」
カップを置いて、博士を見た。
俺「博士はどうしてポケモン博士から吸血鬼の研究をするようになったんですか?」
博士も同じくカップを置いて、一息ついた。
ブロード博士「そういえば話していなかったね。」
その眼は、とても哀しみに満ちていた。
ブロード博士「私には昔優秀な助手がいてね…その子と一緒に研究していたんだが…その子は吸血鬼に血を吸われて、その子も…。」
初耳だ。てっきり、ポケモンが襲われないように、近くにポケモンを連れないようにしていたとばかり思っていた。
俺「博士にも手持ちのポケモンがいたんですね。」
ブロード博士「恥ずかしがり屋でね…あんまり二人以外で仕事をしたがらない子だったんだ。」
見たことがなかった理由が今分かった。
ブロード博士「その子が襲われたとき、私はちょうど生息地調査に向かっていて…ほんの少し目を離した隙だった。」
「その子はすぐに吸血鬼になった…牙も生えて、瞳孔も血のような赤色に。」
自分のパートナーが人を襲う化け物になってしまった時、どれだけ心に苦しみが訪れるのか、想像もつかない。
ブロード博士「けれども私を見たその子は…私を襲ってこなかった。」
「只、涙を流して俺を見つめていた。」
吸血鬼は通常、無防備な人を襲う。頭脳はあるけれど、演技をしたり、罠を仕掛けたりして襲ってくることはまずない。
博士はそのパートナーと二人っきりだった。吸血鬼が絶好のチャンスを逃すはずがないのだ。
俺「ヴァンパイアでも…人を襲わないなんてことがあるんですね。」
ブロード博士「ああ…私も実際信じられなかった。ヴァンパイアになった途端襲ってくると聞いていたからね。」
俺「そのあと…そのポケモンはどうしたんですか?」
博士は遠くを見つめて、呟いた。
ブロード博士「死んだよ。」
俺「…え?」
俺は聞き返してしまった。逃がしたのではなく、死んだ…?
ブロード博士「あの子は誰も襲わなかった。私を襲わないように必死にこらえているようにも見えたけれど…私はたとえ失ったとしても、あの子さえ生きてくれればいいと思った…ポケモン博士としても、あの子のトレーナーとしても、たとえ姿が変わっても、生きていて欲しかった…。」
俺「それで…逃がしたんですよね?」
博士は残念そうに首を横に振る。
ブロード博士「いいや…私とその子を見ていた住民がいたんだ。」
「つい先日、吸血鬼の襲撃を受けて…憎しみが積もっていたんだろうね。」
俺「それで、その住民が…その子を?」
ブロード博士「ああ。仕方のないことだとは思ってるよ。あの時私を襲わなくても、いつか誰かを襲っていたかもしれない。」
「でも捨てきれないんだ…あの時生かしていれば…私が研究して吸血鬼を元に戻す方法を知っていれば…ってね。」
悔やんでも悔やみきれない思い。いつもある脅威が突然突き付けられる恐怖…。
博士はどれだけ思い乱れただろうか…。
俺「じゃあ博士は吸血鬼を元に戻す方法を探すために…?」
ブロード博士「一番の目的はそうだよ。でもそんな方法が見つかるなんてあり得るかどうか誰も分からない。」
博士は俺の目を釘を刺すかのように見た。
ブロード博士「だから、私はたとえ見つけられなくても、人間やポケモンが吸血鬼と共生できる社会を作りたい。」
「吸血鬼が恐れられ、憎まれ、それが原因で吸血鬼は人里少ないところで活動し、また私たちを憎んでいるかもしれない。」
「今この現状は戦争だといっても過言じゃない。」
「お互いがお互いを憎み…争い…傷つけあう。私はこんな世界を変えたい。」
博士は…“根絶”ではなく、“調和”を目指しているのか。
ブロード博士「あの子のように、吸血鬼とも分かり合える日が来るかもしれない。」
「そのことを信じて、私は吸血鬼を研究しているんだ。」
俺「そんな思いが…あったんですね…。」
博士はため息をついて、カップのお茶を飲み干した。
ブロード博士「まあ、そんな夢物語、誰も相手にしてくれないさ。重要な会議に出ても、皆いかに吸血鬼に対抗するかしか考えていないからね。」
「“共生”なんかより、“駆逐”を目指している。」
「私の夢が叶う日が、生きている間に来るとは思い難い…。」
博士も苦労しているのだろう。
俺「でも、俺は博士の研究を応援しますよ。」
改めて、博士に尊敬の気持ちが出てきた。
俺「実は俺…さっきのグレイシアのこと、吸血鬼だと気付いたのに、助けたいなんて思ってしまって…。」
ブロード博士「だから私のところに持ってきたのか。」
俺「はい、博士なら研究にもなるし、助けてくれると思ったので…。」
博士は子供のような目で、話す。
ブロード博士「私も、初めて生きた吸血鬼を見たけれど…聞いていた吸血鬼とは違っていて少しわくわくしているんだ。」
「ひょっとしたら…吸血鬼の秘密を解き明かす、重要なカギになるんじゃないかってね。」
俺たちが会話しているところに、博士の研究員だろうか、白衣を着た女の人が入ってきた。
女研究員「博士、先ほど捕獲した吸血鬼のグレイシアが目覚めました。」
ブロード博士「おお、それで?」
女研究員「…無反応です。うずくまったまま動きません。あれだけ私たちが周りにいるのに、興味すら示しません。」
捕獲されているとはいえ、襲ってこない…。
ブロード博士「見に行こう、レイ君。」
俺「はい!」
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俺たちはさっきの部屋に戻ってきた。
特殊なバリケードというか、檻のなかにさっきのグレイシアが体を丸めて伏していた。
ブロード博士「本当に起きているのかい?」
研究員A「はい、何度も動いていますし、呼吸もしています。」
ブロード博士「血液のパックは?」
研究員A「あの子の目の前に出し、檻の中にも入れましたが、反応ありませんでした。」
ブロード博士「おかしいな…血を目の前にして吸血鬼が黙っているはずがない。やはり普通じゃない…か。」
博士は困っているようだ。
俺「グレイシアとは、会話できたんですか?」
女研究員「いいえ、目を合わせてもすぐ逸らして、声も出しません。」
研究員A「完了したスキャンですが、牙が通常の吸血鬼よりも育っていないようです。まるで吸血鬼の子供ですね。」
俺「子供…。」
どうやらグレイシアは吸血鬼と皆理解しているようだが、いまいち証拠に欠けるようだった。
俺は決心した。
俺「博士。俺を檻の中に入れてください。」
研究員A「な…なんだって!?」
周りの研究員がざわめきだした。
女研究員「危険すぎるわ。吸血鬼よ?あんな空間で襲ってこられたらあなたまで…!」
俺「なら、その檻をすぐ閉じて、吸血鬼として処理してください。」
俺はすぐ返答する。
俺「もともと俺が連れてきたグレイシアです。自分でやります。それに…。」
「なんだか、悲しんでいるように見えてしまって…。」
博士は微笑んで俺を見た。
ブロード博士「後悔しないね?」
俺「もちろんです。」
ブロード博士「檻を開けてくれ。すぐ閉じられるように待機!」
少し固まった後、動き出す研究員たち。
女研究員「し、正気ですか?」
ブロード博士「ああ。彼を信じよう。」
俺は開いた檻の中へと入っていき、ゆっくりと進んで行く。
グレイシアは人間が数メートルの近さにいるというのに、全く動く気配がない。
ついに、触れられる距離まで来た。
ゆっくりと腰を下ろし、横に座る。
顔を埋めて伏せているグレイシアの背中にそっと触れた。
その体は冷たく、それでいて生命を感じさせるあたたかさがあった。
俺の手が触れた時、この子の体が少し跳ねた。
驚いているのだろう。
俺はゆっくりと背中を撫でた。
敵ではないと、大丈夫だよ、と示すために。
何回も撫でているうちに、五分ほど経った。
依然、檻の外は緊張が走っている。
突然、グレイシアが動いた。
ぬっと顔を上げて、俺の方を見上げる。
俺の背中には冷や汗が溜まっている。
だが、俺のとった行動は笑いかける、というものだった。
俺の撫でた手をちらりと見て、また俺の方を見てを繰り返している。
俺「俺はレイ。君が倒れているのを助けたんだ。」
「お腹、空いてないないかい?」
俺はポケットから木の実を取り出して、グレイシアの前に置いた。
グレイシアは木の実に目線を向けたが、首を横に振った。いらないということだろう。
再度背中を撫でることにした。
俺「君は…どこから来たの?何者なの?」
またもグレイシアは首を横に振る。
答えられないのか、それとも分からないのか…。
俺はグレイシアのお腹辺りを持って同じ高さまで抱え上げた。
目は少し赤みがかってはいるものの、牙は見えない。
俺「怖がらなくていいよ。俺は君を知りたいだけなんだ。」
グレイシアは俺の目を見た。
どうやら、本当に襲うつもりはないようだ。
ブロード博士「レイ君、一度下がってくれ。」
俺はグレイシアをそっと下ろして、笑いかけた。
俺「またね。」
ずっと俺の背中に当たる視線が、檻を出る時までやまなかった。
檻から出た俺は、博士を筆頭に、すぐに研究員に囲まれた。
ブロード博士「ケガはないかい?」
俺「はい、大丈夫でした。」
何人かは俺の身体を調べている。
ブロード博士「何か、感じたことは?」
俺「声は…出せないように見えましたし、木の実を食べなかったのは…吸血鬼だからだと思います。」
お腹は減っているはず、それに応答までにすこし間があった。
俺「でも、僕を襲うタイミングを計っているようには見えませんでした。」
グレイシアが吸血鬼だということはより感じられたけれど、それが大きくなるほど、自分を襲わなかったことが不思議に感じられた。
ブロード博士「君だから…なのかもしれないね。」
「君は、あの子を助けたんだろう?」
俺「はい…吸血鬼だとは思ったんですが…警察に連絡して殺されてしまうのは…嫌でした。」
ブロード博士「自分を助けたのが君だって分かったんじゃないかな?」
襲わなかったとしても、近づくなと威嚇することもあったはずだ。見知らぬ人間に触れられて、気持ちの良いものではなかっただろう。
ブロード博士「それに、君は俯いたままのあの子を振り向かせた。」
「君にしかできなかったことだと私は考えている。」
博士は俺をほめているのだろうか。それとも…。
女研究員「博士…?」
ブロード博士「私は、あのグレイシアを研究することが吸血鬼の正体につながると考えている。」
「今まで何件と報告を聞いてきたけれど、全ての特徴に該当しない、極めて異常性の高い吸血鬼だ。」
人を襲わない、威嚇すらしない、翼も牙も未発達で、目は赤みがかっているのみだが、言葉は話せない。
ブロード博士「でも、ここにいるだけでは何もならないと思っている。」
「君が旅をして成長したように、旅はこの子を成長させてくれるとも思っている。」
女研究員「まさか博士…
ブロード博士「ああ。これはレイ君にしかできない。」
「あのグレイシアと旅をして、私の研究を手伝ってくれないか?」
また研究員がざわめきだした。
研究員A「博士!彼は子供です!いくら旅の経験があり、グレイシアが彼を襲わなかったからといっても、危険です!」
モニターを見ていた研究員が突然大声を出した。
女研究員「私も反対です。不確定要素が多すぎるかと。」
反対の意見の方が多そうだ。
ブロード博士「分かっている。でも…あのグレイシアを育てられるのは、レイ君しかいない。」
「君は、どうなんだ?」
博士は俺の意志を汲み取ろうとしているのか。
俺「俺は…博士の研究も手伝いたいですし、グレイシアが何者なのか知りたいです。」
あの子を殺させたくなかったのは事実。このままここでひとりぼっちなあの子を見るのも、なんだか堪えられない気がする。
女研究員「しかし…
ブロード博士「ありがとう。危険なのは重々承知の上で頼む。」
博士は頭を下げた。
ブロード博士「君とあのグレイシアは…私の希望なんだ。」
「私の夢…“吸血鬼と共生できる社会”を目指すためには、あの子が何故人を襲わないのか、他の吸血鬼と何が違うのかを解明しなければならない。」
「私たちは、あまりに無知だ。」
「私たちは吸血鬼についてもっと知らなければならない。」
博士は、グレイシアを研究することが夢に繋がると、確信している様子だ。
危険ではあるが…俺も博士の夢の手伝いをしたい。
ブロード博士「近況を報告してくれれば、それで大丈夫。何かあったらすぐ私たちが向かうし、知り合いにも話を通しておくよ。」
俺「俺、やります。グレイシアと一緒に行きます。」
研究員たちはまだ反対する者がいたのだろうが、俺の言葉で黙ってしまった。
ブロード博士「よし、アララギ博士にも私から連絡しよう。」
俺「アララギ博士って…。」
ブロード博士「この地方のポケモン博士。私とも連絡を取り合って、ここの町から出る新人トレーナーを支援しているんだ。」
「新人トレーナーは、ミジュマル・ポカブ・ツタージャの中から最初のポケモンをもらうんだけれど…。」
「君はもう旅を経験しているから、私の研究所から選ぶこともできるよ。」
俺「ここにポケモンがいるんですか?」
ブロード博士「ああ。昔はポケモン博士だったこともあるし、研究対象になっているポケモンたちがあの建物にいるんだ。」
博士は窓の外にある縦長の建物を指して言う。
ブロード博士「ざっと500種ってところかな。」
俺「500…?すごい数ですね。」
ブロード博士「各地からいろんな大きさ、タイプのポケモンたちを捕まえてきたからね。」
「あの中から、君やあのグレイシアと気が合いそうな子を選んだらいいよ。」
博士はずっといた女の研究員に命じた。
ブロード博士「リツコ君、案内してくれ。私はもう少しグレイシアを調べてみる。」
リツコ(女研究員)「分かりました。」
俺と女の研究員はポケモンがたくさんいる建物に向けて歩き出した。
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その建物にはたくさん窓がついていて、通常のポケモン研究施設のような大きさがあった。
リツコ「吸血鬼と旅をするとなると…その子を嫌う子もいるだろうから、選ぶポケモンは慎重に。」
俺「はい。」
中に入ると、広い空間があって、大きな池や木、植物がたくさん生えており、ポケモンたちが暮らしやすい環境が整えられている。
皆人に慣れているのか、俺が入ってきても気にせず遊んだり、上空を飛ぶマメパトさえいた。
リツコ「ここから右奥の扉が氷タイプ、その奥が地面や岩タイプの部屋。」
「その奥の扉からも続いているから、ゆっくり探して。」
リツコ「ありがとうございます。」
俺は脇道に入って、池や植物の周りのポケモンを観察する。
皆仲良さそうに笑っているが…ここは吸血鬼の脅威がないからなのだろうか。
俺はその奥の大きな木に近づいてみる。
奥で、物音がしたので、覗いてみると…。
一匹のカイロスと、ヘラクロスが木の実を巡ってにらみ合っていた。
お互い角で威嚇して、一触即発。今にもケンカが始まりそうな…。
「~~~♪」
近くの草むらから、ニンフィアが飛び出してきた。
間に入って、リボンでカイロスとヘラクロスをなだめる。
木の実を上の木から取って、二匹に渡した。
いがみ合っていた彼らも、ニンフィアの仲裁によって冷静になり、お互い謝っているようだった。
「すごいな、あの子…。たった一匹で体の大きいポケモンの喧嘩を止めた…。」
ニンフィアは三匹で楽しく話しながら木の実を食べている。
あのニンフィアなら…吸血鬼のグレイシアと旅をする仲間の不安も拭ってくれるのではないだろうか?
俺「そこのニン…
後ろで、マメパトがバサバサッと飛んでいく音が聞こえた。
リツコ「レイ君大変!至急戻るようにって博士が!」
俺「何かあったんですか!?」
リツコ「グレイシアの…あの子の様子が…突然…!」
その時、俺はまだ理解できていなかった。
吸血鬼と人間、そしてポケモンの間にどれだけ大きな壁が存在しているのか、ということに。
お読みいただきありがとうございました。
続きもよろしくお願いします。