幸福な死に向かって   作:凪@なぎ

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10/6、加筆修正。


幼女、本番に弱い

 

霊力を鍛え始めて数年。

霊球――正式名称不明故の仮名――を作るのにもやっと慣れて、どれくらい維持したままでいられるか競っています。

そう、競っています。兄さんと。

 

最初はわたしだけだったのに今や農作業の休憩中や雨の日に一緒に修行です。

盲目なのに農作業ができるってすごいよね。どれだけやっても腕が細いのもすごい。

 

…霊球、そう霊球ね。あまりに霊球を上手く作れなかったからカッとなって兄さんにせがんだら数回で作れちゃったよ。

おそるべし将来の隊長格。

…幼女ルキアもできてたよね。うん。細かい作業は苦手なんですよ。

 

まあ、そんなこんなで遊び半分で一緒に修行してます。もちろん兄さんが仕事中は一人で走ったり、霊球作ったり、寝てたりと忙しい。全部兄さんの目の届く範囲――見えないが何故か知覚できる範囲――でやってるよ。幼女だからね、仕方ないね。

霊力上がってるのかは不明。

どうやって確かめるの、これ。

 

この修行、霊力使うからすごいお腹減るけど、いっぱい食べるようになって兄さんは嬉しそう。兄さんは食べる量変わらないね。何故だ。

ああ~、ご飯おいしいんじゃあ~。兄さんなんでこんなに何でもできるの。

初めて会った頃は時々手を切ったりしてたのに、今じゃ見えてるのでは疑惑だよ。

 

あれ、これ兄さんの霊力上がってる?

たしか霊力=霊的な体力、霊圧=一定以上の霊力の持ち主が対外的に向けて放つ圧力、だったよね。

で、兄さんは霊圧を使って霊的知覚?とかいうので外の様子を探ってたはず。

霊力が上がる=霊圧が上がる=霊的知覚能力が上がって健常者に近い動きができるってことだから…。

…兄さんだけ、強くなってる、のか。

 

そんな馬鹿な。

 

確かめるすべがないだけでわたしだって成長してるはずだ。

サボり、減らそうかな…。

 

 

 

 

 

 

 

=====

 

 

 

 

 

 

 

 

――姉さんが死んだ。

 

 

 

わかっていたことだ。

なのに何故にわたしは泣いている。

この涙は兄さんが泣いているからつられているだけなのか、本当に悲しいのかわからない。

 

…そもそも、姉さんを見捨てると決めたわたしが泣いていいのだろうか。

 

思考は止まらないが、時間もまた止まらない。

 

明日、兄さんは四十六室に抗議に行くらしい。泣きわめいたけどダメでした。この頑固者が。

わたしは留守番を頼まれたが、もちろんついていく。

 

これが最初の試練だ。

これからのすべてが決まる。

 

兄さん…、要さん…。

あなたはどの道を選ぶのですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

=====

 

 

 

 

 

 

 

わたしはどうしようもない奴だった。

朝早くに出て行った兄さんの後をこっそりつけようとしたわたしは道に迷ってしまったのだ。

幼い足では兄さんに追いつくことも来た道を戻ることもできず、日は沈み息は上がる。

…どれだけ歩き続けたのか、足を進めることもできなくなってしまった。

朦朧とする意識の中、降り始めた雨に打たれながら二度目の死を覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起きたら見知らぬ天井なんてことが本当にあるなんてひどい非常事態である。

 

「……どこ、…こ、こ」

 

知らない天井に枯れた声。熱いような寒いような軋む身体はあまりに重く、なんとか周囲を見渡せば簡単なテントの中にいるようだった。

 

「…なんだ。もう起きたのか」

 

布を上げて声をかけてきたのは大柄な男の人。

死覇装。死神か。

 

「……」

 

「気分は…よくねえみたいだな。水と薬だ、飲めるか」

 

背を起こしてくれる大きな手のひら。

粉薬は苦くて咽るけど、差し出された水は心地よくのどを滑り、潤いを与えてくれた。

 

 

「どうだ、話せそうか。…名前は」

 

「…すず」

 

「ずいぶん小綺麗な名前だな。…なんであんなところで倒れてたんだ」

 

「…にいさん、いっちゃったからおいかけてた」

 

死神は眉間にしわを寄せ、ただでさえ強面な顔をいっそう恐ろしくさせた。

 

「…そうか」

 

「……兄貴はどこ行ったんだ」

 

「…ねえさん、しんじゃって。でもき、きったひといきててぇ…。にいさん、こうぎ?しにいったの」

 

わたしはなにやってるんだ。

熱出してぶっ倒れるなんて頭まで幼女になったのか。

兄さんは今頃、ゲス灘と藍染に会ってるかもしれないのに。なんで泣いてんだ。

 

「…もう、寝ろ」

 

「やだあぁ、にいさんとこいくのぉ」

 

「寝ろ!…朝になったら一緒に兄貴探してやるよ」

 

涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をハンカチで拭う大きな手とぎこちなくも優しい眼差し。

ゆっくりと薄い寝床に寝かされて、おでこに濡れた手ぬぐいを置いてくれた。

いい人だ。

どこもかしこも痛いけど薬のおかげか、眠れそうな気がする。

 

「…なまえ、おしえて」

 

「あぁ?…いいからさっさと寝ろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……六車」

 

「…六車拳西だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…何故に九番隊ばっかりィ。

 




どの陣営か迷った結果、すずちゃんにはぶっ倒れていただきました。
そしたら何故か六車さんに出会います。
別に九番隊が好きなわけではなかったのに、もう九番隊メインになりそう…。

護廷編に向けて加筆修正したいのですが、どこまでなら許せますか?

  • 誤字脱字、行間を詰めるくらい
  • 表現を変えるくらいならok
  • 数行くらいなら付け足しても、まぁ、いいよ
  • 大筋変わらないなら好きにどうぞ
  • ガッツリやれ!話数が変わっても構わん!!
  • 今のままでいいから更新はよ
  • 黒歴史だろうと残しとけ

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