幸福な死に向かって   作:凪@なぎ

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本編の進行上、時々別視点の番外編を入れる予定です。
目的はもちろんより本編キャラと仲良く見せるため。
そのほうが後々、ね。




番外編① 六車の親心?

今回は遠征はちょっとばかし厄介だった。

変わった能力の虚が多く、隊長である六車自身が出向く必要があった。

副隊長である(ましろ)までは必要なさそうだったため置いてきたが、終わる頃には日も暮れて雨まで降っていた。

 

「おい!今日はここで野営だ!テント張れ!俺は取りこぼしがいないか見てくる!」

 

「はい!お気をつけて!」

 

六車は他の隊士に野営の準備をさせ、近くの背の高い草が生えている付近にきていた。気配は感じないが、一応目視でも確認するためだ。

 

「…なんだ、だれかいるのか」

 

それは小さな気配だった。

いまにも消え去りそうなその魂魄はあまりに気薄な気配ゆえに猛者揃いの護廷の隊長である六車でさえ捉えきることができなかった。

 

「おい!どこだ!!」

 

声を張り上げ、呼びかけても返事はなく。

ただ強まる雨音と草木の揺れる音だけが返ってくる。

しばらく歩けば土を固めただけの小道に出た。

そして目に映ったのは――

 

 

「おい!しっかりしろ!!」

 

 

小さな、あまりに小さな幼子だった。

 

 

揺り起こしても返事はない。肌は青白く、息はか細い。

それでもその小さな小さな身体は確かに生きようと懸命に呼吸をしていた。

 

「クソッ!間に合えよ!!」

 

幼子を抱きかかえ野営地まで走る。

少しずつ、だが確実に下がっていく体温を感じながら焦る気持ちを押し殺し、腕の中の命に負担をかけないように気を配りながらたどり着いた野営地には小さなテントとその一回り大きなテントが張ってあった。

すでに大降りになった雨を避けるように、皆、テントの中に避難していたのだろう。小さなテントからは連れてきた隊士たちの気配がする。

 

「おい!回道が使えるやつはでてこい!あと湯と薬だ!」

 

「隊長!どこかお怪我を…!?」

 

隊長の帰還に出てきた隊士たちは顔を強張らせた六車の言葉に一瞬戸惑ったのち、そのたくましい腕の中に抱かれた幼子を確認すると慌ててテントに戻っていく。

それを見届けることなく一回り大きなテントに入っていき、着物を脱がせて掛布団を乱暴に被せ、手持ちの水で簡単に洗い流した。

濡れた着物を鬼道で乾かし、手拭いで簡単に幼子の身体を拭こうとした時、六車は気づいた。

 

「(こいつ…女かよ)」

 

できるだけ裸体を見ないように拭き、また着物を着せようとした時、テントが開き――

 

 

「隊長!湯と薬でございまッ……し、失礼いたしましたあ!!!!」

 

 

――閉じた。

 

 

「ナニ勘違いしてんだテメェエエ!!!さっさと湯と薬持って戻ってこい!!!!」

 

「ハ、ハイィィイ!!タダイマァァアアア!!!」

 

 

 

素早く着物を着せなおし、怒鳴った六車の顔は般若のようだったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短く切りそろえられた女子供にしては固い黒髪。

外ばねする前髪を鬱陶しそうに細められた切れ長ながら大きな二重の瞳もまた黒く。

若干浮いたわき腹と細い手足。

幼さ故の身体に比べて大きい頭。

舌っ足らずな言葉遣い。

 

あの日、拾った幼子はそんなどこにでもいそうなこどもだった。

目を覚ました幼子の名は鈴といった。

兄と慕う男を追いかけて道に迷ったのだという。

話を聞いた初めは置き去りにされたのかとも思ったが、どうやらそうではないらしく、並々ならぬ事情で一時的に家を空けざるおえなかったらしかった。

熱の下がらぬ鈴に代わり探した兄は純粋で誠実、礼儀正しく、愛情深い男だったことは六車を安心させるには十分たるものだった。

最初こそ警戒されたが、兄代わりである男(東仙要)妹同然の幼子()を保護してくれたことに深い感謝を述べ、熱が下がったところで抱きかかえて去っていった。

 

その折、子供を預けられる場所を聞かれた。

何故かと六車が尋ねると死神になるために真央霊術院に入学するのだという。

どうも鈴は霊力はあるが育ちが遅く、何年たってもほぼ身長が変わらないそうで入学にあたり預けられる場所を探しているそうだ。

そこで馴染みの食堂を教えたわけだが…。

 

「(まさかこんなに通い詰めることになるとはな)」

 

小さな食堂で幼子が一生懸命手を伸ばし食器を洗っている。

その真剣な眼差しはなんとも可愛らしい。

洗い終わり、ばあさんと話をしている鈴は手を洗い、団子と茶を持ってこぼさないようにしながら早歩きで近寄ってくる。

 

「(…うまくやってるみてぇだな)」

 

「むぎゅるまさーん、お団子です」

 

「お団子です、じゃねえだろ!挨拶ぐらいしろ!」

 

「こんにちはー!お団子です!」

 

「団子はもういい!さっさと食え」

 

「…はぁい」

 

小さな口をいっぱいに開けて頬を膨らませ、本当に美味しそうに団子を食べる姿は微笑ましい。

あまりにも平和で無邪気なその様子は子どものあるべき姿そのものだった。

できることならこのまま穏やかに過ごしてほしい。

きっとあの兄もそう願っているに違いない。

それでも子どもが願うのは死神になる道(兄の役に立つこと)だった。

 

「しにがみになりたいのにぃ…」

 

「…死神になる以外にもいくらでも道はあるだろ。じっくり考えろ」

 

本音を云えば死神になど、血に染まる道になど、進んでほしくはない。

だが、この子はきっと死神になる。

せめてそれまでの間だけでも喧騒から離れ、安寧の中で暮らしてほしい。

 

「(これが、娘を持つ父親の気持ちか。…って、そんなわけあるか!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その三年後、子ども()は見事、真央霊術院に合格し、(東仙)と六車を驚愕させる。

そしてすでに二回落ちていることを知り、頭を抱えた。

 

 

――六車の胃痛と頭痛との戦いは始まったばかりだ。

 




九番隊では食堂通いはバレています。誰目当てかも知られてます。
よってロリコン疑惑がひそかにささやかれています。
六車さんは不憫キャラ。

護廷編に向けて加筆修正したいのですが、どこまでなら許せますか?

  • 誤字脱字、行間を詰めるくらい
  • 表現を変えるくらいならok
  • 数行くらいなら付け足しても、まぁ、いいよ
  • 大筋変わらないなら好きにどうぞ
  • ガッツリやれ!話数が変わっても構わん!!
  • 今のままでいいから更新はよ
  • 黒歴史だろうと残しとけ
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