幸福な死に向かって   作:凪@なぎ

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※この話からしばらく主人公の生前のトラウマがメインになります。できるだけぼかしますが性的な話も含まれるため、苦手な方はご注意ください。





幼女、院生となる

 

 

 

真央霊術院。旧名死神統学院。

二千年以上前に山本元柳斎重國が作り上げた将来の死神や鬼道衆、隠密機動を排出するための学校である。

 

そんな学院に新入生として無事入学したわたしの目的はひとつ。

これから起きるであろう波乱の中でも生き残れるだけの霊力と術(ちから)を手のすることだ。

東仙要(兄さん)がどの陣営であろうとも対応できるだけの武力(ちから)がほしい。

…かつての望みは流魂街で兄さんとふたり、穏やかに暮らすことだった。でも、それは東仙要(兄さん)かつて雲が好きだった人(兄さん)である限り無理なことで。

 

わたしの望みはいったいなんだろう。

どんなわたしになりたいのか、わからないけど、今は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はなしてしばさぁん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

この阿保から逃げることが望みかなあ!!

 

 

なんなのこいつ。なんでいつも声かけてくるの。ていうか担ぐな!俵じゃないぞ!一組のくせに二組のわたしに絡んでんじゃないよ!おまえほぼ没落してるとはいえ五代貴族だぞ!しかも次期当主だぞ!めっちゃ目立つわ!

ただでさえこっちは兄さんに内緒で入学決めたことで喧嘩したんだぞ!初めての喧嘩だよ!テンションダダ下がりなのにおまえのせいでもっと機嫌悪くなるわ!!おばあさんだけには説明ておけってぇ?そんなことしたら即兄さんにバレちゃうだろ!

 

「はっはっは、おとなしく飯食いに行くぞ!今日はなんと俺の奢りだ」

 

「いつもじゃないですかあ!」

 

「そうかぁ?いつも奢られるなんて最高じゃねえか!」

 

「あなたとたべるじてんでさいあくです!!」

 

「おお?いうじゃねえか。いいのかあ?そんなこといって。鬼道の練習付き合ってやらねえぞ」

 

「…ぐぅ。ひきょうものめ!おごらせてやるう!」

 

…これ、毎回似たような会話してる。

最初はビビッて逃げてたのに結局追いつかれる。瞬歩使っても駄目だった。泣いてもギョっとされるけど頭撫でられて、お団子やだいふく渡される。あと高い高いされたりする。恥ずかしいのでもうしない。なんか周りは微笑ましいもの見る目で見てくるし。

 

「ほら食え!もっと食え!」

 

「むぅりぃ」

 

「ほれ、あとうどん一本!」

 

「…いっぽんだけだぞ!」

 

「よくいった。偉いぞ!ほら食え!」

 

わたしはこどもかあ?…こどもだったわぁ。

伸びろ身長!治れ舌っ足らず!

 

「くんりんちゃよ!ちにくのかめん、ばんしょう、はばたき、ひとのなをきゃんすものよ!」

 

「はいちがあう。君臨者な!くんりんしゃ!」

 

「くんりんちゃよ!」

 

「くんりんしゃ!」

 

「くんりんちゃ!」

 

「く ん り ん しゃ」

 

「く ん り ん しゃ」

 

「そうだ!君臨者!」

 

「くんりんちゃ!」

 

「駄目かあ~!!」

 

…この流れも何回目だろう。

どうしても君臨者っていえない。

 

どうやらわたしの敵はゲス灘でも藍染でもなく、滑舌のようです…。

 

「…そんなんでよく入学できたな」

 

「しゅんぽみせたらごうかくしました」

 

「兄貴が死神なんだっけか。教えてもらったのか」

 

「ううん。れいりょくをつかったはしりかたがあるっていうかられんしゅうしたらできました」

 

「…マジかよ」

 

「(歩法の才能はありそうだが、鬼道は才能以前の問題だな)」

 

「…あぁ~、とりあえず毎日発音の練習だな」

 

「……。はぁい」

 

兄さん、わたしは志波さんに振り回されながらも平和にやっています。

そのつもりでした。

少なくともこの窮地に陥るまでは本当になんとかやっているつもりでした。

どれだけ庶民的であろうが志波さんは五代貴族の次期当主。しかも顔良し、性格良し、霊力良しの将来を期待される一組で、主席かつすでに護廷入り確実といわれている超優良株。

 

 

 

 

 

 

 

 

……そりゃあ、そんなのと流魂街出身のポっと出の女が仲良くしてたらいろいろと思うところあるよなあ。

 

 

 

 

 

 

 

現状を確認しよう。

鬼道の練習とは名ばかりの発音練習を終え、寮の部屋に戻ったわたしは同室の同級生にお茶をもらって飲んだら急な眠気に襲われた。

そして気がつけばボロ屋に転がされている。マジ怖いです。

寝たふりで観察した結果。まだ目を覚ましたことに気づかれてない様子。人数はどうやら同室の子含め女が二、男が三。なんか話してるけどよく聞こえない。男がゲラゲラ笑ってる。キモイ。聞き耳を立てろ。集中。

 

「……ほんっっとに諸星は調子乗りすぎ。志波君にちょっと気使われたからってさぁ」

 

「たしかにぃ。ここらで懲らしめてやんなきゃだって」

 

「だからってこいつで楽しめるかなあ?本気でガキだぞこいつ」

 

「ガキでもいいだろオンナなら」

 

「とりあえず服剝げって」

 

 

 

 

 

 

 

…は?なにいってんだこいつら。

本気で幼児だぞ?凹凸ないぞ。つるぺったんだぞおい!触んなくっそちからがたりないなんでおとこってやつはこんなばっかりなんだこのはんざいしゃがわらうなよたすけろあいつもこどものわたしをべたべたさわってすりつけてきてやめてっていったのにやめてくれなくてきらわれるのがこわくてなにもいえなくなっていやだけどさっさとおわらせようとしてそれで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはなんだ

いつのきおくだ

わたしは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ

私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつに触られるのが嫌だったけど嫌われたら生きていけないからだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああアあああぁぁァアアああぁァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諸星!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとになって聞いた話によるとわたしを襲った奴らは上級生の悪い噂が多いグループで、同室の子はその中のひとりの親戚らしかった。

動機は教えてもらえなかったけど、たぶん流魂街出身のくせにとか没落しかけとはいえ上位貴族と仲良くて生意気だとかであってると思う。

 

面倒なことにその中には中級貴族もいてもみ消されそうになったけど、志波さんが数少ない貴族の伝手でなんとか全員退学にしてくれた。

 

幸いわたしは制服を剥がれただけで、それ以上のことはされず打ち身と擦り傷、ひっかき傷だけで済んだ。

 

怪我より大変だったのは志波さんで自分のせいだと酷く落ち込んで泣きながら謝るものだからこっちが慌てた。

それ以上に大変だったのは兄さんで、退学させようと説得してくるわ、志波さんにキレるわ、果ては加害者を切り捨てようとするわで六車さんに鉄拳制裁されていた。

ちなみにすでに九番隊になっていたみたいで、なぜか六車さんも一緒に来たので教員たちは突然の隊長の登場に大混乱だった。

 

今回の事件でよかったことなんて一人部屋になったことくらいだ。

いや、なにより大変なのは兄さんじゃない。

問題なのはこの記憶だ。

あれから夢に見るようになったこれはわたしが私だった頃の記憶。いわゆる生前の記憶。曖昧にしか覚えていなかった転生する前の記憶。

 

私の人生。

どうしようもなく怠惰で、流されて、怯えていた頃の記憶。

私がわたしになる前の――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自殺する前の記憶だった。






すずちゃん、トラウマを思い出す。
これって愉悦になるのかなぁ…。
作者は違うと思っているのですが、どうなんですかねえ。
ここを愉悦の海に沈める気はないんですよ。
小川くらいは流しますが。
ほらやっぱりあの顔は曇らせないといけないから(ゲス顔)

護廷編に向けて加筆修正したいのですが、どこまでなら許せますか?

  • 誤字脱字、行間を詰めるくらい
  • 表現を変えるくらいならok
  • 数行くらいなら付け足しても、まぁ、いいよ
  • 大筋変わらないなら好きにどうぞ
  • ガッツリやれ!話数が変わっても構わん!!
  • 今のままでいいから更新はよ
  • 黒歴史だろうと残しとけ
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