体調を崩してしまった…。
あ、コロナじゃないです。
私は田舎の家に生まれた。
父とは一緒に住んでいなかったが、離婚したわけではなかった。
母はあまり私をかまってはくれなかったが、愛情がないわけではないらしかった。それでも私は愛情に飢えていた。あまりかまってくれない母の愛だけでは足りなかったのだ。特に私はひとりではなかったのだから。
私には兄がいた。
背はそこまで高くないが、大柄な兄だった。
母も同居していた祖母も曾祖母も兄を愛していたように思う。
田舎では男子のほうが愛されやすいし、なにより兄はあまり身体が強くなかった。小さな頃はよくクリニックで点滴のために通っていた気がする。
不満がなかったわけではないが、取りたてて騒ぐほどではなかったのだ。このころは。
たしか、私が小学生に上がったころだったと思う。
ある日、炬燵でくつろいでいた私の足をやたらべたべた触ってきた兄は嫌がる私を無視して下半身を触ってきたのだ。
当時の私に意味なんて分からなかったが、なんとなく嫌で拒否したが、それでもやめない兄に私は――
そこからの記憶はまた曖昧になっていく。
確かなのは、私はずっと死にたがっていたことと最期に自殺したことだ。
生前の夢を時々見るようになったわたしがいままでと同じ精神状態でいられるわけもなく、寮の部屋でひとりで声を殺して泣くようになった。
あれからもう五日だというのに、わたしは部屋から一歩も外に出ていない。ご飯もほとんど食べてない。ただ寝てるか四番隊のお世話になっているかだ。
あの事件は対外的には生徒同士の暴行事件として処理された。
わたしは怪我で療養中ということになっている。
あと五日以内にこれからどうするかを決めなければならないらしいが、もちろんこのまま院生を続ける予定だ。
わたしは大丈夫。大丈夫なんだ。強くなれば女だって男に負けたりしない。ここでは霊圧がすべて。筋力なんておまけみたいなものなんだから。
兄さんはあいつとは違う。
ただ心の準備に時間がかかっているだけなのだ。
四番隊でもこのままではいけないと一時的な帰省を勧められ、わたしはいま、おばあさんの食堂に来ていた。
おばあさんは優しい。なにもいわずにただ一緒にいてくれる。急に預けられて、勝手にいなくなったのに。
兄さんだって忙しいだろうに、休暇をもらってついていてくれる。
このまま、このちいさな食堂で生きていければ幸せなんだろうか。
これから起きるだろう騒乱をただ眺めながら生きていれば。
時々訪れるだろう兄さんや六車さんに甘えながら生きていれば。
破滅の足音がもう近くまで来ているのに。
不変なんてないと知りながら、わたしはまだ縋り付いていたいのだ。
愛されていたい。子どもが親に甘えるように、ありもしない無償の愛に浸っていたい。
わたしの望みはなんだ。
そんなもの、わたしが私であった頃から決まっている。
わたしの望みは幸福のまま死を迎えること――。
さあ、
膝枕はいい。
鍛えられた少し硬い感触も着物越しの微かな体温も時折髪を撫でる指の滑らかさも、そのすべてがわたしを慈しみ守ってくれるもの。
ふと、目を開けて見上げればそこにはやわらかな笑顔がある。この瞬間を幸福だと、わたしとの時間を心地の良いものだと共感してくれているのだと確信させてくれる笑顔が。
「にいさん、わたしね。しあわせなの」
「……どうしたの、急に」
「きゅうじゃないよ。にいさんにひざまくらしてもらってあたまなでてもらってるときがとってもしあわせなの」
「それくらいいくらだってしてあげるよ」
「……ありがとう、だいすきだよ。にいさん」
この人はわたしのことを大切にしてくれる。
一番はきっと姉さんだろうけど。そんなことはどうでもいいのだ。
いつか他に大切なものができて離れて行ってしまうかもしれなけれど、どうかわたしが
そのためだったら、わたし、少しは頑張れる気がするの。
覚悟、なんていえるほどの強い気持ちじゃないけれど。
わたしは戦います。
強く、なるよ。
「むぎゅるまさん、だっこして」
食堂に来て二日目の朝。
席官候補とはいえ九番隊に移動したばかりの兄さんが何日も休みをもらうことはできなかったらしく名残惜しそうに瀞霊廷に戻っていった。
お昼頃に訪ねてきた六車さんといつもより距離をあけてお団子を食べながらわたしは請う。
正直、人が怖い。特に男の人が怖い。兄さんのことだって本当はちょっと怖い。戦うのが怖い。痛いのは嫌だ。苦しいのも、頑張るのも嫌い。
恐怖に打ち勝つことはできないだろう。
ならばせめて立ちすくむことだけはないように。
「……おまえ、俺が怖いだろ。それでもやるのか」
「…………こわいよ。こわいからだっこなの」
怖いよ。
あなたとこれ以上関わるのは怖い。
嫌いになるのもなられるのも悲しいけれど、なにより仲良くなってしまったらわたしは貴方を失うことになる可能性が高いから。
「……そんなに急がなくていいだろ」
「だめ。こわくちゃだめ」
「何度も言っちゃいるが、なにもそう焦る必要はねえ」
「やだ」
「なぜだ」
「……こわいの、ぜんぶこわい。だからこわいのにたちすくまないつよさがほしいの」
「……その強さを誰もおまえに望んじゃいねえぞ」
「だれかがのぞまなくてもわたしがのぞむの」
「……ったく。頑固なところは東仙にそっくりだ」
「きょうだいだもん!」
「胸を張るな」
頭をかいて六車さんは苦笑した。
躊躇いがちに差し出された手を握る。ごつごつとした大きな手は温かかった。
「まずは手ぇ握るとこからにしとけ」
「…………うん、ありがと」
「気にすんな」
「……むぎゅるまさんはいいおとうさんになりますね」
「……ほっとけ」
ああ、優しい、本当に優しい人。
貴方に愛される人は幸せなのでしょうね。
わたしが死んだら、ずっとずぅっと悲しんでくれますか。
そして、わたしは霊術院に戻った。
最初は暗い顔だった志波さんも徐々に元通りになった。
心配症になった志波さんと今まで通り一緒にご飯を食べて鬼道の練習という名の発音練習をして時々そこに斬術や鬼事が混じる。
それは二回生の終わりに志波さんが卒業し、護廷に入隊が決まるまで続く……はずだった。
「そつぎょうしない?」
「そうなんだ。君からも説得してくれないか」
教員に呼びだされ戦々恐々として入った教員室で、わたしの耳に入ったのは信じられない情報だった。
なんと志波さんが飛び級卒業しないというのだ。
何故。
主席合格で入学し、そのまま一組主席をキープし続け、霊術院で知らない人はいないといわれる創設以来の天才ですでに護廷十三隊の多くの隊から声がかかっていると噂の志波さんがまさかの飛び級卒業拒否。
なんでなんですか。
「……りゆう……わたしだったりします?」
「…………おそらく」
マジかよ。
そりゃ、わたしというイレギュラーがいる時点で原作通りにはいかないと思ってたけど、脱線早くないか。
志波さん、わたしのこと心配しすぎだって。
「………。……おはなし、してきます」
「頼んだぞ」
頼まれても自信ないぞ。
とりあえず放課後お団子でも食べながらお話しです。
「しばさん、おはなしがあります」
「……聞いたのか」
「はい。……まえおきはなしでいきましょう。なんでそつぎょうしないんですか」
飲んでいたお茶を置いて、苦い顔をする志波さん。
苦いのはこっちです。
「俺が弱いからだ」
「れいじゅついんそうせついらいのてんさいがなにいってるんですか」
「まだだ。まだ足りないんだよ」
「ならよけいにさっさとしにがみになったほうがけいけんつめますよ」
「……こんなんじゃ死神になったって死ぬだけだ」
「わたしのこと、きにしてるならだいじょうぶですから」
「……気にすんなってほうが無理だろ」
「そうですね。……じゃあ、こうしましょう」
この手は使いたくなかったけど、このまま卒業してくれないのはマズイ。
原作知識はわたしのたったひとつのアドバンテージ。
できるだけ原作通りにしていかなきゃ。
「あ?」
「けいこ、つけてくださいよ。わたしがいっぽんとったらそつぎょうしてしにがみになってください」
「……俺から一本、取れると思ってるのか」
斬術で志波さんに勝ったことはない。
というか、鬼事以外で勝ったことなんてない。
鬼事だって勝率はよくないのだ。
「とるよ。しばさんのあしかけになんてなってあげないんだから」
「…そんな言い方するなよ」
「はなれいてもまもれるものはあるわ。……どうかまっていて、かならずおいつくから」
予定調和でお願いしますよ。志波さん。
わたしの
タイトル回収。
すずちゃん、転生前を思い出してヤバい奴になりつつある…。
歌匡さんは死体は渡してくれとかいうし、檜佐木は卍解にまで反映させるし、すずちゃんはアレだし、東仙さんの周りがやばい。
次回、海燕VSすずちゃん。
戦闘描写書けないよ…。
それはそうと海燕君、そいつそこはかとなくヤバい奴なので縁切るならいまですよ!
護廷編に向けて加筆修正したいのですが、どこまでなら許せますか?
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誤字脱字、行間を詰めるくらい
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表現を変えるくらいならok
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数行くらいなら付け足しても、まぁ、いいよ
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大筋変わらないなら好きにどうぞ
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ガッツリやれ!話数が変わっても構わん!!
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今のままでいいから更新はよ
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黒歴史だろうと残しとけ