ヒフミちゃんアーカイブ 作:煮豆
「あなたたちは……ハナコさんとヒフミさん……?」
女子生徒の名前は、
本来のトリニティの白い制服と反するかのようなその黒い制服は、正義実現委員会の一員である証だ。
近づいてきたマシロに、ヒフミは緊張で汗ばんだ手を握りながら笑いかける。
「こ、こんにちは……」
「あ、はい。こんにちは。えぇと……これはどういう状況なんでしょうか?」
ヒフミが窓を開けておいたおかげで今はそれなりに換気されているが、煙が未だ残る誰もいない教室。
ヒフミとハナコが囚われている牢屋。
突然それらの情報を叩きつけられたマシロは、まだ状況を把握しきれていなかった。
「ついさきほど、ペンギンと名乗る方が正義実現委員会を襲撃してきたんです」
今回の騒ぎはさも自分は関係ないとばかりに、ハナコが一応は事実である出来事を語り始めた。
嘘をつく時は真実を交えれば信憑性が増すとも言うが、嘘などつかずとも、真実を一部伏せるだけでもじゅうぶん効果はある。
「ハスミさんは、逃げたその方を追ってどこかへ行ってしまわれましたね。なので今は私たちしかいません」
「ペ、ペンギンですか。変わった名前の生徒もいらっしゃるのですね……」
そうじゃないのですが……。
あまりに素直すぎるマシロの反応に口を挟みたくなったヒフミだったけれど、そうじゃないとは? と聞き返されたら困るので、おとなしくお口にチャックをした。
実直かつ素直な性格であるマシロはハナコの言ったことをすっかり信じ込んでしまって、納得したように頷いている。
「教室の惨状についてはわかりました。では、お二人はどうして牢屋に? ハナコさんはまあ、想像がつきますけど……」
ヒフミはアズサやハナコと違って、あまり問題は起こさない方だ。
マシロが疑問に思うのも自然な流れだった。
「いや、というかさっきから気になっていたのですが……ヒフミさんはなぜ紙袋を頭に? なにか深い意味があるのでしょうか?」
「え。あっ」
ハナコが当たり前のようにヒフミと見破って対応してきたためにヒフミ本人もすっかり忘れてしまっていたが、そういえば正体を隠すために紙袋をかぶっていた。
そう。正体を隠すために、かぶっていた……はずなのだが。
「あ、あの……なぜこれをかぶっているのに私がヒフミだってわかって……」
「え。いえ……わかりますよね? ヘイローもそうですが、銃だってヒフミさんと同じものですし……あと、その特徴的なバックを見れば誰だってわかると思います」
「あぅ……い、言われてみれば……」
顔を隠したくらいでは意味がない。数々の指摘を受けて、ようやくヒフミはそのことを自覚する。
アズサはヒフミと違ってこんなバックは背負っていないが、過去、あのガスマスクをつけた状態で正義実現委員会と交戦したことがあった。
つまるところ、二人とも初めから正体バレバレだったのだ。
「それでヒフミさんは、なぜ牢屋の中でそんな格好を……」
「そ、それは……」
「ヒフミさんはこの紙袋をかぶったまま敷地内を徘徊して、頑なに外そうとしなかったので捕まってしまったんですよ」
「ハ、ハナコちゃん!? きゅ、急になにを……!?」
とんでもない言いがかりだった。
ヒフミは思わず抗議するように声を荒げてしまうが、ハナコはなぜか「ふふっ」と誇らしげに胸を張っている。
こころなしか『うまく誤魔化してあげましたよ』と主張しているかのようだ。全然うまくないが。
「……そういうことでしたか。私はてっきりヒフミさんは、もう少しまともな方だと思っていたのですが……残念です」
「あ、あうぅ……」
ヒフミの名誉がどんどん傷ついていく……。
しかしその犠牲の甲斐あってか、誤魔化すことに成功したようだった。
これで誤魔化せてしまえるのもどうかと思うが……紙袋をかぶっただけで正体を隠せると思い込んでいたヒフミに言えることではなかった。
「わかりました。つまりお二人は、この教室の惨状とは関係ないということですね……でしたら、私は先輩の支援に向かいたいと思います。お二人は、そのまま牢屋の中で待機していてください。あとでもう一度ハスミ先輩に確認して、処遇を決めさせていただきます」
「は、はい。わかりました……」
自身の銃である巨大な対物ライフルを軽く背負い直しながら、マシロは踵を返す。
なんとかやり過ごすことができた安心感から、ヒフミは密かにほっと息を漏らした。
それからさきほどのやり取りのこともあり、ヒフミはそっと紙袋を外して、バックの中にしまい直す。
紙袋をかぶっただけで正体がバレないなどと思い込んでいた過去の浅はかな自分とは、これでおさらばである……。
「では、また
にゃー……。
このまま立ち去ってくれればよかったのだが、不意にそんな鳴き声が鳴り響いたことで、立ち去る寸前だったマシロの足が止まった。
(ね、猫ちゃん……!?)
その声の主は、ヒフミとハナコの後ろに隠れていた子猫だった。
薄暗く冷たい空間にいることに不安を覚えているのか、覇気のないずいぶんと小さな鳴き声だったが……マシロの足が止まったということは、あちらまで聞こえてしまっていたということだ。
マシロは立ち止まった状態で、キョロキョロと辺りを見回し始める。
「……今の鳴き声は……猫? いったいどこから……気のせいか、牢屋の方から聞こえたような……」
正確な位置まではわかっていないようだが、明らかに訝しんでいる。
ヒフミはサーッと顔を青くした。
このままでは、猫が牢屋の中にいることがバレてしまう。
いくらマシロが素直な性格だと言っても限度がある。ここに猫がいることがバレてしまえば、言い逃れはできない。
ふと背後を見れば、子猫は縋るようにヒフミの制服に前足をかけ、ヒフミを見上げていた。
その仕草からは子猫が感じる不安がひしひしと伝わってきて、次にまたいつ鳴いたところでおかしくない状況だと理解するにはじゅうぶんだった。
もう、考える時間はない。
ヒフミは焦る思考のまま、不安そうに鳴き声を発しようとする子猫に合わせて、半ば反射で口を開いた。
「っ――に、にゃー……」
「……? ……え、っと……」
「……っ、にゃ、にゃぁ……にゃぁー……!」
「……ヒ、ヒフミさん……?」
猫が鳴こうとするたび、その鳴き声をかき消すように、ヒフミは猫の鳴き真似をした。
あまりの羞恥心に顔がタコのように真っ赤になってしまっていたが、背に腹は代えられない。
ヒフミは目をギュッと瞑りながら、とにかくマシロに本物の猫の鳴き声が届かないことだけを祈って、何度も猫の鳴き真似をし続ける。
マシロは目を点にしてヒフミを見つめ、いつも余裕を保っている印象があるハナコも珍しく驚いていた。
そんな二人の反応は瞼を閉じたヒフミには見えていなかったが、奇異の視線で見られてしまっている感覚は嫌でも伝わってくる。
穴があったら入りたい気持ちでいっぱいだったが、それでもヒフミは愚直に猫の鳴き真似をし続けた。
「にゃー……にゃぁ、にゃぁぁっ……」
「…………な、なるほど?」
猫になり切ったヒフミをしばし眺め、マシロは納得したような納得していないような、よくわからない感じに首を傾げた。
「えぇと……さきほどのはヒフミさんの鳴き声だったんですね。正直、どのような意図があって突然そのようなことをしたのか私にはさっぱりなのですが……牢屋に猫を入れるなんて非人道的なこと、正義実現委員会の人がするはずないですしね。事実は小説より奇なり……ということなのでしょう」
「あ、あうぅ……」
なんでこんなので騙されてしまうのか。あんまりにも素直すぎないか。
そう思ったヒフミだったが、これだけ恥ずかしい思いをした苦労がせっかく報われたのだ。余計な口出しはしないように努めた。
「あ、電話が……失礼します」
ブー、ブー、とマナーモード特有のバイブ音がかすかに響いたかと思うと、マシロが自身の端末を取り出して、それを耳元に当てた。
『マシロ! 今、手は空いていますかっ?』
電話口から叫ぶようにして聞こえてきた声は、ハスミのものだった。
時折銃声も混じっていることから、交戦しながらかけてきたようだ。
「はい。いつでも行けます。どこに向かえばいいですか?」
『第11校舎へ! 現在、そこから北の位置でアズサさんと交戦しています! 支援を!』
「了解しました。すぐに第11校舎へ向かいます。狙撃ポイントに到着次第、先輩の端末にワンコールだけ通話をかけます」
『お願いします!』
トン、と画面をタッチして通話を切ると、マシロは今度こそヒフミとハナコに背を向けた。
「では、申しわけありませんが私は仕事がありますので、また後ほど」
対物ライフルを背負っているとは思えない身軽さで、マシロは急いで教室を後にする。
その足音が聞こえなくなった頃を見計らい、残された二人と一匹も牢屋を出た。
「な、なんとか誤魔化せましたね……これで逃げることができそうです。行きましょう、ハナコちゃん」
「にゃー♪」
「…………」
湯気が出そうなくらい顔が熱いのを自覚しながら、ヒフミは子猫を抱えて出入り口へ向かった。
ハナコも上機嫌にニャーニャー鳴きながらその後をついてくる。
この頃になるとほとんど換気されきっていて、煙はほとんど残っていなかった。
「とりあえず、子猫を飼い主の子に届けましょう。その後は……アズサちゃんのことを、どうにかしないと……」
正体が割れ、真正面から正義実現委員会とやり合っているアズサはもう、なにをどうやったって言い逃れはできないだろう……。
だけどアズサはヒフミの大切な友達だ。見捨てることなんてできない。
「あれ……? ……なにやってるのよ、あんたたち」
「え……コ、コハルちゃん? ど、どうしてこんなところに……」
マシロとの遭遇をやり過ごせたことで、油断していたのだろう。
ちょうど教室を出たところで、廊下を歩いていた小柄な少女に見つかってしまった。
ピンクの髪とツインテール。そして正義実現委員会所属の者と同じ黒い制服を着ていることが特徴のその少女とヒフミは、知り合いだった。
彼女の名前は下江コハル。
正義実現委員会と同じ制服を着ていることからわかる通り、元々は正義実現委員会の所属だったのだが……今の彼女は正義実現委員会ではなく、ヒフミと同じ補習授業部の部員だ。
「こんなところって、ここは正義実現委員会の由緒正しき教室よ? 私は正義実現委員会の一員なんだから、ここにいたって不思議じゃないでしょ」
「あら? コハルちゃんは、補習授業部にいる間は正義実現委員会として活動できないんじゃありませんでしたか?」
「う、うるさいっ! 心は今も正義実現委員会なの! べ、別にその、子猫のことについてハスミ先輩に相談しにきたとか、そ、そういうわけじゃないから!」
そういうわけらしかった。
聞いてもいないのに事情を全部説明してくれたコハルを眺め、ヒフミは苦笑する。
「そ、それより、あんたたちは正義実現委員会の教室でなにをしてたのよ。っていうか、なんか妙に煙臭いような……」
「あ、あぅ……そ、それは……」
「……? その子、さっきヒフミがモモトークで言ってた子猫よね? ふーん……見つかったんだ」
一見するとまるで関心がなさそうな感じだが、よく見るとコハルの頬は安心したように緩んでいる。
素直に心配していたと言えない微妙なお年頃だった。
「あ、は、はい。見つかったというか、なんというか……」
「……? なによ。はっきり言いなさいよ」
ヒフミの言葉を濁すような態度にコハルが容赦なく詰め寄ると、代わりにハナコがいたずらを自慢するようにお茶目に笑った。
「正義実現委員会を襲撃して、誘拐したんです♪」
「…………は? 正義実現委員会を……襲撃?」
「ハ、ハナコちゃんっ……!」
コハルは元正義実現委員会で、事あるごとに正義実現委員会に復帰したいと公言している。
そんな彼女に正義実現委員会を襲撃したなどと告げれば、どうなるかなど目に見えていた。
「……はぁぁぁぁぁあああああああっ!?!?!? しゅ、襲撃!? 正義実現委員会をっ!? な、なにやってるのよあんたたちっ!!」
凄まじい大声が廊下に響き渡る。
子猫が驚いてビクッと一瞬飛び上がり、縮こまってヒフミの制服に顔を埋めていた。
チワワが大激怒しているかのようなコハルの様子に、ヒフミはあわあわと必死に対応する。
「ち、違うんですコハルちゃん……! そ、その、これには深いわけがありまして……」
「ふ、深いわけってなによ! こ、ここはトリニティの平和を守る正義実現委員会よ!? そこを襲撃する正当な理由なんて、トリニティの生徒である以上あるわけないじゃない!」
「あ、あぅ……こ、子猫がハスミさんに拾われたと聞いて……で、でも、素直に事情を話しても、きっと相応の対価を要求されるだろうからって、アズサちゃんが……」
「対価っ!? そんなもの要求されるわけないでしょ! 正義実現委員会よ!? 正義を実現するための組織よっ!? むしろ先輩たちなら、猫の安全のために頑張ってくれたからって、いつもの問題行動に目を瞑って感謝するくらいはするわよ!」
「あ、あぅ……」
紛れもない正論だった。正義実現委員会とは元よりそういう委員会である。
アズサの認識が偏りすぎていることには薄々気がついていたが……アズサがあまりに純粋すぎて、どうしても強く言うことができないヒフミのミスだった。
「まあまあ、そう怒らないであげてくださいコハルちゃん。ヒフミちゃんは私やアズサちゃんとは違って、襲撃には反対だったんですよ」
助け舟を出してくれたのはハナコだ。
ここまでずっとからかわれ続けてきていただけに、ヒフミは思わず目を瞬かせてハナコの方に振り返った。
なだめるようなハナコの口調にコハルは言葉を詰まらせつつ、不機嫌そうにサッと視線をそらして、唇を尖らせる。
「……で、でも、結局は襲撃したんでしょ。だ、だったら同罪よ、同罪……い、いや、それ以前に賛成だったっていうあんたに反論されたくないんだけど!」
「同罪……そうですね。元より私たち補習授業部は一蓮托生の身……試験で個人がいくら良い成績を取っても、一人がダメなら全員落第になりかねない、そういう集まりですからね。ですから、これは補習授業部全員の罪と言えるでしょう」
「いやあんたたち三人の罪でしょ!? 私を勝手に巻き込まないでくれる!?」
本当に正論である。こんな見に覚えのない大事件の罪を突然かぶせられてもマジで困る。
「て、ていうかアズサはどこ行ってるのよ。姿が見えないけど……」
「アズサちゃんなら、今は第11校舎の近くで正義実現委員会と交戦してるらしいですよ」
「はぁぁああああ!? こ、交戦!? 襲撃って、ま、まさか真正面からやり合ってるの!? 正義実現委員会とっ!? バカなの!? い、いや、バカだったわね! なんたって補習授業部だもん! バカ以外の何者でもなかったわね! バーカバーカ!」
その発言は完全にブーメランでもあるわけだが、気づいているのだろうか……。
「コ、コハルちゃん、ちょっと落ちついて……」
「フゥ、フゥー……! ……うぅぅ……! な、なんでこんなことに……」
「ふふっ……アズサちゃんが惹きつけている間にヒフミちゃんが侵入して、先に捕まってしまった私と子猫を助ける……そういう作戦だったんですよね? ヒフミちゃん」
「あ、は、はい。そ、そうですね。そういう作戦でした」
「作戦自体は成功してますし、さすがの手際ですね。牢屋の中でのヒフミさんの機転も、実に見事でしたし……」
「……牢屋の中? なにそれ。なんの話よ」
「ハ、ハナコちゃんっ……そ、その話は……!」
ヒフミは強引にハナコの口を塞いででも話が続くことを阻止しようとするが、その行動を察していたらしいハナコはするりとそれを回避する。
そしてハナコはうっとりするように頬に手を当てながら、ほぅっ、と熱がこもった吐息を漏らした。
「ヒフミちゃん、猫みたいに可愛らしく喘いでらっしゃって……ふふっ。とても可愛らしかったです♡」
「え……あ、喘いだ……? ね、猫みたいに……?」
「ハ、ハナコちゃんっ!? そ、そんな誤解を招く言い方は……!」
「にゃんにゃんするヒフミさんは、それはもう愛らしくて……思わず私もにゃんにゃん鳴かされてしまいました♡」
「にゃ、にゃにゃ、にゃんにゃん……? にゃんにゃんっ!?」
「あ、あぁ……ハナコちゃん……」
間違ってはいない。まあ間違ってはいないのだが、言い方が相当アレである……。
無論、ハナコのこれはわざとだった。
なにを想像したのか、あるいはナニを想像したのか……。
コハルは見る見る間に耳まで朱色に染め上げると、こちらもまた猫みたいな目になってヒフミを睨んだ。
「にゃにゃにゃっ……にゃ、にゃにっ、なにやってるのよあんたたちは! ね、猫みたいに喘いだ!? そ、それってそういうことよねっ!? ハ、ハナコはともかく……ヒ、ヒフミのことは結構真面目なやつだと思ってたのに……! も、もしかして真面目だからこそ? だ、だって普段真面目な人ほど、そういう欲が強いって本で見たことが……う、うぅ、じゃあやっぱり本当に……!」
「ち、違いますコハルちゃん! ね、猫みたいにというのは間違ってませんが、あ、喘いだというのとは少し違くて……!」
「う、うぁぁっ! ち、近寄らないで! へ、変態! 変質者っ! エロタイツ!」
変態も変質者もヒフミのお隣のハナコの方が全然当てはまるのだが、多感なお年頃であるコハルに猫(意味深)の話は刺激が強すぎたようである。
「あ、あぅ……」
見知った仲であるコハルから拒絶するように距離を取られてしまって、ヒフミはがっくりと項垂れる。
何気にエロタイツとか言われてしまったことも地味にショックだった。ただタイツ履いてるだけなのに、なんでそこまで言われないといけないの……。
そんなヒフミの様子にコハルは少々罪悪感が刺激されたようだったが、ブンブンと首を振って振り払うと、また睨むようにしてヒフミとハナコを見た。
「ふふっ。なにか、少し誤解させてしまったようですね」
意図して誤解させた張本人が悪びれもせずなんか言っている。
ただ、一応は誤解を解こうとしてくれているみたいだったので、ヒフミは口を挟まずに見守ることにした。
「私とヒフミちゃんはただ、一緒に牢屋の中にいただけですよ」
「牢屋に……み、密室に二人だけで……!?」
「……ふふっ。はい、そうです。出口が閉ざされた薄暗い部屋の中、素行の悪い女子生徒が二人……我慢できなくなってしまっても、おかしくないと思いませんか?」
「や、やっぱりそういうことじゃない! この変態コンビ!」
誤解を解こうとしていたのは勘違いだったらしい。
いや、きっと最初は本当にちゃんと解いてあげようとしたのだろうが、きっとコハルの妄想じみた反応に触発されて……。
まったくもって収拾がつかない。
ヒフミはまた目眩がして、ふらりと壁に寄りかかった。
(うぅ……助けてください、アズサちゃんー……)
きっと今も戦っているであろうアズサに助けを求めてしまうくらい、もういろいろとめちゃくちゃだった……。