サー・ケイがおっさんではなく、未だ30代半ばだった頃のお話。ギャラハッドが聖杯と最強聖遺物ロンギヌスを持ち帰る前からケイの胃痛ライフは始まったと言えるだろう。
ギャラハッドは円卓の騎士達が会議の際などに座る、円卓の席の1席…それも強大な呪いがかけられた13席に何事もなく座り、更には首都キャメロット近辺の川辺に流れ着いたとある選定の剣を抜いた事で、キャメロットに上京してから早々に最短ルートで円卓の騎士の1人に選ばれた。
ギャラハッドが引き抜いたこの選定の剣。実は聖剣の中でも神造兵器の1つに数えられる程の代物だったのだ。神造兵器とは読んで字の如く、神々や星が作り出した超ド級…いやオメガ級の超兵器であり、担い手を選ぶ代物である。この時代で有名な神造兵器を挙げるとすれば、キャメロットの城主でありブリテンの王であるアーサー王が担うエクスカリバー。ギャラハッドの父親が担う強度ならばエクスカリバーを凌ぐ聖剣アロンダイト。アーサ-王の甥であり、円卓の騎士の中枢を担うガウェインが担うエクスカリバー・ガラティーンである。
ギャラハッドが引き抜いたこの聖剣。実は円卓の騎士が結成される前にアーサー王に仕えていた騎士、ベイリンという男が担っていた物らしい。何でもベイリンが持っていたこの聖剣はアロンダイトのプロトタイプらしく、ベイリンが死去した後は行方不明と成っていたが…なんの因果かキャメロットに流れ着き、ギャラハッドが引き抜いてしまったのだ。
「この聖剣が神造兵器?そうは見えないけどな…どっちかと言ったら儀礼用じゃね」
紫の衣類に身を包み、腰にその聖剣を提げたギャラハッドは教室のような場所に居た。此処は唯の教室ではない。ランスロットの紹介、そして呪われた席に座った事と、選定の剣を引き抜いた事で円卓の騎士に加えられた騎士の一般常識皆無なギャラハッドに物事を教えるための教室なのである。そして、その教室の主人でありギャラハッドに物事を教える男こそ…
「王が円卓の騎士を結成する前、ぺリノアとの戦いで折れてしまったカリバーンも神造兵器だったが儀礼用のような見た目をしていたんだよ。あれも神造兵器らしいが、プロトタイプだな」
後に十数年に渡ってギャラハッドの手で胃痛に悩まされる事に成ってしまう中間管理職筆頭のケイである。この頃は未だ30代の為か若く青年と言えるだろう。
今は代名詞と言える聖剣エクスカリバーを使っているアーサー王であるが、昔はカリバーンと呼ばれる剣を使っていたのだ。このカリバーンであるが、アーサー王が王に選ばれる事に成った選定の剣であり…アーサー王はこの剣を引き抜いてブリテンの王と成ったのだ。しかし…ケイ曰くであるがアーサー王はそのカリバーンを今では円卓の顧問監督官であるぺリノア王との戦いで失ってしまった過去を持っている。
「王はぺリノア王との戦いでな、カリバーンを最大出力で使ってしまった。王の力にカリバーンの刀身自体が耐えられなくてな、折れてしまったんだよ」
と過去を思い返すケイ。今ではブリテンを無事に統一したアーサー王であるが、昔はそうではなかった。アーサー王はケイ、そして宮廷魔術師であるマーリンと共にブリテンを旅し、今では円卓に加わった者やベイリンのように今では配下を抜けた者達と共にブリテンを何とか統一したのだ。
「だから、お前もその剣にありったけの魔力を注ぎ込むな。王の二の舞に成るぞ」
ギャラハッドの抜いたこの聖剣がカリバーンと同じく、神造兵器のプロトタイプならば刀身が力に耐えられず砕け散る可能性が高い。そうなればギャラハッドは素手で戦うしか無いだろう、或いはナイフや盾で攻撃するしかない。
「わかったわかった。程々にしますよ、程々に」
「まったく」
ケイは知ってる。ケイは騎士であると同時にマーリンからそこそこ魔術を習っており、ある程度の魔術や魔力の使い方を習得している。手から火炎や温風を出したり、水の中で数日間活動できたり、自分の身体を大きくする事が出来るのだ。
そんなケイは先日、ギャラハッドが魔術の事を知りギャラハッドに魔術の基礎を教えた。元々、ギャラハッドの実母は高度な魔術…それも魔法に近い魔術を扱える魔女でもあり、その力でランスロットを惑わしてはギャラハッドを産んだのだ。母親が優れた魔女であり、ギャラハッドがお腹に居る時に何かをしたのだろうか?ギャラハッドの魔力はケイよりも遥かに高く宮廷魔術師マーリンやアーサー王に劣るとは言えとんでもない量を持っているのだ。その量はケイの約1000倍以上、規格外と言えるだろう。そんな規格外の魔力をプロトタイプの聖剣に注げ込めばどうなるか?間違いなく刀身は崩壊する。
「てか、俺が作ったジャムの反応はどうで?美味しいでしょ」
しかし…話を反らす為なのか、ギャラハッドは話題を変えた。
ジャム。それは現代日本人なら当たり前の加工食品であり、腐敗しやすい果物…リンゴ、バナナ、イチゴ等を砂糖や蜂蜜を加えて煮詰め、加工した食品だ。ペースト状で粘度が増しているが加工前と比べて保存が効く上に、ブリテンの主食とも言えるパン(この時代では白パンや全粉を用いた黒パン)に塗って食べれば美味しく食べられる。
ブリテンのパンは固く、味がなく、ギャラハッドはキャメロットに来て早々に不満だった。しかしキャメロットにはリンゴ、そして蜂が居たために蜂蜜は有った。故にギャラハッドは美味しくパンを食べるために蜂蜜とリンゴを用いてリンゴのジャムを開発。食事情の改革の一歩を進めたのだ。
「あれか?中々、美味だったぞ、マジでな。味気のないパンをガキの頃から食べてきたが本当に旨いな!!」
「あと、ケイ先生。痩せこけた土地を耕すために、海辺の町から貝…身をくり貫いた貝殻も取り寄せてくれません?貝殻を粉々に砕いて畑に撒いて混ぜれば、野菜に必要な栄養素を加えられるんだ」
ブリテンの土地は痩せこけた土地だ。作物も土地が痩せてるためか実りは薄く、肥料と呼べるのは堆肥位。そもそもブリテンに自生している野菜は人参に馬鈴薯と言った物が多く、多くの食物をランスロットの伝で輸入に頼っている程なのだ。
しかし…ギャラハッドがジャムを作ったように、順調にブリテンの食が向上すれば貿易予算を別の事に回すことも出来る。唯でさえ食料を輸入に頼っていて多くの予算を使っているが、それらを別の費用に回せれば国も発展していくだろう。
「ああ、任せておけ」
しかし、ケイは後に語る。同じく中間管理職であるアグラヴェインと共に、ギャラハッドの行った農業革命で胃を抑える事に成ることを。
「うっ旨い!!パンが…パンが此処まで変わるのですか!?味気の無いパンが!?私の今まではなんだったのだ!?」
金髪碧眼、歳はギャラハッドと同世代の騎士がそう言った。その人物は少女のように見えるが、一般的には男という事に成っている人物だ。その人物はアーサー王、だが彼は彼ではなく彼女である。そう、周囲には男として偽ってブリテンを統治しているのだ。そんなアーサー王…本名をアルトリアと言う少女の王は白いパンにリンゴジャムを着けて食べては、今まで感じたことがない旨さに…甘さに頬っぺたが落ちそうに成ってしまう。
「ああ…本当に美味しゅう。今までのパンは何だったのでしょうか?」
アルトリアと共にパンとジャムに舌鼓を鳴らし、喜ぶ女性が居た。彼女は美しいドレスを身に纏い歳は20代半ばと言った程だろう。彼女はグィネヴィア、アルトリアと同じ性別であるがアーサー王の妻であり王妃である。
「これを作ったのは誰だ!?いや、誰ですか!?」
「王よ。先日、円卓に加入したギャラハッドで御座います」
アルトリアの言葉に対し、答えたのは黒い髪で歳不相応に皺が刻まれた青年アグラヴェインである。アグラヴェインはアーサー王の甥であり、同時に円卓の1人に数えられているが文官として日頃からケイと共に財政関係で戦っているのだ。
だが、王は知らない。数日後、ハンバーガー、唐揚げ、ソーセージ等の代物を知り食の素晴らしさに目覚めてしまう事を。
「「ギャラハッドに今すぐ臨時報酬を!」」
「王に王妃!?いや、確かに美味しいですが」
唯でさえ予算に限りがある。アグラヴェインは頭を抱え、少し考える。確かに味気の無いパンを美味しく食べられるジャムとやらは画期的なアイデアだ。だが、だからと言って臨時報酬は上げては財政難な今では厳しいと言える。
「ならば…食文化の発展をギャラハッドに任せ、自由に使える予算を多めにギャラハッドに割り当てる。これでどうでしょう?一応、監督としてケイを着けます」
だが、アグラヴェインのこの提案がケイの胃をお先に地獄に送ることと成るのだった。
「おいおい…マジかよ」
数日後。キャメロットの中にある少し開けた荒れ地が有ったが、そこは僅か数日で整地された簡易的な農園に生まれ変わっていた。
養分が無く、痩せこけた土地に粉々に砕いた貝殻、少し遠方の火山灰を混ぜた特別製の肥料で養分を与え、畑には馬鈴薯、人参、小麦粉、菜の花が植えられている。そして畑の側には西洋蜜蜂が飼育された巣箱が数箱あり定期的に蜂蜜は収穫できる。更に少し離れた所にはギャラハッドが他所から持ってきた野生のリンゴの木々が植えられており、年に1度はリンゴを収穫できる。
「これをお前1人でやったのか!?たった数日で!?」
ケイは驚きながらギャラハッドに問う。ケイだって多忙だ、ギャラハッドに物事を教えるのは勿論のこと文官としての忙しい書類作業に書類での外交など忙しい日常を送っている。故に、ギャラハッドの農園開発を手伝う事が出来なかったのだ。
「アンタが魔力の使い方を教えてくれたお陰だよ。ケイ先生」
「いや、なんでそこで魔力が出てくるんだ?」
農園開発と魔力、なんの因果関係が有るのか分からない。しかし、ギャラハッドはそれを教えてくれた。
「魔力を放出する魔力放出を使ってな、飛んだんだよ。お陰で何十キロ先まで一瞬で行けたぜ」
「はっ!?」
魔力放出。それは魔力を身体から放出させ、攻撃等に転用させる技術だ。しかしケイはそれを知識として知ってるだけであり、魔力不足で大胆な放出は出来ない。まして、その魔力放出だけで空を飛ぶなんて事は考えられない。理由は単純、数秒飛んだだけで並みの術師は魔力切れで動けなくなってしまう為だ。だが、ギャラハッドの持つ規格外の魔力が有れば充分に可能だろう。
「お前…魔力放出だけで飛んだのか!?」
「意外と気持ちいぞ。アイアンマンみたいでな」
「アイアンマンって誰だよ!!」
しかし、農園を作るにしても水源は必要だろう。
「水はどうした?」
「魔術で水を探知、そして見付けて螺旋丸で穴を掘って魔術で引っ張って井戸にした」
確かに水を見付け引っ張る程度ならケイも魔術で出来る事だ。
「あと、今はルーン魔術を応用して刻印を刻んだ所を目印にして、瞬間移動でその目印まで転移したり物資を送る術も覚えようとしてるんだよな。卑劣様の飛雷神みたいに」
「卑劣様って誰だよ!!」
卑劣様という謎の人物の名前を聞いたが、その前にギャラハッドが言った事にケイは非常に興味深くなる。確かに魔術での転移や転送は可能だ。だが、それは非常に高度な技術であり神話の魔女や魔法使い位じゃないと出来ない。少なくともケイでは無理だ。何故なら物や自分を転移させる際に転移場所を指定させ座標を指定、それから転移させる為だ。
だが、ギャラハッドの考案した方法では座標を指定する必要が無い。ルーン魔術のように刻印を刻んだ場所を指定させ、それを目印として飛ぶためだ。もし、これが実用化出来れば物資の転送は勿論、戦争でも速やかに伝令を伝える事が出来る。
(コイツ…どんな発想力してるんだよ。確かにそれなら高度な座標指定の演算なんてしなくて良い。奇襲や不意討ちにも使える。戦争以外でも物資の速やかな輸送も出来る。それにルーンと同じく素早く刻印書けるなら、転移先も直ぐに増やせる)
しかし、ふとケイは気付いた。思えばショベルやスコップ、鍬や鋤は有るが本当にそれらだけで井戸を1人で掘ったのだろうか。
「お前…ショベルとスコップだけで井戸を掘ったのか?畑の仕事しながらか?」
「螺旋丸だよ。いやー、やっぱり螺旋丸や霊丸、黒閃は憧れるよな。やっぱり、魔力を覚えたら使わないと」
ラセンガン?レイガン?コクセン?聞いた事がない単語を延べていくギャラハッドの言葉に対しケイは首を傾げる。ケイはこれまで魔術や様々な事に対して深い知識を持つがそんな言葉は知らないし聞いたことも無いのだ。
「いやギガブレイク、サンダガもありだな」
「いや、まてまて俺はそんなの知らないぞ!?マーリンの野郎も知らない筈だ」
すると、ギャラハッドはニヤリと笑みを浮かべて左手の掌を上に向ける。すると莫大な魔力がギャラハッドの掌から放出され、その魔力が乱回転していき綺麗なハンドボール程の球体に成ってしまった。
「はっ!?」
視認出来る程の魔力を魔力放出で出し、それを更に乱回転させて掌に留め圧縮させる。これだけでどれだけ大変な事なのかは魔術師でもあるケイは非常に理解している。しかし、その大変な事をギャラハッドは一瞬でこなしてしまったのだ。
すると…ギャラハッドは近くにそこそこ大きな岩を見付ける。そしてその岩まで歩いていき、その魔力の塊を叩き付けた。
「これが螺旋丸だ!!」
するとその岩は一瞬で消し飛んだ。同じ大きさの魔力をぶつけるより遥かに威力があり、ケイは今後の事を思い…胃を抑えるのだった。
次回…プリティーボーマンが登場。
ケイの手で料理番を行っていた手の綺麗な少女は厨房で料理を作っていた。
ギャーさん「ソーセージは良いものだ!!」
豚の腸に豚の挽肉を詰め込むギャーさんに出会う。
王「うまし!!」
ケイ「ああ…アルトリアがどんどんグルメに成っていく」
ヒロインどうする?期限はブリテンオリンピック開催まで
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ぐだ子
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モーさん
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ガレスちゃん
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キャストリア
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正妻戦争勃発!!
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その他