初代国際オリンピック実行委員長ギャラハッド主催による、ブリテン代表選考会。それに参加する為にモルガンはオークニーにある居城を旅立つ。
「外出するのは実に久し振りですね」
テニスラケット、バドミントンラケット、卓球ラケットが入ったラケットケース。そして数日分の着替えと練習着が入ったボストンバッグを担ぎ、モルガンは城を後にする。
選考会は未々時間がかかるが、オークニーはブリテンの北東にある島々。先ずはブリテン本土に向かわなくてはならない。その為には定期船に乗るか、魔術で飛んでブリテン本土に向かわなくてはならない。だが、此処で1つモルガンにとって想定外の事を言っておこう。
ブリテン国は常にギャラハッドの手で毎日変化し続けている。そう、ケイとアグラヴェインが胃潰瘍を発症する程に毎日…物凄い速度で変化し続けているのだ。
「国鉄?オークニー駅?数ヶ月前にはこんなの無かったぞ?」
モルガンはオリンピックの事をラジオで知った際、日々の時間を球技の鍛練に注ぎ込んできた。買い物等を夫や従者の人々に任せていたのでモルガン様は知らないことであったが、いつの間にか国鉄とやらが開通していたのだ。
国鉄。それは未来では常識の交通網として普及している鉄道の事である。鉄道と言うのは非常に便利な交通網だ。レールの上を蒸気機関や電力で動く列車が通行し、誰かが線路に飛び込んだり、想定以上にスピードを出さなかったら事故は先ず起きない。その上、軽いエネルギーで長距離を移動できるので物質の運搬が可能なのだ。
『運搬とかに馬車や荷台付きの自転車で荷物を運ぶのは時間がかかるな。良し、鉄道を開通させよう』
そして国鉄が出来たのはギャラハッドのお陰である。
しかも恐ろしい事にギャラハッドのムチャ振りに付き添われてきた優秀なブリテンの職人の皆様の技量は既に限界突破している。職人の皆様はギャラハッドの設計図を既に形にするだけのスキルを手に入れており、あっという間に線路と汽車と電車は完成したのだ。
汽車は蒸気機関で動く、言わばSLの事だ。既に蒸気機関の原理は古代ギリシャの時代に考案はされており、ギャラハッドは未来知識と組み合わせ…蒸気機関でタービンを回して発電しつつ、蒸気機関の力と電気で汽車を動かす今で言えばハイブリット汽車を発明。
電車は電気の力で動く列車の事だ。ギャラハッドは生ゴミ問題を解決する為に発明した、生ゴミをエネルギーにする生ゴミ発電を応用し…生ゴミで出来たガスをガソリンのように用いて発電して動くエンジンを開発。そのエンジンで動く生ゴミ電車も開発したのだ。
そして現在1つしか存在しないがアークリアクターで動く王室専用電車もあるとか。
鉄道の発明。それはブリテンに夜明けをもたらし、交通網と物量を加速させたと行っても過言ではないのだ。
「ギャラハッド…本当に恐ろしくて有能な子」
国鉄オークニー駅の前に立ち、モルガン様は唖然として苦笑いを浮かべてしまう。だが、定期船に乗らずに列車で移動できるのならば座ってるだけで選考会が行われるキャメロットに到着できるので楽チンと言えば楽チンである。
「しかし…どうやって汽車とやらに乗れば良いのだ?」
モルガン様はかれこれ数年間。オークニーから出たことはない。なので最近出来たばっかりの国鉄の乗り方は勿論、切符の買い方も分からない。モルガン様、人生初めての経験だったのだ。
駅の入り口と思われる所には制服を着た駅員が立っており、彼等が駅の構内に入る人達から切符を拝見している。そして切符を見せて許可を貰った人々は駅の構内に入っていく。どうやら、駅に入って列車に乗るためには切符を買う必要が有るようだ。
だが、此処で立ち止まってても仕方がない。モルガン様は勇気を振り絞り、駅員に話し掛ける事にしたのだ。
「そこの者。キャメロットに行きたいのだが、切符とやらは何処で買えば良いのですか?」
「キャメロットですか?そこに切符売り場が有りますので、そこで買ってください。キャメロットまでは距離が有りますので寝台列車を利用してもらう必要が有ります」
鉄道が完全に普及したばかりの日本でも、東京から大阪でも朝に出て夜に着くのは当たり前。東京から九州まででも次の日に到着することが常識だったのだ。
ブリテンの北東に位置するオークニーから、首都であるキャメロットは今から出発しても1日かかるのだ。だが、馬車では数日以上かかっていたオークニーからキャメロットまでの道のりが僅か1日に短縮されたのは非常に有難い。空いた時間を利用してキャメロットの練習場で、最後の調整を行うこともライバルとなる乙女や野郎達の情報収集も行う事が出来るのだから。
「ふむ…寝台列車ですか」
「はい。ですが、寝台列車は宿泊施設も兼ねてますので料金は高いです。通常運賃と宿泊料金として部屋ごとに異なる料金を頂く事になります」
だがキャメロットに向かうための寝台列車を利用するためには別料金が発生する。先ずオークニーからキャメロットまでの運賃…距離が距離の為か運賃だけでも結構取られそうである。更に寝台列車は宿泊する所も存在しており、その宿泊施設の利用料金も取られてしまうのだ。
「オークニーからキャメロットまでの運賃は13セステルティウス(1万3千円)。宿泊料金は部屋によって異なりますが、スイートルームで14セステルティウス(1万4千)、2人部屋は10セステルティウス(1万)、上等な1人部屋は7セステルティウス(7千円)、1人部屋は5セステルティウス(5千円)と成ります。
一番安い料金プランとしては雑魚寝の部屋があり、此方は運賃だけで利用できます。ですが、他の人が隣同士にいるような感じですね」
一番高いスイートルームは日本円に換算すれば1万4千円。二人部屋は1万円。上等な1人部屋は7千円、1人部屋は5千円。そして雑魚寝の車両には運賃だけでご利用できると言う料金プランである。
「宿泊する際の食事は部屋によって異なるのか?」
「いえ。食事はレストラン車両でとってもらいます。そこは車両自体がレストランやカフェバーと成っており、お好きな物をご注文できますよ。勿論、お弁当も販売してまして宿泊部屋や自由席で座って景色を眺めながら食べて頂くのも出来ます」
なお、宿泊プランと食事は一切関係ない。レストランやカフェバーと成っている車両で料理を注文して食べたり、お弁当を購入して自室や自由席の車両で景色を眺めながら食べることも出来るのである。
「ふむ。分かりました」
そしてモルガン様は切符を購入。勿論、お金は有るのでスイートルームを選び、モルガン様は寝台列車に乗ることにしたのである。
いざ、駅の構内に入り列車がやって来るホームにやって来たモルガン様。だが、彼女は危うくそこで腰を抜かしかけてしまったのだ。
「なっ…なんなのだ!?あの鉄の巨大な竜は!?あれが列車と言うものなのか!?」
汽車に乗るためのホーム。そこでは巨大で長い列車がモルガン様を出迎えた。竜や大蛇と思っても無理は無いだろう、なにせギャラハッドが提案するまでこのような代物は幻獣種でしか有り得なかったのだから。
ポッポ~ーー!!
汽車の汽笛がホームに鳴り響く。
「ただいまより、寝台列車 キャメロット方面行きの乗り込み手続きを始めます。お乗りのお客様はご乗車お願いします」
アナウンスが鳴り響き、モルガン様は汽車に乗り込んだのであった。
寝台列車のスイートルーム。そこはそこそこの広さをしており、ベッドやソファー、シャワールームにトイレも完備された部屋であった。客室では唯一、冷蔵庫も完備されており冷蔵庫の中には瓶ビールや瓶詰めされたジュースも入っていたのだ。
「此処がスイートルームか。しかし、移動するホテルと考えたら立派な物ですね」
ソファーに腰掛け、モルガン様はスイートルームの車窓から見える景色を眺める。未だハイブリット汽車は発車してないが、車窓からは少し離れた町に出掛けるだろう…子連れの家族が反対側のホームで列車を待ちながら何やら話をしていた。
「家族ですか…」
モルガンの息子と娘は今、王都キャメロットで円卓の騎士として活躍している。連絡は一切取ってないし、向こうも取りたいとは思わないだろう。
「む?」
モルガン様はある事に気付いた。それはスイートルームのテーブルに、今朝の朝刊が置かれていたのだ。どうやら、サービスとして置いてくれたのだろう。
オリンピックの代表選手と成ることを決意した日から鍛練を積み、ギャラハッドが考案したニュースを発信する新聞など読んだことがなく、興味本位でモルガン様は新聞を手に取る。
『ギャラハッド卿の愛馬オグリインパクト、念願の無敗の三冠馬に!!ライバルだったテイエムドトウ(騎手 ゼルレッチ様)を打ち破り、世代最強を証明する!!』
『モードレッド卿、
『ガウェイン卿のギンシャリボーイ。スタートで痛恨の出遅れ!!120億の馬券が紙クズに変わる!!
ギンシャリの馬券を買ったケイは『ギンシャリ…立ち上がるのが速すぎるんだよ!!』とコメントを残しており、開幕早々寿司ウォークを繰り出してスタミナが無くなったのが敗因かと思われる』
モルガン様は馬券は買わないが、競馬の欄もしっかりと見る。何故なら妖精騎士の情報が載っている可能性が有るためだ。
「ほう、ガウェイン。120億事件か」
息子の失態を鼻で笑い、モルガンはページを捲る。
そうしてると、再び汽笛が鳴り響き…寝台列車はブリテンに向けて発車した。
「優雅で良いものですね。汽車の旅は」
優雅にギャラハッドがブリテンに新たに持ち込んだ珈琲とやらを呑みながら、モルガン様は車窓から景色を見て優雅な一時を過ごす。だが、モルガン様はブラックコーヒーのスッキリとした味わいと苦味が苦手だったのかミルクと砂糖をたっぷりいれてもらってカフェオレにしてもらって呑んでいる。
「此方…本日のおまかせディナーです」
「おおう!!」
食堂車ことレストラン車両では食事も取ることができ、モルガンはそこで優雅におまかせディナーを注文。出てきたのはライス、トンテキ、サラダ、ニジマスのムニエル、コーンポタージュと言った有り様であった。
「うまい!!」
「国鉄のメニューは食堂車もお弁当も含めまして、全てギャラハッド卿が考案してくれております」
モルガン様…食堂車のご飯に御満悦。
「夜の景色も絶景だな…」
スイートルームに戻り、購入したアイスクリームを食べながら車窓を眺める。車窓からは夜の自然、そして満天の星空が眺める。満天の夜景、そして美味しいアイスクリームを食べる…なんて幸せな列車の旅だろうか。
選考会当日。
キャメロット運動球技公園テニスコート前。
「ケイ先生エントリーしないのか?」
「しねーよ。おっさん嘗めんなよ。俺はお前達みたいに若くないんだよ、水泳自由形の代表だけで充分だわ」
「いや、アグラヴェインが先生をサッカー代表と野球代表にエントリーしてたけど」
「アグラヴェイン!!お前、球技嫌だからって俺に投げるな!!」
そこではギャラハッドとケイが受付を行っていた。彼等が受付しているのはテニスブリテン国代表選手を選ぶ選考会の受付であり、男女含めて多くの選手が既に立候補しているのだ。
男女混合ダブルス、男女混合シングル、男女別シングルの受付を行っている。その中でギャラハッドはキャストリアとペアを組んで男女混合ダブルスにエントリーしており、円卓の皆様も多くが自由に好き勝手にエントリーしてるのだ。
「ギャラハッド。今、円卓で何人がエントリーしてんの?」
「男女混合ダブルスは俺とアルちゃんペア、ベディヴィエールとバゲ子ペア、ガウェインとモードレッドペア。
男女混合シングルはモードレッドとボールス、ぺリノア、アルちゃん。
男女別シングルは俺とケイ先生、アグラヴェインを除いたほぼ全員」
「円卓…暇人ばっかだろ」
オリンピックで目立ちたいのか、円卓の皆様は好き勝手にエントリーしている。しかし、アグラヴェインは団体競技である野球とサッカーにはエントリーしてないとか。
「あとマーリンも何かに出たいって言ってたから
「…ギャラハッド…その種目って?」
「アイアンマンレース。だって、誰もやりたがらないし」
「……聞かなきゃ良かった。まあ、マーリンざまぁ」
話ながら受付を行うケイとギャラハッド。その時だった…
ゾワリ…ととんでもないオーラをギャラハッドは感じる。オーラを感じ、オーラの方を見ればテニスラケットを右手に持った美女がゆっくりと此方に向かって歩いてきたのだ。
その美女はアルトリアを大人の美女にし、ポニーテールにしてそこそこ巨乳にしたような美女…そうモルガンであった。
モルガンはピンクのポロシャツ、黒いショートスカートという勝負服を纏い、受付を行っているギャラハッドとケイの前にやって来た。
「私はモルガン。代表選考会にエントリーがしたい。全てのテニスの種目が希望だ」
「モルガンさんですね。だけどダブルスは相方が要るんだよな」
そう、ダブルスに出るためには相方が必要だ。その為か、ふむ…と考え込むモルガン様。
(なんでモルガン此処にいんの!?てか、代表に立候補してるの!?)
一方のケイは冷や汗をかきながら唖然としている。
「じゃあ、コイツ」
モルガンはケイを指差した。つまり、ケイ先生はモルガン様からダブルスの相方に指名されてはしまったのだ。
「なんでこうなるのぉぁぉおお!!」
コートに響くアラフォーの階段を突き進むケイ先生の叫びが響く。ケイ先生の手にはラケットが握られており、準備万端であった。
「ふん!!」
そんなケイ先生の後ろではモルガン様が華麗なサーブを放ち、サーブは高速回転がかかってるのかスライダーな変化球を起こし、見事に相手のコートに突き刺さる。
モルガン様の代表を目指す戦いは始まったばかりだ。
次回!!テニスの王女様
モルガン様の戦いが過激を増していく!!
なお、ギャラハッドの鉄道制作記録はテニスの王女様が終ってから。
ヒロインどうする?期限はブリテンオリンピック開催まで
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ぐだ子
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モーさん
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ガレスちゃん
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キャストリア
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正妻戦争勃発!!
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その他