蘇りの巨人   作:遠山園二

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進撃の巨人34巻の最終話からの続き。
最終話の後を描いた小説。



01話 104期生同窓会

蒸気船の汽笛が海上全体に響き渡り、いよいよ到着が近い。

僕ら6人は船の甲板に出ていて、船首にいる。

みんな、船の進む先へと顔を向けている。

 

コニー「やっと島が見えてきた。一週間の船旅ってのは長すぎるぜ。まあ、待ちに待っただけに、また島へ帰ってこられってのはありがたく感じるよなあ」

 

それぞれが島を見ながら感慨にふけり、何を語らない。

あまりにあの島で多くのことがありすぎたから。

でも、その空気を破ってコニーが唐突に、いたずらっぽく笑う。

 

コニー「ところで、おまえら同窓会って知っているか」

ジャン「同窓会? そりゃなんだ」

コニー「なんでも島の外の世界じゃあ訓練を終えて卒業したあとでみんなで集まってパーティをするらしいんだ。その同期の集まりのパーティを同窓会っていうらしい。そしてこれが重要なんだが同窓会ってのは結婚相手を探す場所らしい」

 

どこか違う気がするんだけれど、僕の気のせいかな。

鉄柵によりかかっていたジャンは意外だという表情だ。

 

ジャン「コニー・・・結婚したかったのか」

コニー「あたりまえだろ。俺たちはみんな結婚してていい歳じゃないか。でも誰も結婚してない。俺は早くかわいい娘と結婚して・・・早く家族をつくって。早く母ちゃんに子供を見せてやるんだ」

 

みんなそれは気にしてるんだから、言わないことが暗黙の了解ってやつだったのに……

あっさりと破られてしまった。

 

コニー「ジャン、おまえはどうなんだよ。結婚するような相手はいるのかよ

ジャン「いいや。探してる最中だ」

 

うんうん、だよなぁとコニーはうなづく。

 

コニー「よし同窓会に参加決定だな! そしてライナー、おまえは当然、相手がいないよな!」

ライナー「いや、待て。勝手に決めつけるな」

 

コニーがライナーとジャンの首を抱きついて満面の笑みだ。

 

コニー「よっし、競争だぞ。誰が一番最初に結婚するか。負けねぇからな。同窓会が楽しみだぜ」

 

僕は平和を感じていてコニーは笑っていたけれど、ジャンとライナーは割と本気な表情であった。

 

ピーク「あんたたち、あくまで私たちの仕事は世界連合の大使として和平を実現させることだからね。あんまり気を抜かないで」

 

コニーは軽く返事をして二人から離れ、ジャンは方すくめて、ライナーはまじめな顔になる。

さすが彼女はしっかりしてるな。

男たちの腑抜けた空気を整えてしまった。

その彼女…ピークが僕のほうへと遠慮がちに近づいてくる。

そして小声で話しかけてくる。

 

ピーク「ところで私がその同窓会にいったらお邪魔かしら」

 

あれ、意外に参加したい感じなのかな?

 

アルミン「あの戦いをともに戦ったんだから君も同じ仲間だよ、当然行ってもいいと思うよ。同窓会と言っても104期生だけっていうわけじゃない。君の分は僕がとりもってあげる」

 

彼女はぐっと小さく握りこぶしをつくった。

どうしてかわからないけれど思いのほか、喜んでいるみたいだ。

僕のそばにいてじっと様子をうかがっていたアニが口を開いた。

あ、悪そうな顔をしている。これはアニが悪いことするときの顔だ。やな予感。

 

アニ「ピーク。あなたは島の訓練兵と同期といっていい…と私は思う。だってともに戦ったから。ともに戦うよりも深い絆はないから、だからあなたは同窓会に参加すればいい。

ピーク「あら。ありがとう」

 

アニ「仕事ができる女は結婚が遅れるって聞いたことがある。

私は前からあなたを心配してた。

あなたは仕事ができるから、結婚できるかなって思っていた。

このまま独身じゃないかって。

いまのところその予感は当たってる。

遅れたら、間に合わなくなる急ぎなさい。」

 

薄ら笑いを浮かべるピーク。

 

ピーク「昔と違ってずいぶんと余裕があるようねアニ……」

アニ「そうね。おかげさまで。間に合わなくなる」

 

ぴきっと怒りマークのようなものが笑顔のピークの顔に入る

 

ピーク「間に合わなくなんて…」

アニ「そう。まだ間に合うんだから、どこかの馬の顔……じゃなくって、馬の骨を追いかけるのはほどほどにするのがいいんじゃないかしら」

 

ピークは、気勢をそがれて、代わりに驚きの顔でアニを見ている。

意外にアニは人のことをよく見ていて、人間関係に敏感だ。

気は強いけれど繊細なところがある。

 

もう一度、汽笛が鳴り響く。

汽笛は甲板に、海上に、大空に、そして島にまで届いただろう

 

さて、僕らが島へやってきた理由だ。

いま僕らの前の前にあるパラディ島、そこに住む人々は世界に対して強い敵意を向けている。

僕らはその敵意が実現して戦争にならないように、

世界連合の大使として交渉して和平を実現すること。

世界連合側に立って交渉する、僕らは世界連合の代表だ。

 

世界人口の8割が失われた天と地の戦いからは3年の月日が流れている。

人類が受けた傷は深く、まだまだ生々しい。

そしてあの戦いの真っただ中にいたのば僕らだった。

 

交渉はうまくいくだろうか

アニを見ると不安そうにしている。

僕も不安だけれど、僕はそれを隠して強がって、アニに笑いかけることにした。

 

船が接岸すると、そこには護衛の兵士たちが待っていた。

護衛の兵士の後ろについていく。

スーツケースを引く僕らは、観光客のようだ。

ライナーが落ち着かないように、きょろきょろと何かを探している。

 

ジャン「ヒストリアはここにはいねえみてぇだぞ」

 

立ち止まるライナー。顔が……。

そんなにショックを受けなくたって……。

 

ジャン「あと6時間後には会えるんだから、楽しみに待っとけ」

ライナー「ああ、あと6時間か。待ち遠しいな」

ピーク「だから私はたちは和平交渉をしにきたの。忘れないで」

 

ミカサのいる町から飛行機が出ていて、3時間後に飛行機で島の中央へ行く。

島の中央には城があり、そこまで飛行機に乗っている時間が3時間。

城にはヒストリアがいて和平交渉をする予定となっている。

和平交渉よりも、ヒストリアに会いたい、というのはライナーの気持ちと一緒だった。

もちろんミカサにも会いたい。

ジャンやコニーもそうだろう。

 

良い予感に心を弾ませていると、緊迫感ある声が突如響いた。

堤防が近づいたときのときのことだった。

「心臓をささげよ!」

体が揺らされるほどの声量だった。

僕らが声のほうへ急ぐと、堤防の麓の広場には何千人という兵士がいる。

そして堤防の上に何人かの兵士がいる。

そのうちひとりが演説を始めた。

 

演説は、ピクシス指令が壁の上から演説したときとどこか似ていた。

響き渡る演説の声は聞き覚えのあるものだった。

 

「あの聖なる戦いから3年間、我々は苦しんできた。

 なぜか。

 ちからがなかったからだ。

 ちからなきものは駆逐される。それがこの世界の運命だ。

 

 しかしちからを失い、みじめだった我々の3年間はついに終わりを告げる

 我々はちからを得る

 世界と戦う力だ。

 すなわち。

 巨人。

 明日、巨人が蘇る!

 明日、この場所で、君らはエルディアのちからの復活を見るであろう

 巨人が蘇り、偉大なるエルディア国は世界に勝利する」

 

歓声と雄たけび。泣くものもいる。

心臓をささげよの大合唱がはじまる。

地を揺らすような合唱だ。

 

演説をした人物を見上げて僕は愕然としていた。

僕らは6人全員が彼を知っていた。

彼の名前、それは、

フロックフォルスター。

死んだはずの彼が生きている。

どうして。

 

続く

 

 


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