蘇りの巨人   作:遠山園二

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あらすじ

フロックの「巨人が蘇る」という不穏な発言に嫌な予感をおぼえつつも、
ミカサのもとへと向かうアルミンたち。
一同は自分たちが敷設した線路上を走る列車に乗車して旅を楽しむ。
気を緩ませてミカサに再開できることを喜びながら、あの丘の木のもとへと向かう。
しかしここでもおかしなことが起きている。
丘の木の根元にあるエレンの首が納められていた墓が掘り返されているのだった。


02話 なんであいつが生きている

ありえない。

いるはずがない。

だって彼は死んだのだから。

 

ジャン「なんであいつが生きている」

 

僕ら6人が見上げる堤防に立っているのは、

フロック・フォルスター。

3年前に死んだはずの人物だ。

フロックは天と地の戦いのとき、

地ならしを完遂させるために飛行艇に銃弾を放ち、

飛行艇の燃料タンクに穴をあけた。

そのときミカサがとっさに立体起動装置のワイヤーを射出して、

ワイヤーは彼の首筋に刺さり、彼は絶命した。

彼が残した言葉をいまも忘れられない。

 

「行くな。

 行かないでくれ。

 島のみんな。

 殺される。

 俺たちの悪魔。

 それだけ

 希望」

 

僕ら6人はフロックが息を引き取るのを見ていたのだ。

そんな彼が、いま目の前にいる。

フロックが演説を終えて堤防を降りていく。

僕とジャンとライナーは思わず、彼を追いかける。

波止場があり、水上を滑走路替わりにする飛行艇が停泊している。

フロックは水上飛行艇に向かっている。

ジャンが彼の名前を呼ぶ。

 

ジャン「フロック。フロック! おまえなのか!?」

 

フロックは気づいて振り返った。

いちべつして、にやっと笑う。

彼が水上飛行艇に乗りこむと、プロペラが回転を始める。

すぐに飛行艇は海面から浮き上がり、空に舞い上がっていく。

僕らはそれを見送った。

 

ジャン「本物に見えたがどういうこった」

 

僕にも彼がフロックと同一人物に見えた。

近くにいる護衛の兵士に彼が誰なのかを確認してみる。

 

アルミン「キミ、さっき演説をしていたあの方の名前を聞きたいのだけれど」

「はっ。あの方は調査兵団団長、フロックフォルスター殿です」

 

本物か……?

生きていたんだ。フロックが。

104期の同期である彼が生きていたことを僕らは本来ならば喜ばなくちゃいけないんだろう。

しかし素直に喜ぶことができない。

 

ジャン「やつが本物だとして、あの演説の内容……」

ライナー「ああ。そうだな。やつは、巨人を蘇らせると演説していた。あれはやばいぞ」

 

そうだ、まずい。

あの演説は戦争の引き金になりかねない。

それほどまでに巨人が蘇らせるという演説は危険だ。

 

天と地の戦いで人類は8割死滅した。

人類は絶滅寸前にまで追い込まれたのだ。

その人類を追い込んだ敵である巨人をフロックは蘇ると演説した。

これでは世界中から軍を向けられても、おかしくない。

 

ライナー「なあアルミン。巨人が蘇るなんてことがあるのか」

 

ない。

それはエレンが道で語った通りだ。

 

世界では巨人の目撃情報が毎日のよう上っている。

僕らは巨人の専門家だから、世界連合からバックアップをうけて

巨人の目撃情報の真偽を確かめている。

いっけんずつ丁寧に。

その結果、巨人がいたためしはない。

巨人はもういない。

この地上から完全にいなくなったんだ。

巨人を見た、というのは見間違えや、勘違いによるものだ。

恐怖が彼らに巨人を見せている。

それだけに巨人の恐怖が根深いことを証明しているけれど。

 

アルミン「僕らはフロックの演説の真偽を確かめる責任がある」

 

みんな無言でうなづく。

そうだ。

それが巨人復活が嘘でも本当でも、僕らは確かめる必要があるんだ。

あの戦いを生き残ったものとして。

 

コニー「俺たちの調査兵団の団長はお前だよ、アルミン。何をすればいいんだ。教えてくれ」

 

アルミン「まずは……ミカサのところへ行こう」

 

 

 

 

 

 

僕らは軍港からミカサのいる旧シガンシナの駅舎に行くため、鉄道に乗り込む。

汽車の揺れの中で、ジャンが手鏡で髪を整えている。

 

ピーク「この先に、女学生がいるのかしら」

ジャン「いるさ。俺たちは島中から見られているのだから、

がっかりされねえように、こうしてみだしなみもきっちり整えなくちゃなんねえ

コニーお前もだぞ」

 

ジャンは妙にはしゃいだ様子だ。

 

コニー「俺には整える髪なんてないぞ」

ライナー「あとで手鏡を貸してくれ」

ピーク「……緊張感がまるでなし。

    さて……ちょっと失礼」

 

ピークが席をたつ。

お手洗いに行くんだろうなあ。

楽しいな。

楽しめる時がいつ終わるかわからない。

だから楽しめるときは楽しんでおかなくちゃいけない。

緊張感のない汽車内で過ごしながら、正午になり、壁がなくなった旧シガンシナ区についた。

僕とエレンとミカサの故郷だ。

僕らが下車すると、護衛兵が荷物を運んで待ってくれている。

僕はお礼を伝えてから、久しぶりのシガンシナを眺めた。

(すべてはこの町から始まった。

 壁がなくなってずいぶん印象が変わってしまったけれど)

しばらく眺めていると昔の町の痕跡があって、記憶が徐々によみがえってくる。

 

ジャン「何つっ立ってるんだ。さあ行くぞ」

コニー「まずはミカサん家にいくんだよな」

アルミン「いいや。彼女がいるのは家ではいないんだ」

 

僕らが行くのはエレンが幼いころに気に入っていた丘だ。

丘までは遠くない。

自然に湧きあがる思い出に、ひたりつつ、

はやる気持ちを抑えて、丘まで歩いた。

たぶん、あそこ角を曲がれば、原っぱがあって、そのずっと先に丘があるはず。

そして曲がる。

昔見た風景だった。

丘があった。

 

アルミン「あれ」

 

遠くから見るが、誰もいない。

 

コニー「いねぇじゃん。だからミカサん家に先に行けばよかったんだよ」

 

体が自然に走り出していた。

あの木の下にエレンがいるんじゃないかって。

いるわけがないけれど。

わかっていても。

体が走ってしまった。

小さく息が弾む。

 

アルミン「これは……!?」

 

丘の頂上に行く手前の斜面に、石が転がっている。

頭のなかが、思い出から現実に切り替わった。

転がっている石を手に取る。

石には字が掘られている。

ミカサがエレンに向けた言葉だ。

これは墓石だな……。

どうして、こんなものが転がっているんだろう……。

石を持ちながら、頂上の木の根元まで進む。

嫌な予感がする。

頂上に着き僕は見たくないものを見る。

木の根元、そこに掘り返された穴があった。

エレンが本来そこに入っている穴の中は、空っぽだった。

 

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