蘇りの巨人   作:遠山園二

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進撃の巨人34巻の最終話からの続き。
最終話の後を描いた小説

この話は第3話になります。



03話 エレンが生きている?

エレン……。

いったい君はどこに行ってしまったんだい。

何もない穴が僕にひとりであることを訴えてきて、

僕は孤独を感じていた。

 

アルミン「どこに行っちゃったのさ」

 

思わずつぶやく。

歩いていたみんなが僕に追いついてきた。

みんなはこの丘が僕らの思い出であることを知らない。

 

ジャン「ミカサはどっか行っちまったのか」

コニー「だから家だよ家。ミカサん家」

 

掘り返された穴をことをみんなに伝えようとすると、

僕らを呼ぶ声が聞こえてきた。

ミカサ……?

振り返ると丘の麓に、黒髪の女性が立っていた。

いつの間にいたのか、女性は淑やかにお辞儀をする。

ミカサ、ではないな。

よく見れば。ああ、あの人か。懐かしいな。

3年前の戦いで一緒に戦った、勇敢で強い人だ。

 

コニー「ありゃあミカサか? でもおかしいな。なんか違うな」

ジャン「なんかっておまえ。全く違うだろう」

 

女性は近づいてきて立ち止まり、もういちど深くお辞儀をする。

彼女はヒィルズの国のキヨミだ。

 

キヨミ「お元気でしたか、世界を救った英雄の皆様。

    お久しぶりです。

    あなたがたもミカサ様を探しに来たのでしょう」

 

ジャンが返事をしてうなづく。

 

キヨミ「ミカサ様は一昨日より行方知れずとなっています」

 

ーーー

 

『時間はさかのぼり、一昨日の夜。ミカサの家で』

 

深夜、私は暗闇の中にいた。

寝床の上で横になっている。

完全に目が覚めている。

直前まで寝ていた。

それにもかかわらず、体はすぐにでも動ける状態にある。

寝間着姿にもかかわらず、

 

(いつでも戦える)

 

自分の心と体の状態に驚く。

あの戦いから3年間、いつも寝起きが辛かった。

同じ家に住んでいるキヨミに早く起きろと起こされてばかりいた。

それがこの夜は3年前のと同じように、いつでも戦える目覚め。

何が起こっているの?

 

……外で危ないこと?

 

危険な空気がある。

そっと寝台をおり、窓のそばに忍び寄る。

ここは二階。

見下ろすと。

車が走ってる……。

ライトの光が、小さい。

彼らは目立たないようにしてる。

何かを隠してやろうとしている。

車をよく見ると軍用車で調査兵団のものだ。

13台連なって、私の家の前を通りすぎていった。

小さなライトの一列が遠のいていく。

光が向かっていく先には……。

あの丘だ。

 

考える間もなく、体が動いていた。

寝具を隅に寄せて、寝台を持ち上げる。

立体起動装置が置いてある。

3年前にキヨミが寝台の下に立体起動装置を隠していた。

いざというときに必要になるかもしれないと、言っていた。

立体起動装置を装着す るのは着慣れた服を着るよりも簡単だった。

 

別の部屋で寝ているキヨミに気づかれないよう家の外へ出て、

車のエンジンをかけて発進する。

エンジンの音は大きい。

きっとキヨミも気づいただろう。

これはキヨミがとても大切にしている車だ。

もしかしたら戦いがあって壊されるかも。

……ごめんなさい。

 

ライトを消しながら闇夜を走行していく。

車ならばほんのわずかな時間でいける。

見えた。

軍用車のライトが道の先に連なっている。

見えた時点で車を止める。

車のドアも静かに閉めて、壁の隅をつたうように急ぐ。

 

よくない感じが大きくなっていく。

警戒しながら角を折れると、軍人たちがあの丘の木のところに集まっている。

見張りが20人ほど。

近づくのは……難しい。

 

あの丘の木の下に3人の男が集まって立ち、地面に顔を向けている。

あそこは……エレンが眠ってる場所。

何をするつもりなの?

男たちが地面の土に機具を突き刺す。

シャベルだ。

……。

掘っている!

男たちが土を掘り返しては周りにばらまいている。

あいつら……エレンを盗むつもりだ!

 

考えるよりも先に体が動く。

足は駆け、もと来た道に戻っていく。

キヨミの車だ。

私は座席に飛び込み、キーを回して再びエンジンをかける。

見つかることなんて気にしていられない。

エレンがまたいなくなってしまうことに比べたら。

ミカサ(あんな思いはもう二度としなくて済むと思っていたのに)

 

車は跳ねるように発進して、すぐにあの野原に飛び出た。

アクセルを全開に踏んで、あの丘の木…エレンのもとへと突き進む。

前にいた兵士をかわし切れず一人ひいてしまう。

 

発砲する音が車内にまで響く。

でも止まれない。

エレンが盗まれることを阻止しなくてはいけない。

銃声が3回聞こえて、4回目で車体がぐらぐらと揺れる。

銃弾がタイヤに当たってパンクした。

 

ハンドルから手を放して、立体起動装置のトリガー部分を正面のガラスに打ち付ける。

ガラスが粉々になり、降りかかってきた。

降りかかった割れたフロントガラスを無視して、すかさずワイヤーを射出する。

狙いは兵士の身長よりわずかに上。

木の幹へとアンカーが突き刺さる。

あの3人の男たちがこちらに振り返った。

私はトリガーを引いてワイヤーを巻き取り低空でとぶ。

見張りの兵士2人をなぎ倒してエレンのもとへいく。

あの男のひとりがすでにエレンの首をもっている。

立体起動装置は一瞬にして私をエレンのいるところへと連れて行ってくれた。

エレンを盗もうと抱えていた男に蹴りを加える。

男はうめき声をあげてエレンから手を離す。

エレンが地面に落ちる前にわたしはエレンを腕に抱える。

立体起動で樹上のなるべく高い位置へと移った。

 

樹上から見下ろすと、兵士たちがよろめきながら立ち上がろうとしている。

私の自分の腕の中にいる人を確認する。

エレンだ。

取り戻せた。

少し心が冷静になるのがわかった。

腕のなかに抱かれた、その顔を見る。

 

「エレン……」

 

首だけになったけれど確かにあの人だ

あのときから何も変わっていない。

 

………

……

………

 

何も変わっていない!

朽ち果ててない!

あの時のままだ。

 

いまにも生き返りそうだった。

エレンは天と地の戦いの最後に首をはねたときと全く同じ顔だった。

エレン…。

生きてる…の……?

 

「待て! 銃を打たないほうがいい。アッカーマンに暴れさせるのは危険だ」

「あれだ。やるぞ。急げ」

 

声が聞こえた途端異臭がした。

ガス兵器。

下を見ると兵士たちが噴霧器のそばでマスクをしている。

とっさにエレンがガスを吸わないようにかばう。

私も腕で自分の口元を覆う。

逃げ場はないか。

立体起動装置が使える場所がない。

兵士が大勢いて警戒している

逃げ場は……。

考えている最中に野原が真横になる。

落ちているんだ。

ガスで体がやられた。

そのことに気づいたと同時に、地面に体が叩きつけられた。

 

ガスマスクをつけた兵士が近づいてきた。

兵士は私の腕からエレンを取り上げる。

やめ…て……。

エ…レン……。

連れて……行かない……で…。

最後に見えたのは、眠っただけのように閉じたエレンのまぶただった。

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