目が覚めると、そこは洞窟でした。★☆
眠い。とても眠い。寝よう。
地面がめちゃくちゃ硬かった。
(ここ、どこ?)
確か僕、変な声に竜種がどうとか言ったと思ったら失敗して小竜とかいうのにされて……
意識がゆっくりと覚醒する。嘘、覚醒してない。まだぼんやりしてる。
僕は加藤瑠衣、14歳。包丁を持った男に突き飛ばされて、僕のデッキが道路に飛んでいって、それを取ろうとして……車に撥ねられて死んだ、よな?
周りをキョロキョロと見回してみる。どこもかしこも、ゴツゴツした地面が奥まで広がっており………
あれ?なんで地面がこんなにゴツゴツしてるの…って、え?
よく見たら…ここって、洞窟?
なんで洞窟……と腕を組み、混乱しながらも思考を巡らせようとして、ふと気づく。
腕の色、おかしくない?んでもって、なんか視点低くない?
今になって、自分に起こっている異変に気付いた。
お尻の辺りに変な感触があるんですけど。前はこんなに視野広く無かったよね?足の感触も何だかおかしい気がする。
自分の体の異常に焦りつつ、どうにかして自分の姿を確認できないかと周囲を探すと、後ろに巨大な湖があったことに気付いた。それを覗き込むと、
紫と緑の毒々しい体躯。
体の至る所に付いた赤と黄色の球。
僕のよく知る、飢えた牙持つ毒竜の姿がそこにあった。
(スターヴ・ヴェノムだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)
アイエエエエエ!?スターヴ・ヴェノム!?スターヴ・ヴェノムナンデ!?
ゴボボーッ!(歓喜)
……………………………ふう。
さてと、落ち着いて情報を整理しよう。僕は車に撥ねられ、死んだ。それは間違いない。そして、死ぬ直前に変な声が聞こえて…気が付いたらこの洞窟らしき場所に居た。それで自分の体がおかしいことに気付いて、その姿が【スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン】だった…という訳だな。なんかちんちくりんになってるけど。
うん、どゆこと?誰か説明してくれー…
そう願っても、ここには誰も居ないから応える声ももちろん無い。だが、1つ分かる事がある。
(転生、ってやつだよな、これ…)
死んだと思ったら竜になっていたなんてありえない事、夢か転生したかじゃないと説明出来ない。つまり、僕は今運良く生きていたが昏睡しており夢を見ている、または死んでしまったが転生した、ということだ。
それさえ分かってしまったのなら……
(楽しい洞窟探検の始まりだぜー!)
「グルルァ♪」
僕は今この瞬間を、全力で楽しむことにした。
さて。楽しむとは言ったものの、数時間(時計があるわけじゃないから知らんけど)探索したが、地面と草と変な石しか見つからないな。まあ、石はなんか怪しく光ってて、ゲームなんかのレアな鉱石っぽい感じがするけど。それを確認する方法はないしなぁ。
どうしたものか…なんて考えていたら、ふと、1つ疑問に思った事があった。
腹が減らない。
かなりの時間が経ったはずであるが、腹の虫が鳴る気配は無い。
ドラゴンはお腹が減らないのだろうか?生まれ変わった以上、自分の体の事は知っておかなくてはならない。とは言ったものの、誰かが教えてくれる訳でも無いのだが。うーむ、どうなっているのだろうか…。
《援。身体が植物で構成されているため、栄養分の摂取は不要です》
どわああああああ!?何だ今の!?
急に頭の中に声が響いてきたので、びっくりしてしまった。
体が植物?ほんと?というか今の声、ここに転生する前に聞こえた声でしょ?
いや、声とは少し違う、か?聞こえるというより、言葉が浮かび上がる感じ、か。しばらく待ってみても、新たに声が聞こえてくることは無い。何なんだ一体。
(だが、植物、か……)
今のが本当だとしたら、僕は自ら栄養を作り出せることになる。もちろん、水などが必要になるだろうが。
水は最初にいたあの湖でいい。問題は光合成だが…洞窟でも普通に草生えてるし、問題はないと信じたい。もしかしたら、あの植物が日光を必要としないやつで、あれだけが生きてるという線もあるが。それで死んだら草生えるわ。
とりあえず、自分は食事を必要としない物と考えよう。懸念していた事項の1つが消えたので、ほっと一安心だ。
暇なので、草を食べる事にした。とにかくやることが無いのだ。
ちょっと齧ってみたが、体に異常は診られなかったので、もっしゃもっしゃと貪り食っている。僕の体は植物らしいので、偶に湖で水を飲んだり浴びたりしつつ。
暇潰しとして色々試して見たのだが、できる事は全部やり尽くしてしまった。
デッキの回し方、メタ対策を考える。
捕食植物とレッドアイズ、いくつかの環境デッキの回し方しか知らないので、すぐに終わった。
自分でオリカを考える。
100枚くらい作った所で飽きた。
戦闘の練習をしてみる。
相手が居ないし戦い方など知らん。こちとら日本人やぞ。平和主義者やぞ。
一日中寝たりもしてみたのだが、後日眠れなくなったので本末転倒である。
そんなこんなで、暇の極みに辿り着いた僕は草を食っている。草生えるわ。2ヶ月くらい前にも言ったぞこのネタ。
あと、僕に排泄は必要無いようだ。植物だからね。水は蒸散で放出されるからね。
だが、1つおかしい事がある。
さっき言ったように僕は草を食べてるのだが、それは何処へ行ったのだろうか。
《援。『変化者』により身体へと変換されています。》
どわあああああああああ!?
この声か!また驚いちゃったよ……悔しい。
それはそれとして、カワリモノって何?僕の事言ってるの?
《援。ユニークスキル『変化者』です。『変化者』の効果………
万物変化:あらゆる物の性質及び形状・色などを変化させる。ただし、性質変化には変化前の対象及び変化後の性質の情報が必要。対象に抵抗された場合、成功率は大幅に減少する。
効果の対象は、有機物、無機物に限らず、スキル、魔法にも及ぶ。
自己変化:魔素を使い、自身を自在に変化させる。他の物体を自身と融合することで、その物体の性質を得る事が可能。
数値変化:あらゆる数値を増減させる。増減の幅は相手との力量差で決まる。
以上の3つが主な能力です》
へえ。 ……………………強くね?
何それ。何でも好きな物に変えられるって事?そこらの石を金に変えられたりすんの?
《援。対象の性質を変化させる場合、変化前と変化後の対象の構造及び構成している物質の情報が必要です。》
何それ(絶望)そんなの知らないよ、どうしろって言うんだよ。
《援。自己変化で取り込むことにより、ユニークスキル『支援者』による解析が可能です。また、『支援者』のスキル「森羅万象」により、一度見た対象の情報を取得可能です》
何それ(驚愕)支援者すげー。ってか、さっきから出てきたその、支援者?ってどんなスキル?
そう聞くと、その声は支援者のスキル内容を教えてくれた。
思考加速:通常の500倍に知覚速度を上昇させる。
解析鑑定:対象の解析及び、鑑定を行う。
並列演算:解析したい事象を思考と切り離して演算を行う。
詠唱破棄:魔法等を行使する際、呪文の詠唱を必要としない。
全効率化:身体の動き、魔法等の威力及び効果、解析、鑑定の速度等を強化する。
森羅万象:この世界の、隠蔽されていない事象の全てを網羅する。
うん、ヤバい。かなり有能だよ、支援者さん。これからは支援者さんって呼ぶわ。
流石に森羅万象は一度目にした物しか分からないらしいが、逆に言えば一度目にした物のどんな事でも解ると言う事だ。こんなんチートやチーターや!
支援者さんのスペックは十分にに理解出来たので、色んなことを聞いてみた。
世界の言葉がどーたらこーたらって言ってたけど、死ぬ前の声と支援者さんは別者……別スキル?なのは分かった。
僕が今まで食べてた草がヒポクテ草って言うのが分かったり、それを取り込んだせいで自分の体が回復薬になってたり、その辺の岩と魔鉱石を取り込んで、ハードなボディを手に入れたり……あと、最後のユニークスキル『毒殺者』についても。
そんなこんなで、僕は毎日毎日、色んな事を試していった。
そんなある日。僕は最初の湖に戻ってみることにした。ここに転生してきた頃と比べて、体がちょっと大きくなっている。支援者さん曰く、この洞窟には危険な魔物が居るらしい。脱出する前に、ある程度強くなっておきたい。
閑話休題。
この湖に戻って来たのは、ここの水を僕に取り込もうとしているから。僕は空気中の魔素をエネルギーにしてるみたいだから、水自体は必要無いんだよね。なら何でそんな事をする必要があるのかというと、どうやら水属性に耐性が得られるらしく、多く取り込めばその分耐性も強くなる様なのだ。水属性を無効化出来るようにまで吸うつもりである。
そして、俺とお前(水)で超融合!しようとしたその時、
突然、湖の水がゴッソリ減った。
(……………およ?)
不審に思い、湖の中心に目を向けてみると、
水色の、ぷるぷるとした生き物がいた。
(……………………………およよ)
あいつが水を飲んだのか?と観察してみる。するとどうだろう。
突如として水を吹き出し、こちらへ向かって突っ込んでくるではないか。
(………………………………………待てや)
ちょっとー、シエンシャ=サーン?何あれ。
思考加速を発動し、支援者さんに聞いてみる。
《……………援。スライムだと推測します》
あら、支援者さんが困惑してる。珍しいなー。
……………………………うん。現実逃避はやめようか。
このままだと僕に直撃コースなんだけど、どうにかならない?
《………『変化者』で最もダメージを減少させるように身体を変形。さらに、数値変化で対象の速度を減少します。耐性も含め、予想ダメージ軽減率、41%》
それだけやってもあんまり減らねえ!?だがそれが最適ならそれしかない!頼む支援者さん!
思考加速を解除し、衝撃に構える。
腹にスライムがぶつかり、吹き飛ばされる。かなり押されてしまっているが、あまりダメージは無く、いつ止まるのかな、なんて考えたのも束の間、
ドン、と、何か、壁の様な物にブチ当たった。
「RRRRRRYYYEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!?!?!?」
腹を挟まれ、頭を打ち、想定外のショックに意識が点滅する。スライムの勢いが止まり、ボヨンボヨン、と転がり、自分はドサッ、と地面に倒れる。
(………………………きゅう)
意識が遠退いていく。
(聞こえるか?小さき者よ…そして……っておぬし、大丈夫か?)
何か声が聞こえたが、僕が気付く事は無かった。解せぬ。
支援者は、大賢者さんとはちょっと能力が違います。思考加速は500倍と半分ですが、全効率化というスキルを追加しました。変化者の能力とか、おかしくないといいんですけど。