今日は、珍しくあまり忙しくない日。
メイド隊だけでなく狼女たちも張り切って業務をしてくれたおかげで、紅魔館全体の作業がかなり早く終わった。
そのため私は、部下たちだけの報告だけではなく、この私自身の目でみんなを見ることにした。
フランドール・スカーレット。
かつて、この紅魔館のムードメーカーでありこの紅魔館の中でもずば抜けて明るかった彼女。
それが今では、光も届かない地下の特別室に押し込まれている。
「ねーマリアー。今日は、何をする?」
どうやら今日は、久々に意識(?)が覚醒しているみたいだ。
壁にいると思われる”マリア”に視線を向けて、会話続けている。
・・・私はそれを、ただ黙ってみている。
この状態のフラン様は本当に気が触れている。
話しかけようものなら、速攻で頭を『キュッとしてドカーン』されるのだ。
何度か私がこの状態のフラン様に話しかけたのだが即爆殺されては満足するまで破壊され続けていた。
「えーっ、それはもう飽きたー!えっほんと!?じゃあがんばる!!」
そういうが、彼女の体は何も行動を起こさない。
(壊れてる・・・)
そう、完全に壊れてしまっている。
何がどうなって、こう壊れてしまったのかは分からない。
だけど、きっとそれはフラン様がこうなるほどの否定しがたいことだったのだろう。
・・・私は、できるだけ物音を建てずにフラン様の特別室を出るのであった。
「・・・?マリア、今、誰かいた?ううん!気のせいだったみたい!!」
十六夜 咲夜。
・・・マリアの唯一の娘であり、この紅魔館の最も・・・完璧で瀟洒なメイドだった娘。
そんな娘が、ただマリアの部屋の快適そうな椅子に座って、マリアがしていたであろう手袋を抱きかかえながらただ何もせずに座っていた。
「咲夜ちゃん、気分は・・・大丈夫じゃなさそうっすね。」
「・・・アンナお姉ちゃん。」
そんな咲夜ちゃんも、私だけに反応してくれる。
外見が似ているということもあり私と咲夜ちゃんはある意味では姉妹のような関係だった。
一緒にふざけてマリアのお説教を食らったことがあったし、一緒にマリアにサプライズや感謝の言葉を贈ったことがあった。
・・・いつの間にか、本当にお姉ちゃん呼びが固定されたときは驚いたなぁ。あの時マリアは、「本当に私の娘になる?」って言ってたし・・
「お仕事は・・・もういいの?」
「今日は、みんな頑張ってくれたっす。だから早く終わって・・・今は咲夜ちゃんの様子を見に来たっす。」
そう言いながら近づいて頭を優しく撫でてあげる。
身じろぎも抵抗もなく、ただそれを受け入れている咲夜ちゃん。
「お母様とマリアお姉ちゃんは、始めて会ったときとっても怖かった。」
「そうっすねぇ、そんなこともあったっす。」
咲夜ちゃんが教会の刺客として送られ、私とマリアと戦ったあの時。
「紅魔館に受け入れられて、とっても暖かくて・・・安心した。」
あの時は大変だった、みんながみんな咲夜ちゃんの警戒心を解こうと時間と暇を見つけてはマリアに好きな物とか聞いて・・・
最期には、咲夜ちゃんを中心としたパーティーが毎日のように起きてたってけ・・・それでマリアがしかりつけるまでがワンセット。
「お母様に抱きしめられたとき・・・あぁ、これが幸せなんだって実感した。」
咲夜ちゃんは・・・マリアが生きていて、咲夜ちゃんが成長してもずっとマリアとハグすることが好きだった。
それも、不器用な愛情表現って言う事は紅魔館全員が知っていたのでほっこりした表情で見ていたことも多かった。
それでバレて見つかったときは、顔を真っ赤にした咲夜ちゃんに追いかけまわされたっすねぇ・・・
「でも、でもっ・・・」
ボロボロと、また咲夜ちゃんの瞳から大粒の涙がこぼれだす。
「もう、あの頃の紅魔館はないっ・・・あの頃のお母様は・・・もういないっ。いないんだっ・・・」
悔しそうに歯を食いしばりながら、顔を伏せて涙を流す。
私はそれをただ相槌を打ちながら頭をなでることしかできなかった。
「どうして、どうしてお母様が死なねばならなかったのっ・・・どうして・・・・・・かえしてよぉ、まりあを・・・おかあさんをかえしてよぉっ!」
ついに大きな声をあげて泣き始めてしまった。
娘を失った母の心の傷は大きい・・・とはよく言うが、その逆も・・・母を失った娘の心の傷はこれまた大きかった。
紅 美鈴。
紅魔館を護る狼女たちの警備隊の隊長であり、紅魔館正門の門番だ。
そんな彼女は、ベットに無理やりに拘束されつつも、私をにらみつけている。
「美鈴、気分はどうっすか。」
「・・・最悪。せめて腕の拘束を外してくれない?暇で仕方なくって・・・」
「そう言ってこの前、拘束具を破壊して鍛錬してたの知ってるんですよ。」
私がそういうと、ばつが悪そうに顔をそむけた。
おそらくまた懲りずに鍛錬しようとしていたのだろう。
「はぁ・・・まったく、なんでまたぶっ倒れるまで鍛錬するんすか。」
「じゃあ私には何が残るというの!!」
急に怒りを爆発させ、こちらを睨みつける美鈴。
その怒気だけでも人を殺せそうだ。お生憎様で、私は死なないが。
「マリアさんを護れなかった時点で、私にはもう価値なんてない!!じゃあせめてもの残った紅魔館を守るために力をつけようとして、何が悪いんですか!!」
「その守るための力を得るために、ぶっ倒れてメイドたちの子たちや狼女たちに迷惑をかけるんすか?」
エンドテーブルの上に飾られている花瓶に刺された花を飾りなおしながらそう冷酷に言い捨てる。
その一言は、今の美鈴にひどく突き刺さる言葉だからだ。私に向けられていた人殺しができそうなオーラもなりを潜めていく。
「そ、それは・・・」
「・・・分かったでしょ。今の貴女は迷惑ばっかかけているってこと。だから、天井のシミでも数えながら体を休めて、気持ちと考えを整理なさい。」
しっかりと釘を刺しておいて腕の拘束具を解く。
「それと、そこのメイドにいえば暇つぶしにはちょうどいい小説を持ってこさせるから。絶対に鍛錬するんじゃないわよ。」
「・・・・・・ごめんなさい。」
「いいってことっすよ。」
パチュリー・ノーレッジ。
いつの間にか住み着いたって言われているけれど、その実は誰よりもレミリアお嬢様とマリアの恩を受けていた人物。
「こひゅーっ・・・こひゅーっ・・・」
そんなパチュリーは、天井を見上げながら過呼吸で苦しんでいる。
だけど、今日は随分と『軽い』みたいだ。
「調子はどうっすか?」
「あまりいいとは言えないわ。けれど、今までよりかはずっとましよ・・・」
こひゅーっと呼吸を続けながらそういう。
流石に何回も喘息に陥ったことがあるから、随分と落ち着いて大人しくしている。
どこぞの鍛錬馬鹿の門番とは大違いだ。
「・・・んで、まだ探してるんっすか?例の呪文」
「いいえ、死者使役の魔法しか見つからなかったから・・・書き換えて死者復活の呪文にしている最中・・・実験の結果は芳しくないわ。100匹に1匹のマウスが復活する程度・・・もっと精度を上げてと魔力消費量を抑えないと・・・」
むしろそこまでこぎつけた辺りやっぱり、パチュリーの天才加減がよくわかる。
・・・でもやっていることは、一番まともなのだが・・・一番目を離してはいけないのがこのパチュリーだ。
フランお嬢様も咲夜ちゃんも特定の場所に居るからまだいい、美鈴に至っては鍛錬する場所は複数個に分れているから面倒くさいが、また近場のため助かる。
だけどパチュリーの場合は、喘息を持っていつ倒れてもおかしくないというのにわざわざ材料集めや実験体収集に外に行こうとするから危なっかしいのだ。
「そうっすか・・・あんまり魔法に明るくないんで、応援しかできないっすけど。」
「・・・いいえ、応援だけでもうれしいわ。」
多分、パチュリー自身は迷惑をかけているということを理解しているのだろう。
他のメンバーが軒並みダメになっていることも知っていて、それでなお・・・
「私が・・・」
顔を伏せながら、パチュリーがポツリとつぶやく。
「私が、死者復活の魔法という前代未聞の魔法開発を成功させれば・・・魔法界の魔女の代表になれるでしょ・・・でも、今はそんなことどうでもいい。レミィの為にも、そしてマリアの為にも私は死者復活の魔法を作り上げる。そうすれば、紅魔館も何もかもが元通りなの・・・」
涙がぽろぽろと零れながら、そういうパチュリー。
「・・・分かってるっす。だけど、ちゃんと喘息を直しつつゆっくりと・・・」
「私のことなんてどうでもいい!!」
・・・多分、抑えていた感情なんだろう。
泣きながら、そう叫んだ。
「死者復活の魔法なんて、私でも作れるわけじゃないじゃない!!時間をかければいつかはできるかもしれないけど・・・でも、その間にレミリアは立ち直ってるの?咲夜は生きているの?美鈴は前を向いているの?フランは元通りになっているの?
そんな奇跡が起きるのを待つぐらいなら、私が必然に変える!!死者復活の魔法ができるわけがないっていうのは私が一番よくわかっている!!魔女学会に死者復活魔法の難易度の論文を提出したのは私よ!!
だからこそ、死者復活の難しさを一番よくわかってる私こそがやらないといけない!!レミィの為にも、紅魔館の為にも!!」
覚悟がこもった、まっすぐで歪んだ眼。
その眼を見て私は・・・
「・・・大丈夫っす、いつまででも待つっすから。慌てないで死者復活の魔法を作るっす。」
優しく、そういうしかなかった。
最後に、レミリア・スカーレット。
かつてこの紅魔館の中心人物であり、マリアを拾ってきた私たちの仕えるべき主でもある。
フランお嬢様とは違い、冷静でクールな印象もあったけれど子供っぽくてかわいらしい・・・そんな主だったのだが・・・今は、カーテンすら閉め切って薄暗い部屋に膝を抱えて丸くなっている。
「レミリアお嬢様、お気分はどうっすか?」
いつもの口調と雰囲気で近づき、ベッドのそばに立つ。
ピクリと腕が動いたと思ったら、頭が動いてこちらを見る。
「・・・あぁ、アンナね。まだ、いいとは言えないわ」
随分と弱った目だ。これでもまだ他の連中と比べてマシなんだから本当に腹立たしい。
よく見れば、蝙蝠の羽もボロボロになって細くなっている。
・・・やっぱり何日も食べない間が続くからか、ちょっとずつだけどやせ細っていってる。
「そうみたいっすね。あんまり無理しちゃだめっすよ?食べたくなくても、ちゃんと食べないと・・・」
「うん・・・・・・ごめんなさい。」
顔を伏せながら、そういうレミリアお嬢様。
・・・なんだか説教臭くなってるっすね。
こういう時のメンタルケアとしては最悪なんでしょうけど、あいにく私にはそんな方法しか思いつかない。
「・・・まあ、ゆっくりとレミリアお嬢様の好きにするといいっす。私たちはその判断に従うっすから。」
「ありがとう。」
あっ、顔をあげたと思ったらちょっとだけ笑ってくれた。
やっぱり、レミリアお嬢様が一番回復の予兆が速そうだ・・・
「ねえ、アンナ。」
「どうしたっすか?レミリアお嬢様」
抱えている膝を離して、ぺったんずわりをする。
正直ネグリジェでしてるから、何となくエロさを感じるのは不思議じゃないっすね。
えっ、相手は500歳児だろうって?
・・・そうっすか。
「もし、もし私が・・・この幻想郷で悪戯したら・・・マリアは怒ってくれるかな。」
「・・・多分、怒るんじゃないっすかね。」
「・・・やりましょう?」
「・・・はい?」
思わず私はレミリアお嬢様に聞き返してしまう。
いや、レミリアお嬢様の目は輝いてるから別におかしなことを考えているみたいじゃないみたいっすけど。
「この幻想郷で、平和だけど厄介な悪戯をするの!」
段々と雰囲気が元に戻ってゆく。
あぁ、なるほど・・・
「どう?やる?やらない?」
「いいかんがえっすね!やりましょう!!」
ようやく、受け入れられた見たいっすね。
「太陽が邪魔だから、霧で隠すとかどうっすか?」
「いいわね!じゃあ、それを赤くして、紅魔館の威光を知らしめるとか!」
私は、元気になったレミリアお嬢様と一緒に、悪戯の内容を考えるのであった。
次回から、紅霧異変となります!
立ち直ったレミリアは、妖怪大戦争や人里政変戦争が終わったのちに異変を起こす。
しかしそれは、さらなる困難の始まりだった!!
やめて!
美鈴はただでさえボロボロなのにそんなにボコボコにしたら死んじゃう!!
お願い、死なないでパチュリー!あんたが今ここで倒れたら死者復活の魔法はどうなっちゃうの?
咲夜も頑張ってるし、紅魔館はなんか静かだけどきっと異変解決のために戦力を軒並み回してるんだから!!
次回「アンナ 死す」。
デュエルスタn(マスタースパーク
ifがあるとしたら
-
マリア生存ルート(最終的に暴走)
-
マリア生存ルート(幻想郷に行かない)
-
マリア×レミリア
-
マリア×フランドール
-
マリア×美鈴
-
マリア×咲夜
-
マリア×パチュリー
-
マリア×アンナ