シロツメクサの墓標へと
中庭の、一番きれいな花畑が見える場所。
その場所にはシロツメクサの花壇に囲まれた一つの墓標がある。
「・・・待っていてくれ、マリア。私は、この幻想郷を、必ず壊す」
マリアの羽と、彼女の使っていたハルバートは此処の墓標に埋めてある。
それゆえにいつかマリアは、よみがえってくれるだろう。
その時まで私は、この幻想郷を破壊し続ける。
・・・いや、幻想郷ではない。私は、この幻想郷を破壊し、紅魔郷として支配する。
そうすれば、マリアはしばらくの間ゆっくりと休めるし・・・復活して私たち紅魔郷を見たとき、マリアはきっと喜んで、私をなでて、私の好きなキャロットカップケーキを作ってくれるだろう。
「・・・フランとも、どうにかして和解しなければ。」
確かに、フランは仇的である八雲紫と勝手に条約を結んだ。
いや、あの時の私は、私たちは動けなかった。それ故にフランは、私たちを護るためにその協定を結んだのだろう。
「だが、それはすべてが終わった後でいいか。」
いま、フランは邪魔になる。
八雲紫を撃ち滅ぼし、幻想郷を紅魔郷にした時にゆっくりと話し合うとしよう。
私は立ち上がり、振り返る。
「・・・レミリアお嬢様。」
「美鈴か。状況はどうだ?」
「はっ、フラン派のメイドやホブゴブリンは、こちらの隙をついて次々と脱走を図っています・・・いかがなさいますか?」
「どうせあまり戦力として期待はできん、逃がせ。」
美鈴を引き連れて、執務室に戻り始める。
美鈴から話される内容を最適な答えで返答する。
「それで、幻想郷のリアクションはどうだ?」
「戦力を集結している模様です、とある場所からの気がだんだんと膨れ上がっています。」
まあ、八雲紫に牙を剝いたのだ。
精々抵抗らしい抵抗をしてもらわねばこちらも困るというものだ。
それに、どうやら人間に手を出さねば幻想郷最大戦力である”博麗の巫女”は動かないようだし、私には”必勝・必中の槍”でもあるグングニルがある。
「咲夜とパチュリーはどうだ?」
「・・・咲夜メイド長代理はいまだ行動不能です。パチュリー司書長は、気が狂ったかのように復活魔法の構築を始めています。」
「そうか。・・・・・・まだ考えさせてあげて、咲夜は特に相当きてるはずだから」
咲夜は自身の唯一の親を亡くし、パチュリーは命を助けてくれた恩人が亡くなったのだ。
誰だってつらいはずだ、私とてこうして狂わない限りいまだ立ち直れないほどなのだ。
「かしこまりました。」
冷静にしている美鈴もよく見れば、小さく震えている。
・・・美鈴も美鈴で、相当無理しているみたいだ。
「美鈴も。」
「・・・」
「美鈴も、つらいなら休みなさい。私が許す。」
「・・・私は、紅魔館私兵長です。この紅魔館に危機が迫るというのなら私は一切の私情を捨てます。」
そう言って、美鈴は軽い敬礼してどこかに行ってしまう。
「・・・・・あぁ。」
本当に、なぜこうなったのだろう。
私には”運命を操る程度の能力”があったのではないのか?
なぜ、私はマリアが死ぬという運命を変えることができなかったのだ。
フランとは、ひと時の感情で姉妹喧嘩をしてしまい。
副メイド長は、フランの専属メイドとしてフランの側に立ち
美鈴は、私情を捨て紅魔館を護る兵士を演じ、
咲夜は、育ての親をなくし
パチュリーは、できるはずのない復活の魔法を作り上げようとし、
私は、ただ怒りのままに気狂いとなった。
「ははっ、酷いものだな。」
本当に、なぜ私は最後まで狂えないのだ。
「こんなに苦しいなら・・・・・・完全に狂えれば楽だったというのに!!」
私の叫びは、ただ暗い廊下に消えてゆくだけだった。
レミリアには元々狂気があるわけではなく、マリアに育てられたために最後まで狂うことができませんでした。けれど、レミリアにとってそれはとても苦しい苦行でした。