私が、ついて行けたというのなら・・・貴女を守ることができたのでしょうか。
あの日あの時、世話をされて・・・それからしばらく大切に扱ってくれて。
何というか、生まれて初めての経験を教えてくれて・・・
とても暖かくて優しいものをくれた。
・・・だからこそ、私は2度と大切なものを壊させない。
もう、二度と・・・あの絶望を味わうものか。
”我々”は・・・紅魔館を護る兵士なり
チルノを倒した、霊夢と魔理沙はお互いに連携を取り合いながら、出てくる妖精や毛玉、なんか偶然道にいた妖怪を倒しつつ、紅い霧の原因へと向かう。
・・・霧の湖を越え、そのほとりにそれはあった。
「な、なに・・・これ」
「噂には聞いてたが・・・さすが”紅魔館”目が痛くなるほどの紅さ加減だぜ・・・」
今二人が見下ろしている場所には、紅魔館がある。
しかもご丁寧に、その敷地には結界が余すことなく広がっており・・・見たところでは、正門ぐらいしか侵入できそうな場所はない。
・・・というかその正門も、二重構造の壁と門の作りになっているため中々ややこしいことになっている。
「どうするんだ?上から侵入しようにもあの二重結界に阻まれて無理だぜ?」
「上等!なら正面から突破よ!!」
行くわよ!と意気込みながら突撃する霊夢。
そのあとをやれやれと頭に手を当てながら、魔理沙がそのあとをついてゆくのであった。
「うおおおおお!!!?れ、霊夢!!さすがに弾幕がヤバいんだが!?」
先ほどまで余裕を保っていた魔理沙が、3人の狼女に追い回されながら弾幕を放たれ、回避することしかできなくなっている。一つ目の正門を突破したところで、狼女たちの歓迎を受けているのだ。
慌てている魔理沙に対して霊夢は、変態軌道で狼女たちを翻弄しながら何とか捌いている・・・しかし、その軌道も狼女たちが慣れてきたのであろうか、段々とグレイズが多くなってゆく。
「ゴチャゴチャ言ってないで、とっとと突破するわよ!!私の軌道を真似なさい!!」
「そんな変態自由軌道できるのは霊夢だけだよ!!浮遊魔法そこまで器用に動けねぇよ!!」
縦横無尽に・・・それこそ三次元的どころか、質量を持った残像を作り出している霊夢に思わず文句を言う魔理沙。
そんな霊夢相手にグレイズをさせている狼女たちも結構動き方がやばいのだが、本人たちは追いかけて弾幕を放つことに精一杯で気付いていない。
対して魔理沙は、しびれを切らしたのか被っている白黒魔女帽子に手を突っ込み、魔女の商売道具を出そうとしていた。
(八卦炉を使ってもいいんだが・・・こういう時の為に作っておいて正解だったぜ!!)
魔女帽子の中から何かを取り出し、急な反転を行い追ってきている狼女たちをわざと追い抜かせる。
一瞬の出来事で、反応をし切れなかった狼女たちが慌てた様子で反転しようとするが・・・
次の瞬間に魔理沙を見て、あぁ終わったと悟った。
なぜなら魔理沙が、八卦炉と一緒に、3つの水晶玉を浮かばせていたからだ。
「そう、れ!!」
八卦炉からは、マスタースパークほどではないにしろ大きなレーザーが発射され。
水晶玉からは、細々としたレーザーがとても素早い連射速度で逃げ道をふさぐように弾幕を発生させる。
もちろん、狼女たちは指をくわえてただやられるわけにはいかなかった。
ただでさえ、紅魔館の主がやる気を見せているのだ・・・その忠義に反するわけにはいかないので、最善を尽くそうとその魔理沙の激しい弾幕に、勇猛果敢に突っ込んでゆく。
「待たせたわね、針符『千本封魔針』!!」
しかし、次の瞬間霊夢が来たと思いきやスペルカードを宣言する。
ただでさえ、とても濃くて厄介な魔理沙の弾幕に加えて、見づらくて避けにくい霊夢のスペルカードが合わさったのだ。狼女たちは、弾幕をよけながらただでさえ細くて見えづらい針をよけきれるわけではなく。
やがて、彼女らは全滅したのであった。
「さっすが、霊夢・・・もうちょっと早く来てくれてもよかったんじゃないか?おかげで水晶玉使う羽目になったんだぜ。」
「アンタねぇ・・・。まあいいけど、さあ進むわ・・・!?」
二つ目の正門に目線を向けた途端、霊夢にとてつもないプレッシャーがかかる。
そのプレッシャーを感じ取り、咄嗟に回避行動をする霊夢。
しかし、攻撃は来ず・・・ただ魔理沙だけが不思議そうな顔をして霊夢を見ていた。
「れ、霊夢?どうかしたのか?」
「・・・準備なさい魔理沙、次の相手。とんでもなくやばいわよ。」
珍しく霊夢が真剣な表情で忠告をくれる。
霊夢がここまで、冷や汗をかきながら言うのだ・・・間違いなく次の相手はヤバいのだろう。
魔理沙もそれを理解して、少しだけ焦る。
「霊夢がそういうなんて・・・相手相当やべーな。」
「・・・来る。」
霊夢が今まで構えてこなかった、槍のように長いお祓い棒を構える。
魔理沙も西洋剣を構えて、その相手を見つけようと意識を研ぎ澄ませる。
「失礼、そこのお二方。当お屋敷のお客様でしょうか、お客様であればお嬢様の招待状はお持ちでしょうか?」
緑色のチャイナ服を着た女性が、霊夢と魔理沙に話しかけてくる。
そして、霊夢と魔理沙はそれだけで感じ取る。
この女、デキる。と
「いいえ、持ってないわ。だから通しなさい。」
「まず、そのお嬢様の顔すら知らないしな。」
その女性の言葉に対して、売り言葉で挑発する。
「ならば、迎撃させていただきます。」
その一言が、大激戦の始まりだった。
その戦いで先手をとれたのは、身構えていた霊夢と魔理沙であった。
「火魔『ファイアーレーザー』!」
「針符『千本封魔針』!」
もはやお約束と化してる開幕スペカを発動させ、ほぼほぼ棒立ち状態の美鈴に向けて赤色のレーザーと大量の針が発射される。
美鈴はそれを見て、冷静に判断し右斜め前に少しずれただけで、その発射された弾幕全てをよけきって見せた。
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
驚き、思わず硬直する二人。
その隙を見逃すほど、美鈴は優しくはないため・・・すぐさまその隙をつく。
一瞬にして、魔理沙に接近したと思いきや容赦のない正拳突きを放つ。
それを察知した魔理沙も、ただ黙ってそれを食らうわけにはいかずに身体を右回りに回転させたと思いきや、そのままの反動で美鈴に斬撃を浴びせた。
しかし、美鈴とて近接戦の達人。それを読めていないわけではなく、開いていた左手でそれを受け止める。
・・・ただそれだけの一瞬のことだが、二人の周りにとてつもない衝撃波が発生する。
「・・・なるほど、魔力で身体強化からの魔力をブースターとして利用し一撃の強化ですか。ただ者ではないみたいですね。」
「へ、そりゃどうも!(あっあぶねぇっ!!ギリギリだった!!)」
余裕そうにする魔理沙だが内心冷や冷やだった。
魔理沙が何とかかわせたのは拳が当たる本当にギリギリのところで目が追い付いたからだ。
あとは持ち前の反射神経で何とかかわし、そのまま反撃をしたのだが・・・苦し紛れの一撃は難なく防がれてしまった。
しかも左手に防がれた西洋剣は、まるで鋼鉄に突き刺さったかの様にビクとも動かないのだ。
「魔理沙!」
「先に行っててくれ霊夢!こいつはアタシが引き受けた!」
「・・・・・・下手打つんじゃないわよ!!」
魔理沙を信頼してか、魔理沙の言葉通りにすぐさま二つ目の正門をくぐって紅魔館へと侵入する霊夢。
そんな霊夢を美鈴は、忌々しそうにしつつも見送っていた。
「・・・案外、スッと通してくれたな。」
「そりゃ、貴女からそんな魔力を向けられたら。動けなくなるに決まってるじゃないですか。」
「バレたか。」
魔理沙は気休め程度にはなっていた魔力での威圧をやめ、水晶玉に魔力を通し始める。
ふわりと二つの水晶玉が魔理沙の魔女帽子の中から飛び出し、西洋剣に仄かな火が燻り始める。
・・・実際、一歩でも霊夢の方向に向かおうとするならば全力の攻撃を美鈴にくらわせるところだったのだが、残念ながら美鈴に筒抜けだったようだ。
「確か、武人って言うのはやりあう前に名乗りを上げるんだったか?・・・”普通の魔法剣士”『霧雨 魔理沙』だ!」
「・・・なるほど、武人としての心得も多少はあるようにお見受けいたします。名乗られたからには名乗り返しましょう。”紅魔館警備隊総隊長 兼 紅魔館正門門番”『紅 美鈴』です。」
「正々堂々、勝負だぜ!」
「いざ尋常に、勝負!!」
名乗りを互いに上げ、その次の瞬間には激しい接近戦を繰り広げる。
武器のリーチの差で魔理沙が先手を取ったのだが、素早く繰り出される美鈴の打撃に魔理沙は後手に回ることになる。
しかし魔理沙とて、接近戦に関しては自身があった。ただでさえ、魔法剣士として人里での依頼を若くして数多もこなしてきた魔理沙なのだ。
後手に回りつつも、美鈴の拳法に負けず劣らずの攻撃を繰り出している。
美鈴が左のストレートを放つが、魔理沙はそれをかわす。そして、魔理沙は剣士とは思えないような行動をとった。
左のストレートをかわしたと思ったら、避けた勢いで回転し、そのまま回し蹴りを放ったのだ。流石の行動に、美鈴も意表を突かれて大きく隙を作る。
その隙を逃さず、魔理沙は剣の切っ先を美鈴の首元に向けるが・・・その次の瞬間には、距離をとっていた。
「はぁ・・・はぁ、」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
一瞬の出来事であまりに多く動いたからか、美鈴も魔理沙も息切れを起こしていた。
魔理沙に至っては、肩で息を吸っているようなものだ。近接戦になれているとはいえ体力は美鈴の方が上のようだ。
けれど魔理沙はあきらめずに、西洋剣を構えなおす。
「近接戦闘はほぼ互角、なら・・・華符『芳華絢爛』!」
美鈴が、弾幕戦ならと思い切り、スペルカードを発動させる。
美鈴を中心として花弁のように弾幕が広がりだす。魔理沙は無論、弾幕戦においてもトップクラスの実力を誇るため、あまり慌てずに冷静にその弾幕を分析し回避する。
やがて紅い弾幕が放たれるが、距離を開けていた魔理沙にはその弾幕は当たらなかった。
「へへっ、スペルカードブレイクだ!」
「やっぱり弾幕戦は苦手だっ・・・」
時間切れでスペルカードを割られた美鈴は、苦い顔をしながらそんな愚痴をこぼす。
もちろん魔理沙とてやられっぱなしは性に合わないので・・・魔女帽子の中から再び、ミニ八卦炉を取り出して構える。
「お返しだ!恋符『ノンディレクショナルレーザー』」
ミニ八卦炉から発射されるレーザーに合わさり、水晶玉からもレーザーが発射される。
美鈴もそのスペルカードをよく観察し回避に専念するのだが・・・
「甘いんだぜ!!」
ミニ八卦炉を浮かばせたと思ったら疑似・レーヴァテインを起動させ、燃え盛る西洋剣を構える。
その姿を見た美鈴は、思わず足を止めてしまう。
「出力リミッター解除、演算魔法陣、最大出力!いくぜっ!!魔剣『レーヴァテイン・レプリカ』ァアアアアアアアッ!!」
全身全霊の一撃を振り下ろす。
巨大な紅いレーザーが美鈴に向かって振り下ろされる。
美鈴とて、それをボーっと見続けるほど間抜けではないのだが・・・
「・・・っ!!」
同時発動されてあるノンディクショナルレーザーが・・・美鈴の逃げ道をふさいでいる。
・・・美鈴は、歯を食いしばりながら腕を構え、迫ってくる紅いレーザーを睨むのであった。
「はぁ・・・はぁ・・・スペルカードは同時発動するもんじゃないぜ・・・まったく。」
文句を言いながら、西洋剣を構えなおす魔理沙。
美鈴一人に大量の魔力を使ったからか、少しだけ眩暈が起きる。
先に行かせた霊夢が心配だ。と考え、すぐに紅魔館の内部に行こうとする魔理沙だが。
「・・・おいおい、勘弁してくれ。」
煙が張れたと思いきや、腕を黒焦げにしながら体を震えさせつつ立ってこちらを睨んでいる美鈴がそこにはいた。
「まけ・・・たく、ないっ。もう・・・・・・にど、と。マリアさんの・・・ためにもっ!!」
ギラギラとしている美鈴の緑色の瞳が魔理沙を貫く。
しかし、魔理沙はその視線が自分を見ていないということがよくわかった。
「・・・過去に何かあったのは分かる。アンタが、その過去で何をなくしたかは分からないがな。」
西洋剣を収め・・・ゆっくりとその美鈴に近づく魔理沙。
そして、美鈴が・・・なぜ諦めたくないのか、なぜ負けたくないのかという気持ちを汲み取れた。
かつて魔理沙も・・・その立場にいたからだ。
「護りたいものを護れなかった。それは確かに悔しいことだぜ。でも、もうそれは過ぎて・・・確定してしまったこと。いつまでも引きずっていたら、それはただの重荷になる。」
かつて魔理沙は、父親と母親と一緒にお出かけとして里の外に出て・・・母を失った。
その時の魔理沙はひたすらに泣き、父親に口を押さえられて一緒に木の影に隠れていた。
そして、生々しく聞きたくない音を響かせながら怯えていたのだ。・・・妖怪が母親を食らうのを、こんなことになる前までは、魔理沙は自分が二人を妖怪から守ると豪語していたのにだ。
・・・・・・妖怪が去った後に見たものは・・・無残な母親の・・・食い荒らされた遺体だけだった。
それ以来、魔理沙は魔法に傾倒するようになった・・・父親は最初は反対していたものの、しっかりとした意志と父親とは喧嘩をしたくないということを誠心誠意伝えると、条件付きでその父親は許してくれた。その条件というのが、怪我も病気もせずに・・・母親の命日や祝日には顔を見せるという事。
だからこそ、今の美鈴と過去の自分を重ねているのだ。
「そして残っているものを護りたいという思いもわかる。けれど」
もはや動けすらしていていない美鈴の脇を通り過ぎ・・・
「残ったものを護るために、その残った人たちを心配させるのは間違ってるんだぜ。」
いまだに意識を保たせている美鈴を、当て身で優しく気絶させるのであった。
その言葉に美鈴は思わず目を見開く、そして同時にかつてマリアに言われた言葉を思い出したのだ。
「あ・・・あぁ・・・・・・まり、あ・・・・・・さん。ごめんな・・・・・・さい。」
そして、美鈴は、その日・・・あの日以来からの心の重りが取れたように、安らか眠りにつくのであった。
いつかの昔、彼女は私に向けてこう言った。
「もし、誰かが居なくなって紅魔館が悲しみに暮れていたら・・・美鈴は早く立ち直ってみんなを守ってあげて。」
私は彼女に聞き返した。どうして?と、
「そうね、何となく。でも、美鈴・・・護りたいからと言って、無茶してはダメ。無茶をして守るべき人たちに心配や迷惑をかけてしまったら、元の子もないもの。」
・・・その言葉に私は頷く。
あぁ、どうして忘れてたんだろう。
それを思い出し、私は思わず・・・安堵してしまう。
そして今までの代償なのか・・・とても眠くなり、そのまま寝てしまうのであった。
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