美鈴とパチュリーには、マリアが復活するための異変って伝えたけど・・・
これはただの赤く染めた何の変哲もない霧だ。多分二人も薄々感づいているだろう。
アンナには内緒でフランを暴れさせた。
けれど咲夜は、この話には乗らずにマリアの部屋に閉じこもっている。
・・・あの子が一番つらいはずだから。それでもいいのだ。
・・・カラ元気を出してこのイタズラを始めたけど。
どうやらそろそろ潮時みたいね。
ザッ・・・
エントランスから、中庭に出た霊夢と魔理沙。
その中心、噴水のすぐ後ろにある”ハルバートの刺さった墓標”の前に、蝙蝠の翼を背中から生やした女の子が祈りをささげている。
「美鈴も、パチュリーも・・・アンナは吹き飛ばされてフランもやられた、みたいね。」
中庭に出てきた霊夢と魔理沙に気づいたのか、その少女が立ち上がり振り返る。
青みがかった銀髪のショートヘアにふわりとしたモブキャップを被ってはいるが、気品を引き立てている。その顔すらも、先ほど倒したフランによく似ていて・・・立ち振る舞いも、高貴さを感じさせるものである。
「初めまして、幻想郷の守護者さん方?私は、レミリア・スカーレット。この紅魔館の主にして、このイタズ・・・異変の首謀者よ。」
フリルドレスの裾を持ち上げ、カーテシーで挨拶をする。
その様子に、霊夢と魔理沙は今までの相手とは違うということを理解する。
「・・・幻想郷、博麗大結界管理者第13代博麗の巫女”博麗 霊夢”。」
「魔法の森在住、人里の守護者・・・白黒の魔法剣士”霧雨 魔理沙”だぜ。」
霊夢と魔理沙もそれぞれの挨拶をする。
レミリアも、挨拶を返されるとは思いもよらずに嬉しそうに口元に手を当てる。
「一つ聞きたいことがあったのよ。」
「奇遇だな・・・アタシもだぜ。」
霊夢が一歩踏み出し、レミリアの目に自信の視線を合わせる。
ネコのような瞳孔のその赤い瞳を除くだけでも、霊夢の足が少し震える。
「ええ、何でも聞いていいわよ。」
「この異変、アンタたちにとって・・・何の意図があるの?」
霊夢はずっと、心の奥底でこの異変に関して引っかかりを覚えていた。
洗濯ものを真っ赤にされて頭に血がのぼって激情のまま飛び出してきたが・・・どうもこの異変には引っかかる点が多い。
本当に異変を起こすつもりなら、魔理沙の言っていた魔力係数を人間が吸って体調を崩すぐらいにするのもいいし・・・それこそ、パチュリーが言っていたことが確かなら、これは”マリア”と呼ばれる人物の弔い合戦でもあるはずだ。
「この異変に意図なんてないわ、これはただ単純に私のイタズラ。儚い希望を胸に起こした・・・ちょっとした余興よ。」
「それなら、なぜ全員”マリア”っていう言葉を口にしてたんだぜ?」
美鈴、パチュリー、フランドール・・・その三人は必ずマリアという単語を口にしていた。霊夢はパチュリーと戦い、マリアという人物がかつてこの紅魔館にいて・・・この幻想郷に来た時に何らかが原因で死亡した。というところまでしかわかってない。
魔理沙に関しては、その”マリア”がこの紅魔館でかなり大切だったということしか理解をしていない。
「・・・マリアはね。ここに眠っているの。それを受け入れられないから・・・みんなあんなに感情的になっていたのよ。」
「それで、この異変を起こしたのか?」
「もう、私たちも前を向く時が来たのよ。」
そばに置いてあったのだろうか、レミリアが紅に輝く槍を手にし背中の翼を大きく広げる。
いつの間にか・・・霧で空が見えていなかったからなのか、空にはすっかり月が浮かび上がっている。赤くて、とても大きな月。
「そしてこれは、私のヤツアタリよ。」
「・・・そうね、付き合ってあげるわ。」
「やれやれだぜ・・・」
何も言わずに霊夢が浮かび上がり魔理沙がレーヴァテインを構えてレミリアに突貫する。
対して、レミリアは優雅に赤い槍・・・グングニルを構えて、魔理沙を待ち構える。
「もらったのぜ!!」
魔理沙が魔力でブーストしながらレーヴァテインを振り上げる。
しかし、レミリアはそれを読めていたのか軽くステップを踏むだけで回避してしまう。
魔理沙はすぐさま、自身が空振りしてしまった隙を埋めようと弾幕を放とうとするが・・・
レミリアがグングニルの石突部分で魔理沙の足を払ったのだ。
「うわ!?」
バランスを崩しながらふわりと浮く魔理沙にレミリアは同じように石突部分で強打し吹き飛ばす。
咄嗟にレーヴァテインで防いだものの、その吹き飛ばされた衝撃は強く、何回かバウンドしたあと魔理沙は態勢を立て直した。
そして魔理沙が態勢を立て直したとほぼ同時に、魔理沙をカバーするように霊夢が弾幕でレミリアを攻撃し始めた。
だが、レミリアは余裕そうにグングニルを構えなおし・・・霊夢の弾幕を一つ一つ丁寧に弾いたりかき消したりし始める。
その槍捌きは、霊夢が見惚れるほどでしかも一歩、また一歩と歩き出している。
「っ・・・なら!!針符『千本封ま」
「遅いわ」
スペルカードを発動させようと、一瞬止まった隙に霊夢の目の前まで移動する。
霊夢はさすがにフランドールと同じことをされていたので焦りはしなかったが、大きな隙を晒してしまっているためすぐさまその対応ができなかった。
フリーハンドだったレミリアの左手に一つの紅い魔力弾が作り上げられほぼゼロ距離で投げつけられる。霊夢は頭をずらして何とかそれを回避するが・・・
ドォン!!!
遅れて聞こえてきた音と、とんでもない衝撃波で霊夢が地面に落とされる。
何事かと弾幕が飛んでいった方向を見ると・・・先ほどの弾幕が、あまりの速さに槍状になってしまっている。
ドヤ顔で霊夢を見るレミリア・スカーレット、今日何度目か分からない冷や汗をかき始めた。
「あら、避けられちゃった。」
「し、死ぬかも・・・」
「大丈夫よ、当たってもピチューンだから。」
「それなら安心っ!!」
その直後、レミリアの背後から静かに接近していた魔理沙がジャンプをしながら疑似剣レーヴァテインを振り上げている。
それを見た霊夢も、急速に真正面からレミリアに向かって槍のようなお祓い棒を構える。流石のことで、レミリアにも焦りの表情が浮かび上がっている。
霊夢は槍のようなお祓い棒を突き出し、魔理沙は疑似剣レーヴァテインを振り下ろし着地する。
((手応えがないっ!?))
明らかにやれたと思ったのに一切の感触が無く、突き抜き、振り抜いた場所には誰もいなかった。
「驚いたわ。あとちょっと早ければ、私もピチュるところだったわ。」
上から声がかかり霊夢と魔理沙はそちらに視線を向ける。
紅く大きな月を背後に、こちらを拍手しているレミリア。
その様子は、先程とは違い随分と楽しげな様子だ。
「まさか、この私が焦らされるなんて・・・うふふ。」
左手で口元を隠しながら楽しそうに笑い出すレミリア。
霊夢と魔理沙が予想以上に楽しめる相手だと理解して、どうやら興奮しているみたいだ。その証拠に目が紅く輝き出した。
フワリと、霊夢と魔理沙が浮かび上がりそれぞれ構える。
「今まで、手加減していたことを詫びるわ。これからは本気も本気よ。」
「勘弁して欲しいわね、面倒くさいわ・・・」
「おいおい、手加減の時点でいっぱいいっぱいだってのに・・・」
「こんなにも月が紅いから本気で、お相手するわ。楽しい夜になりそうね。」
「こんなにも月が紅いのに、永い夜になりそうね。」
「いいや、激しい夜になりそうだぜ。」
そう言った直後に霊夢と魔理沙が上下に挟み込むように移動する。
対するレミリアは、左手にグングニルに似せた槍を魔力で編み出し手握り、魔法陣を展開させる。
そして、霊夢と魔理沙がほぼ同時に弾幕をレミリアに向かって展開する。
片や、直線の早いレーザーを主体とした魔理沙の弾幕。片や、遅いものの誘導弾である御札を主体とした霊夢の弾幕が、レミリアを取り囲むように進む。
しかしレミリアは、軽く笑った後に両手のグングニルを一振りする。
それだけで、霊夢と魔理沙の弾幕がすべてかき消される。
それを見た二人は距離をとり、さらなる弾幕を展開させるが・・・
「まずは、白黒からね。」
一瞬で魔理沙が距離を詰められ、ピンチに陥る。
しかし、それはすでに織り込み済み。魔理沙はミニ八卦炉を構えて
「恋符『マスタースパーク』!!」
魔理沙の切り札であるマスタースパークをゼロ距離で遠慮なしにぶっぱなした。
しかし、マスタースパークの大轟音に紛れてピチューンという音がない当たり、どうやらレミリアは回避したらしい。
「ちぃっ、いいタイミングだと思ったんだけど!」
空中でバク転をするという中々器用なことをする魔理沙、そんな魔理沙がさっきまで浮いていたところに赤色の物が高速で横切った。レミリアが右手のグングニルを横に薙ぎ払っていたのだ。
それだけで、マスタースパークをただガードしただけというのがよくわかる。
「しかし、その隙を逃すほどってやつだな!」
「ええ!!」
大きく横薙ぎし、隙を晒しているレミリアに向けて
「針符『千本封魔針』!」
「恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」
容赦なくスペルカードを使う。
だが、レミリアもそれは運命で見ていたために知っている。
「天罰『スターオブダビデ』」
レミリアが対抗してスペルカードを発動させると、何もないところに魔力が集まりだす。
「霊夢!気をつけろ!!」
魔理沙がそう叫んだ直後、六芒星状にレーザーが照射され、照射された直後に青い魔力弾がばらまかれる。
霊夢も魔理沙も咄嗟に回避行動をとったためにグレイズで済んだのだが、スペルカードはブレイクされてしまう。
「スペルカードカウンターかよ!?」
「タイミングを誤ったわね・・・魔理沙!長期戦よ!!」
ババッと素早く距離をとり、弾幕を展開する霊夢と魔理沙。
だが、レミリアは無理やりに短期決戦に持ち込もうと一枚のスペルカードを展開する。
「神術『吸血鬼幻想』」
レミリアが大型の魔力弾を発射すると、その大型魔力弾の通った跡に通常サイズの魔力弾が生成され次の瞬間には拡散されてゆく。最初は避けやすかったのがだんだんと拡散される弾幕が多くなり、グレイズが多くなってゆく。
「っ・・・火魔『ファイアーレーザー』!」
しびれを切らした、魔理沙がレーヴァテインに魔力を回し、一つの紅いレーザーを照射する。
それは見事に弾幕の壁をぶち破り、レミリアの初グレイズをかっさらう。
「よしっ!」
「良いわね。だけどもうちょっと早くやった方がよかったわよ」
魔理沙が気付いて背後を向いた瞬間、ピチューンという音と共に地面に叩き落される。
幸い、噴水にドボンと入ったために衝撃は無効化されて死んではいないみたいだ。
しかし、あまりの衝撃で魔理沙が伸びてしまっている。
「ま、魔理沙ぁ!?」
「次は、貴女っ。」
「う、うわあぁああぁぁぁぁっ!?」
瞬間的に、霊夢の背後に現れたと思いきや後ろ襟を掴まれて思いっきりぶん投げられる。
そしてレミリアが好機とみて、また別のスペルカードを一枚切った。
「神槍「スピア・ザ・グングニル」!」
左手で握っていた魔力で練られたグングニルを全力で霊夢に向かって投擲する。
それは、手を離れた時点で音速の壁を越え・・・送れて聞こえてきた音と、バカみたいな衝撃波があたりを襲う。
そして、グングニルを投げられた霊夢は・・・
「負けられるかぁッ!結符『三重結界』!!」
もう一枚の奥の手を咄嗟に発動し、グングニルを防ぎ始める。
バリィィイイインッ!!
一枚目の結界は、威力と速度を落とすために
バリィイインッ!!
二枚目の結界も、同じ。
最後の結界にグングニルが激突し、ひびが入り始める。
しかし、霊夢はそれを真正面から迎え撃つ覚悟で、結界に向けて両腕を突き出した。
そして、自身が送れるだけの霊力を最後の結界に向けて強度と密度を再構築する。
結界とグングニルで美しいほどの火花が散るが、段々とその火花が収まり始める。
「うあああああああああああっ!!」
最後の力を振り絞り、霊力をこれでもかというほど送り込むと。
キィィイインッ!!
結界が、グングニルを弾き返した。
すぐさま霧散していくグングニル。
そしてレミリアは、自身の勝ちを確信する。
なぜならもう一本のグングニル・・・”本物の”グングニルを投擲しようとすでに構えているからだ。
ここまでの未来はすでに”運命”で見ている。
「残念だけど、これまでねっ!!大人しく、ピチュりなさい!!」
しかしその次の瞬間。
霧散し、自由落下しているグングニルを霊夢が無理やりに掴んだ。
そして、
「これ。返すわよ。」
霧散しかけているグングニルを霊夢が自身の霊力で無理やり再構成させると、その槍の色が変わり一つの植物がその槍・・・いや矛に絡みつき、そして霊夢は投擲の構えをする。
「っ!?必勝『オーディン・ザ・グングニル』!!」
「霊威『
片や必勝とうたわれ、必ず持ち主に勝利を与えると言われる槍。
片や世界に太陽を再び現すための踊りに用いられた象徴的な槍。
その二つの槍は、寸分違わず激突し合う。
・・・しかし、レミリアのグングニルはチマキノホコに撃ち負ける。
「そう・・・運命とは、あてにならないものね。」
レミリアはその言葉を残し、ピチューンという情けない音を鳴らすのであった。
イタズラは結局、マリアが本当にいないということを再確認するだけで終わってしまった。
異変を解決しに来た霊夢に拳骨されて、たんこぶを作りながらお説教されているけど・・・
何となくだけど、これも心地よいと感じる。
その後、とんとん拍子に話が進み。
近いうちに紅魔館が主催で宴会をすることになった。
咲夜に頼んで、料理とか準備しよう・・・もちろん、私も手伝って。
・・・だからマリア。
私たちが、進む道を・・・進もうとする道を、いつまでも見守っていてね。
ifがあるとしたら
-
マリア生存ルート(最終的に暴走)
-
マリア生存ルート(幻想郷に行かない)
-
マリア×レミリア
-
マリア×フランドール
-
マリア×美鈴
-
マリア×咲夜
-
マリア×パチュリー
-
マリア×アンナ