「・・・『
落ちてゆくホワイトライダーとアンナを尻目に、アリアが二つ目の魔法陣を展開する。
その魔方陣から出てきたのは、一つの大剣を持つ妖精の少女。
ホワイトライダーと違うのは、出てきた途端に気だるげそうにアリアを見たこと。
「・・・敵。」
「■■■■■■」
「・・・あい。」
ただそれだけの会話で、レッドライダーは大剣を構えてレミリアたちを見下ろす。
レッドライダーからの視線を感じグングニルとレーヴァテインを構えるレミリアとフラン。
「面倒くさい。」
その言葉が聞こえた途端、レミリアが吹き飛ばされる。
しかし、グングニルで何とかガードできたのかレミリア自身にダメージは入ってはいなかった。
だが、防いだであろうグングニルから白い煙が出ていた。
「お姉さま!?」
「・・・よそ見。」
「!?」
吹き飛ばされたレミリアを心配したフランだが、次の瞬間には劣勢に追い込まれる。
先ほどまでアリアの前にいたであろうレッドライダーが、いつの間にかフランと鍔迫り合いをしていた。
フランの力をもってしても、なんとレッドライダーが多少押しておりこのままフランが押し切られる様子である。
(な、なんて力!?)
「・・・フェイク。」
フッとフランにかかる力が抜け・・・
「う、うわわわ!?」
力を思いっきり込めていたフランがバランスを崩す。
すぐさま踏みとどまり、レッドライダーに向けてレーヴァテインを振るが・・・
「あ、あれ!?ど、どこに!?」
そこにレッドライダーの姿はなく、フランはすぐさまレーヴァテインを構えなおした。
注意深く周りを見渡し、集中力を途切れさせないようにする・・・
しかし・・・
「・・・がら空き。」
「えっ?」
瞬きをした瞬間には、目の前にレッドライダーがいて・・・
「あっ・・・(これ、死んじゃったかな。)」
ゾッとするほどきれいな大剣の刀身が、フランの視界に入っていた。
「・・・・・・・・・?」
迫り来た死を覚悟して、目をつむっていたフラン。
しかし、待てども待てども首を斬られた感触を感じず・・・ふと目を開けてみると。
「・・・っ。」
驚いているレッドライダーと、
「・・・・・・」
真剣な表情で、大剣を腕で止めている美鈴の姿があった。
美鈴の腕からは、血は流れておらず・・・そして、その立ち振る舞いも堂々としたものであった。
驚いているレッドライダーに、美鈴は蹴りを放つが・・・レッドライダーはそれを軽くよけ、面倒くさそうに美鈴を睨みつけた。
「め、美鈴!」
「あ、貴女どうやって・・・外の妖精たちは!?」
うれしそうな声を上げ美鈴の名前を呼ぶフランと、外の妖精たちはどうなったのかと尋ねるレミリア。
そんな二人に対し、美鈴はにこっといい笑顔を浮かべて。
「ご心配なく、彼女たちはそこまで柔というわけではありません。それよりもお嬢様・・・」
自慢の部下たちが敗れないということは彼女がよくわかっていることだ、それ故に美鈴は真剣な表情でレミリアを見る。
「あの娘は私にお任せを。」
胸に手を当て頭を下げる美鈴。
「・・・貴女、弾幕ごっこは苦手じゃなくて?」
しょうがないわねとため息をつきながらレミリアはそういう。
美鈴は、たははと表情を崩しながらそれを言われると弱いですと口にした。
「ですが大丈夫です。」
「・・・任せるわ。行くわよ、フラン。」
「うん!お姉さま!!・・・美鈴!負けたら承知しないんだから!!」
自信満々の美鈴をレミリアとフランは信頼し、再び浮かび上がりアリアの元へと向かう。
それを追おうとするレッドライダーだが・・・
「・・・・・・邪魔。」
レッドライダーの前に立ちふさがるようににこやかな美鈴が立ちふさがった。
「ええ、邪魔していますもの」
「・・・・・・なら、退け。」
「それはできませんね。」
むっ。と頬を膨らませるレッドライダー。
面倒くさいと言わんばかりにバックステップで距離をとり、美鈴に向けて大剣を向ける。
対する美鈴も、一つ大きな深呼吸をした後拳を構える。
「・・・紅魔館 正門門番兼紅魔館私兵部隊隊長。”紅 美鈴”。」
「・・・・・・レッドライダー。」
「参る。」
「・・・・・・・倒れろ。」
最初の一撃は、レッドライダー。
大剣を美鈴の顔を目掛け片手で突きだし、突撃するが。
美鈴はそれを軽くよけ、レッドライダーの手を下から突き上げて武器を手放させる。
その一瞬の行動でできた隙に、美鈴は容赦なく上段蹴りを放つ。
「・・・」
「っ?!」
だがレッドライダーが足を掴み、それどころか殴り掛かってきた。
咄嗟の事だが、美鈴は慣れた様子でそのパンチをよけ距離をとった。
ブンブンと音を立てながらレッドライダーの大剣が落ちてきて・・・レッドライダーはそれを見向きもせずに大剣の持ち手を掴んだ。
「おまえ・・・・・・強い。」
「ええ、私は強いですよ。守りたいものがあるんですもの」
「・・・だから。」
大剣を美鈴に向け、目を鋭くする。
「一撃で・・・・・・仕留める。」
両手で持ち、下段に構える。
美鈴は意識を強く持ち、気を高めて相手の行動に注視する。
さて、どう来る。どう攻めてくる。
レッドライダーが足に力を込めて飛び出し・・・
”真正面”から美鈴を吹き飛ばした。
(っ?!ばかなっ!どうして私が吹き飛ばされている!?
何をされた!?斬られたのか?!いや、斬られた感触がない。
ということは、わざわざ吹き飛ばした!?)
受け身をとりレッドライダーを再び視界内に捉える。
人から見れば、霊力、魔力、妖力、神力、気、オーラ・・・いわば、力の固まりがレッドライダーの持つ大剣に向かって流れている。
「・・・それは、随分と苦労して手にしたようですね。」
長らく武に触れている美鈴から見ても、その”力の固まり”は異常であった。
力の固まりが”それぞれ別々なのだ”人によって感覚が違う捉え方をされる”それ”がそれぞれ7色の色を放ち、すべてそろいもそろってレッドライダーの大剣にまとわりついているのだ。
「私の・・・・・・全力。『
レッドライダーが大剣を振り下ろし、虹色の力の固まりが美鈴に向かって倒れてくる。
対する美鈴は、構えを解き目をつむって顔を伏せる。
(・・・あきらめた。女王さまのとこ・・・行かないと。)
勝ちを確信したレッドライダー、相手は
勝つつもりがない、闘気がない、レッドライダーはそう判断した。
「フゥー・・・・・・。」
虹の固まりが、美鈴に迫る中・・・美鈴は深呼吸を行う。
深く、深く・・・とにかく深く。
・・・・・・ふと、
「秘儀『剛撃流し』」
「・・・・・・えっ。」
気付いた時には、レッドライダーは”光の濁流”にのまれていた。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・できた。今までできなかった、『剛撃流し』が」
土壇場でぶっつけ本番、自分に武術を教えてくれた師が一度だけ見せた究極の業。
護りたいという意思の元、精神集中を行い・・・深く深く深呼吸をして・・・ようやく見えた。
「・・・師の言っていた、『波風の無い湖』。」
瀕死の時に、一度だけ見たあの光景。
それをもう一度・・・
「っ。今はそんなことをしている場合じゃ・・・・・・なっ!?」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
あの光の濁流を受けてなお、レッドライダーは立っていた。
しかし、自慢の大剣も綺麗な赤髪も、薄い羽根でさえも焦げ付き焼きただれている。
あれだけの力の固まり、まともに受けて無事なわけがなかった。
「・・・もう、立つのもやっとでしょう?」
「うる・・・・・・さい。」
今にも折れそうな、ヒビの入った大剣を杖代わりに何とか立っているレッドライダー。
美鈴は、恐れずに歩き出す。
「左腕複雑骨折。胸骨粉砕。内臓破裂多数、右足の筋肉断裂、左の足首粉砕。首の骨にもひびが入ってる。」
「・・・何が、言いたい。」
「あなた、”一回休みがないでしょう?”」
その言葉に、レッドライダーは苦しそうに目を逸らす。
可笑しいと思った、彼女が纏っているのは妖精がよく宿している”魔力か妖力”ではなく、”霊力”なのだ。
霊力は、広く言えば”人間”が・・・そして深く言えば、”人間から他種族”になった者が持つ特徴だ。
レッドライダーはかつては人間だった、妖精になったとはいえ・・・彼女に一回休みを許すほど自然は優しくなかったのである。
「・・・・・・私は・・・女王の為にも・・・・・・負けられない。まける・・・・・・わけ・・・に・・・・・・は。」
倒れかけてくるレッドライダーを美鈴は受け止め、優しく横にする。
そして、自らの気を流しレッドライダーの自然治癒能力を高める。
しばらくすれば、苦しそうなレッドライダーの顔が・・・安らかなものへと変わる。
「これで大丈夫・・・・・・お嬢様の元へ行かなきゃ。」
美鈴は、切り替え・・・レミリアたちが消えていった方向へと走ってゆくのであった。
レッドライダー
能力:ただ強い程度の能力(発動条件が特殊で、戦い続ければ戦い続けるほど相手より強くなる特質を持つ。しかし、基本的レッドライダー自体が火力ブッパ、短期決戦タイプなので本当の意味で強くなれるのはまだまだ時間がかかる。)
元人間、現妖精の女の子。誰よりも物静かで、静かな時間が好き。
実力は、四騎士の中でもトップの戦闘能力、能力を加算してもでも四騎士最強の異名をもつ本物の”戦いの天才”。実を言うと一対一より、一体多数の方がすっごく強い。が、元が人間ということもあり”一回休み”が存在しない妖精。
メイン武器は、装飾がほぼない無骨な大剣で力を籠めると周辺にある”力”を纏って強力なビームを放つバ火力の剣。レッドライダーや周りが知らないだけだが実を言うと『デュランダル』その物だったりする。(本人曰く、やたらと硬い大剣。多少の無茶が効くし、ひびが入ってもいつの間にか直ってるとのこと)
ちなみに四騎士の中でも、怒ると一番恐ろしくまた家庭的だったりする。