争いの剣は倒れ、
均衡の秤は傾いた。
ならば私が出るしかない。
死を、絶対の死を。
恩義ある女王のために、女王の敵に死を。
だけど、どうしてだろう。
女王が心のどこかで、殺さないでと叫んでいる。
女王が何かを迷ってる。
なら、確かめないと、私は女王の・・・アリアの親友なんだから。
「■■■■■■■■■。」
もう何度目だ。そう言わんばかりのアリアの鬱蒼とした表情。レミリアもフランももはやボロボロになってアリアを守っている結界を殴り続けている。
弾幕で、グングニルで、レーヴァテインで、
手足を使ってでも攻撃をするがヒビ一つどころかビクともしていない。
「■■■、■■■■■■■■■■。」
面倒だ。と言わんばかりに杖を出現させた黄金の武器で2人をはじき飛ばす。ガードこそ成功はしたものの、”ソレ”を呼ぶには十分な時間が出来てしまっていた。
「・・・『
青い魔法陣が、アリアの前に展開しその中心から可愛らしい妖精が出てくる。2人は警戒度を高め、そして感じとった。
”自分の首に押し付けられる、死神の鎌を”
大袈裟とも言える程のリアクションで、大きく距離をとるレミリアとフラン。2人の額どころか身体中から冷や汗が流れ、ただアリアの傍にたっている青白い妖精を見ていた。
やがて、その妖精の目は見開かれた
傍から見れば、可愛らしくまた美しいとも言える物憂げな表情、どこか哀れんでいて、優しさすら感じる雰囲気。だが人一倍敏感なフランの生存本能が訴えかけている。
アレから一刻も早く逃げろ、さもなければ死ぬ!
無意識に押さえつけようとした恐怖でさえ、抑えきれずに表情として現れている。
「お、お姉様。」
震えた声でフランドールがレミリアに聞く。
「あ、アレに勝てる?」
余裕のない表情でレーヴァテインを、構つつ腕の震えがみてとれるフランドール。対するレミリアは
「ええ、勝てるわ。」
堂々とした表情で答えた。
思わず、頭でも狂ったのか?と姉ながら失礼なことを考えレミリアを見る。
しかしその表情は、狂ってなどいなかった。
「見えたもの、運命が。」
真っ直ぐに、ただただ恐ろしいものを見続けるレミリア。
でもよく見れば、グングニルを持つ手が震えている。
相手が強いこと、そして下手をすれば自分が死ぬことを理解していのは何よりもレミリアだった。
だけど、レミリアは勝つことを諦めなかった。
大切な家族が、大好きな人が、愛おしい存在がもう少しで帰ってくるのだ。
「怖いなら、そこで見ていなさい。私は死んで這ってでも戦ってやるわ!」
レミリアは、フランドールを置いてゆきペイルライダーに突撃をしかけた。
その姿を見ていたフランドールは、ただ見送ることしか出来なかった。
レミリアがフランドールを置いてきぼりにした直後、
「でりゃぁぁぁあああっ!!」
「・・・」
レミリアがグングニルを縦横無尽に振り回し、ペイルライダーに攻撃を与え続ける。
対するペイルライダーは、デタラメながらも的確に急所を狙ってくる攻撃を弾くだけの後手に回っていた。
(攻撃を与え続けろ、
刃先での振り下ろし、石突での打突、反動を利用しての蹴り、隙を埋めるための暴風雨のような弾幕。レミリアができる限りの攻撃でペイルライダーを襲い続ける。
しかしその全てが
「遅い。」
(あっ、そっそんなっ!)
切り払いの反動が大きすぎて、レミリアの体は言うことを聞かない。弾幕を放とうとも、魔力が間に合わない。
「終わりだ。」
未だ響く金属音の中、その言葉だけが異様に、そして鮮明にレミリアの耳へと届く。
(い、嫌っ!ここまで来て、ここまで来て死にたくない!マリアを取り戻せると思ったのに!もう少しだったのに!!)
「たすけてっ・・・『咲夜』! 」
パニックと混乱の中レミリアはギュッと目を瞑り、思いついた人物の名前を呼ぶ。
そして、
青白い剣が
ガキィッン!!
防がれた。
「・・・ふぇ?」
いきなり響いた金属音、その音を確かめるべく目を開けたレミリア。そしてレミリアの視界に入ったのは
「・・・」
「やらせは、しません!」
青白い剣を、たった1本のナイフで防ぐ
「さっ、さくやぁぁぁ」
「申し訳ありませんお嬢様。この咲夜、少々居眠りしておりました。」
「ばか!ばかァァっ!!」
今まで押さえつけていた不安と恐怖が溢れだしてきたのか、レミリアがプライドなど投げ捨て泣き出した。
そして同時に、咲夜の姿にさらに泣き出していた
「なんでそんな怪我してるのにきたのよ!」
咲夜の腹は包帯が巻かれており、よく見れば赤く滲んでしまっていた。傍から見なくとも、どんなバカだろうと致命傷ということは一目瞭然だった。
「大丈夫です、応急処置は白黒の魔法剣士と紅白の巫女がやってくれましたから。」
そのセリフの直後、咲夜がフェイントを仕掛けペイルライダーを蹴ることで距離を強制的に開けさせる。
ペイルライダーにダメージ自体は入っていないものの距離を開けさせるには十分なものだった。
「お嬢様、見ていてください。虫がいい話ですが謀反したお詫びにあの相手を片付けてご覧に入れます。」
自信満々の咲夜、少なくとも時間稼ぎや捨て身が目的でないことは、目を見たレミリアが、いちばんよく分かっていた。
「ぐすっ、わかったわ。その代わりに、余裕で倒しなさい!」
「はっ、かしこまりました。」
レミリアの命令を受けて、両手にナイフを構える咲夜。
律儀に待ってくれていたペイルライダーに感謝と同時に警戒を表す。
しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのはペイルライダーだった。
「ひとつ、聞きたい。」
「・・・なんでしょうか。」
構えを解いてまで聞いてきたペイルライダーに、咲夜は警戒の色を強める。こういった的は大抵油断した所を斬りかかってくるのだ。教会な所属していた時に、狩りの対象がよくやっていた常套手段だった。
「アリア様は十六夜 マリアとして生きていた時、幸せそうだったか?」
真っ直ぐに問いかけたペイルライダー。
レミリアと咲夜は思わず驚くが、すぐさま冷静さを取り戻す。
積もる話は色々とある。しかし今は、それどころの話ではない。
「・・・少なくとも、私が知っている限りでは幸せそうだったわ」
レミリアは目を伏せ思い出す。
初めて出会ったあの時、一緒に暮らし始めて10年経ったあの時、マリアがメイド長となったあの時。いくつもの思い出の中で、彼女は常に幸せそうだった。
「・・・・・・そうか、幸せそうだったか。」
「ええ、見てないところは知らないし、分からないけどね。」
「いや、それだけでも大丈夫だ、無駄話が過ぎたな。そこのメイド、名を名乗れ」
「・・・紅魔館メイド長補佐”十六夜 咲夜”。」
「・・・そうじゃないかと薄々勘づいてはいたが、なるほど。妖精王に使える四騎士が最後の一人、”厄災と死の騎士”ペイルライダー!」
いざ、推して参る!!
その言葉が合図に、咲夜はナイフを構えて飛び出した。
勝負の世界というのは一瞬の油断が命取りという。
しかし、レミリアが見た光景は信じられずともとても嬉しいものだった。
「・・・見事。」
「お嬢様の命令だもの、スマートで余裕に勝たせてもらったわ。」
先ほどまで、咲夜がナイフを構えて飛び出した直後だった。
しかし、レミリアが瞬きした一瞬でペイルライダーは膝をつき、咲夜はナイフを振り抜いていた。
時を止めた世界で咲夜が攻撃したのだろう、見たところ咲夜に(腹の大怪我以外の)生傷は見受けられない。
「しかし、貴女。手を抜きましたね?」
「・・・はは、なんのこと・・・かな。」
最後の最後で、誤魔化しながら倒れるペイルライダー。
しかし、咲夜は気づいていた。この娘は、かなり手を抜いていたと、正直に言ってしまえば咲夜の勘は当たっていた。
レミリアとフランが大袈裟に回避行動をとるほどの相手が、これだけなわけが無い。だが、倒してしまったのも事実。もう既に伸びてしまって話は聞けなかった。
「・・・さて、ついにたどり着いたわよ。」
やがてレミリアが咲夜にそう言いながら浮かんでいるアリアに目線を移す。咲夜もつられて、主と同じ方向を見る。
ここまで来た、もはやアリアを守るものはアリア自身の実力のみ。
「■■■■。」
アリアが、言うセリフは相変わらず理解が出来ない。
しかし、まだ余裕を保ち続けている当たりやる気は十分とあるのだろ。
「さあ、最終決戦よ。いくわよ、咲夜!」
「はい、お嬢様!」
「■■■■■■、■■■■■■■■。」
そして、その戦いは始まった。
ペイルライダー
四騎士の中でも、かなり危険な相手。
時を止めることのできる咲夜のみが唯一倒せる”かも”しれない相手だったが、咲夜はそれを撃破して見せた。
程度の能力は”死と疫病を操る程度の能力”と、幽々子様とヤマメと似た能力をかけ算したもの。
直接的な死を与えることは出来ないが、少なくとも即死させる程度には凶悪なものである。
四騎士の中で最も古参で大人びているが、実の所を言うと四騎士の中でも甘党の妖精だったりする。