クソデカ感情抱え込んだ紅魔館組の異変騒動!   作:ライドウ

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やるせない復讐は

「くっ・・・」

 

放った蹴りが簡単に掴まれ、空に投げられる。

咄嗟に羽をはばたかせて浮遊し、いまだ余裕そうにニコニコと笑顔を浮かべる風見幽香を睨む。

 

「うふふ、いいわね・・・筋がいいわ。」

 

傷をつけるどころか・・・息をきらせることもできていない。

そして対決して分かる、今私は・・・本物の化け物を相手にしている。

 

(グングニルの必勝能力をもってしても・・・押し負けてる?)

 

グングニルを投擲しても掴まれて止められ、だからと言ってグングニルで突こうとしてもすべて避けられる。そしてそれで、私の余裕は崩されて段々と焦り始める。

ここで冷静にならねば私が負けるということはよく理解している。

だけど、こいつ・・・風見幽香に一太刀も浴びせられるイメージが湧きやしないのだ。

 

(だけど、やるしかない!!)

 

覚悟を決し、グングニルを構えて突撃する。

 

 

「そうこなくっちゃ。」

 

すぐさま、風見幽香が反応し大量の魔法陣が展開される。

そしてその魔方陣からは大量の妖力弾が私に向けて発射される。

当たりそうなものはグングニルで弾き、それ以外の物は無視してただ風見幽香に向かって走り続ける。

 

「これなら?」

 

一部の魔法陣の模様が瞬時に書き換えられ、次の瞬間には膨大な妖力がレーザーとして発射される。

あれは完全に私狙いである。しかも動作予測していたのかぴったりと直撃コースだ。

・・・だけど、

 

(”当たる”という運命を操る。)

 

咄嗟に能力を発動すると、レーザーが面白いようにぐにゃんと曲がるが・・・私の洋服の裾を焦がしてちぎれさせる。

その様子にも風見幽香はただ笑っているだけだ。

 

そして

 

「あら、近づかれちゃったわ。」

 

「うああああああっ!!」

 

全力でグングニルを振り回す、もちろんただ振るだけではなくグングニルを突き出して攻撃を続けている。

吸血鬼としての能力を最大限に活用し、なんなら蹴りも織り交ぜたその乱舞は・・・

 

「うふふ。近くで見ると可愛いわね。」

 

「かわっ!?い、今そんなことを言ってる場合か!?」

 

「いいのよ、私別に戦ってるなんて思ってないし。」

 

風見幽香にとって遊びやスキンシップのそれらしい。

それが何というか、腹立たしさや悲しさよりも・・・清々しさを感じていた。

それはそれとして、八雲紫はぶっ飛ばすのだが・・・

 

「さて、お遊びはそろそろおしまいよ。」

 

最期の一突きをかわされて、頭をポンポンとされる。

・・・周りをチラリと見れ見れば、雰囲気の違う奴らが取り囲んでいる。

・・・終わったか。そう思っていると、風見幽香が私を抱きしめた。

 

「あ~ら、八雲の所の番犬じゃない。どうかしたのかしら?」

 

「・・・犬ではなく狐だ。確かに同じイヌ科ではあるがな、どうもしたもこうしたも我が主がその”気狂いの吸血鬼”を抹殺しろと命令したんだ。逆らえなくて困ってる。」

 

「忠誠心が厚いと思ったのに意外ね?」

 

「私にばかり仕事を押し付けて、挙句自分は何もしないんだ。本来やるべき結界の管理でさえ私に任せているんだ・・・1000年の忠義も何とやらだ。そのくせ私が式神だからということで、逆らえないと知っててあの態度だ。こんな態度になるのは普通だろ?」

 

「・・・そうね、あの(むらさき)ニートだものね」

 

「ああ、(むらさき)ニートだからな。」

 

臨戦態勢でありながらも、どこかほのぼのとした井戸端会議が開かれている。

周りの式神もやれやれといった感じで緩い立ち方でそれを聞いていた。

 

「さて、私はそんな主の使命を護らなくてはならない。けれど、どうやら・・・貴女が”解決した”らしいな。」

 

「ええ、この子は”気狂いの吸血娘”ではないわね。ただの”レミリア・スカーレット”よ。」

 

「ああ、了解した。そこに落ちてる洋服の切れ端でも持っていくさ。」

 

ひょいっと、風見幽香のレーザーでこげ落ちた洋服の切れ端を持ってさっさと撤収し始める。

・・・どういうことなのだろう。

 

「割と、この幻想郷に住んでる住民たちって・・・ほとんど(むらさき)に愛想をつかしているのよ。昔は、聡明で賢者にふさわしいぐらいだったのに・・・どうしてああなったのかしら。」

 

歳ボケかしらと独り言を零しながら、私を抱きしめたまま頭をなでる風見幽香。

やがて満足したのか手を離し、

 

「さて、あなたの家に帰りなさい。レミリアちゃん。」

 

そう優しく、わざわざ私の目線に合わせていってくれる。

 

「・・・・・・そうする。」

 

色々とやるせなくなり、私は紅魔館へトボトボと歩くのであった。

 




レミリアには元々狂気があるわけではなく、マリアに育てられたために最後まで狂うことができませんでした。けれど、レミリアにとってそれはとても苦しい苦行でした。

しかし、レミリアは苦しくとも、悲しくとも・・・その狂うという行為をやめませんでした。レミリアは、紅魔館皆の為に狂うことを選んだのです。
たとえ、後の世で罵られようとも、レミリアのこのときは、狂う以外の道はありませんでした。


しかし、幻想郷はひどく優しく、皆がその苦しみをその悲しみを理解していました。
ゆえに、レミリアは”気狂いの吸血鬼”とはなりませんでした。
そしてレミリアに与えられたのは、考えをまとめるための時間が与えられました。
レミリアは復讐を・・・報復を与えるべき相手を、いま一度考え直すのであった。
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