クソデカ感情抱え込んだ紅魔館組の異変騒動!   作:ライドウ

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昏い優しい幻想は

「マリアー!」

 

夢、悪魔は夢を見ないというが・・・今私は、夢を見ている。

私は、鏡の中にいて・・・鏡の向こうに映る景色を、ただただ見つめている。

 

「・・・お嬢様?」

 

「マリアー!これみて、また拾ってきちゃった!!」

 

「はぁ~。宝石なんて、お嬢様の宝箱にいっぱいあるでしょう?しかも・・・レッドサファイアですか、また珍しいものを拾ってきましたね。」

 

「うん!これ、マリアに上げる!!」

 

「私に…ですか?」

 

懐かしい、確かマリアは・・・そのレッドサファイアをもらったとき、あんなふうに鳩が豆鉄砲を食らった顔のような、そんな驚いた表情をしていた。

 

「うん!ほら、これ!」

 

鏡の中の私が、ポケットの中から同じようなレッドサファイアを取り出す。

綺麗な金細工が施されており、マリアに渡されたものと違って・・・随分と華やかである。

 

「これと一緒の装飾をして、私とマリアでお揃い!!」

 

「レミリアお嬢様・・・」

 

嬉しそうで泣きそうなマリアが、鏡の中の私を抱きしめて頭をなでてくれる。

この時・・・

 

この時だけは、落とし物を拾って怒られなかった。

 

 

・・・鏡がひび割れたかと思ったら、場面が切り替わった。

 

 

「うー、うー・・・まりあぁ、こわいよぉ・・・」

 

これは、私がかなりの高熱を出した時の夢だろうか。

ベットの上で、随分と赤い顔の私がマスクをしたマリアに泣きついている。

 

「大丈夫です、レミリアお嬢様。私は、ここにちゃんとおりますよ?」

 

「まりあぁ・・・て、ぎゅっとして・・・」

 

「はい・・・大丈夫、大丈夫ですよ。」

 

あの時、あのときほど・・・怖いものはなかった。

身体が、まるで燃えるかのように暑くて・・・足の先から灰になって消えてしまいそうだった。けれど、あの時マリアは決して離れずに、私の看病を続けてくれた。

 

 

・・・また、鏡がひび割れる。

 

 

「ねえマリア。」

 

これは、あの時だろうか。

私がマリアに、どうして何十年も嫌がらずに私の専属メイドをしているのか、それを聞いた時であろうか。

 

「はい、何でしょうか。レミリアお嬢様」

 

「マリアは、メイドを辞めたいってときは、あるの?」

 

確かこの時、一人の顔馴染みの若いメイドが自身の事情を理由に紅魔館のメイドを辞めた日だ。

 

「そうですねぇ・・・。私も、思考や心、感情があります。もちろん、辞めたいなぁ。と思うときはありますね。」

 

「えっ・・・・・・そ、それは・・・私のせい?」

 

あの時から、ずっと自覚はあった。

紅魔館・・・いや、スカーレットのお嬢様として生まれ、私は蝶よ花よと育てられ、いつの間にか散歩に出れば落とし物を見つけて拾う癖がついていた。

・・・ずっと、お父様に叱られたときもあったから。なおさらだ。

 

「いいえ、違いますよ?例えば、お嬢様は・・・そう、フラン様の為なら例えどんな苦しいことでもやりますか?」

 

「フランのため?それなら、もちろん・・・でも、いつまでもは無理かなぁ~私にも、休憩~とか、休日~とか欲しいから・・・・・・あっ。」

 

「そう、たとえどんなメイドでもずぅっとは働けません、適度に休まないといつかは倒れてしまいます。そして、私がメイドを辞めたいと思うときは・・・仕事が増えたときだけです。レミリアお嬢様のお世話は、全然苦ではありませんとも。」

 

優し気な笑みを浮かべて、ティーカップをトレーに乗せて持ってきてくれる。

あのときほど、甘くて優しい紅茶はなかったと思う。

 

 

・・・また、鏡が割れる。

 

 

「このものに、安らかなる眠りがあらんことを・・・」

 

この日、人間の老メイドが一人・・・夜の寝ている間に、亡くなっていた。

パチュリーがこの紅魔館に来たときに雇われていたメイドだ。

これで、あの時の人間メイドはすべて亡くなったということになる。

 

「マリア様、葬儀はすべて終わりました。きっと・・・」

 

「そう、ありがとう。さて、今日の仕事は一人少ないわよ。それに、仕事に取り掛かる前に、きちんと彼女に感謝の言葉を、そして心の整理をきっちりつけなさい。いいわね。」

 

「「「はい!!」」」

 

メイドたちが、マリアの言葉通りにしてゆく。

死んだ彼女にお礼の言葉や感謝の言葉を言い、最後に祈りをささげて彼女が眠るベットから離れる。私は、それを部屋の隅から見ているマリアに近づく。

 

「・・・マリアは、最後に?」

 

「ええ、私は彼女と、一番長く交流してましたから。」

 

曰く、あのメイドは・・・パチュリーが紅魔館に来た時に雇ったメイドたちの中でも、どんくさくて、よく失敗をする子だったらしい。だから付きっ切りで、マリアがよく面倒を見ていた。

 

「彼女、身寄りが無くて・・・ほぼほぼ捨て身でこの紅魔館のメイドになったそうです。」

 

「・・・紅魔館に雇われて、彼女幸せだったかしら。」

 

「少なくとも、幸せそうでした。自分にできることがあるなんて、とっても嬉しいことだったんですね!と、彼女は語っていましたから。」

 

確信のまなざして安らかに目を閉じている彼女を見つめるマリア。

 

「葬儀は死者の為に。しかし、それ以上に生者の為に。」

 

その時、マリアがポツリとつぶやいた言葉は・・・私の心に深く刻まれていた。

 

 

「・・・葬儀は死者の為に、それ以上に生者の為に。ね。」

 

 

~~~~~~~~~~

 

目がぼんやりと覚める、チラリと窓の外に目を向けてみればさんさんと輝く太陽が。

 

「変な時間に目覚めちゃったな。」

 

・・・結局あの後、八雲の軍勢が攻めてくることはなかった。

”気狂いの吸血鬼”が死んだものとして、全軍が撤退していった。

・・・こちらの私兵たちは、重軽傷はあるものの・・・命にかかわりがあるような怪我をしたような狼女やメイドはいなかった。

 

ブランケットを蹴り飛ばす。マリアが生きていたら怒られそうだけど・・・

今はただ考えをまとめていたい。

 

(私は、私はどうすればいいんだろう。)

 

フランとの仲直り、紅魔館の皆のケア。

これからの幻想郷との付き合い方。

 

「そう、悩みなさい。レミリアちゃん。」

 

「・・・いつの間に来たの?風見 幽香。」

 

「いつの間にか。ちゃんと、門番ちゃんとメイド長代理ちゃんから許可は取ったわ。」

 

ドサリと、風見 幽香がベットの端に座る。

そして、私の部屋に飾っている謎の植物*1を観察している。

 

「・・・その子が教えてくれてるけど、貴女・・・本当は、とってもつらいんでしょう?」

 

「・・・・・・まさか、能力?」

 

「ええ、私の能力は”植物を操る程度の能力”よ・・・まあ、普段は”花を操る程度の能力”ってだましてるけどね。」

 

その方が楽だもの。

と、ケラケラと笑っている風見 幽香。

 

「で、どうなの?」

 

「・・・・・・まあ、507年連れ添った人が、ついこの前、唐突にいなくなったんだ。」

 

「そう・・・・・・」

 

「だから、葬儀を済ませても心の整理がつかない。マリアが与えてくれた日常が、こんなにも脆いものだったとは・・・思わなかった。」

 

「・・・そうなの。」

 

風見 幽香は相槌をして、私がポツポツと語ることを聞いてくれる。

 

マリアと初めて出会ったときのこと、マリアと過ごした日々の事。

マリアが死んだとわかったあの時の事、マリアとの約束を破りグングニルを振り回したり投げたりしたこと。

 

「わたしは、わたしは・・・・・・わたしは、どうすればいいのよ!!マリアが死んだ悲しみを、この怒りを本当にただ八雲紫にぶつけていいの!?マリアは、マリアは自分を犠牲にしてまで・・・私の幸せと安全を願っている。それは、私が何よりもわかってる!!けれど、けれどぉっ!!」

 

「・・・」

 

「マリアが復讐を望んでいないことは、マリアがこんなことを望んでいないことは507年も一緒だった私が一番よくわかってる!!でも、大切な人を殺されて・・・黙ってそれを受け入れて殺された場所で住むのは嫌よ!!」

 

「それに、それにッ!!どうやってフランに謝ればいいの!?フランは、私たちを護るために煮え湯を飲みながら八雲紫と協定を結んだのに・・・私が全部水の泡にした!!フランの思いも、考えも聞かずに!!ただただ否定して、糾弾して・・・・・・こんなの、お姉ちゃんとしても失格じゃない!!」

 

顔に手を当て、ベットに横たわりながら・・・心の奥底にため込んだ気持ちを吐き出してゆく。

心がおしつぶれて、寒くて、怖くて・・・誰でもいいから、この私を殺してほしいぐらいに・・・辛かった。

 

「もう・・・いやよ。まりあ・・・まりあぁっ!!」

 

そして、最後の心の遮りが崩壊し・・・私は、壊れたかのように泣き出した。

それを、何も言わずに撫でる風見 幽香。

その撫で方はマリアとは違って、ちょっとだけ荒々しかったけど・・・でも優しさを感じられる心地の良いものだった。

*1
いつか拾ってきた植物、うねうねと動くが結構かわいらしい。それにどうやら虫を食べてくれるようで、おかげで私の部屋には虫がいない。

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