トンパからハンター試験受験者の中での注目株を紹介されていたゴン達。
「ぎゃー」
という野太い男の叫び声に驚き、声のした方に目をやると…
「アーラ不思議、腕が消えちゃった。タネも仕掛けもございません♠︎」
群衆の中心では人垣に穴が空いている。誰もその現場に近寄りたくないのだ。人垣の中心にはピエロのような格好の男と片腕を切り落とされた少女が立っている。「女相手に酷えことしやがる」「よく見りゃ美人じゃねえか」と同情と義憤に駆られつつも野次馬に興ずるしかない男達。
「ネテロ様に言われてオーラを抑えていましたけれど、やはりダメですわね。カミュの忍び走りのようにオーラを消すのでなく、オーラはそのままに隠せれば良いのですが」
「気をつけようね、人にぶつかったら謝らなくちゃ」
「あら、ごめんなさい。ええと、道化師様」
片腕が切り落とされているにもかかわらず、ご近所さんに朝の挨拶をするくらいの気軽さでニコニコと謝罪を述べる少女。
「へぇ、並の使い手だと思ってたけど、随分余裕じゃなーい?僕は奇術師ヒソカ。これは名詞替わりさ」
「どうも」
少女は投げ渡されたトランプを残された右手でキャッチする。このトランプにも凄まじい周がかけてあったのだが、少女は難なくとってみせた。
「私はセーニャ・B・ラムダ。セーニャとお呼びください。ヒソカ様。」
少女は落ちている左腕を拾うと、肩口に合わせる。「ベホイム」と唱えると、青緑のオーラに包まれて、腕は元通り接合した。そのオーラの煌めきは、非念能力者をして神々しい光を幻視するほど強い光だった。そこかしこで「今光ったよな」などざわついている。
「へぇ、強化系かな。そうは見えないけど(んんーッ100点満点!!)」
「全く害意を感じませんでしたわ。油断してしまいました。」
うふふと微笑むセーニャ。彼女はヒソカが殺気を感じさせずに攻撃した達人だと思っているが、それは間違いだった。ヒソカはちょっとしたイタズラ感覚であったし、殺すつもりはなかった。
「中堅クラスのオーラ量に見えたけど、絶を中途半端にしてるのかい?面白いモノを見せてくれたお礼にいいことを教えてあげる。」
「きゃっ」
ぐいっとヒソカに引っ張られるセーニャ。そのままヒソカに抱きすくめられた。
セーニャは初心なのである。何せ120年ものの生娘だ。反射的に手を出すのも無理からぬところである。
「グボァっ!」
とっさのビンタにはゴンさんのボッに匹敵するオーラが込められていた。フルパワービンタである。幸いにも格闘スキルが皆無のセーニャビンタにはヒソカの硬による防御が間に合った。洞穴の壁にかっ飛んでいくヒソカ。バンジーガムに繋がったままのセーニャは思わずつんのめった。
「何かしら、見えない…オーラ?この技が有ればしのびばしりを上手く再現できるかしら。…っと、いけないヒソカ様は生きてらっしゃるかしら。」
「奇術師ヒソカがのされた…あの女やべえな、千切れた腕くっつけてたし。」
近寄らねえほうがいいぜ、とアドバイスするトンパ。
「ヒソカでさえヤベエのに上がいるのかよ。でもすんげー美人だな」
「鼻の下を伸ばすなレオリオ。確かに美人なのは同意だが」
首が180度回転してしまったヒソカ。幸いにもまだ心臓が動いていた。鼓動を確認してホッとしたセーニャはオーラを集中する。ノータイムで魔法を放つことはできるが、抱きすくめられた嫌悪感から治療することに抵抗を感じていた。
「いけませんわ。私のせいですもの。」
「うわー、もう助からないよ。首の骨折れてるもの」
セーニャには近寄らないことで同意していたはずのゴンチーム。慌てるトンパとレオリオを尻目に「そういえばゴンは静かだったな」とクラピカは1人諦観を抱いていた。
「あら、坊や。このくらいの治療は私、朝飯前ですわ。魔法使いですから。」
「すごーい!お姉さん魔法が使えるの?」
目をキラキラさせるゴンに対し、(そういえば一般人には能力を隠さねばならないのでしたね)と今になって焦り出すセーニャ。
「見たところ、首の関節が外れてるだけですわ。上手く元に戻せば助かるはず」
「すごい!お医者さんみたいだ!」
嘘である。骨折はしていないが、首の椎間板と脊椎神経がいかれてしまっている。
「ベホマ」ゴキッ!
魔法による再生に合わせて、ヒソカの頭を掴んで無理やり首を回転させた。側から見れば、魔法(物理)に見えるのである。
「「「物理じゃねーか!」」」
ギャラリーのツッコミが重なる。
「あれ?ボク生きてる?」
ムクリと起き上がるヒソカに群衆はたじろぐ。
「はい。治療はうまく行きましたよ。」
「さっきのベホイムかい?他人の治療ができる能力…強化系と放出系かな。その強化率なら攻撃系のやつ(発)にすれば良いのに」
「それでは試験がありますから、ごきげんようヒソカ様。」
ヒソカから距離を取ろうとするセーニャ。そこにゴンが待ったをかけた。
「待ってよ魔法使いのお姉さん!オレたち3人で来たんだけど一緒に行かない?1人よりずっといいよ!」
「「ちょっと待て」」
ゴンの暴走を慌てて止めるクラピカ、レオリオ。
「ええ、かまいませんよ」
ゴンがセーニャを引き連れて来てしまい、どうにでもなれの心境で受け入れた2人と冷や汗を隠せないトンパ。
「おっ、そうだお近づきの印だ。飲んでくれ。」
自らヤバいやつ認定したセーニャにも下剤入りジュースを渡すトンパ。短時間で警戒心を解いたのはトンパの図太さ故か、はたまたセーニャの人畜無害な清浄なるオーラのせいか…
「ありがとうございます」
セーニャは渡されたジュースを飲んだ。後に続いてゴンもジュースを口にするが…
ゴンはジュースをだばーっと吐き出した。
「このジュース古くなってるよ!味が変」
「まあ、私は気付きませんでしたわ。」
セーニャはお腹でガスがグルグルと動くのを感じ、キアリーですぐに解毒した。
(味も匂いもしないはずの下剤なのにこのガキどんな味覚してやがる。それどころかこの女だ。半分は飲んでるのにケロッとしてやがる。さっきの猫目の白髪チビみたいに毒が効かねえのか?)
「あの娘、イイねえ❤️100点満点だよ。ボクがあった中で1番綺麗なオーラをしている。」
「そんなに気に入ったの?確かにヤバそうなオーラしてるね。アイツは眩しすぎる。キルに近づけるわけにはいかないよ。」
「それに見たかい?最初は中途半端な絶でオーラを中堅ハンタークラスに抑えていたのに。今はキミのところの親父さんみたいなオーラ量を隠で隠してる。ボクのバンジーガムの隠から盗んだんだね。」
「ヤバいね。あれで強化系じゃないんだろ。」
「それが全く分からないんだ。あの回復能力は強化系だと思うんだけど、性格的には合わないだろ?」
「オレはなんでもイイよ。キルに近づいたら殺すだけだから。」
『一筋縄ではいかないハンター試験、セーニャの未来はいかに!?』
セーニャ以外に名前のあるキャラはクロスオーバーしません。オリキャラも出しません。
次回!
『終わりの見えないトンネル』