夢を見る。まだ自分が『自分』では無い時の記憶を見る。
《お前は狂っている。それも『異常』にだ。だから、だから貴様はここで、貴様の狂気が社会にまた沈殿する前に貴様をここで殺す!!》
紅蓮のような髪をした女が自分にベレッタM92の真っ黒な銃口を向けている。そして引き金に掛かっている左手の人差し指が折り曲げらていき鉛玉を銃口から発射しようとしている。
応戦するために自分もさっきまで人を殺していたがために血でベットリな左手で持っている年季の入ったワルサーP38の銃口を心臓に狙い定め引き金を引く。
銃声音が二発同時に鳴り響く。その時、どちらに鉛玉が貫通し死んだのかは誰も知らない。ただ、その時の月は憎たらしい程に惚れぼれする程に満月だった。
The scene is replaced
目を覚ます。それも最悪な事に自分が一番思い出したくもなければ口に出したくもない記憶を夢で見た。その不快感は尋常な事ではない、しかし、夢ならば仕方ない、誰にも操作できなければワザと見させる事も出来ない。逆に見せれる者がいれば自分が殺している。
後、もう少しこうして横になって睡眠を貪り喰らい所だが生憎仕事に行かなければならない。眠りたいと警報器のように頭の中でガンガンと自己主張している欲望を捻り潰して起き上がる。
起き上がると同時に自分がいつも寝ている安いベッドがギシギシと不愉快な音を立てる。そんな音に毎日のように感じるイラつきを今日もまた感じながらベッドから起きて立ち上がる。
腹を満たすには些か足りない少量の朝食を時間を掛けて胃袋に詰め込む。朝食を食べ終わると椅子から立ち上がり、いつも仕事に行くのに着ている安物のスーツを着る。
そして仕事の準備をすると玄関で革靴の靴紐を結びながら頭の中で考える。
何故、自分は新たな命を授かったのだろう。その事がいつも靴紐を結んでいる時に脳裏に浮かぶ。だがそんな事どうでもいい。靴紐を結び終わりドアの取っ手に手を掛けてドアを開く。
自分にとってこれは大きなチャンスであり、神からのプレゼントだろう。
「まぁ、神など少しも信じてはないがね」
何より、よりによって自分に神が救いの手を差し伸べるわけないだろう。
何故なら自分は『殺人鬼』なのだから。
自分でも気付かない内に笑っているらしい。きっと鏡を見ればそこには邪悪で禍々しい一人の『殺人鬼』が映っている事だろう。だが、それもまた良い事だ、自分の性〈サガ〉は受け入れなければならない。自分の殺戮衝動を受け入れなければならない。
「まぁ、楽しんではいる。自分の性〈サガ〉と言う奴をな」
家から出てみれば視界に映るはたくさんの『素材』がゴロゴロといる。
さぁ、今日もまた作るとしよう。ミュージアムに飾る芸術を。