第二次スーパーロボッコ大戦 XD編(if) 作:ダークボーイ
「これが現在私達が置かれている状況です」
ほぼ荒野とクレーター×2だけとなった研究所跡地に臨時設置されたキャンプで、現在NORNの置かれている説明がされていた。
「信じられない、と言いたいけれど、他でもない証拠が目の前にあっては信じざるを得ないわね」
「ええ、そうでしょう」
真剣な顔をするナスターシャが事情を説明していた人物、他でもないもう一人のナスターシャを見て呟き、そのもう一人のナスターシャ、隻眼に車椅子姿の彼女も頷く。
「本当なら、今日ここで私はこうなるはずだったのだから。ついでに言えば、内臓も幾つか人工臓器に交換してるわ」
「だが、結果だけ見れば完全聖遺物の破壊に研究所の破壊、大問題だぞ!」
避難から戻ってきたVIPの一人が思わず声を荒げる。
「仕方あるまい。それだけ厄介な相手だったのは周知でなかったのか?」
同じく事情説明に参加していたナツキが苦言を呈するが、それでも人的被害以外の損害にVIP達は険しい顔をしていた。
「犠牲者が出ない事に苦慮した結果だ」
呉鎮守府の杉山提督が威圧的に断言するが、それでもVIP達の顔色は晴れない。
「話から察すれば、装者の絶唱で封じられたのではないのか?」
何故か下半身に上着を巻いた将校の話に、NORN側の者達の表情が険しくなるが、そこでその将校の首根っこが掴まれ、持ち上げられる。
「つまりそれは、あんな小さな子の命と引き換えにしてもいいって事か?」
「そ、それは結果論だろう!?」
杉山提督のそばに控えていた武蔵が、片手で将校を持ち上げて(艤装解除済み)問うが、相手は躍起になって反論する。
「その結果を変えるために私達は来たのです」
「だがそれがこの被害だぞ! 抑え込めるならば…」
「子供達に人体実験を行ってまでか?」
まだ反論する将校に、杉山提督は鋭い視線を向ける。
「ノイズの脅威に対抗するためだ! 装者を増やせる物なら幾らでも…」
「…提督」
「少し静かにしてもらおう」
段々暴言がひどくなってくる将校に、武蔵が杉山提督に視線を向けると、杉山提督が許可を出す。
すぐに武蔵が将校の首だけでなく襟元を掴む。
「なんだ脅しには…」
「大・戦・艦おろし~!!」
次の瞬間、将校の体は武蔵の手によって猛回転の後、天高く放り投げられる。
絶叫を上げる暇も無く、将校の体がVIP達の視界から消える。
「さて、では続きを」
「ま、待て!? お前達は脅迫に来たのか!?」
続けようとする隻眼のナスターシャに、残ったVIPが慌てだす。
「下手な交渉は無意味だと体験済みですので」
「だ、だがこれは…」
「ぁぁぁああああ!」
そこへ落ちてきた将校の声が地面に激突する直前、アンカーがその体を地面ギリギリで止める。
「やっぱりこうなったのね」
「股間程度では無意味だったようだな、マイスター」
前もって何か飛んで行ったらそうするよう言われていたフェインティアとムルメルティアが恐怖で泡を吐きながら失神している、しかも下半身に巻いていた上着もどこかに飛んで行って丸出しの将校を適当に放り投げる。
その向こうでは、完全に廃墟と化した研究所を、マイスター乙HiME達が中心となって解体していた。
「ホントに壊していいんですかこれ?」
「そういう指示よ、残してたら人体実験されるし」
「いっそ更地にしろとも言われてるしな」
アリカがエレメントを手に廃墟を木っ端みじんにしていき、ナオも同じようにする中、用意していた図面を見ながら指示をしていたビスマルクも頷く。
「………どうやら相当未来でひどい事が有ったようね」
「ええ、それはもう………」
二人のナスターシャが、どうやら全く容赦するつもりのないらしいNORNの面々に思わず顔を見合わせる。
「そういう訳で、ネフィリムを破壊したついでにセレナを貸してほしいと」
「ええ、こちらで使う聖遺物の発動に装者が多く必要で」
「一応その間、こちらで試作の対ノイズ兵装も貸し出すそうだ」
「かなり取り扱いは慎重にせねばならないそうだがな」
ナスターシャに続き、ナツキと杉山提督もあれこれ説明していく。
「もし、彼女の貸し出しを許可しないと言ったら?」
「そん時は勝手に連れてくだけだ。あんな小さな子を見殺しにする連中にこれでも遠慮してるぞ?」
VIPの一人が釘を刺すが、そこへ武蔵が手を鳴らしながらその釘を強引にたたき返す。
「言ったはずです、下手な交渉は無意味だと体験したと。これでもかなり譲歩しているのですよ?」
「手っ取り早く人員だけ退避させて浸食兵器を使用するという手も有った。まあ結局はあまり結果は変わらなかったようだが」
「人的被害は出なかったのなら悪い結果ではないだろう」
かなり勝手な事を言うNORN指揮官達にVIP達は内心冷や汗をかいていた。
(とんでもなくヤバい連中だ………)
(装者一人引き渡すだけで帰るならそうすべきか?)
(だが研究所がこれでは後の事が…)
思い悩むVIP達だったが、そこで外から凄まじい轟音と振動が響いてくる。
「な、なんだ!?」
「おっと、もう迎えが来たか」
VIP達が驚いて周辺を確認する中、ナツキは冷静に時間を確認する。
轟音と共に、巨大な艦影が間近まで迫ってくると停止する。
「なんだアレは!?」
「あれもお前達のか!?」
「エアリーズ共和国所有の超弩級潜砂空母《スズシロ》だ。我々の帰還用に用意しておいたのだが」
「あんな物まで所有してるのか!?」
「アレでもNORNの所有している母艦の中では中規模だ。もっと巨大な宇宙戦艦も保有しているらしい」
「う、宇宙戦艦だと………」
ナツキと杉山提督の説明に、VIP達は完全に絶句する。
「い、いいだろう。セレナ・カデンツァヴナ・イヴの一時出向を許可しよう………」
「ご理解ありがとうございます」
「理解していると思っているのか?」
「理解しない方が今後のためでしょう。常識の中に生きていたいなら」
隻眼のナスターシャが礼を述べ、苦い顔のVIPが嫌味を返すが、杉山提督が鋭い視線で反論する。
「それじゃあ、話は付いたって教えてくる」
「ええ、頼むわ。私は私ともう少し話が有るから」
ナツキが交渉か脅迫か分からない結果を知らせに行く中、二人のナスターシャは険しい顔で対峙する。
「さて、少しこれからの話をしましょう。ここで歴史を改変した以上、あなたはこうならないのだけど」
「安心、していいべきかどうか悩むわね」
「ええ、取りあえずは…」
「そういう訳で、そのJAMってエイリアンの母星に行くのに、装者が最低9人必要になったという訳よ」
「よく分からない………」
「そうだね………」
マイスター乙HiMEの母艦である空中戦艦、元はヴィントブルーム王国で死蔵されていた宇宙船を改造した物の艦内で、シャワーを浴びながらマリアは過去の自分と妹に現状を簡潔に説明する。
「ま、そうでしょうね。私だって正確には理解してない、というかNORN内部でもJAMの考えてる事なんて理解出来る人は極々少数よ。文字通り正真正銘のエイリアンなんだから」
「そんなのと戦ってるんだ………」
「人間のそれとは根本的に違うけれど意思を持った相手だからね。ノイズよりもはるかに厄介よ。色んな世界の組織が団結して、ようやく決戦間近まで持っていけたんだから」
「それで、そのフェアリィとかいう星へのゲートを開くために聖遺物と装者がいるのね」
「そう。まさか過去に行く事になるとは思わなかったけれどね。でも、パラレルとは言え願いが叶ったわ」
なんとか頷く姉妹に、シャワーを浴び終えたマリアが優しく微笑みかける。
「必要なのはギャラルホルンの発動まで。その後にセレナはすぐに返すわ」
「大きいマリア姉さん、大丈夫なの? そんなエイリアンの星なんて………」
「多分ね。見たでしょ? 色んな世界から色んな戦士が集まってるの。無論シンフォギア装者もね。それに、せっかく助けたんだから、また危険にさらす事はしたくないの」
「そう言うなら………」
「マリア~、話ついたそうデス」
「一人投げただけで納得してくれたって」
「………投げた?」
シャワールームの外から切歌と調の知らせに何か不穏な単語が混じった事にセレナが首を傾げる。
「セレナの一時出向を上も認めてくれたようね」
「その、投げたって………」
「大丈夫、ちゃんと受け止めてるはずだから」
「こっちのマムが話し合いは無意味だろうって断言してたデス」
「前にひどい目に有ったって」
セレナが自分が死んだ後に姉達に何が有ったのかが全く想像出来ずにいる中、ふとそこでこちらの姉がやけに静かな事に気付く。
そして、マリア(小)がシャワー上がりのマリアの肢体を凝視している事にも。
「え~と、こっちのマリア姉さん? 何を…」
「これが、未来の私………」
「どうかした?」
過去の自分の視線に気付いたマリアも首を傾げるが、そこでマリア(小)がいきなり拳を握りしめガッツポーズをする。
「よし、美人だ!」
「………ちょっとそこの私、言っておくけれどこのプロポーション、維持に大分苦労してるからね?」
「カップラーメンの食い過ぎに注意デス」
「注意してるのにたまに勝手に食べてるし」
「い、いいじゃないたまには!」
マリアが過去の自分に注意するが、そこで切歌と調の突っ込みに思わず赤面する。
「とにかく、帰る準備だそうデス
「セレナは何か準備有るなら早めにだって」
「準備って言っても………」
「研究所消し飛んじゃったしね………」
セレナとマリア(小)が戦闘の余波で消し飛んだ研究所、クレーターにはならなかったが明らかに使用不能となっていそうなダメージの居住棟とそこにあった私室を思い出す。
「大丈夫、うまく行けば数日で帰れるわ」
「何か有っても追加の装者はすぐ帰す事になってるデス」
「あんまり離れると因果律がどうこうって」
着替えながらシャワールームの脱衣所から出てくる三人にあれこれ説明するが、幼い姉妹は微妙に首を傾げる。
「ともかく、私はそのギャラルホルンとかいう聖遺物の起動を手伝えばいいのね?」
「そう、それだけ。そのために私達は来たんだからね」
「もう一人の方は対ノイズ戦力の過半数を投入したのデス」
「こっちは質とサポート重視したって」
「どれだけノイズと戦える人いるの………」
「他にも色んな世界の敵とも戦ってきたからね」
ネフィリムと戦っていた色んな戦士達を思い出しながら呟くマリア(小)にマリアはウインクする。
「さて、それじゃあ戻って最終決戦の用意よ!」