第二次スーパーロボッコ大戦 XD編(if)   作:ダークボーイ

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第二次スーパーロボッコ大戦 XD編(if) EP09

 

「そういう訳で、今私達はJAMと呼ばれる宇宙人と戦う事になっている」

「うん分からん」

 

 香坂財団謹製万能医療コンテナ内のベッドに横たわる奏に、ここまでの経緯を説明した未来の翼だったが、肝心の奏は一言で返す。

 

「だろうな………こっちもはっきり言ってよく分からねえ」

「それで戦ってるんですか?」

「どうにかしないと、やられっぱなしで」

 

 狭いコンテナ内に半ば押しかけている他の装者達も頷いたり首を傾げたりしているのを見ながら、奏はため息を漏らす。

 

「とにかく、こうやって私は助かったし、犠牲者もほとんど出なかった事には感謝するよ」

「前もって被害を知っていれば、対策を立てるのは容易だからな」

「因果律に変な影響出るかもしれないから、あまりおすすめ出来る事ではないのだけど」

 

 未来の翼の説明に、響の肩にいた紗羅檀が釘を刺す。

 

「とにかく、JAMの本拠地に行くには奏の協力が必要だ。すぐにとは言えないが、手伝ってほしい」

「構わないぜ。まあ司令が許可するかだが」

「こちらの風鳴司令は未来の風鳴司令が今説明と説得をしているはずだ」

「ホントに二人いたのはびっくりした………」

「そっちの司令も来てんのかよ………これ以上こっちの頭を混乱させないでくれ」

「すまん………」

 

 呆れている奏に、未来の翼が小さく頭を下げる。

 

「それにしても、そっちじゃ私が死んで大分苦労したみたいだな」

「まあ………色々有った」

「こんなに性格荒んじまって…」

「………は?」

 

 明らかに性格が一変している二人の翼を見ながら、奏の呟いた言葉に未来の翼が思わず気の抜けた声を漏らす。

 

「何かに付けて自信が無くて、いつも奏、奏と私の後ばかり付いてきたのが、こんなになっちまって」

「いや、それはその…」

「ライブの時だっていつも開演前に子犬みたいに震えてたってのに」

「へえ~、翼さんが…」

「そう言えば、全然片付け出来ないのは直ったのか?」

「そこはまだだな」

 

 奏の語る過去の翼に響とクリスが頷きながら興味深そうに耳を傾ける。

 

「奏、それ以上は言うな! 今の私はシンフォギアチームの戦闘リーダーなんだ! 沽券に関わる!」

「リーダー? 私が?」

「出世したな~、あんなに気弱だった翼が…」

「他に何かあります?」

「もっと聞きたいな~、翼先輩の過去」

「お前達も聞くな~!」

 

 何か含み笑いをしながら更に聞こうとする響とクリスに、未来の翼の声が外にまで響き渡った。

 

 

「向こうは大丈夫そうだな」

 

 医療コンテナから何かやたら元気そうな声が響いてくるのを聞いた大神が、頷きながらも各部隊の損害状況を確認しつつ、撤収準備を進めていた。

 

「問題は、この周辺被害だな」

「あそこまでの超大型は想定外だったし、パレットチームが頑張ってくれすぎたからね」

 

 被害者を抑えられた事は予定通りだが、何かあちこちやたらと見通しが良くなっている状況に大神が思わずぼやき、大神に代わって多機能タブレットでデータ整理をしていたプロキシマも思わず頷く。

 

「因果律とやらがどういうのかまでは分からないが、損害賠償はした方がいいだろうか………」

「その辺は風鳴司令同士が話し合って決めるらしいよ」

「当人同士だと話が合わない事は無いか…」

 

 言葉の途中で、背後からいきなり轟音が響き渡り、大神もプロキシマも思わず手が止まってそちらを見る。

 そこには、なぜか対峙している二人の弦十郎の姿が有った。

 

「あの、風鳴司令。一体何を…」

「おお、大神司令か。少し離れていてくれ」

「自分同士と戦える機会なんてまず無いからな」

「これほど手加減がいらない相手もいない。ちょっと手合わせしてみようという事になってな」

「………何をどうしたらそういう事に?」

 

 双方楽しげな二人の弦十郎に、大神は思いっきり首を傾げる。

 

「そういう事だから、今後については手合わせしながら話し合う事にした」

「それでは行くぞ!」

 

 何か妙な事を言いながら、二人の弦十郎の拳がぶつかり、生身とは思えない異音と衝撃がその場を突き抜けていく。

 

「………なるほど、確かに響の師匠だね」

「響君はもうちょっと大人しいと思ったが」

「とにかく離れよう」

 

 プロキシマが凄まじい激戦を繰り広げながら、確かに何か話し合っているらしい二人の弦十郎に呆れ果て、大神も思わずため息を漏らす。

 

「後始末が更に大変になりそうだ………」

 

 

「点呼確認~」

「パンツァーチーム、そろってます」

「佐世保班、全艦集結」

「光の戦士隊、皆いま~す」

 

 先行帰還の人員を皆で確認しながら、サポート班やメンタルモデルが中心となって簡易転移装置の設置が進められる。

 

「本当に帰っちゃっていいのかな?」

「確かに、ちょっと予想以上にすごい事になっちゃったけど………」

 

 どりすがぽつりと呟いたのを聞いた吹雪が、局所災害でも起きたかのような惨状に困り顔になる。

 

「人的被害が最小になったからこれでいいのだ」

「その通りだな」

「そ~かな~?」

 

 それぞれの肩の上にいたマオチャオとランサメントが頷くが、周囲の者達は首を傾げるだけだった。

 

「詳しい所は風鳴司令同士の話し合いで決めると聞いた」

「向こうからすごい音が聞こえてるけれど…」

「諜報出身の割に脳筋な所有るのよね、あの人…」

 

 長門が話をまとめようとするが、向こうから響いてくる生身同士とは思えない衝突音にポリリーナとミサキが呆れた顔をする。

 

「あっちはほっといて、帰れる人から帰るわよ~」

「ライン形成確認、エネルギーチャージ、準備できた」

 

 ヒュウガとコンゴウが転移装置の起動を確認した所で、皆が順番に並ぶ。

 

「いちいちメンドくせ~よな。来る時みたいに一遍に帰れりゃいいのに」

「う~ん、ミラージュに頼めば可能かもしれないけど…」

「永遠のプリンセス号は最後の手段よ。前はそのせいで大分大騒ぎになったらしいわ」

「どういうルートからかGに苦情来たそうよ」

 

 少人数ずつの順番待ちにねじるがボヤいたのを聞いたユナがある提案をするが、香坂 エリカと肩にいたイーダに速攻却下される。

 

「市街地じゃなければ豪雷号かエクレールで一度に出来るのですけれど」

「この間それで文句言っていたのは誰だった?」

 

 転移装置を操作しながらボヤくヒュウガにコンゴウが釘を刺す。

 

「あれはあんな骨董品で無茶させられたからですわ!」

「401が行くなら自分もとも言っていたな」

「イオナ姉さま一人にあんなのを任せるわけにはいけません!」

「なら我らの仕事をしよう。ゲート発生確認」

「さあとっとと戻りなさい!」

 

 半ばやけくそヒュウガが指示する中、皆は次々と転移装置に入っていった。

 

 

「………ここは?」

 

 香坂財団謹製万能医療コンテナ(2号)の中で目を冷ました女性が、周囲を見ようとして体が微動だに出来ない事に気付く。

 同時に周囲で物音が聞こえ、武装した者達が一斉に警戒した事にも。

 

「あの、貴方達………」

「意識が戻ったみたいね、フィーネ」

 

 ISを展開している楯無が代表して呼びかけるが、当の女性は首を傾げる。

 

「フィーネ? それは………いえ私は………」

 

 何か様子がおかしい相手に、楯無は眉を寄せる。

 

「記憶が混濁してるみたい。脳にダメージは無かったはずだけど………」

「ちょっと強く殴り過ぎたのでは?」

 

 盾無の隣で愛刀の鯉口を切っていたさくらも、相手に敵意が無い事を悟って刀を収める。

 

「一応暴れられないギリギリのラインで治療は施したはずなのだけど………」

「暴れる? 私が?」

「覚えてないんですか?」

 

 全身のケガと麻酔で、首だけを唯一動かせると言っても過言ではない相手が、首を傾げ続ける事に楯無とさくらも顔を見合わせる。

 

「貴方の名前は?」

「櫻井 了子、特異災害対策機動部二課の研究者………なのだけど、なんで私こんな大怪我してるの? いえ、そもそも私は…」

「………ちょっと大神さんと風鳴司令に知らせてきます」

「そうして。フリじゃないといいけど」

 

30分後

 

『すいませんでした!』

 

 パレットチームが全員そろってベッドの上の女性に頭を下げる。

 紛れもない、櫻井 了子当人に。

 

「いいのよ、気にしないで。おかげで頭はすっきりしたし。それにしてもまさか乗っ取られてたなんてね………道理で記憶が飛び飛びな訳よ」

 

 両手両足骨折の紛れもない重傷だが、確かにすっきりした顔の了子にパレットチームは頭を下げ続けていた。

 

 

「フィーネが消えた?」

「らしい」

「消える物なのか?」

 

 二人の風鳴司令と大神が、導き出された結論に半信半疑になっていた。

 

「あのフランス人形のような子の判断は確かなのか?」

「少なくてもアイリスは彼女の中にフィーネという人物はいないと言っている」

「NORNでもレアなテレパス能力の持ち主だ。ごまかせないとも言い切れないが、あれだけの負傷でその余力は無いだろう」

「確かフィーネは器が死ぬと、次の器に転生すると聞いていたが………」

「死にそうな目に会って、逃げたか引っ込んだか………こちらとしても全く予想外だ」

「まあ、あんだけ派手に殴られたらそうなっても不思議じゃないが。正直オレは死んだと思ってた」

「オレもだ………」

「とにかく、後はこちらでなんとかしよう。念の為監視も含めてな」

「頼む」

 

 

「は? フィーネが消えて了子先生に戻った?」

「それ本当ですか!?」

「まだ半信半疑だがな」

 

 フィーネ消失と了子復活の報に、装者達も一喜一憂する。

 

「おいおい、了子先生が黒幕ってさっき言ったんじゃねえのか?」

「正確には櫻井先生の器に転生したフィーネが黒幕だ」

「ややこしい………」

 

 奏と過去の翼は理解しきれない中、未来の翼もどう注釈すればいいかを迷っていた。

 

「ちょっと強く殴り過ぎたんじゃ………」

「かもな。誰だパレットチームに余計な事言ったのは」

「………はい」

 

 響と未来の翼が思わず唸る中、クリスが小さく手を挙げる。

 

「お前か雪音。まあ下手に手加減出来る相手ではないとは言ってはおいたが」

「いやまさかマジであんな大技叩き込むたあ思ってなくて………」

「私達と違って、純真で素直な者達だ。バカ正直に鵜呑みにしてしまったか………」

「みんないい子だからね~」

「悪かったなスレてて」

「シンフォギア装者なんてやってたら大なり小なりスレっだろ」

「そうかな………」

 

 喧々諤々にアレな話をする装者達だったが、そこでコンテナのドアがノックされる。

 

「どうぞ」

「あの、こっち準備出来ましたけど」

「おっとそういやもう一つあるんだった」

 

 顔を覗かせた亜乃亜からの連絡に、クリスが思い出したかのようにそちらへと向かう。

 

「まだ何かあるのか?」

「恐らく今一番スレてる奴を迎えに」

「それって?」

「ここの私だよ」

 

 

数時間後 ヨーロッパ某所

 

 フィーネの隠れ家兼研究所の一つの扉が、轟音と共に吹き飛ぶ。

 

「なに!? 何が起きた!?」

 

 突然の事に驚愕する過去のクリスが、吹き飛んできた扉から入ってきた人影に気付く。

 

「誰!?」

「誰って、見れば分かるだろ。私はお前だよ、三年後のな」

 

 入ってきたのが、シンフォギアをまとったクリス自身だった事に、過去のクリスが唖然とする。

 

「な………どうして………フィーネの仕業!?」

「フィーネは多分もう帰ってこねえよ。まあ違う器に入ってる可能性も無いわけじゃねえけど」

「あの、クリスちゃん………ちょっと派手すぎない?」

 

 混乱している過去の自分に、一応適当に説明する未来のクリスだったが、同じくシンフォギア姿の響が吹き飛んだ扉を見ながら呟く。

 

「お前達、フィーネをどうした! なんで、シンフォギアをそれもアタシが使ってるんだよ!」

 

 絶叫しながら、自身の首にかけられているペンダントをためらうように手を伸ばすが、思い直したかのようにそれを振り払い、そばにあった武器を構える。

 

「やはり歌わない……いや、歌えないか。あ~、そういやこの頃フィーネに色々叩き込まれたんだった」

「落ち着いてクリスちゃん!」

「言って聞く玉じゃねえのは知ってるだろ、行くぞ!」

 

 

更に数時間後

 

「とりあえず、なんとか説得出来た」

「むが~~!」

「それがか?」

 

 戻ってきたらなぜかボロボロの未来のクリスの足元、ロープその他で簀巻きにされて猿ぐつわまで噛まされている過去のクリスの姿に、未来の翼は呆れ、過去の翼は呆然とする。

 

「これって、貴方よね?」

「まあな」

「自分同士だからなんとかなると豪語してたのは誰だ?」

「いや、それがこの頃のクリスちゃん、フィーネが帰ってこないって聞いたらすごい暴れちゃって」

「その結果がこれか………」

「むご~~!!」

 

 完全ミノムシ状態だが、まだもがいている過去のクリスに未来の翼が冷めた視線を向ける。

 

「ま、無事ならいいんじゃねえのか?」

「奏!」

「起きて大丈夫なのか?」

 

 外から聞こえてくる物音に医療用コンテナから出てきた奏の姿に、二人の翼が反応する。

 

「なんとかな。妙なドリンクだの注射だの治癒能力だのしこたま食らったしな」

「色んな治療法があちこちから持ち込まれたからな。よほどの事がない限りなんとかなるらしい」

「サイボーグ手術とかクローン手術とかしなくて済んでよかったわね」

「………そんなのする予定だったのか」

 

 かなり強引な治療に奏が首を鳴らしながら具合を確かめるが、翼の説明に紗羅檀が余計な事を追加して奏の顔が引きつる。

 

「とにかく、急いでんだろ? こっちの司令の許可は出ている。だったら早く行こうぜ」

「………ありがとう。それでは奏を少し借りていく」

 

 奏の申し出に未来の翼が頷くと、過去の自分へと声をかける。

 

「大丈夫………なの?」

「余計な事はさせない。惑星フェアリィへの通路を開くだけだ」

「相当派手な作戦なんだろ? 手伝ってもいいぜ」

「いえ、奏さんを借りる以上、ちゃんと返さないと悪いですし」

「つう訳でその間これ頼む」

「ふご~~!」

「………え?」

 

 あくまで最低限の援護を申し出る未来の装者達だったが、未来のクリスが足元の過去の自分を指差した所で過去の翼の表情が凍りつく。

 

「その、どうすれば………」

「とりあえずアンパンでも食わしときゃ大人しいと思うから」

「むぐ~~!」

「本当に?」

 

 表情がこわばったままの過去の翼が、まだ抵抗している過去のクリスにどう接するべきか迷う。

 その視線に気づいた過去のクリスが、睨み返そうとすると、その時になってやっと目の前の翼が二入いる事に気づく

 

「むが?!」

 

 何度も二人の翼を交互に見比べた過去のクリスが、今度は未来のクリスへと視線を向け、更に暴れ始めた。

 

「む~! むぐぐ~!」

「あ~先輩見て更に混乱したか。自分も二人いるし、他にも二入いるしじゃな~」

「司令のオッサンも二人連れてくるか?」

「奏さん、それは勘弁してあげてくださいよ」

「本当に大人しくなるのか? なぁ?」

「なに落ち着けば、素直になるさ。頼んだぞ、過去の私」

「そういや、装者が調整中の除いて六人いるって話だけど、あと三人はどうしてんだ?」

「もう一人の装者の救出に向かっている」

「向こうもそろそろ終わったか?」

「無事だといいんだけど………」

 

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