ヤゾフは強い男だ。
だが、彼は強すぎる。
それはロシアのみならず、世界をも滅ぼすこととなるだろう。
ヤゾフは司令部にいた。
「諸君。我々は何者か。」
「我らはブラックリーグ! 我らはロシア!」
「どこまでゆくのだ。」
「ベルリンを行進するまで!」
彼はいつもの朝礼を終え、司令部の2階から通信員を見守っていた。
平均的なブラックリーグの兵士はドイツの兵士に劣ることはない。
だが、我々はある問題の答えを探している。
<原子爆弾>
それは悪魔の兵器だ。
だが、その悪魔はこちらが命令しない限りは絶対に周りの人を殺さない。
相互確証破壊を確立するのにちょうどいい。
そうすれば世界中から嫌われることもなく、また愛されることもない。
彼はただ自分の手でロシアを没落させた第三帝国を破滅させたいだけだ。
彼がこの世で最も憎むものは<第三帝国>なのだから。
それが彼の意思であり、使命でもある。
あの忌々しいものが存在する限り、自分は自由にはなれない。
自分が求めるのは完全なるロシアだけなのだ。
彼が見つめているのは通信室にいる通信手だった。
通信手とは無線を使って指令を伝える役目である。
ヤゾフはこの男が気に入っていた。
彼と同じ人種だからというわけでもなく、どこか放っておけないようなところがあるからだ。
まるで自分自身を見ているようだった。
彼もまた、自分と同じような悩みを抱えてきたからである。
しかし、そんなことはどうでもよかった。
重要ではない。
重要なのは自分の仕事を全うすることだ。
今日も今日とて、ヤゾフは無言のうちに自分に言い聞かせた。
ヤゾフは窓の外を見ながらこう考えていた。
今や彼は悪魔となった。
彼にはもう怖いものなどない。
彼の前には道が開かれている。
彼が望むなら、ロシアだけでなく西欧まで支配するだろう。
そして彼は言った。
「神は第一の審判により、正しい罰を下すだろう。我々は例え、全てが滅びてもベルリンを行進しなくてはならない。最後の審判はもうすぐだ。」
彼の使命。
それはドイツの存在自体の排除である。
しかし、第一の審判が終わりではない。
第二の審判。
日本への侵攻である。
彼の国はアムール地方とカムチャツカ地方を支配下に入れている。
ならば、ブラックリーグは東京まで進軍しなくてはならない。
西の次は東だ。
わたしはやがて死にます。神は必ずあなたがたを顧みて、この国から連れ出し、アブラハム、イサク、ヤコブに誓われた地に導き上られるでしょう
-ヨセフ(創世記第50章24節より)