程度の能力を貰って転生したのでそれを活かす為にトレーナーになる   作:鏡餅丸

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* * * 

 

 転生してから五年目の春。

 

 俺は今リクルートスーツを着て。

 

 もう少しで行われる、選抜レースの前列の観客席に座って居た。

 

「今日の選抜レースを見て、担当する()を決まればいいな」 

 

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園に入ってから今年で三年目になる。

 

 転生してから最初の二年間はこの世界の親に頼んで、ウマ娘のトレーナーになる為に必要な教材を買って貰い。

 

 ひたすら勉強をした結果、難関と言われたトレーナー資格を一回で取る事は出来た。

 

 そして晴れてトレセン学園に入れはしたが。

 

「まさか「動物を導く程度の能力」を把握するのに、三年も掛かってしまうと思いもしなかった」

 

 だが幸いだったのは能力を把握してないのに、いきなりトレーナーにならなかった事だろうか。

 

 通例ではトレーナー資格を取り、トレセン学園に入った人はまずサブトレーナーから始め。

 

 先輩トレーナーの助手となり手伝いをしたり、トレーナーを持たないウマ娘達の指導を最低二年はしなくては行けなかった。

 

 もし通例でサブトレーナーからではなく、最初からトレーナーからだったら。

 

 もしかしたら能力が、バレていかも知れないだろう。

 

 まあバレても能力で何とか出来たが、バレない事が一番だからな。

 

「でも本当はまだサブトレーナーを、もう一年したかったな」

 

 能力を完璧に扱える様になる為に、あと一年はサブトレーナーでいるつもりでいたが。

 

 しかしそれは叶わなかった。

 

 何故なのかは、今から一週間前に遡る。

 

⏱一週間前⏱

 

 俺は今携帯電話から駿川さんが理事長が呼んでいるとの事で、理事長室まで来る様に言われ理事長室の前に来た。

 

「何か呼び出されるような事はしてないが、まあいいか入ればはっきりする事だ」

 

 コンコンっと理事長室のドアを叩く。

 

「失礼します秋川理事長、動川です」

「許可! 入っていいぞ」

 

 そう言われドア開け、理事長室に入る。

 

 まず校長机がある所でリクライニングチェアに座る少女。

 

 つばの広い帽子をかぶり、白いラインの入ったオレンジ色の長い髪した青い瞳をした少女が、このトレセン学園の理事長である秋川(あきかわ)やよい。

 

 そしてリクライニングチェア座っている、秋川理事長の横で立って居る女性。

 

 緑色の帽子とキャビンアテンダント様な服を着ている、長い黒髪を黄色いリボンで纏めている緑色の瞳をした女性が、理事長秘書の駿川(はやかわ)たづな。

 

 この二人が待っていた。

 

「それで、俺は何故呼ばれたんでしょうか?」

「任命! 動川穫殿、今日から君をサブトレーナーからトレーナーする」

「え、嫌ですが」

「命令! これは決定事項だ。異論は認めない」

「何故ですか? 俺は以前にも言いましたが未熟なので、後二年だけサブトレーナーをしたいと言ったはずです。まだ後一年ありますが?」

「謝罪! そうしてやりたっかが、そう出来なくなってしまった」

「どう言う事ですか?」

「たづな、説明を頼む」

「分かりました」

 

 秋川理事長はそう言い、駿川さんが説明を始める。

 

「実は急遽トレーナーの人員不足になりまして、来週の選抜レースのスカウト枠が足りなくなったんです」

「え、確か前に「二人がトレーナーになるので、人員は確保出来てますからサブトレーナーを続けてもいいですよ」って言ってませんでしたか?」

「そうなんですが三人のトレーナーを居なくなり。今トレーナーが不足しているんです」

「それで、その穴埋めに白羽の矢が立ったのが、俺と」

「その通りです」

 

 なるほどつまり、隙を生じない二段構えをしたつもりが。

 

 呆気なく崩れ去ってお鉢が俺に回って来た、と言った所か。

 

「ちなみに何故三人も、居なくなったんですか?」

「一人目は持病の悪化で、二人目はトレーナーとしての自信を無くし、三人目は行方不明になりました」

 

 一人目と二人目は別にいいとしても、三人目は何処に居た?

 

 自分に能力を使ってみよう・・・・なるほど、三人目は異世界転移したのか。

 

 それなら仕方ない、行方が分からなくても当然だ。

 

 と言うより、この世界では異世界転移も起こるんだな。

 

 まあ転生した俺も居るんだから、そんな事があっても可笑しくはないと言う事にしておこう。

 

「動川サブトレーナーさん、どうかお願いします」

「・・・・頭を上げて下さい駿川さん、分かりましたトレーナーの件は受けします」

 

 どうせ断っても、秋川理事長がゴリ押しして来るだろうからな。

 

 そう言うと、駿川さんと秋川理事長の顔が明るくなった。

 

「感謝! 動川トレーナー」

「ありがとうございます、これからよろしくお願いします。動川トレーナーさん」

 

 本当はもう少し能力の扱いを磨きたかったが、仕方ないこれも人生か。

 

「動川トレーナーさん、それに当たりもう一つお願いあります」

「なんでしょうか、駿川さん」

「動川トレーナさんには、選抜レースでは必ず二人の担当をしてもらいたいのです」

「何故でしょうか? 俺はたった今トレーナーになったばかりなのですが」

 

 それに本来複数の担当を持つのは、一年間トレーナーをやっている人しか許可されるはずだ。

 

「確かに本来は一年間トレーナーをしてもらってから、複数の担当を持ってもらいますが。さっきの三人の人員不足の件で、動川トレーナーさんには補ってもらいたいんです」

「分かりました、しかし二つ疑問があります」

「何でしょうか?」

「何故俺は複数の担当を持つ許可して貰えたのでしょうか?」

「それは動川トレーナーさんの指導の評判からです」

「指導の評判ですか」

「はい、動川トレーナーさんから指導を受けると、不思議と色々な事が以前より出来る様になったと評判です。それにこれに関したは、他のトレーナーさん達も了承済みです」

 

 それはおそらく把握した範囲で能力を、指導する時に使ったのが原因だろう。

 

 にしても、他の先輩方も許可したのか。

 

 これはますます断りづらい。

 

「では次に先程「選抜レースでは必ず二人の担当をしてもらいたい」と言ってましたが、居なくなった三人分をするとなると、後二人を担当をしなくてはいけないのでは?」

「はい、ですが選抜レースでスカウト出来るのは、時間的にも二人が限界です。なので残り二人は此方から推薦した人を、担当してもらいたいと思っていす」

 

 残り二人は推薦と言う事は、四人の担当を持つのか。

 

 サブトレーナーの頃はトレーナーの居ないウマ娘を、数十人は見ていたからなんら問題は無い。

 

 だから人数が減った分、細心の注意を払わなければいけないな。

 

「分かりました」

「はい、話は以上です。後これは個人的なお願いですが」

「何でしょうか?」

「今度からは私の事は駿川さんではなく、たづなと呼んでください」

「分かりました、たづなさん」

「それから普段道理に話してください」

「分かり、分かった」

「では、トレーナーの件。よろしくお願いします動川トレーナーさん」

「懇願! よろしく頼む、動川トレーナー」

「分かった、では失礼する」

 

 そう言って俺は理事長室を後にした。

 

⏱そして現在⏱

 

「そう言えばウマ娘プリティーダービーの話は軽く知っているが、どんな娘が居るのか知らないんだよな」

 

 転生するウマ娘プリティーダービーの世界が、俺の生前の時代とあまり変わりない事は知っていたが。

 

 出て来るキャラクターは、一期目も二期目も主人公の名前しか知らない。

 

 ああ、こんな事ならアニメを見たりアプリゲームをしていればよかった。

 

 いや最悪でも転生前に、ウマ娘プリティーダービーの情報を収集しておけば良かったな。

 

 そうすればどの娘が有望株価か、すぐ分かったはず。

 

 そんな事を思っても、今では後の祭りか。

 

<間もなく、選抜レースが始まります>

 

「もうそんな時間か」

 

 兎に角、転生前にしなかった事を悔んでも仕方ないし。

 

 それにどうせ、主人公はスカウト出来そうにも無いんだったら。

 

 己が目で見て決めた娘を、主人公以上になる様に導けばいいんだ。




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