推しに囲まれすぎててどこを見ても尊死するアグネスデジタル   作:瀧音静

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タキカフェはいいぞ。カフェライスもいいぞ。


喫茶『黒猫堂』

 カランコロンカラン♪

 

「いらっしゃいま……うわっ」

「客に向かってうわっ……はないだろうカフェ? せっかく君宛の荷物を届けてやったというのに」

 

 マジやばたん。

 タキオンさんに、今までの代返のお礼にと連れられ喫茶店へ。

 何でも朝は用事があるとかで、駅にて待ち合わせしその喫茶店に行くことになったのだが、集合場所には私服姿のタキオンさんが。

 もうそれだけで涎が溢れそうになる中、喫茶店へと入ってみると。

 目の前にはバイト中か、ウェイトレス姿のマンハッタンカフェさんが。

 最初は眩しすぎる接客スマイルをこちらに向けてくれていたけど、相手がタキオン様だと分かると一変。

 瞬時にジト目へと変化し、邪魔しに来たのか、と言わんばかりに声のトーンがガクンと落ちた。

 でもでも、そっちの反応も十分美味しいです!

 可愛らしいウェイトレス衣装なのに表情や態度はツンドラ。

 その温度差が私の心へ刃となりて突き刺すように!!

 呼吸を忘れる尊みをはっしているのでありまぁすっ!!

 

「私宛の荷物?」

「以前から探していたコーヒー豆があるだろう? それを手に入れたのだよ」

「本当ですか!!?」

 

 ジト目から更に一変。

 目を輝かせてタキオンさんに食いつくカフェさん。

 目が輝いてるカフェさんもしゅきぃ。マジラヴやば谷園。

 

「こう見えても海外にいくつか知り合いがいてね。私の個人的な注文の他に頼んでみたら、どうやら見つけてくれたみたいだよ」

「これは素直にありがとうございます」

 

 お辞儀をし、タキオンさんから荷物を受け取ったカフェさんは。

 

「今は他のお客様もいらっしゃらないので、好きな席へどうぞ」

 

 と、あたしたちを促して。

 

「タキオンさんはいつものでいいんですよね?」

「ああ、構わないよ」

「そちらの方は?」

「あ、で、……。あ、アグネスデジタルでしゅ」

「デジタルさんですね、何になさいますか?」

 

 そ、そんな笑顔をあたしに向けないで!!

 仕事用のスマイルと知っても好きになるから! 恋しちゃうから!!

 

「あ、じゃ、こ、こ、こ、コーヒーを……」

「はい。コーヒーですね。砂糖とミルクはどうしますか?」

「ブラックでお願いしまひゅ」

「かしこまりました、少々お待ちくださいね」

 

 心拍数が爆上がりした状態でもなんとか注文が出来た。

 このままでは心臓が持たないとゆっくり深呼吸をしていると……。

 

「君がコーヒーをブラックで飲めるとは意外だねぇ」

 

 と、あたしの顔を覗き込んでくるタキオン様がいて。

 

「――っ゛!!」

 

 ダメッ!! ときめいちゃう!!

 こんなタキカフェ甘々空間に居るのに、コーヒーに砂糖やミルクなんか入れたら糖分過多と尊み過多で死んじゃうの。

 ブラックが苦くてもタキオンさんやカフェさんを見てれば甘い気持ちになれるから平気なの!

 自覚して!! 自分たちが甘い雰囲気を出してるって自覚して!!

 大体カフェさんが「いつもの」としかタキオンさんの注文を言わなかったのが悪いんですよ!!

 通ってるってことじゃないですか!! 好みを把握してるってことじゃないですか!!

 何ですかあなた方!! 尊過ぎますよ!!? 絶対付き合ってますね!!?

 ――はっ!? てことはあたしはカップルの間に居るお邪魔虫!?

 退いた方がいいですか!? 退散した方がいいですか!!?

 

「お待たせしました、コーヒーと紅茶とフレンチトーストです」

 

 なんて悩んでいる所へ注文したものが到着。

 ……タキオンさんの紅茶、砂糖が溶け切らずに視認できるんですけど?

 もしかしてカフェさんの精一杯の嫌がらせとか……?

 

「ありがとう」

「はぁ、いい加減、その飲み方やめません? 人の趣味に口出しはしたくありませんが、もう少し紅茶を楽しんでもいいんではないですか?」

「楽しんでいるとも。それはもう十分に」

「はぁ……。そうですか。ではごゆっくり」

 

 違うみたいです。タキオンさんが普段から限界溶量を超えた砂糖を入れて飲んでいるみたいです。

 ……体に悪そう。

 それに、タキオンさんの「いつもの」に含まれていたフレンチトースト。

 アイスにシロップとこちらも甘い物のオンパレード。

 ……ブラックにしててよかった。見てるだけで胸やけしそう。

 

 

 ……ふぅ。ウェイトレス姿のカフェさんを眺めながらコーヒーを美味しくいただきまして。

 糖分の塊のような食べ物と飲み物をタキオンさんが綺麗に平らげ。

 おかわりの砂糖融解量巨大MAXを片手に楽しんでいる時。

 カランコロンと喫茶店の扉が開いた。

 そこには……、

 

「お、遅くなりました!」

 

 ライスシャワーさんが申し訳なさそうに小さくなりながら入ってきまして。

 

「まだ時間には余裕があります。大丈夫ですよ」

 

 ライスさんの言葉に、カフェさんがにっこりとほほ笑んで。

 

「き、着替えて来ます!」

 

 とライスさんが店の奥へ。……これは、もしや。

 

「なんだ、新しい子が入ったのか」

「ライスシャワーさんですね。いい子ですよ」

 

 ライスたんのウェイトレス姿……。

 死んでも忘れないように網膜に焼き付けて脳のメモリーに保存しておかなければ!!

 

「ふぅん。……なるほどなるほど」

「またよからぬことを企んでいません?」

「よからぬこととは失礼な、研究だよ」

「そう言って初対面の相手によく分からない薬を飲ませた結果、要注意人物として学園に認知されているのはどこの誰ですか全く……」

 

 なんて会話を推し二人がしていると……。

 

「今日も頑張るぞー、おー!」

 

 店の奥から、ライスさんの決意表明が聞こえてきます。

 ……可愛すぎない? え? 天使?

 と、声だけで断定したところ。

 

「お待たせしました。えへっ」

 

 ウェイトレス姿へと変身したライスたんのスマイルがあたしの胸を直撃。

 尊さの限界を振り切ったあたしは、幸せな顔をしながら机に突っ伏したのだった。

 鼻から、生暖かい液体を垂らしながら。

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