推しに囲まれすぎててどこを見ても尊死するアグネスデジタル   作:瀧音静

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作者の性癖回。
作者がタキオンのモルモットであるからタキオンが毎回出てますが、今回に関しては存在が便利過ぎるという理由で登場してます。
決してモルモットとしての義務とかではないです。多分。


ASMR

「この間渡したテールヘアークリームは大丈夫だったかい?」

「はい! 言われていた肌のピリつきとか、痒みも発光したりもしませんでした!」

「そうか、なるほどなるほど……」

「発光ってお前……本当に大丈夫なんだろうなそのクリーム」

「何よ? タキオンさんが信用できないって言うの?」

 

 タキオンさんとの寮室。

 その空間には今、あたしとタキオンさん以外に二人のウマ娘がいる。

 ダイワスカーレットさんとウオッカさんだ。

 何かと張り合っている二人で、本当にどんな事でも意地になるらしい。

 ……ていうか目の前で言い合いをしている姿がマジ尊みのかまたり。

 にやけそうになる口元を手で押さえつつあたしは、

 

「しょ、それでエアコンはどれくらいで直るの?」

 

 と尋ねた。

 そう、二人がこの部屋にいる理由は、彼女ら二人の部屋のエアコンが故障してしまったらしい。

 エアコンなしではあまりに地獄過ぎる猛暑に、どこか避難できる場所……と探していると、タキオンさんと遭遇。

 それならば直るまでの間、あたし達の部屋に居てはどうかと提案したらしい。

 もちろん、同室であるあたしにも構わないか? と確認を取ったうえで、だ。

 そして、既にカップリング認定している二人が部屋に来ることを拒めるあたしがいるだろうか?

 ……いや、居ない。

 というわけで二人を招き、タキオンさんが怪し……もとい、あまり見かけない薬品などをスカーレットさんに薦め始め、それに対して目を輝かせるスカーレットさんと、怪訝な顔をしているウオッカさんという構図が出来上がった。

 あたし? あたしはそんな尊過ぎる間に入るわけもなく、傍観者に徹していた。

 

「夕方くらいには……って言ってもらいましたけど」

「機械の事分かんないですし、その時間で直るかどうか……」

 

 二人は見つめ合い、寮長に言われたことを思い出しているようだ……が。

 顔近いのぉっ!! 見つめ合う距離、絡みつく視線、二人が同時に首を傾げる仕草!!

 全部! 全部ネタとしていただきましゅぅぅぅっ!!

 

「気兼ねなくここに居るといいよ。……と言っても、就寝時間になれば流石に直っているだろうがね」

 

 砂糖が溶け切らずに残っている紅茶をすすりながら、タキオンさんがそう口を開く。

 それに対し二人は、ありがとうございますと綺麗にハモって頭を下げた。

 んん!! だから!! そうやって息ぴったりな動きを!! もっとしてっ!!

 

「あ、そういえばなんですけど、この間頂いたリップクリームあったじゃないですか?」

「ああ、あれかい? ……あれがどうかしたのかい」

「いえ、もうすぐなくなりそうなので、もし良ければまたいただけないかなと……」

「お前、貰っておいてまたねだるのか?」

「しょうがないじゃない、あのリップクリーム、保湿性抜群で使い心地いいんだから! ……ていうか、この間あんたに貸したリップクリームよ? あんたも、「あ、これいいな」って鏡見ながらうっとりしてたじゃない」

 

 ん? リップクリームを貸した? それってつまり関節キシュ?

 ……まだだ、まだ吐血する時間じゃない。

 

「あー、あのリップ……って、鏡見ながらうっとりなんてしてねー!」

「してたわよ! プルプルの唇指で触りながら見てたでしょ!!」

「やってね-!!」

 

 んくっ。……ごちそうさまです。

 

「はっは、賑やかだねぇ。ただ残念ながらあのリップは今手元になくてねぇ……。代わりにこんなものがあるのだが」

 

 そう言ってタキオンさんが取り出したのは、ハンドクリームのような容器に入った何か。

 

「これは?」

「イヤージェル、と言ってね。耳の手入れをするときに使うジェルなんだが……」

 

 そう言って開けて見せると、中には透明なジェルがみっちりと入っていて。

 

「皮脂や汚れ、角質なんかを浮かせ、分解して取り除いてくれる代物でね。……ふむ、百聞は一見に如かず、だ。デジタル君」

「ひゃい!?」

「ちょっと耳を貸してくれないかい?」

「……どうぞ」

 

 上機嫌にジェルの効能を語っていたタキオンさんから、耳を貸してくれと頼まれた。

 お安い御用、と思うと同時に、何を耳打ちされるのかと思っていると。

 ――ペトっと。

 先ほどジェルを掬ったタキオンさんの手が、私の耳へと伸びてきて。

 そのまま、ジェルを塗りたくっていく。

 く、くすぐったい……。ていうか、

 

「耳を貸してってそういう意味……」

「間違っていないだろう? ほら、こんな風にジェルが濁ってきたら手入れが出来ているという証拠だ」

「おおー」

 

 スカーレットさんとウオッカさんの視線が私の耳に集まる。

 ていうかタキオン様!? 手の動きが優しすぎます!! もっと乱暴にして貰わないと勘違いしちゃいましゅぅっ!!

 ジェルによって滑らかに動くタキオンさんの指に合わせ、私の鼓膜に擦れる幸福な音が響き。

 耳への心地よい刺激に、思わず瞼が重くなりかける。

 ――が、こんなところで眠ってられるか!!

 勿体なさすぎる!!

 

「ふむ、こんなものだろう。デジタル君、少しじっとしていてくれ」

 

 そう言って離れるタキオンさんの指を名残惜しく感じつつ、言われたとおりに動かないように身構えて。

 

「使用後は拭き取るか、洗い流すといい」

 

 耳に届いたのか、布が触れる音。

 そして、丁寧にジェルが拭き取られていく音。

 

 はぁぁ……タオル音心地いい……。優しく拭き取られるの癖になりゅうぅぅ。

 

「と、こんな感じの使い方だが……デジタル君、使われた感想は?」

「ひゃい。心なしかされた耳の方がさっぱりした感じで、されているときは心地よかったでしゅ」

「だそうだ。見たところジェルを使用した方が、毛艶が良くなっているように見えるね」

 

 そう言いながら手に付いたジェルを拭き取り、先程使用したジェルとは別の、新品のジェルをスカーレットさんへと差し出すタキオンさん。

 

「耳の穴に入った場合は綿棒で掻き出すといい」

「ありがとうございます!!」

 

 それを笑顔で受け取ったスカーレットさん。すると。

 

「あ、電話だ。失礼します」

 

 スカーレットさんのスマホが鳴り、通話を始めた。

 

「はい。はい。分かりました! ありがとうございます!! ……エアコン、直ったそうです」

「そうかい、良かったじゃないか」

「はい! お邪魔しました!」

「なに、私はいつでも歓迎だよ」

「あ、あたしも歓迎しましゅ」

 

 どうやら電話の内容はエアコンの修理が終わったという報告。

 通話後、立ち上がりお辞儀をする二人に、声をかけるタキオンさんとあたし。

 そのまま部屋を後にしたスカーレットさんとウオッカさんだったが、

 

「部屋に戻ったら早速これ試すわよ!」

「先にお前が試せよな!」

 

 という会話が聞こえてきて無事死亡。あの二人、部屋に戻ったらウマぴょいするんだ……。

 絶対するんだ……。

 

「さて、いきなりサンプルにしてしまって悪かったね」

「いえ、そんな……気持ちよかったでひゅ」

「お詫びと言っては何だが、気に入ったのならもう片方の耳にもジェルを試させてもらえないだろうか?」

 

 ひゅっ! ま、またタキオンさんに耳を優しく撫でまわしてもらえる!?

 ぜひお願いしましゅぅぅぅっっ!!

 ……その日の夜、一日ぶりに興奮しすぎてあまり寝付けなかった。




次回予告
 やめて! 
 BNWの絡みを目の前で見せつけられたら、勝手に脳内でカップリングしているデジたんの精神が尊みで燃え尽きちゃう!
 お願い! 死なないでアグネスデジタル!
 あたしが今ここで倒れたら、新しい推しや今までの推しはどうなっちゃうの?
 残機はまだ残ってる! ここを耐えれば、新たな推しやシチュに出会えるんだから! 
 次回『アグネスデジタル 死す(定期)』。デュエルスタンバイ!

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