ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す   作:お兄さマスター

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困った時のゆかりさん

 

 同人誌などの創作作品とは異なり、実際のボイスロイドには一点だけ機械じみたパーツが存在する。

 

 首に一本の黒い線が描かれているのだ。

 何処からどう見ても人間にしか見えないボイロを、あえて機械として認識させる為のものであるらしい。

 首輪やチョーカーのような形で黒い液晶が存在しており、そこに青白い光が点灯していて、それで本体のバッテリー残量を図ることが主な機能だ。

 普段は別の追加パーツで首のそれを隠しているのだが、常にエネルギーの総量を把握しておきたい几帳面なユーザーなどは、首を隠させずそのままにしているという話はそこそこ有名である。

 

 で、俺も現在きりたんにはその首部分のパーツを外してもらっている。

 何故かと言うと──

 

「あっ。……ついに赤くなったか」

「……うぅ、バッテリー残量がヤバいです、マスター」

 

 口頭で確認するよりも早く、彼女の状態を把握する必要があったためだ。

 この首にある黒い液晶部分は、活動エネルギーの残量が残り二十パーセントを切ると、自動的に青白い光が赤色に変化してしまう。

 

「だから昨日言ったろ、全部食っていいって」

「まさか。マスターよりも多く頂くなんて、できるわけないじゃないですか」

 

 昨晩、俺たちは家に残っていた最後のカップラーメンを二人で分けて食した。

 一人前でも少し足りない量のカップ麺を二人で分けたとなれば、まあ当然まったく空腹も満たされなければ、栄養も足りていないわけで。

 スーパー科学力で人間の食事をエネルギーに変換できるきりたんとて、元の量が少なければ生み出すエネルギーもおのずと減ってしまうのは道理だ。

 こうなったのは数日前、俺が半分勢いに任せて東北ずん子を購入したからである。

 

「マスター……」

「みなまで言うな、分かってっから」

 

 三十万。

 そう、三十万円だ。

 クソ貧乏大学生の俺にとって、三十万円とはとんでもない大金なのである。

 しかも超ハイパーアルティメットお値段が張るきりたんをウチに迎えてから、まだ二週間弱しか経過していない。

 彼女に使うための資金を集めた期間は三年だ。

 めちゃめちゃ頑張ってようやく集めることのできた汗と涙の結晶だった。

 無論贅沢をしない日が無かったわけではないものの、それでも生活を切り詰めて集めた金だった事は間違いないのだ。

 

 ……で、それを一瞬で消費した二週間後。

 生活費として残していた分はほとんど東北ずん子に吸収され、俺たちは飯も満足に頂けない立場へと下落してしまったのであった。

 動画の収益化に成功したとはいえ、それもつい最近のことで、しかも支払いはちょうど一ヵ月後ときた。

 ヤバいかもしれない。

 収益を受け取る前にきりたんも俺もエネルギー切れで停止してしまうかも。

 

「私……働きますっ」

「アホ。俺を犯罪者にするつもりか」

「いたっ」

 

 ボイスロイドを労働力に使うのは禁止だ。

 動画サポートの範囲内であれば問題ないし、少しくらいの家事の手伝いなら問題はないが、さすがに外で金を稼がせるわけにはいかない。

 

「お金の心配はしなくていいんだよ、全部俺に任せとけ」

「で、ですが……」

「俺はお前のマスターなんだから。そういうのは俺の仕事だ」

「……心配しなくていい、というのは無理がありません?」

「うぐっ」

 

 確かに偉そうなことを言える立場ではなかった。

 実際にきりたんが食糧難の煽りを受けている以上、誤魔化しの言葉を言うより早くメシを用意しなければならないのだ。

 もうウチには光熱費諸々を含めた家賃を払う分しか残されていないし、今後の生活の頼みの綱は来月から貰える動画の収益のみだ。

 今月をどうにか乗り越えない限り未来はない。

 だが、動画作成に集中するために、掛け持ちしていたバイトは全て辞めてしまったし、信じられないほど筋力が貧弱なので日払いの引っ越しのバイトなども途中で腕に乳酸がたまって使い物にならなくなってしまうし……まずい。

 今すぐ金を工面する方法が一つしかない。

 

「きりたん」

「はい」

「暫くの間、スイッチくんとはさよならだ」

「……はい」

 

 スチームのゲームなどにも手を出しておいてよかった、なんて事を思いながら、俺は自分の実況の主力武器の一つであるゲームハードを、質屋へ持っていくのであった。

 

 ……

 

 …………

 

「マスター」

「どした」

 

 スイッチくんが生み出してくれたお金を後生大事に抱えながら帰宅すると、自動アップデートをしていたきりたんが目を開けた。

 ていうかこの前は兄さまって呼んでくれてたんだけど、またマスターに戻ってしまっている。

 呼ばれるための条件とかあるんだろうか。無理強いはできないから聞かないけども。

 

「バッテリー本体が劣化しているかもしれないです。エネルギーの減りがめっちゃ早い」

「えぇ……」

「マスターに購入される前からずっと使い回されていたので、寿命ですね。バッテリーの交換を提案します」

「わかりました……」

 

 生活費を手に入れて早々に、だいぶお金のかかる事案が発生してしまった。つらい。

 外ではボイスロイドを連れていると奇異の視線に晒されてしまうため、きりたんを変装させてから、俺は重い腰を上げて家を出発したのであった。

 

 

 

 

 ボイスロイド診療所。

 

 街の外れにぽつんと存在する、個人病院程度の大きさの建物には、そんな看板が引っ付いていた。

 スマホの地図アプリに従ってここまでやってきたわけだが、なかなかに道が入り組んでいて、案内が無ければ迷子になってしまいそうな辺境の地、というのが第一印象だ。

 周囲には廃工場やシャッターの閉まった古い店などが並んでおり、見たところここの周辺一帯で通常通りに営業している建物は、このボイスロイド診療所だけなのかもしれない。

 きりたんを連れて恐る恐る入り口をくぐると、見た目通りの個人病院に似た匂いが鼻腔を通り抜けた。

 室内は清潔で、他の客こそいないものの不思議と緊張はしなかった。

 スリッパに履き替えて玄関を抜け、受付らしきカウンターへ向かうと、俺たちの足音に気がついたのか奥からパタパタと小走りで向かってくる音が聞こえた。

 

「こんにちはー。いやはや、すいません、お待たせしました。コーヒーを淹れてたもんで」

「あ、どっ、どうも。お世話になります」

 

 受付にやってきて席に座ったのは、白衣を羽織った紫髪の少女だった。

 彼女は見たことがある。

 というか普通に有名人の枠に入る人物だ。

 ……人物というか、ボイスロイドか。

 

先生(マスター)代理の結月です。よろしくお願いしますね」

 

 明るい笑顔で出迎えてくれたその人は、ボイスロイド界隈の顔と言っても差し支えない大物。

 結月ゆかりその人であった。

 

 ……

 

 …………

 

「えっ、ほんとですか? そんな料理も出来るなんて、きりちゃん凄いですねぇ」

「そんな事ないですよ……え、えへへ」

 

 軽く事情を説明したあと、別の部屋へ案内されたきりたんは、結月先生と軽い質疑応答を交わしつつ体調の説明を行っていた。

 その様子を後ろから眺めているわけだが……なんというか、先生は凄い。

 あっという間にきりたんと打ち解けてしまって、フランクな会話を続けながら手際よくいろんな道具を使って、彼女をメンテナンスしている。

 そして今バッテリーの交換も終了し、きりたんを再起動の為ベッドに寝かせたところで、ようやく俺は彼女と会話するタイミングを得たのだった。

 

「バッテリーを交換した後は十五分ほどスリープが必要なので、その間お待ちいただけますか」

「あ、はい。それは大丈夫なんですけど……」

 

 何と言ったらいいか分からなくて口ごもっていると、結月先生は小さく笑って目の前の椅子をポンポンと叩いた。 

 座っていい、という事らしい。

 彼女に従ってそこへ座ると、先生は眼鏡をかけてカルテの様なものを書き始めた。

 

「ここの診療所にいらっしゃったのは初めてですね? 改めまして先生代理のボイスロイド、結月ゆかりです」

 

 これは自己紹介の流れだ。失礼のないよう、俺もすぐに返さないと。

 

柏木(かしわぎ)……(ゆう)です。電話も無しに、いきなり押しかけてしまって……」

「あ、ちょっとストップ」

「えっ?」

 

 カルテを書き終わった結月先生が、手を前に突き出して俺の言葉を遮った。

 何か失礼なことでもしてしまったのだろうか。

 

「わたし、人間様に敬語を使われていい立場ではないので、タメ口でお願いできますか?」

「に、人間様って……」

 

 そんな大層な言い方をされていい立場ではない。

 そもそも診てもらいに来た立場で敬語を使わないなんてとんでもない。

 ──と、そんな事を考えていたのだが。

 あれよあれよという間に、彼女に言いくるめられてしまって、結局俺は結月先生に対して砕けた口調で喋ることになってしまった。

 加えて結月先生ではなく、呼ぶならゆかりさんで、と。

 敬語がダメで『さん』という敬称が許される辺り、どういったラインの基準が設けられているのかは不明だが、ゆかりさんという愛称自体は一般的なため彼女の言葉に甘えさせていただくことにした。

 

「ふふ、柏木君はこう思ってますね。なんでボイスロイドが店番を任されているんだ、と」

「それは……そうなんですけど」

「敬語」

「あっ。……えと、不思議な状況だと思って。こういう仕事を任せるのって、ボイロの規約違反なんじゃ……」

 

 こんなにいろんな意味で敬語に厳しい人と会話するのは初めてだ。

 

「この診療所は特別なんですよ。なんと行政のお墨付きです」

「じゃあゆかりさんの先生っていうのは……」

「えぇ、とぉーっても偉い方です。そんな人の所有するアンドロイドって事で、私にもいろいろと権利が認められてるわけですね」

 

 彼女のマスターというのは、俺たち一般ユーザーとは違って、正式にボイスロイド開発に関わっている研究者だそうで。

 そんな人間が経営している診療所では、行政を納得させてボイロに仕事を任せるのもお茶の子さいさいなんですよ、という事らしい。

 診察相手が生身の人間ではないとはいえ、診療所を動かす権利をボイスロイド単体に与えている、という事実は俺にとってかなりの衝撃だった。

 しかも、それがこんなフレンドリーな人で。

 少しだけ気が緩んでしまったのか、きりたんの活動内容を喋っているうちに、ついポロッと改造品の東北ずん子を購入した事実も喋ってしまったのだった。とてもまずい。

 

「ふーむ、きりたんを想っての事とはいえ、改造品に手を出してしまったワケですか」

「ヤバいかな……」

「そりゃもう激ヤバですよ。……もしかして、今朝のニュース見てないんですか?」

「ニュース?」

 

 ウチにはテレビが無いため、情報を仕入れるのは主にネットニュースかツイッターの二択だ。

 しかし今日は腹が減るのを極力抑えるため、部屋で動かずにゴロゴロしていたのと、資金調達で中古ショップに行ったくらいで、いつものようにパソコンで作業をしていなかった。

 加えてツイッターも確認していなかったため、本日俺が手に入れた情報は、スイッチを中古で売った場合の値段だけである。

 

「今日は一日中あの話題で持ちきりだと思います。今もテレビでやってますよ、ほら」

 

 彼女がリモコンでテレビをつけると、ちょうどニュース番組が放映されていた。

 その左上には大きな見出しで──

 

「…………ぼ、ボイスロイド規約違反者、一斉摘発……?」

 

 不穏な文字に驚くと同時に、画面には手錠で繋がれパトカーに連行されている男が映し出されていた。

 殺人犯とか凶悪な犯罪者を連行する時と似たような映像が、ニュース内で次々と紹介されていく。

 そこのテロップには『ボイスロイド 違法改造』といった分かりやすい罪状が示されている。

 

「柏木君はボイスロイドが裏取引されてるって、知ってますか?」

 

 まったくの初耳だ。

 そんな無法な事が行われていたのか、この国は。

 

「裏取引や改造品の流出が横行し始めたのが三年くらい前からなんで……まあ、一斉摘発に三年かかったっていうのは、ボイロの身としてはとても長く感じましたねぇ」

 

 しみじみと語るゆかりさんを前にして、動揺が隠せない俺はテレビ画面に釘付けだった。

 裏取引の件はこの際一旦置いておく。

 冷静に考えたらクソ真面目に試験だの適性検査だのを頑張っていた自分が滑稽に見えそうだったから、とりあえず眼を逸らして心の片隅に追いやっておいた。

 しかし改造品云々の部分はとても無視できない案件だ。

 改造した人間が逮捕されるというなら、当然改造品を購入した人間も処罰の対象になる事だろう。

 映画館での撮影や録音が犯罪なのと同じように、それをダウンロードして購入する事もまた違法行為だという事は、映画が始まる前の泥棒さんの映像で嫌というほど理解している。

 まずい。

 ヤバイ。

 とても良くないことが起きている。

 

「規約違反というか、ロボット法に抵触してますからね。柏木君も逮捕されちゃうかもしれませんよ~」

「ひぃっ……!」

 

 恐怖で心臓が止まりかけた。

 改造品を購入したマスターがもう一つのボイスロイドを所持していたら、そのボイロも改造品の疑いを掛けられるかもしれない。

 最悪の場合はウチのきりたんもその疑いのせいで廃棄されることになるのでは──ひええぇ!!

 どうしようどうしよう。

 とりあえず俺が逮捕されるのはしょうがないから一旦置いとくとして、きりたんが廃棄されるのは防がねばならない。

 あれか、とりあえず叔父さんの家に預けるか。

 購入した東北ずん子も処分される可能性があるから、どうにかして助けないと──

 

「……ぷっ。あはは」

「っ?」

 

 何だ。ゆかりさんに嘲笑されてしまったぞ。泣いていいか?

 

「ごめんなさい、冗談ですよ。さすがに逮捕まではいかないんじゃないですかね? 家に警察が来て、事情聴取という体で署に連行……くらいでしょうか」

「いや大して変わってない……!」

 

 ボイスロイドは価格帯がとんでもない事もあるが、なにより生産数がそこまで多くない。

 だから何かしらで痕跡を発見すれば、俺みたいなしょうもない学生のところにも警察は人員を割けるのかもしれない。

 困った。

 ごめん叔父さん、俺タイホされちゃう……。

 せめて大学は卒業するつもりだったのに……うぅ。

 

 

「……そういえばなんですけど、柏木君ってどこの大学なんですか?」

「え?」

 

 突然、ゆかりさんが全く関係なさそうな質問を投げかけてきた。

 

「……えと、駅東の向こう側にあるショッピングモール付近の……」

「あー、はいはい。やっぱりあそこの学生さんでしたか」

「やっぱり……?」

 

 彼女が何を言っているのかわからない。

 会話のどこの部分から『やっぱり』などと推測することが出来たのだろうか。

 

「人工知能浸透学、受けてるでしょう」

「あぁ……それは前期に」

 

 人工知能浸透学はときたま教授が外部から講師を連れてくることで有名な授業だった。

 あと名前書いて感想を提出するだけで単位を取得できるため、ボイスロイドなどの人工知能の話を聞けて尚且つ簡単に単位を貰えるという事で、俺はその授業を受講していたのだ。

 ……そういえば、ボイスロイド関連の外部講師で変な先生が来た時、すぐそばにスーツを着た結月ゆかりが立っていたな。

 初めて生で見るボイスロイドだったから、よく覚えている。

 

「えっ。……あの授業で端っこに居た結月ゆかりって……」

「そうですよー、私です。んで、あの先生が私のマスター」

 

 衝撃的な事実で思わず唾をのんだ。

 あのとき人生で初めて見た本物のボイスロイドが、今目の前で自分と話をしているだなんて。

 

「ま、待ってください。そうだとして、なんで俺のことを……」

「……ふふっ。実はですね? あの授業の最前列で真面目に講義を聞いてたの、柏木君だけだったんですよ。そのせいか割と印象に残ってて」

 

 マジかよ。

 確かにあの先生の話は分かりにくくて回りくどいというか、校長先生の話を聞いてて眠くなる中学生の気持ちさせられてたけど、他の奴らは寝てたりしてやがったのか。

 

「マスターも後半はほとんど柏木君だけに向けて話してたって言ってたなぁ。柏木君はボイスロイドがそんなに気になってたんですか」

「気になってたというか……その、きりたんを迎え入れる予定でしたし、基礎知識はしっかり学んでおかないといけないと思って……」

「うわー、マジメ君だ。あのマスターのおもっくそに回りくどい話をちゃんと聞けちゃうなんて、柏木君は凄いです。えらいですね、よしよし」

 

 頭を撫でられてしまった。めっちゃ子ども扱いされてるじゃん、俺。

 

「……ふむ。やっぱりそうしましょうか」

 

 俺から離れて一人で何かに納得したゆかりさんは、椅子から立ち上がって白衣を脱ぎ始めた。

 そして白衣を近くのハンガーにかけてからパソコンの電源を落とすと、見慣れたデフォルト衣装の黒いパーカーを羽織って、机の上を片付け始めた。

 一体どうしたのだろうか──疑問を口にするよりも前に、彼女は座ったままの俺と目を合わせて。

 

「今から柏木君のお家にお邪魔させてもらってもいいですか」

「か、構いませんけど……なんで?」

 

 そう聞いた瞬間、ゆかりさんは腰に手を当ててふんすっと鼻を鳴らし、分かりやすいほどのドヤ顔を浮かべた。

 

「ふっふっふ。柏木君が購入した改造品の件、私が上手く対応してあげますよ」

「へっ!? な、なんで!?」

「貴方が悪い子じゃないって事は十二分に理解できましたし、助けられる範囲で廃棄されそうな仲間は、なるべく助けたいですから。

 ……それに、今どきのマスターにしては珍しく、きりたんには何もしていないようですし」

 

 何もしてない、ってのはどう意味なんだろう。

 もう既に動画作成とか家事とかいろいろやらせちゃってるわけなんだけども。

 ──それより本当にいいのだろうか。

 俺を助けてくれようとしているのは嬉しいが、そもそもボイスロイドが勝手に他人の警察の対応をするのは許される事なのだろうか。

 

「だーいじょうぶ、ゆかりさんに任せなさい。私って人権に近い権利持ってますし、いざとなったらマスターのスーパー権力パワーがありますので」

 

 スーパー権力パワー。

 

「さて、じゃあ戸締りしてくるので、少しだけ待っててください。きりたんもそろそろ起きると思います。……あれ、診察がんばった子にあげるアメちゃん、どこにやったかな」

 

 

 バタバタと忙しそうに店じまいを始めたゆかりさんを眺めながら、いつの間にか起きていたきりたんが俺のそばに立って、一言呟いた。

 

「……マスター。私あの人、好きになっちゃったかもしれません」

「奇遇だな」

 

 俺もだ……。

 

 

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