ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す 作:お兄さマスター
実は腕から火傷の激痛が走っていたけどめちゃめちゃやせ我慢して説得し、なんとかウチにやってきた東北ずん子と和解した翌日。
俺は早々に病院へ向かい、医師をドン引きさせつつ火傷した左腕を治療してもらって帰路についた。
火傷してから長時間放置したせいで少々悪化しており、湿布を張るだけでは話にならなかったため、科学力でいろんな傷を治してしまう特殊な包帯を巻いて貰っている。
傷は塞がるが痕が少し残ると言われたものの、ずん子を落ち着かせてきりたんと一緒に生活できる状態にできた代償としてはむしろ安いくらいだろう。
まあ昨日は本当に泣きそうだったのだが。
久しぶりに誰かに泣きついて甘えたいとさえ考えてしまった。
アレを耐えなければマスターとしての威厳が破壊されてしまうため我慢したが、正直特殊な包帯を巻いた今でも火傷は割と痛い。
左手全体を覆うようにして肘まで全て包帯を巻かれており、二週間は外さないようにとのことで、俺はそのあいだ右手だけでの生活を余儀なくされている。
一人増えるたびにこうした傷を負わなければならないなんて、ボイスロイドのマスターというのは大変なんだな、としみじみ実感した。
それにしても、利き手が右で助かった。
流石にゲームはできないが、編集程度なら問題ないはずだ。
「ダメですよ、兄さま」
というわけで残った右手を使って編集作業をしていたのだが、途中できりたんに止められてしまった。
「むぅ」
「お医者様に治るまでは安静にって言われたじゃないですか。それに片手でやっても大して進まないでしょう」
「そりゃそうだが……じゃあ溜まってる録画分の編集はどうすりゃいいんだ?」
「……あの、私たち一応動画作成サポート用AIなんですけど」
そうでした。
こういう時こそボイスロイドに頼るべきだったわ。
きりたんにはずん子というお姉ちゃんとの大事なコミュニケーションがあるから、他の事を任せるわけにはいかないと無意識に錯覚してしまっていた。
困ったときは助けてくれるのがボイスロイドのいいところだ。
今日からしばらくは甘えさせていただいて、撮影も編集も彼女たちに任せてみよう。
「お兄さん! お茶だよ!」
「あ、あぁ……ありがとうな」
「それではお風呂掃除をしてくるね!」
さっきからドタバタと騒がしいのは、先日我が家に迎え入れたボイスロイドこと東北ずん子だ。
彼女の俺への呼び方は『お兄さん』であり、昨晩からようやっと『兄さま』と呼び始めてくれたきりたんの事も相まって、なんだか彼女らに呼ばれるたびに気持ちよくなってしまっている。
まるで同人誌などに出てきていた、東北三姉妹の家に居座っている謎の”お兄さま”そのものじゃないか。
働かずに家の中でいつでもどこでも三姉妹の内の誰かに手を出して、傍若無人に振る舞い彼女たちで性欲処理をするその内容には感動を覚えた。
特にきりたんのパートは何度お世話になった事か。
俺、いつかお金持ちになって働かなくてもよくなったら、広い和風の一軒家で東北三姉妹と暮らしながら性的に爛れた生活を送るんだ……。
うおおおお不真面目な生活に気持ち良いハーレム最高だ。人類の夢だ。
上手におねだりできずいつもツンツンしてるきりたんを大人棒で分からせてえよ。
「兄さま、今日やる予定だったフリーゲームですけど……」
「試しにずん子と一緒に実況してみてもいいんじゃないか。俺はプレイできないし、お前のお姉ちゃんもウチのレギュラーになる予定だしさ」
「はい、分かりました。押し入れにあるもう一個のマイク出してきますね」
「あれちょっとホコリ被ってるから掃除頼む。あとスイッチは売ったし、そこにあるキャプチャーボードも片付けてくれ」
「了解ですー」
……やっぱり動画の事ばっかり考えてると、分からせやハーレムのことが頭からすっぽ抜けてしまうな。
それに同人誌から連想して、一ヵ月前までは普通にできていた性欲処理の事を思い出してしまい、最近の強制的に禁欲されている状況を改めて俯瞰して異常だと考えてしまった。
俺だって健全な年頃の男だ。
まるで性欲が無いように振る舞うのにも限界というものがある。
そろそろ一発解消しておきたいが、片手が使えなくなっていよいよ難しくなってきている。
外出してどこかで隠れて、というのは論外。
家では常に東北姉妹二人がいて、例えば風呂場で事に及ぼうとしても洗濯機を回しに来るきりたんやそもそも片手が使えなくてスマホを持ちながらやれないという条件が重なって、家も外も詰んでいる。
はぁ、本当に憂鬱だ。
いままで当たり前のように出来ていたことが規制されると、余計にそれがしたくなってしまうのが人間というものだろう。
俺は、したい。
だができない。
なのでモヤモヤが止まらない。とても困ってしまった。
「…………んっ、電話?」
左腕に負担が掛からないように寝転がっていると、スマホから着信音が鳴り響いた。
ゼミの教授かはたまた大学の友人か。
その誰でもなく、画面に映し出されていたのは電話帳に登録した”叔父さん”という単語であった。
「もしもし、久しぶり。……あ、うん。準備はしてるよ」
叔父さんはこの都心部から少し遠い田舎のほうに住んでおり、夏休みはいつもあっちでお世話になっている。
一年に一度は顔を出す機会を作りたいのと、単純に生活費の節約になるからだ。
そして現在はその資金難が顕著に生活に現れている。
ずん子の購入に、彼女が荷電粒子砲ずんだブラスターで破壊した壁の修理まで重なり、もはや今月の光熱費を払ったら俺は一文無しになってしまうわけだ。
動画の収益が入るまではもう少し時間があるから、それまでゼロ円で生活するというのも厳しい。
今年もいつも通り叔父さんの家でお世話になろう。
「じゃあ明後日にそっち向かうから。前にメッセージ送ったけど、ウチにいるボイスロイドの子たちも連れて行くね」
流石に彼女たちを家に置いて俺だけ出かけるというわけにもいかない。
そもそも叔父さんの家は結構広いし大人数で向かっても問題はないだろう。
それこそ創作上で東北三姉妹が暮らしていたような大きい和風の一軒家だ。
彼女たちも喜ぶのではないだろうか。
「え? ……あぁ、お墓の掃除用具って古くてもうダメなんだっけ。こっちで買って持っていくから心配ないよ。……うん、ありがとう。それじゃ」
叔父さんとの通話を切り、座ったままふと窓の外を眺めると、雲一つない快晴の青空が広がってる。
そういえばあと一週間ちょっとで、親父とお袋の命日か。
あの日はバケツをひっくり返したような豪雨で雷まで鳴ってたけど、墓参りするときは今日くらいの気持ちいい晴れであって欲しいものだ。
「あ、お兄さん電話終わった?」
「おう、なんかあったか」
「えっと……そういうわけじゃなくて。……お出かけするんだ?」
風呂掃除を終えて戻ってきたずん子だったが、どうやら俺の電話の内容が少しだけ耳に入っていたらしい。
誤魔化す必要もないし、彼女たちも準備が必要だろうから今のうちに言っておくか。
──あっ、そうだ。
そもそも小学五年生の頃に引っ越して以降、高校までは叔父さんの家に住んでいたんだから、それまで使っていた俺の部屋という完全なプライベート空間があるじゃないか。
片手が使えなくてもいろいろできるだろうし、あっちに着いたら夜はパーティタイムの始まりだ。
こっちに戻ってきて禁欲を強制される前に自分の部屋で思う存分モヤモヤを発散しておこう。
つ、ついに自由な時間を得ることが出来るぞ、やったー。
◆
「はいお兄さん、あーん」
「んむっ」
何だろう、この状況。
「兄さま、野菜もしっかり食べてくださいね。あーん」
「むぐっ。……ん、んっ、
叔父さんの家に向かう前に、ゆかりさんが買い置きしておいてくれた食材を使い切ろうとの事で、たくさん料理を作ってもらったわけなのだが。
少々行儀は悪くなるが片手でも食えるという俺の主張は虚しく却下され、ずん子ときりたんからあーんで食事を口に運ばれていた。
屈辱的だ、大人を舐めやがって。片手でも食えるんだが?
ハーレムってこういう事じゃないはずだ。ちくしょう、ちくしょう。
「けぷっ。……ごちそうさまでした」
「ハーイお粗末さまでした。じゃあ片付けちゃうね」
「あ、ずんねえさま。私がやります」
お世話と言うか介護というか。
どうやら俺が未だに腕の痛みを感じていることを察したらしく、罪悪感に駆られっぱなしのずん子が俺の手伝いをすると言って聞かないのだ。
支えてくれるのはありがたいが、流石に限度というものがある。
トイレにまで付き添おうとしてきたときは驚いて腰を抜かすところだった。
「風呂入ってくる」
「ちょっ、お兄さん、そんな状態で一人で入るのは危険だよ。そもそも包帯巻いてるんだし……」
「この包帯は水につけても大丈夫らしいぞ?」
「そういう問題じゃないってば。なにかミスって怪我を悪化させないためにも、あたしが責任もってお手伝いするから」
「まてまて」
ヤバい事になった。コイツ風呂にまでついてくる気だぞ。
「きりたんも手伝ってね」
「はい、お任せください」
「オイってば。いいから──ちょ、やめっ」
とてもヤバい事になった。二人に介抱されなきゃ風呂に入れないほど落ちぶれたつもりはないんだが、こいつら言うこと聞かねえ。
あっという間に脱がされてしまった俺は最後の抵抗としてタオルで一番大事な部分を隠し、観念して風呂場へ連行されていった。
……ふん、いいだろう。
確かに一人じゃつらいところもあるかもしれないし、どうしても罪滅ぼしをしたいずん子の気持ちも分かるから、ここは大人として余裕をもって受け入れることとしようじゃないか。
焦ってばかりじゃ舐められるしな。
「っ!? まっ、ストップだ二人とも。そこはいいって、あのそこ自分で洗えるか──アヒっ♡」
ぐああああぁぁぁッ!! こいつらサキュバスか何かなのか!? お風呂のお世話をする介護士とかヘルパーさんだってもう少し遠慮して洗うと思うんだけども!!
……待て、狼狽えるな俺。
たかが風呂、たかが体洗いだ。
これくらいで動揺していたらこの二人のメスガキ化は進む一方じゃないか。
多少過激なボディタッチでも揺るがないという余裕を見せつけておかないと、今後のコミュニケーションに支障をきたしてしまう。
俺は大人なんだ。
体の隅々まで洗われたところでどうという事はない。身体が反応して思わず起立してしまいそうだったがしっかり耐えたし、左腕が治るまでの辛抱だ。
たとえ大人のお店みたいな洗われ方をされたって耐えるのだ。がんばれ俺。
「ふぅ……」
何とか風呂を出て着替え、歯磨きをして就寝する時間を迎えた。
同じように寝巻になったずん子は、冷たい麦茶を用意してくれていたようだ。気が利く。
「……で、では、夜のお世話をさせて頂きますね」
「っ? おう、頼む」
何故か敬語になったずん子。
そんな布団を敷く程度のことでお世話だのなんだのと大げさな。
素早くてきぱきと用意したずん子は、布団の上できりたんと一緒に正座をした。
あの、布団の上に乗られてると寝られないんだけど。
「コソコソ。き、きりたん。夜伽はいつもどんな風に……?」
「コソコソ……実はですねお姉さま。ボイスロイドの夜伽って世間一般では普通じゃないらしいですよ」
「えぇっ、そうなの……!?」
「私もこの家にきてから初めて知りました……」
こいつらわざわざ聞こえる声で何言ってんだ。コソコソ話が意味をなしてないだろ。
会話の内容がよくわからないし、そもそもヨトギってなんだっけか。
「あの、寝るからどいてくれる?」
「でも兄さま。もう一つの布団はさっきコーヒーを零してしまって、干しているので使えません」
「……そうだった。じゃあ俺は床で寝るよ」
「そ、そんなのダメだよ! もういっそ三人で川の字になって寝よ!」
「は? いや待て、それはちょっとおかしい──うおっ!」
彼女に手を引かれて布団の上に寝転がってしまい、結局俺は二人にサンドイッチされながら眠ることになってしまった。
ずん子やきりたんの言い分では『寝返りで左腕を痛めないように』とのことらしいのだが、それでも三人で密着して寝るのはおかしいと思う。
冷房が効いてるから暑くはないものの、別の意味で暑苦しい。
そしていつの間にか背中にずん子の柔らかい二つのずんだ餅を押し付けられながら、きりたんの慎ましやかだが確かに膨らみを感じるお胸に顔を埋められ、俺は甘い匂いに囲まれて全然寝れない思いをしながら朝を迎えるのであった。