ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す   作:お兄さマスター

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タイトル:買ったばかりのきりたんに所かまわず性欲処理の手伝いをさせる早漏マスター

 

 

 早朝、ご飯を食べ終わった私たち二人は、兄さまから外出用の変装アイテムを手渡された。

 

 ボイスロイドがそのまま外を歩いていると色々な意味で注目を集めてしまうため、その対策なんだとか。

 ……ずんねえさまに釣られて何気に彼の事を兄さまと呼んじゃってるけど、流石にもうマスターに戻すのは無理そうだ。

 間違えてマスターと呼ばないよう気をつけつつ準備を済ませ、いざ出発。

 電車に乗って向かうらしく、三人で駅に到着すると、そこでやけに周囲からの視線が強くなった。

 それもそうだ。

 私とずんねえさまは『美少女』をコンセプトに造られたボイスロイドなので、人間の外見基準にあてはめたらかなりの美形という事になる。

 自惚れなどではなく客観的な事実として。

 特にお姉さまなんかは細いのに出るとこ出てて、自然と男性の目を引く体型の為、より一層視線が強い。

 

 そんな人と一応美少女として造られた私という美人姉妹に囲まれた状態で、尚且つ腕の怪我もあって私たちにいろいろと手伝わせている兄さまは、何やら嫉妬のような目で男性たちに睨みつけられていた。

 それに加え、変装を見破って私たち二人がボイスロイドだと気づいた人も、以前の一斉摘発とセキュリティの大幅な強化を経て希少価値が爆上がりしたボイスロイドを二体も所持しているとのことで、やはり兄さまに羨望や妬みの眼差しを向けている。

 

 しかし、当の兄さまというと。

 

『残高が不足しています』

「いでっ!」

 

 そんな周囲の目などどこ吹く風──というより単に気がついていないだけなのか、彼は一人改札口に悪戦苦闘しているのだった。

 

 

 電車に乗り、二時間ほど揺られてから駅を降りた。

 そしてバスに乗ってこれまた長時間移動を続けていると、次第に周囲の建物が減り始めてきた。

 駅前はまだ多少活気があったこの地域も、ここまで来ると田んぼや古い民家などしか見当たらなくなってくる。

 バスを乗り換え、三十分。

 まるで創作物に出てくるような、絵に描いたドが付く田舎に到着した。

 道中、お年寄りが座ったまま経営している駄菓子屋や、ほとんど人の気配がない公民館など、都会では見られないような光景に少々の興味を引かれつつ、十分ほど歩いて。

 私たちはようやく目的地に到着したのであった。

 

「ただいま、叔父さん」

 

 時代劇で使われても違和感がないような、とても大きな屋敷だ。

 中から出てきた気のよさそうな初老の男性が、この家の家主であり兄さまの叔父様であったらしく、私とお姉さまは慌てて挨拶をした。

 どうやら私たちの事情は既に把握していたらしく、この地域一帯はとんでもない田舎だから変装しなくても大丈夫だよ、と教えて頂けたため、私たちはそのお言葉に甘えて暑苦しいカツラ等を片付けて、荷物を下ろし始める。

 本当にでっかいお家だ。

 私がシミュレーションで姉二人と住んでいたあの屋敷とほとんど同じで、内装も意外と似通っている。

 少々の感動を覚えながら居間に腰を落ち着けると、兄さまが道中買ってきた袋の中身を漁り始めた。

 

「ちょっと出かけてくる。……あれ、ずん子は?」

「叔父様が昼食の買い出しに向かわれるとのことなので、お手伝いにいきました」

「きりたんはどうする? 俺の部屋にゲームとか置いてあるけど」

「兄さまについていってもいいでしょうか」

「ん、分かった」

 

 兄さまが別の袋にまとめたものを預かり、戸締りをして家をあとにした。

 天気は快晴で空気もおいしく感じる。街中では味わう事のできない、とってものどかな雰囲気だ。

 ちょっとした林を抜け、砂利道を歩きながら私は兄さまのほうを向いた。

 

「どこへ向かうんですか?」

「墓参り。今の家からだと遠いから、いつも帰省ついでにな」

「どなたの……」

 

 そういえば兄さまの家族の話は今まで聞いたことが無かった。

 こちらから質問することは意図的に避けていたため、彼が話そうとしないことも相まってこの状況が生まれている。

 思い返してみれば私は、一緒に生活しているのに彼のことを何も知らない。

 知っているのは年齢くらいだが、兄さまの年齢から考えると、これから向かうお墓は彼のお爺さま辺りだろうか。

 

「両親だよ。親父もお袋も同じ墓に入ってんだ」

「えっ」

 

 ──思わず言葉を失ってしまった。

 

「きりたん?」

「……あっ、いえ。だからお参りの道具を買われてたんですね」

「おう、叔父さんちにあるやつ大分古いからさ」

 

 兄さまは当たり前のように口にしたが、はいそうですかと簡単に流せるような話題ではなかった。

 まだ学生の歳なのに既に両親と死別しているという情報は、私にとって思考回路が止まりかけるほどの重大なものだったのだ。

 確かに生き死には人それぞれだ。

 それはおかしいと口にすることはできない。

 けど、やはり、それは。

 

「……っ」

 

 聞いてはいけない事だろうか。

 彼の事を知りたいと思っているのに、それ以上に踏み込むことが怖い。

 デリカシーのない奴だなと、嫌われてしまっては耐えられない。

 そもそも道具の分際で詮索しようなどと考えるほうが烏滸がましいんじゃないのか。

 私はただ彼のお墓参りについてきただけの道具なのだから、思い出したくもない過去の記憶を掘り返させるようなマネはしちゃいけないんだ。

 

「……そういや話してなかったな。着く前に教えとくよ」

「い、いいんですか?」

「そりゃあこれから毎年来る事になるんだし、知っといたほうがいいだろ」

 

 兄さまの表情は、変わらずいつもの平静だ。

 動画の事を話すときと同じように、彼はただ普通に自分の過去を私に対して語り始めた。

 

「うちの親父、結構デカい会社の役員だったみたいでさ。稼ぎはいいけど楽しい仕事ではなかったらしいし、人から恨まれるのが仕事だっていつもぼやいてた」

 

 ザク、ザク、と砂利を踏みしめる音が響く。

 あとは鳥のさえずりが聞こえるくらいで、騒がしい都会と違って彼の声を邪魔するものは、彼の故郷たるこの地では何一つ存在しなかった。

 

「で、俺が小学五年生の頃、自宅に凶器を持った元会社員の男が来たんだ」

「……っ!」

「親父は会社を辞めることになった人の次の仕事を斡旋することもあったし、ウチに辞めた人が来る事自体は珍しくなかったんだよ。……で、多分休みの日ってこともあって気が抜けてたんだろうな。カメラで玄関の様子を見る前に扉を開けて、グサッと」

 

 どうしてこんな話をしていて、平然としていられるんだろうか。

 小学五年生ということは十年以上前の出来事だが、それでも彼にとっては両親と死別することになった大きな事件だ。

 ましてやそれが殺人で、しかも自分の目の前で。

 

「お袋が逃がしてくれたおかげで俺は助かったんだが、交番に駆け付けて助けを呼んだ頃にはもう手遅れでな。しかも犯人は薬物とかやってたらしくて、警官側にも被害が出たからやむなく発砲して射殺。当時世間じゃ結構話題になってたんだが……さすがに知らないか。まだ生まれてなかったもんな」

「…………」

「んで叔父さんに引き取られて、ボンボンだった俺は私立の小学校から転校して、現在の学力ダメダメ貧乏大学生に至る……と」

 

 最後は茶化すように言っていたが、まるで笑えるような内容ではない。

 知りたかったはずの彼の過去をようやく聞けたのに、今となっては知らないほうがよかったとさえ考えてしまっている。

 どんな顔をして接すればいいのだろうか。

 迷惑ばかりかけている私が、命を賭して彼を救ったご両親のお墓の前で、冥福をお祈りするだなんて驕った行動なのではないだろうか。

 そもそも人間ですら、家族ですらないというのに。

 不遜にも彼を兄さまなどと呼んでしまっている、ただの機械でしかないこの私が。

 

「……気にしなくていいぞ? もう十年以上前のことだしな」

「えっ? ……で、ですが」

「親父が実は部下に辛く当たってたのか、それとも犯人が元からあぁいう危ない奴だったのか、もう何もわかんねえし調べようもないんだ。本人たちどっちも死んでるしな。

 だから墓参りの時は、とりあえず手を合わせてくれたらそれでいいよ」

「……わ、わかりました」

 

 明るく振る舞ってくれるのはありがたいが、やはりモヤついた感情は拭えない。

 抱え込みすぎると互いに良くない影響が出てしまうから、兄さまの言う通り気にしすぎないようにはしたいと思うが、それでも少しだけ接し方が分からなくなってしまった。

 幼くして両親を失ってしまったのに、いまでも心を強く持って生きている。

 でも、もしそれが無理をして耐えている状態なら、このままではいけないのではないだろうか。

 ただでさえ今の生活では、男性として当たり前の性欲を我慢させてしまっているというのに、そこに加えて私がワガママや生意気な行動を取ってしまったら、彼のストレスはいずれ爆発して大変な事になってしまう。

 

 ……お姉さまにも共有して、もっと兄さまに優しく接してあげなければ。

 できれば色々と我慢させず、やりたい事をやらせてあげたい。

 例えそれが私たちの体を使う事であっても、彼にしてみればそれは当然の権利なのだ。

 彼にはもう少し『ボイスロイドに対して遠慮はいらない』という当たり前の事実を、しっかりと認識してもらったほうがいいのかもしれない。

 

 

 

 

 というわけで、どうしたものかなと迷っているうちに日を跨いでしまい、現在はお昼。

 

 兄さまは叔父様と一緒に出掛けており、あと数時間は帰ってこない。

 そして彼の自室で好きにゲームを使って遊んでいいと言われた私は、手にゲームを持ちつつ思考回路をグルグル回していた。

 ──彼と家族になりたい。

 私だけではなくお姉さまをも救ってくれた彼の生活を、もっと自然体で且つストレスフリーなものにしてあげたい。

 お父様やお母様の代わりというわけではないが、いま現在彼と共に暮らしている存在として、動画制作だけではなく色々な面でサポートしてさしあげたい。

 そう考えはするものの、具体的な案は何も思い浮かばず、ただ時間だけが過ぎていく。

 

「はぁ、どうしよう。……んっ」

 

 ベッドに寝転がるのは不遜だと思って床でゲームをしていたのだが、ふとベッドの下に何かを見つけた。

 軽く自室の片付けを手伝ってあげるつもりでそれを拾い上げると──

 

「…………買ったばかりのきりたんに所かまわず性欲処理の手伝いをさせる早漏マスター……?」

 

 手に取ったのは紙の同人誌。

 目を引いたのはそのタイトルだった。

 パラパラと中身を見ていくと、ドキドキするのと同時に既視感を覚えた。

 

「あの隠しフォルダにあった漫画と同じ……紙も電子版も買ってるんですね、兄さま……」

 

 偶然見てしまったあの時はちゃんと内容を見ることが出来なかったので、今回初めてこの漫画の大まかな流れを知ることが出来た。

 主人公が夏休みの大学生、というところまでは兄さまと同じだ。

 そして本の中ではリビングやトイレの中、更にお風呂場にベランダ、果ては公園の木陰や夏祭り中の人が少ない神社の陰で──などなど、タイトル通りところかまわず『東北きりたん』とエッチな行為に勤しんでいる。

 

「ふおぉ……こういうのが好きなんだ……」

 

 アブノーマルな内容だ。とてもえっちです。……ひえっ、あわわそんなことまで。

 何という事だ。

 答えを見つけてしまった。

 あのフォルダといい実家にあるこの本といい、やはり兄さまはきりたんを性的な目で見ていらっしゃったのだ。

 この本をもって確信を得ることができた。

 

 そう、彼のストレスを発散させるためには、この同人誌そのままに彼の願望を叶えてあげればいいんだ。

 一線超えてしまえばきっと家族に近しい関係になれるハズ。

 そして一線超えるだけでなく二つ三つ先に行ってこの本のような関係になってしまえば、彼も自分を追い詰める様な我慢はきっと辞めてくれるに違いない。

 

「が、頑張ります。よし、やろう私。……あっ、お姉さまにも手伝ってもらわなきゃ」

 

 おまけページで東北ずん子と仲良くする描写もあったし、彼女オンリーの本もチラリと見つけたため、兄さまはお姉さまも守備範囲のハズだ。

 彼女と協力してこの夏休みを有意義なものにしてあげよう。

 よーし、やるぞー!

 

 

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