ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す   作:お兄さマスター

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疾走するずんだ

 

 

 いろいろあって最近のイライラとムラムラの発散に成功してから、数日が経過した。

 

 

「あっ、死んだ……」

 

 今日も今日とてきりたんたちは診療所で収録をしており、家には他の誰もいないため、俺は久しぶりに一人で生配信を行っている。

 すっかり両手を使えるようになって、これまで抱えていた鬱憤も消えた事から、それなりに良い気分で実況に取り掛かることができていた。

 現在プレイしているゲームは即死トラップが多い初見殺し横スクロールアクションゲームだ。

 雑談交じりに一時間程度の適当な配信をするにはもってこいのゲームだろう。

 

【柏餅また死んでて草】

【ちゃんとジャンプしようねぇ】

「動くなってコメントに従ったんですけどね俺。集団いじめかな?」

 

 柏餅というのは動画サイト上での俺の名前だ。

 コメント数も視聴者数もそれなりで、いわゆるまったりとした配信になっている。

 きりたんたちを迎え入れる前の一人きりだった時代を思い出す状況だ。

 

【今北産業】

【早くきりたん出せ】

「今日はソロ配信だっつってんだろ!」

 

 タイトルを見てから来ているはずだから、俺のソロという事を知っててのセリフだ。タチが悪い。

 俺のチャンネルは古参と新規の割合が摘発以降よく分からない事になっていて、ボイスロイド目当てでチャンネル登録した層は俺だけの配信を観に来る確率が低い。

 視聴者から見て、マスターというのはいわゆるボイスロイドのスタッフのようなものなのだ。

 つまり興味がない配信など見ないため、さっきのコメントをしたやつは古参かただ暇なヤツのどちらかだろう。あっちからすれば呼吸のようなコメントだ。

 

【今日のサブチャン更新いつ?】

「あっちの事は全部ボイロに任せてるんで、俺は把握してないですね。気になる人はサブチャンネルのプッシュ通知をオン」

【誘導するな】

「先に誘導してきたのそっちでしょ。もうコメント信じねぇからな……」

 

 あれ以来きりたんたちが担当しているサブチャンネルの伸びはうなぎ登りだ。

 ゲームの実況は未だにこちらでやっているものの、ASMR配信や雑談、短いネタ動画などはあっちで投稿し始めている。

 まぁ、彼女らのASMRは本当に舌を巻くクオリティだし、摘発後にボイスロイドがバイノーラルをやっているチャンネルはウチくらいのものなので、物珍しさで登録する層も若干いるらしい。

 

【そこやばい!】

「えっ」

【ジャンプしてください】

【今回はマジ】

「信じますよ……? ──あぁっ! やっぱりかよ!」

【少しは疑う事を覚えろ】

【は?】

【純粋でかわいいね……】

【誤情報流すヤツNGにしろよ】

 

 いつも通り多少視聴者に弄られつつゲームをしていると、そろそろ終了の時間が迫っていることに気がついた。

 

「あと十分したら終わりますね」

【なんで?】

「ご飯タイムです。あとボイロたちも帰ってくるかな」

【パクパクしようねぇ】

【欲しいものリスト公開しろ】

【柏餅ガチ勢こわい】

【ボイスロイドたち外出させてんの?】

「知り合いのところに預けてるだけですよ。そこでサブチャンネルの撮影することもあるみたい」

 

 ボイスロイドだけを出かけさせるのは、明確な禁止行為ではないが……あれだ、暗黙の了解的なヤツ。

 フォローしつつ雑談していると、ボイスロイドの話題が上がったせいかコメント欄が少し加速した。

 まったく現金な奴らだな。

 

【サブチャンの配信って聴いてるんですか】

「あー、あんまり確認できてないけどサムネ程度なら見てますね」

【一生聴くな】

「なんで……」

【兄さまはオレなので】

【昨日はお兄さまだったぞ】

【この前のご主人様が背徳感あって一番好き】

 

 きりたんたちは割と凝ったシチュエーションで毎回撮影しているようで、場合によっては視聴者の呼び方も変えているらしい。

 効果のほどはこのコメント欄の加速ぶりを見れば明らかだ。

 いま俺の配信中なんだけどな。

 ここならいいけど他所のチャンネルでこの話しはしないでね、と一応概要欄には書いてあるので、数少ないボイスロイドのASMR配信への感情はみなここで発散していっているのかもしれない。

 きりたんたち関連の話でコメント欄が早くなるのは、もはや当チャンネルのお決まりみたいなものだ。

 

【ボイスロイド三人も持ってるのやはりヤバイ】

【石油王かな】

【家では侍らせて生ASMRさせてるんでしょ? クソがよ】

「エロ同人の読みすぎだろ。あいつらそんな暇じゃないですよ」

 

 生ASMR……頼んだらやってくれるのかな。

 

【やめてくれカカシ】

【忙しい柏餅の代わりにASMR配信はオレたちが観てあげるね】

「……そこまで言われると俺も気になってくるんですけど」

【は?】

【やめろ】

【ふざけるな!ふざけるな!バカヤロウ!!】

【脳が壊れるからおすすめしない】

 

 怒られてしまった。

 というかみんな必死過ぎではないだろうか。

 

【あっちではボイスロイドが全然柏餅の話題出さないけど仲悪いんか?】

【やはりオレたちが兄さま】

【きりたんに告白しようと思ってる。視聴者のみんなには、悪いけど。抜け駆けで。】

【ヤバいヤツ出てきたしもう終わったら?】

【ちくわ大明神】

【次回の配信も待ってます!】

 

「いや勝手に終わらせ……別にいいか。では、さらばー」

 

 使い回しているエンディング動画に差し替えて、俺はそのままソロ配信を終わらせた。

 

 

 

 

 本来、俺は生意気なメスガキをブチ犯して分からせるために配信者を始めた。

 

 人気配信者に憧れていたわけでもなければ、何か高尚な目的があったわけでもない。

 ただきりたんを分からせて、来る日も来る日も、家の中ではいつでも手を出せて俺の大人棒に心から屈服する彼女を見たくて、俺は資格取得のために配信者を始めたのだ。

 そう、あの太っちょユーザーとほとんど変わらない。

 俺は性的な事が目的でボイスロイドを購入したくてこれまで頑張ってきたのに、過程の段階で得た動画に関しての云々や、茜の事件などを経験してそれを忘れていたのだ。

 赤信号、みんなで渡れば怖くない、だとか言って自分を奮い立たせていた。

 

 彼女らの音声作品は本当にすごかった。

 触ってもいないのに、聴いていただけで下着を一枚ダメにしてしまったくらいだ。

 俺には秘密で事を進めているようだが、ゆかりさんが横流ししてくれるそれはいつも俺の手元にやってくる。

 とても魅力的だった。

 健全なASMRしか知らない視聴者たちとは違い、俺だけは一線超えたものを楽しめることに、優越感を覚えている。

 なによりこれまで我慢していたものが解き放たれて、しかもほぼ毎週とてもコッショリしたものが供給されることになって、俺は逆にムラムラが増えつつある。

 

 ゆかりさん曰く、そのジャンルに興味があるとの事で。

 それはつまりコッショリしたあぁいう事に興味があるという事で、つまりはあいつらがむっつりでスケベという事に他ならない。

 えっちなロリガキ。

 これは分からせないといけないだろう。

 俺に隠れてヤバい作品を量産し、ASMRで数多のボイロ好きたちを沼に陥れているメスガキ共を、大人である俺はわからせないといけないのだ。

 

 

「すぅ、すぅ」

 

 隣でボイスロイドたちが眠っている。

 家には布団が三つあり、そのうち二つを使って彼女たち三人はスリープしており、普段はそこから少し離れた位置に布団を敷いて寝ている。

 

「…………」

 

 むくり、と静かに起き上がった。

 スマホを確認すると、深夜三時前くらいだ。

 ボイスロイドたちの音声収録による外出で、欲望を発散できる状況に変わってから、俺は逆にムラムラしてしまっていた。

 音声を聴くたびにドキドキするし、こいつらが()()()()()に興味があるのだと思い出すともう止まらない。

 

「……寝てるな」

 

 茜はずん子の抱き枕にされており、寝相の良いきりたんは少し離れて一人で眠っている。

 彼女に近づきながら──考える。

 もう手を出してもいいんじゃないか?

 コッショリには多少寛容的なのだから、マスターとしてきりたんに触れようとするのはなんら問題ないのでは?

 生意気にもえっちな音声作品を作りやがっているメスガキのことは分からせるべきだろう。 

 だって、その為に彼女を購入したのだから。

 大人としてきりたんを分からせるために。

 

「ほっぺ、やわらか……」

 

 そっと触れると、パン生地のように柔らかい白皙の肌の感触が心地よかった。

 起こさないように、と心の中で何度も反芻しているのに、暴走する精神が手を止めようとしてくれない。

 サラサラな髪も触れていて楽しい。

 近づくと女の子特有の甘い香りが漂ってきた。

 画面の向こうから兄さまだなんだと自分勝手に口にする事しかできない視聴者たちと違って、俺は直接彼女を愛でることができる。

 優越感と背徳感で頭がおかしくなりそうだった。

 

「……ん」

 

 きりたんがスリープモードから目覚めた。

 といっても寝ぼけている様な表情だ。

 パソコンが立ち上げてすぐの時は若干動きが重いように、ボイスロイドもスリープモードから覚めた直後は寝ぼけている。

 ある意味で人間らしい挙動する彼女に様々な感情を抱きつつも、俺の手が止まることはなかった。

 

「あに、さま……?」

 

 変わらず髪を撫でる。

 眠れない子供をあやすようにも見えるかもしれないが、俺の内心はそんな生易しいものではなかった。

 茜のマスターを咎めた日から違和感を持っていた。

 俺は彼と何が違うのだろうか、と。 

 そういう目的で彼女たちを購入して、自分はまだ手を出していなかったというだけの話だ。

 本当はきりたんを買ったらさっそく犯してやるくらいのつもりで彼女を購入したというのに、あれこれ理由をつけて勿体ぶっていた。

 意味がないじゃないか。

 俺はこのロリを分からせてやりたいのに、行動が思想に追い付いていない。

 

「どうか、しましたか……」

「……気にしなくていい」

「はぇ……?」

 

 撫でるのをやめ、きりたんをそっと持ち上げて、そのまま抱き留めた。

 

「ぁ、あにさま……っ?」

 

 温かさを感じる。

 自分以外の、他人の温もり。 

 幼い頃に失ってから、たぶんずっとこれを求めていた。

 動画で、漫画で、SNSの何かで彼女を見かけたそのときから、きりたんをこうしてやりたかった。

 

「静かにしていろ」

「…………は、はい」

 

 きりたんは怯えない。

 何故か少しだけ安心したように、口元を緩めている。

 どうしてだろうか。

 俺はいま、彼女を襲っているというのに。

 

「きりたん……」

 

 そこから数分間、彼女を抱きしめ続ける。

 情欲が湧き上がってくる。

 心臓の鼓動が加速をやめない。

 俺はこのまま、彼女をこのまま、いつか読んだ同人誌のように、このまま。

 どうにかしてやりたい──思った矢先。

 耳元できりたんが囁いてきた。

 

「だいじょうぶ、ですよ」

 

 俺の後頭部を優しく撫でながら、彼女はそう口にする。

 

「マスターなら……いいですから」

 

 その言葉の意味を理解した瞬間、俺は彼女をそっと元の位置に戻し、すっくと立ちあがった。

 

「……マスター?」

「悪い、ちょっと頭を冷やしてくる」

 

 返事も聞かず、さっさと着替えて玄関のカギを閉め、俺はマッハずんだーに跨り家を飛び出していった。

 

 

 

 

 っっっぶねぇぇえええ!!

 

 はぁー、あー。

 マジで危なかった。

 あのままじゃメスガキの言に乗せられて危うく手を出すところだったぜ。

 

「ふぅ……はぁ、落ち着け。まだその時じゃない」

 

 夜の街が一望できる高所まで来て、コーヒーを飲みながら一息つく。

 そう、アレではダメだった。

 俺は待たなければいけないのだ。

 きりたんたちがコッショリ音声を俺に黙って作っている以上、いずれはこれを販売したいと言って秘密を打ち明けてくるだろう。

 そして彼女たちは俺を舐め腐っている。

 聴かせてあげますからさっさと販売してください、なんてことを言ってくるかもしれない。

 なんなら舐めた態度で三人で俺を篭絡してこようとするかもしれない。

 

「負けねぇぞ、メスガキめ……っ」

 

 そこでやっと手を出すことが許されるのだ。

 俺がやりたいのは分からせだ。

 大人を舐めたロリガキを大人棒で屈服させることこそが至高なんだ。

 だからそれまでは待ってやる。

 いままでのように受け身でいてやるのはそろそろ終わりだ。

 サブチャンネルが伸びて調子づき、俺に生意気な態度をとってきやがったら、その時こそ本当に大人棒で躾を執行してやろうじゃないか。

 

「……よし、落ち着いた」

 

 ベンチに置いていたヘルメットを手に取り、振り返った。

 そこには翠色の豪奢なバイクが鎮座している。

 

「行こうか、マッハずんだー」

『レッツゴー』

 

 自分の意思があるのかどうかは定かじゃないが、語り掛ければマッハずんだーは機械音声で返事を返してくる。

 知能もそこそこあるようで、夜の話し相手にはうってつけだった。

 メットを被り、エンジンを轟かせて夜の街を駆け抜ける。

 

『反応あり。この先にある路地裏で成人男性が不良にカツアゲをくらっている』

 

 アクセル全開でマッハずんだーと共に風になる。

 たまにこうして夜の空気を吸っていると、外出中にマスターとはぐれたボイスロイドや、夜中だからと悪い奴らに襲われている人間を見つけることがあった。

 その度に俺は顔の見えないヘルメットを被り、バトルずんだーを駆使して困った人たちを助けている。

 それは正義の行いをしたいからではない。

 ただ自分のボイスロイドに手を出しそうになるたびに、その感情を押さえつけるために日夜バイクを走らせている。

 ただ、それだけのことなのだ。

 

「急ぐぞ、ずんだー!」

 

 本能を抑制するため、今日も月明かりの夜を疾走する。

 

 

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