ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す 作:お兄さマスター
きりたんが最初からクソ生意気だったら、俺も渾身のわからせ棒でさっそく犯してやるつもりだった。
「というわけで、本日からウチの間抜けなお兄さまのサポートをさせて頂きます、東北きりたんです。よろよろ」
しかし、届いたきりたんは何だか物腰柔らかというか。
危うい雰囲気を醸し出してこっちを誘惑してくるという、絶妙なラインのメスガキっぽさはどうやら持っているらしいのだが、それを加味しても彼女はやはり真面目で丁寧なボイスロイドだった。
今もああして、俺が用意した原稿を一言一句正確に、しっかりと小バカにしつつ緩い雰囲気を作りながら、真摯に動画撮影に取り組んでくれている。
「撮り溜めの動画が無くなり次第、私の出る動画が始まりますよ。ふふ、私の出番を渇望する皆さんは、マスターにツイッターで投稿催促しまくりましょうね」
あ、お兄さま呼びとマスター呼びを間違えたな。
まあアレは慣れの問題か。ここまでうまく撮影できてるし、今回はあのまま素材に使ってしまおう。
日常生活でもきりたんにはマスターではなく『お兄さま』と呼ばせたいのだが……無理に呼ばせるのは違うのだろう。
恐らくお兄さまという呼び方は、最上級の信頼の証だ。
出会って一日も経っていない相手を、おいそれとお兄さまだなんて呼べるはずもない。
彼女が自主的にマスターからお兄さまに変えてくれるのを待とうじゃないか。それから大人の凄さを分からせてやるぜ。
「……はい、カット。初めてなのによく出来てたな、凄いぞきりたん」
「ど、どうも。ボイスロイドですから、この程度ならなんてことはありません」
遠慮がちに笑うきりたん。
あのグリーンバックの前に立って、デフォルトの生意気なメスガキ節全開で喋っていた、撮影時の彼女とは大違いだ。
素を見せてくれているのか、動画が素なのか。
それはこれから生活していけば分かる事だ。焦る事はない。
「今日はこんなもんだな。編集は明日に回そう」
「はい、お疲れさまでした。マスター」
基本的には短い動画を毎日投稿しているのだが、土曜日だけは毎週投稿を休みにしている。
で、明日は土曜日だ。
編集はゆっくりやるとして、それまでは適当にゲームを漁りつつ、ダラダラしよう。
きりたんにも緩い雰囲気でゲームをやって貰いたいので、ガチガチに予定を詰めるのは、これからは無しだ。
「ちょっと遅いけど昼飯にするか。……あっ」
ボイスロイドって活動エネルギーどうなってるんだっけ。
「だ、大丈夫ですよ。人間用の食事でもエネルギーに変換できますから」
ほえぇ、ドラえもんみたいだ。
マジでSFの存在なんだな、ボイスロイドって。
「そっか。じゃあ適当になんか作るから、PCとかいろいろテーブルの上から片付けといてくれ」
「はい、承知しました」
◆
お食事から一時間ほど経過して。
現在時刻は夕方くらいだ。時計の針が右斜め下を向いている。
私と言えば、マスターからの指示でいろんな新作ゲームを調べつつ、マスター自身のネタも動画で使うため、これまで投稿されていた動画を見返していた。
さすがボイスロイドを正規に購入した方というだけあって、彼の実況動画はそこそこ面白く、数字も実況界隈では中堅を維持できていた。
私自身も動画を見ていると少しだけ笑ってしまったし、こんな真っ当な実況者であるマスターをサポートできるなんて、ボイスロイド冥利に尽きるというものだ。
「すぅ、すぅ」
その肝心のマスターはというと、かわいらしい寝息を立ててお昼寝されています。
「こん、ど……ひざまく、ら……」
変わった寝言をおっしゃっているが、アレがマスターの要望であれば当然応えたいと思う。
というか膝枕くらいならいつでもやりますけどね。頭を撫でたり耳かきなんかもサービスしちゃいます。
「あ、このサイトいいかも。情報の入りが早いし、コメントする人も多いみたい」
PCでネットサーフィンをしてみると、ゲームやボイロの情報がいち早く共有されて、使用しているユーザーもそこそこ多いまとめサイトにぶつかった。
次回からはコレを使って情報を調べることにしようかな。
「えーと……デスクトップにショートカットを──ん?」
デスクトップ画面に戻ると、左上に『まとめ』という名前のフォルダを発見した。
その周囲には動画用の素材や、未編集の動画のフォルダなどがある。
では、このフォルダはなんのまとめなのだろうか。
マスターはお昼寝されているし、少し確認する程度なら問題ないだろう。いずれは編集もお手伝いすることになっているから大丈夫だ。
「………………ぁ、わわ」
そんな、呑気な事を考えながら開いたのが良くなかった。
フォルダの中にあったのは画像、動画、音声作品とまた画像画像動画。
そのどれもが一目見て分かるレベルのセンシティブなコンテンツであり、加えてそれらに映っていたのは紛れもなく『きりたん』そのものであった。
「な、なっ、なんという……」
きりたんのえっちなコンテンツのまとめ、だったのだ。どうしようこれ。
手は出されていない。
セーフティ機能の一件で、手を出さないという意思も示してもらえた。
しかし、ここには大量のきりたんスケベコンテンツのまとめ集が存在しているのだ。
もう思考回路がショート寸前です。なんてものを見てるんですか、このマスターは。
「……わ、たしの事……そういう目で……?」
自然と悪い気はしなかった。
むしろ魅力的に思ってくれている事に関しては、嬉しいとさえ思っている。
なの、だが。
やっぱりどうすればいいのか分からない。
マスターは私を前にして、性欲を我慢なされているという事なのか?
「すぅ、すぅ」
「うぅ~……マスターのばか……」
結局悶々としたまま答えは出ず、またゲームや動画にも集中できなかったため、私はマスターのそばで狸寝入りをしながら彼が起きるのをじっと待ち続けるのであった。