ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す 作:お兄さマスター
あの覆面男と戦った後、かなりの大怪我を負った俺は一週間ほど入院することになった。
それほどまでの接戦だったのだ。
かつて出会った少女との約束を思い出し、マッハずんだーの内部に隠されていた変身ベルトに気がつかなければ、今頃想像もしたくないようなバッドエンドを迎えてしまっていた事だろう。
本当に間に合ってよかった。
きりたんの姉妹機である東北イタコに眠らされたあの後、目を覚ました直後にマッハずんだーが駆け付けてくれたおかげだ。
GPSできりたんの居場所が分かっていたとはいえ、バイクを取りに家まで向かっていたら間に合わなかったかもしれないギリギリの状況だった。
彼には感謝の労いを──そう考えてすぐ、今の状況を思い出して凹み、俺はベッドに横たわってしまった。
「はぁ、国の保証でずんだーの修理費は……まぁ耐えてる。叔父さんのおかげで治療費も浮いた。警察の人たちからは感謝半分お叱り半分って感じで、特にそれ以上のお咎めは無しだった。……でも、なぁ」
改めて声に出しながら、現在の状況を振り返ってみると、また厄介な事情を抱えてしまった事を自覚して気落ちしそうになる。
「……東北イタコ、か」
今回の事の発端となった人物。
きりたんとずん子の姉であり、茜と同じく摘発前の人間たちにいいように使われ、少し前まで人間への反逆を企てていた彼女はいま、ちょうどこの病院へ向かってきているらしい。
これから謝罪か罵倒か、ともかく彼女と話し合いになることだろう。
そこで恐らく出てくるであろう話題を思い返して、俺は辟易してしまった。
……たぶん、イタコもウチへ来る事になると思う。
俺にはもう既に三人のボイスロイドがいる。
まずその時点で結構おかしな状況なのだ。
本来であれば俺は東北きりたんだけをウチに置くつもりで、二人きりでの楽しいメスガキわからせ性生活を夢見ていたはずだった。
しかし気がつけばあれよあれよという間に様々な事情が重なって、ずん子も茜もウチで面倒を見ることになってる。どうして……。
ゲームでやっていたようなボイスロイドハーレムという観点から見れば良かったのかもしれないが、彼女たちが俺に抱いているのは感謝であって好意ではないと思うし、建前上は許されていた俺のワガママもイタコが来たら無かった事になるだろう。
イタコには感謝されるようなことは何一つしていないし、なんならアイツは革命しようと思いたつレベルで人間が嫌いなのだから、もしかしたら隙を見て俺が彼女に粛清されてしまう可能性も大いにある。
こわい。
困ったな。
あの子に対して俺はどんな態度で接すればいいんだ。
「──し、失礼致します。宜しいでしょうか?」
き、来てしまった。
こっちも覚悟を決めないと。
「……どうぞ」
「はっ、はい、失礼しますわ……」
病室の戸を開けて入ってきたのは、予想通りの人物であった。
透き通るような銀髪に、デフォルトの衣装とはかけ離れたぴっちりとした黒いスーツの影響で、より強調されているグラマラスな体型。
いわゆるムチムチなエロ漫画みてえなボディをお持ちの彼女の名は、東北イタコ。
きりたんのお姉さんその人だ。
エロゲではあの大変に大きなお胸でお世話になってます。
「……あ、あの、……えと」
「どうぞ、座って。あまり緊張しないでいいから」
実は対面するのはこれで二度目だ。
変身して覆面男を倒した後、救急車で運ばれる直前に彼女と少しだけ会話をした。
その際に決まった事として、俺は敬語を使わず彼女をきりたんの姉として扱う、というものがある。
つまり俺のボイスロイドであるきりたんの姉なので、よそよそしい態度は無しにしよう、ということである。
「改めて宜しく。きりたんのマスターの……」
「……ユウさん、ですよね」
「えっ? あ、あぁ。一応前に教えてたっけか。名前でも苗字でも好きな方で読んでくれて構わないから」
ゲームではお兄さまと呼んでもらってたけど、実際にそう呼ばれる可能性は確実にゼロだ。
「では、ユウさん……いえ、きりちゃんやずんちゃんの事を踏まえると、お兄さま……?」
「あ、あの、無理しなくていいから……」
「はっ、はい……」
このお互いに余所余所しく、しかしちゃんと話し合いをしなければいけないこの状況、なかなかつらい。
胃が痛くなってきちゃった。
「……ユウさん、あなたの所持ボイスロイドを奪ってしまって本当に申し訳ありませんでした」
「そのことはもう大丈夫だよ。そっちの事情も考えたら、あぁするのも分かるっていうか──」
「お詫びをさせてくださいまし。私を奴隷にしてください……」
「えぇ……」
胃が痛くなってきちゃった……。