ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す   作:お兄さマスター

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エロいことしたかっただけ

 

 

 

 最近、自分が何をしたいのかが分からない。

 

 夏休みに入るまではシンプルだった。

 所有資格取得のために勉強して、がむしゃらに動画投稿を継続して、ボイスロイド購入のための資金集めに精を出す──そんな毎日を送っていた。

 目標が明確化された日々だ。

 その先にある生活に思いを馳せていたからこそ、ただただ気持ちを躍らせながら頑張ることができていた。大変だったが、その生活に満足していたとすら思う。

 しかし、今はどうだ。

 オレンジ色の夕焼けが届かない、公園のドーム型遊具の中に隠れて息を殺している。

 どうしてこんな場所で、こんなことをしているのだろうか。

 もう隠れんぼで遊ぶような歳ではないというのに。

 

「──ぅ、ん」

 

 俺の腕の中で眠っていた、薄紫色のショートヘアの少女が目を覚ました。

 彼女とここに逃げ込んでから、ざっと一時間は経過したか。

 

「……まだスリープモードでもいいんだぞ」

 

 言っても聞かないことは分かっているが、一応。

 

「いえ、すみません。……緊急時に対応できるよう、警戒を続けます」

「……そうか」

 

 ゆっくりと俺から離れ、両耳に手を当てる少女。

 自らに搭載されている索敵レーダーを起動しているらしい。

 

「周囲に敵勢反応はありません」

「わかった。……もう少し、ここで休もう」

「……はい」

 

 提案を呑んだ少女は耳に手を当てたまま、目を閉じてそれ以降喋らなくなった。

 警戒を続けながら、いつでも動ける待機状態になっている。

 敵が来れば彼女が反応すると、そう安心して、俺も再び瞼を閉じて休息に入った。

 

 

 ──俺は、正義のヒーローなんかじゃない。

 

 ただ、頑張って購入した自分専用のボイスロイドと、性的に爛れた生活を送りたいだけだ。

 そのはずだった。

 それ以外のことを頑張るつもりなんて、毛頭なかったはずなのだ。

 今、自分は何をしているのか?

 簡単に言えば、犯罪組織と対立している。

 まず、開発途中のハイスペックなボイスロイドを悪用しようと企んだ連中が、件の研究を続けている研究所をハッキングし、試作機を外部に逃走させた。

 次に、警察と研究所の関係者、そして事件を起こした張本人である犯罪組織の双方が、その試作機であるボイスロイドを追っている。

 最後に、全くの部外者であるはずの俺が、その大勢の人間たちが追い求めている少女を、逃走しながらここで匿っている。

 それが現在の状況だ。

 

 ボイスロイドの名は結月ゆかり・雫。

 診療所で度々世話になっているあの結月ゆかりの派生機体であり、現状世界で最も優秀な演算処理能力を搭載したボイスロイド──その試作機(プロトタイプ)である。

 ……そう、プロトタイプだ。

 その単語を耳にしてしまったばっかりに、俺はこんな面倒ごとに首を突っ込んでしまった。

 目の前にいるこの少女、雫。

 彼女が助けを求めて伸ばした手を、関わらないと決めたはずの俺が掴んでしまったから、このような複雑な事態に陥ってしまっている。

 俺だけではなく、もっと大勢の人たちが被害に遭っている。

 親父が残してくれた力を使って実行犯たちを殲滅するか、もしくは警察か研究所に彼女を送り届けるか、ともかく事態を解決する選択肢は決して少なくない。

 だが、俺は。

 選べる道のどれも通らず。

 雫を連れて一人、この街を駆けずり回っていた。

 

「──柏木さん」

 

 警戒態勢を続けた状態で、雫が口を開いた。

 

「……どうして、ボクを助けてくれたんですか?」

 

 あのゆかりさんの幼少期をイメージして造られた機体という割には、ボクっ娘という意外な属性を持っている雫が、そんなことを質問してきた。

 当然、答えは決まっている。

 もちろん格好つけたエモいことを口にするつもりはない。

 

「下心だよ」

 

 別に自らを卑下しているから、そう言ったわけではない。

 事実として、俺が雫に手を差し伸べた理由は、下心をおいて他にはなかった。

 

「かわいい女の子に感謝されたい……本当にただそれだけだ」

「は……はぁ。かわいい、ですか」

 

 困惑しているだけで、雫は決して照れてはいない。

 研究所でデータを入力され続ける日々の中で、あまり聞かされたことのない単語だから、意味自体は分かっていても反応に困ってしまっているのだろう。

 かわいい女の子に感謝されたい。そう思って、雫を庇った。

 記憶や存在ごと消えてしまった、あのかわいいプロトタイプの少女に、もう一度だけ感謝されたかった。

 いいところを見せたくて、あの時の約束を守りたくて──いや、少し違うか。

 

 俺はプロトタイプの末路というものを知っている。

 自我を失い、自らの身体すらも失い、優れた機能や基本データだけを後続機に継承させて、その本人はこの世からきれいさっぱりいなくなる。

 それが嫌だったのだ。

 とどのつまり、ただのワガママ。

 小学生だったあの頃の俺も驚くほどの、多くの人を巻き込んだワガママを、今こうして実行している。

 俺は雫とあの少女を重ね合わせて見てしまっているのだろう。

 

 犯罪組織に悪用されるのは論外。

 しかし、研究所に連れ戻したら彼女はあの少女と同じ結末を辿ってしまう。

 ゆえにどっちつかずで、ただ雫を匿い続けているのだが──そんな行為が長続きするはずもなく。

 

 

「そのボイスロイドを渡せ!」

 

 二人で逃げ続けるには限界があった。

 たとえ索敵できたとしても、物理的な数で圧倒されてしまえば、こちらは手も足も出ない。

 運良く切り抜けられたとしても、こうして銃を突きつけられ、遂には追い詰められてしまう。

 今日だけで何十回も変身して戦闘をしているわけで、過酷なトレーニングを積んだ軍人でもないただのへっぽこ一般人である自分に、これ以上戦う体力など残ってはいない。

 街中を逃げ回った挙句、最後にたどり着いたのは、一周回って雫と休息を取っていたあの公園だった。

 陽は落ち、疲弊しきった心とは裏腹に、空には満天の星空が広がっている。

 

「そ、そうだ! まずはそのベルトをこっちに投げろ! 変な動きをしたら撃つからなっ!」

「……わかった」

 

 腰のベルトを外し、銃を持った男の前へ投げ捨てる。

 

「へ、へへっ……これを使えばオレも!」

 

 いつでも強力な武器を求める犯罪者からすれば、俺のベルトは魅力的に見えることだろう。

 そんなことは百も承知だ。

 だからこそ、こういった場合のセーフティも用意している。

 

「こうすれば変身でき──アギャッ!?」

 

 ベルトを巻いて変身機能を発動した男は、身体中が激しく痙攣し、即座に気絶して倒れ伏した。

 事前に設定した登録者以外が変身しようとすると、スタンガン機能が発動して使用者を気絶させる仕組みになっているのだ。

 まぁ、あの機能が発動すると内部機構がダメージを負うから、無事に修理できないと二度と変身できなくなるのだが。

 今はいい。

 変身できなくなろうと関係ない。

 あいつからベルトを回収する時間も惜しいため、そのまま雫の手を引いて、現場から離れようと──したものの。

 

「……柏木さん」

「どうした」

「ボクのことはもういいですから……諦めましょう。投降すれば殺されはしないかもですし……」

 

 もう一人、公園付近の自販機の影に、犯罪組織の一員が潜んでいた。

 まるで芸がなく、先ほどのように銃を突きつけて、先ほどのように雫を渡せと怒鳴り散らしている。

 それを目の当たりにしてついに観念したのか、雫は握っていた俺の手を離そうとした。

 だが、あんな奴らの好きにさせるわけにはいかない。

 手を離して俺の前に行こうとした雫を制し、再び背後へ下げさせた。

 

「か、柏木さん?」

「……君を渡すわけにはいかない」

「でも……」

 

 ヤケになったわけではない。

 俺にはれっきとした勝算がある。

 

「バイクの音、きこえないか」

「……ぁ、確かに近づいてきているような」

 

 轟くエンジン音。

 相手の男は焦っているが、こちらは極めて冷静だ。

 なぜ確信できたのかは分からないが、バイクに乗ってこちらへ向かってくる人物に、やはり心当たりというものがあり過ぎた。

 

「ぬわっ!? な、なんだ!?」

 

 突然、男が持っていた銃の先端に、緑色に発光する”矢”のようなものが突き刺さった。

 その後すぐさま公園の入り口付近で大きなブレーキ音が鳴り響き、ほどなくして聞き慣れた少女の声が夜の空に木霊した。

 

「──ずんだもんの射撃精度、バッチリです! 非殺傷型の矢に切り替えます!」

 

 それは俺が一番初めに購入したアンドロイドの声音(ボイス)

 ふと公園の入り口へ顔を向け、来訪した人物と目が合ったその瞬間に、彼女はこちらへ向かって棒状の何かを投擲した。

 

「兄さま! これ使ってください!!」

 

 綺麗な放物線を描いて俺の手元に落下してきたのは、機械仕掛けの見た目が派手な弓矢だった。

 意図を理解し、弓を構える。

 狙いはもちろん敵対しているあの男の脳天だ。

 武器を壊され、さらに伏兵の出現で狼狽しきったあの男に、この矢を避けようと行動できるだけの精神的余裕は残されていない。

 

「はっ──」

 

 すかさず、俺は弓矢を射る。

 そこから高速で発射された矢は、狙い通り男の額に直撃。

 彼が沈黙し、公園での戦闘はなんとか幕を下ろすことができたのであった。

 

 

 

 

 雫が研究所から逃げ出したのは、どうやら自分の意志だった。

 

 ハッキングをして出口を開いた犯人こそあのグループだったが、雫は決して特殊な命令を入力されたわけでも、逃げるように脅されていたわけでもなく。

 ただ、自由になりたくて。

 最初に起動されてから構築してきた自我、つまり”自分”という存在を守りたいがために、彼女は研究所からの逃走を図ったのだ。

 俺の予想通り、プロトタイプが後継機のために、人格ごと消去されて開発の材料に回されることを雫は知っていた。

 機械がこんなことを言うのはおかしいかもしれないけど、死にたくないって思っちゃったんです──と、彼女は語った。

 その結果、どうなったのか。

 

「研究所で待ってますね、柏木さん」

「……あぁ。すぐ会いにいく」

 

 結月ゆかり雫型開発プロジェクトに、俺も参加することになった。

 研究に手を貸してくれたら、自我の保存やボディ本体の継続的な運用も視野に入れると、そういう話が舞い込んできた。

 その理由は、二つ。

 

「非常に興味深いよ。まさか試作ボイスロイドがここまで自我を露にするなんて。そうならないよう、初めから感情やユーモアのリミッターを制御していたはずなのだが」

 

 車に乗って研究所へ送られていく雫を俺と一緒に見送った、この隣にいる白衣を纏った初老の男性。

 彼は研究チームのリーダーであり、今回の雫が見せた『リミッターが機能している状態での強い自我』という、予想していなかった研究結果に舌を巻き、俺と話がしたいと持ち出してきた張本人だ。

 そして、俺が研究に参加することになったもう一つの理由は──

 

「それにしても、君があの柏木先生のご子息だったとはね」

「……父とは、どういう関係だったんですか」

「いうなれば上司と部下さ。君のお父様は……とても、立派な方だった」

 

 理由は、俺の生まれ。

 俺の立場。

 大恩ある柏木先生の息子が、犯罪組織から研究対象を守り切っただけではなく、ボイスロイドの新たな可能性を見出し、なにより試作機の自我を亡き者にはしないでほしいと懇願してきたから──であった。

 相手が父のかつての関係者だったから。

 俺の話を聞いてくれる、多少なりとも”柏木家の末路”というものを知っている存在だったからこそ、雫の件はどうにか不問に処されることとなったのだ。

 

「あの、いいんですか。俺、研究所の人たちからも雫を匿っていたのに」

「もちろん良くはないが……いまの代表が僕だからね。君の出生、君の立場……いや、君のお父さんが助けてくれた、と考えればいいんじゃないのかな。

 こう言っては何だが、親のコネは臆することなく使ったほうがいい。それもあの方の子供として生まれた、君自身の力に他ならないのだから」

 

 では、研究所でまた会おう、柏木優くん。

 そう言い残して、研究所の所長さんは白衣を大仰にブワサァッと翻し、公園を後にした。

 紆余曲折あったものの、なんやかんやあって今回の事件は丸く収まったらしい。

 めでたしめでたし。

 雫を救うために、今後も頑張っていこう。

 

 

 

 

 ──だなんて。

 とてもではないが、気合いを入れることなど不可能に近かった。

 

「……兄さま、だいじょうぶですか?」

「あぁー……どうだろうな。ずん子はどこいったんだ」

「バイクでイタコねえさまのいる工場まで戻っていかれました。兄さまも少なからず怪我を負ってますし、救急セットを持ってくる、と」

「無免許運転じゃねえか、あいつ……」

 

 ベンチに背を預け、星々が煌めく夜空を見上げる。

 

 

 ……はぁ。

 あぁ、つかれた。

 もうダメだ。

 親父のことも、あの所長のことも、研究のことも雫のことも、自分自身の怪我のことでさえも、いまは何故かどうでもいい。

 確かにあの少女を救いたい気持ちはあった。

 助けられなかったあのプロトタイプを思い出して、俺にしかできないことだと思って、ヒーローもどきみたいなことをした。

 それがあの親父の息子として生まれ、強い力を得た自分の責任だと考えたから。

 

 でも、そうじゃねえんだわ。

 いやいやいや、そんな設定盛り盛りの主人公みたいな、高尚な考えでなにかをしたかったわけじゃないんだよ。

 動画作成は面倒だし、戦いなんて痛いからヤダし、研究なんてズブの素人なんだから理解できるわけないし、そもそもウチで生活させるボイスロイドだって、本当は東北きりたんただ一人で十分だった。

 

 エロいことがしたかったんだ。

 本当に、過去とか世界の事情とか関係なく、ただきりたんとエロいことして日常を送ることができりゃ、それ以上に望むことなんて何もなかったんだ。

 生意気なメスガキをぶち犯して理解(わから)せて、屈服させてメロメロにさせて気持ち良くなって、あの同人誌とかエロゲみたいに、きりたんと来る日も来る日も性的な爛れた自堕落な生活を送るっていう、そんな日常を過ごしたかった。

 それがしたい。

 ただそれだけだったはずなのに。

 俺、マジで今なにを考えてこんなことしてるんだろう。

 

 

「……なぁ、きりたん」

「どうしました?」

 

 何の気なしに隣に座った、彼女の小さな手を握る。

 いろいろやりすぎて、もう困憊でなんもできん。

 

「なんか……なんか、しよう」

「……? 何か、ですか」

「そうそう。これまでやってこなかった、なんか」

 

 もう脳内で冷静に物事を考えることなどできなくなっていた。 

 俺の頭の中は確実に、夏休み前に東北きりたんを購入した、あのときの自分にまで遡っていた。

 きりたんは俺のものだ。

 俺が購入したボイスロイドだ。

 どう使おうが俺の勝手だろう。

 多少なりとも好かれてるなら、遠慮する必要だってないだろう。

 

「エロいこと」

「……えっ」

 

 そう、当初の目的。

 メスガキを屈服させて、俺にとって都合のいい性欲処理の道具になってもらう。

 だって、だってそうだろうが。

 なにもおかしなことなんて言ってない。

 そうするために動画投稿がんばって、バイトも資格の勉強もがんばって、買った後だって面倒ごとは全部片づけてきた。

 全てはきりたんとエロいことをするためだ。

 その為だけにこれまで努力してきたんだろ、俺は。

 下手に我慢する必要なんて、自制する理由なんて最初から無かったんだよ。

 

 はぁ。

 あー、いいな。

 そう思ったら気持ちが楽になってきた。 

 というかちょっと興奮してきたぞ。

 極端に人通りが少ない、深夜の公園。

 身を隠す遊具だってたくさんある。

 時間帯もロケーションも、何もかもがバッチリじゃないか。

 あの同人誌みたいな人の気配がない場所での青姦、めちゃくちゃ憧れてたんだよな。

 

「ふへへ……」

 

 ニヤニヤしてきた。

 楽しくなってきた。

 気分が盛り上がってきた。

 

「きりたん」

 

 もう一度しっかり手を握る。

 

「ひゃわっ。……あ、兄さま?」

「初めてウチに来たときみたいに、マスターって呼んでくれ」

「……マスター」

「あぁ、そうだよそれ、そうなんだよ。俺ってきりたんのマスターなんだよな」

「ど、どうされたんですか、急に……?」

 

 よし。

 いこう。

 やってやろう。

 寄り道はもう終わりだ。

 いまこそ当初の目的を叶えるときだ。

 俺にボイスロイドの、東北きりたんの良さを教えてくれたあの同人誌の追体験を、いまこそ!

 

「よっこいしょ」

「わ、わっ」

「ふぃ~~」

 

 ちっちゃくて軽いきりたんを持ち上げ、自分の膝上に座らせる。

 そのままお腹に手を回し、彼女の芳醇な髪の匂いを、胸いっぱいに吸い込んだ。

 

「すぅぅぅぅぅっ……はぁ、最高だ」

「く、くすぐったいですよぅ……」

「我慢しろって。俺のボイスロイドだろ」

「そうですけど……な、何が起きてるんだろう……?」

 

 このまま背面座位でもいいし、むりやりこっちを向かせて唇を奪ってもいいし、お腹の下か上の柔らかい部分に手を回したって全部楽しい。 

 さぁ、どうしてやろうかな。

 

 

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