ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す   作:お兄さマスター

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ハメのゆかりさんきりたんの読み上げ機能つかったら実況動画風になる小説とか誰か作ってくれないもんですかね(チラチラ)


ボイスロイド、ゲームに触れる

 

 

 きりたんです。

 地獄の羞恥心刺激しまくり狸寝入り耐久レースを生き残り、マスターのお手洗い中に目覚めた私は、なんとかボディの冷却を間に合わせて居間に正座していました。

 ほっぺ揉まれてた時とか思考回路がヒノカミ神楽だった。あの人もしかして私のこと好きなのか?

 

「変なこと言いすぎじゃないですかね、あのマスター……」

 

 かわいい声だの何だのと、こっちが寝てるからって好き放題口に出して恥ずかしい言葉をぶつけてくるとは、とんだ食わせ者だ。

 それから少し気になったのは──

 

「呼び方……マスターから変えた方がいいのかな? でも恥ずかしいし……」

 

 特にこれといった希望は無かったから、今日は初期設定段階のマスター呼びにしていた。

 ユーザー本人の希望さえあればいつでも変えられるものだが、彼は特にそういったことを私に求めては来なかったから、それを継続しているのだ。

 それに、もし私が気を利かせて『兄さま』などと呼びでもしたら、あの狸寝入りがバレてとんでもない責任問題へと発展してしまうだろう。

 ユーザーのプライバシーを侵害するとは何事か、と。

 最悪の場合は一発で本社に回収されてしまう可能性があるし、自主的に呼ぶのは無しだ。

 マスターが『そう呼べ』という命令を与えてくれるのをもう少し待とう。

 

「──きりたん、ゲームするか」

 

 と。

 戻ってこられたマスターは少し話を挟んだあと、そんな提案をされた。

 

 

 ゲーム。

 ……ゲームかぁ。

 本当に私がやっていいんだ、ゲーム。

 マスターは私にどんなゲームをプレイさせてくれるのだろうか。

 あのゲームと称してやっていた、今咥えているものは何でしょうクイズとか、淫猥雑誌朗読会とか、変わった趣向の持ち主は基本的に私を遊ばせるのではなく()()()()()()()ゲームとしていたけど。

 私ったら経験豊富ですね。ベテランゲームぷれいやーです。

 

 ともかく基本的なゲームの知識は置いといて、私はこれまでまともにゲームで遊んだことがないわけだ。

 マスターに『何を遊ぶか』なんて聞かれたところで、好みも無ければ苦手なジャンルも不明な私には、遊ぶゲームを決めることはできない。

 だからプレイする作品は彼に一任することにした。

 そもそも所有物であるボイスロイドが、アレがやりたいコレがやりたいと希望を出すのは、おこがましい行為だと思うから。

 

「マスターがお決めになったゲームを遊びます」

 

 こうするのが、きっと最善の選択だ。

 

「……いや、お前の好みのジャンルが知りたいんだよ。きりたん」

「好み、ですか?」

「おう。ボイスロイドの趣味ってかなり個体差あるんだろ? 聞いときたい」

「それは……」

 

 困ったことをおっしゃる。

 所有物の趣味趣向など考慮する必要はないというのに。

 自分がやらせたいゲームを実況させて、喋らせたい台本を渡して動画を作る──それがボイスロイドの基本的な運用方法のハズだ。

 

「個人的な経験則だけどな、自分の好きなゲームの方が実況ってやりやすいんだよ。知っている事ならすぐに言葉に出来るし、なにより楽しいほうがセリフに感情がこもるんだ」

 

 一拍おいて、マスターは続ける。

 

「もちろん実況者だから、ある程度はいろんなジャンルのゲームにも手を出す。でもやっぱ、得意だったり好きなゲームは持っていた方がいいんだよ」

 

 ネタに困ったときとか助かるしな、とマスターは冗談めかして、言葉をそこで終わらせたけれど。

 何をどう見ても、私に対して気をつかっているのは明白だった。

 いや、そう言うと少し語弊があるか。

 

 彼の態度や私への接し方から鑑みて、マスターはおそらく私に自然体でいてほしいのかもしれない。

 閲覧した動画や、偶然目に入る範囲での検索履歴を見て分かった事だが、マスターの欲していたボイスロイド『東北きりたん』とは、命令に忠実で従順なだけのロボットではない。

 いまさっきの彼の言葉で、改めてそれが実感できた。

 

「……そう、ですね。その通りかもしれません」

 

 動画を作るパートナー。

 一緒に遊ぶ仲間。

 ちょっと生意気で、つねに自然体で、ずっと家に引きこもってるくらいゲームが好きな──本来の私。

 

「じゃあ、夢をみる島がやりたいです。古いほうのやつ」

「えっ。ゲームボーイ版?」

「デラックスを希望します」

「た、助かった……それならバーチャルコンソールあるわ」

「やったー。兄さま大好き」

「現金なヤツだな……」

 

 今日はずっと、どこか緊張した面持ちだったマスターが、ようやく素の状態を見せてくれた気がした。

 さらりとマスターではなく兄さまと呼んじゃったけど、会話の流れもあってかスルーしてくれたようだ。よかった。

 

「腕が鳴ります。さっそく一緒にやりましょ」

「いやこのゲーム一人用な」

 

 彼の前でなら本来の……そうですね。

 

 このマスターと一緒ならば、私は『東北きりたん』でいることが、許されるのかもしれません。

 たくさんゲームをして、ちょっとだけワガママなんかも言っちゃったりして。

 ボイスロイドとして、きりたんとして、ありのままで。

 私の、ままで。

 それは──とても。

 

 とっても、嬉しいことでした。

 

 




きりたん好感度:29/100 くらいのイメージ

短編なんでこれが一応の区切りになります ちなみに書けそうなネタはあと114514個くらいです    盛りました

ありがたいことに予想以上の温かい反応を頂けたので、連載にしてもう少し続けたいなと思ったのでアンケートだけ置いときます
ちくわ大明神 
時間ある読者兄貴姉貴たちは適当にポチっとしてね

連載化について謎を解き明かすべく、ジャングルの奥地へと向かった

  • 書いて♡ 書け(豹変)
  • 終わり!閉廷!

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