ボイスロイドを買ったのでさっそく犯す 作:お兄さマスター
きりたんって、もしかして猫を被ってるんじゃないか──と。
ふとそんな事を考えた。
現在同居している彼女が、俺が以前から知っているきりたん像から乖離しているのは、本性を隠しているからなのではないか、と。
確かに最近は少しづつ遠慮も無くなってきている。
しかしそれを加味しても、やはりきりたんは全然生意気じゃないというか、メスガキ感が無さすぎるのだ。
以前からずっと考えていた事だが、俺はクソ生意気なメスガキを分からせたいという欲望から、ゲーム実況者に手を出したわけで。
きりたんがこの先ずっと良い子のままだと、分からせなどまるで夢のまた夢なわけだ。
……だが、もし彼女が猫を被ってるだけで、本性が噂通りの大人を舐め腐ったロリだった場合は話が別だ。
俺は現在、きりたんに対して性的なことは何も行っていない。
何もしていないからこそ、彼女に対して踏み込み切れていない部分があるのもまた事実。
ゆえに少しだけ手を出すことにした。
仮にだが、もし俺との距離感が急激に縮まって『小学生体型の女児に対してなに興奮してるんですか変態マスター早急に死んでください』などとほざいてきやがったら、つまりそれが彼女の本性になる。
俺はきりたんのメスガキ部分を誘発させたい。
彼女がメスガキだったという事実が露呈しない限り、俺は一生わからせが出来ないのだ。
多少強引でもきりたんのメスガキな中身をあらわにさせて、俺の前では猫を被っていられないように追い詰めてやる。
真面目ぶっていれば俺が見逃すと思ったら大間違いだ。
俺のことを変態だのロリコンだのと蔑んでいる、その心の内を暴いてやるぜ。
覚悟しろ!
「マスター、お茶です」
「おう、さんきゅ。……なぁ、きりたん」
「はい?」
時刻は深夜の零時を回った頃。
つい先ほど編集が終わり、彼女がお茶を出してくれたところで俺はきりたんに声を掛けた。
今日はなかなか編集が長引いてしまい、作戦を決行するのが遅れてしまった。本当ならもう少し時間に余裕を持って挑みたかったのだが、こればかりは仕方がない。
きりたん用のノートパソコンを購入して彼女に与え、編集を手伝ってもらう事で動画作成の時間を短縮しようと考えて、それを実際に決行したのが今日だったのだが──流石に初日から都合よく事が進むわけではないらしい。
きりたんに編集のやりかたを一から教えつつ、自分も編集作業を進めるとなると、とてつもない作業量と時間を要求されることに、もっと早い段階で気づくべきだったのだ。
さすがは動画サポート用AIと言うべきか、きりたんはかなり飲み込みが早く、幸いにも編集技術の伝授自体は今日一日でなんとか終わった。
そこに関しては本当に感謝だ。
次回からはもっと上手に時間を使おうと思う。
「編集の方は大丈夫らしいが、パソコンの扱いはどうだ? 分からないところとか……」
「とんでもないです。マスターが丁寧に初期設定をやってくださいましたし、ご指導のおかげで編集ソフトや動画サイトでの諸々や、PCの仕様もだいたい把握できました」
「……お、おう。……本当に優秀だな」
軽く引くレベルというか、動画サポートAIってこんなに高性能なのか、という事実を思いきり叩きつけられて、思わずたじろいでしまったくらいだ。
俺が何ヵ月も悪戦苦闘しながら探っていた編集ソフトの仕様も、冗談抜きで今日一日で全て把握してしまったようだし、売値がイカレた値段だったのも納得だ。
というか、やろうと思えばどんな技術でも簡単に覚えさせられるかもしれない。
悪用されないためにも、この子はしっかり俺が守らなければ。
「……マスター。本当にありがとうございます」
「えっ? なんだよ突然」
「私用のPCを買い与えてくれた事です。改めてお礼を言わせてください」
もはや土下座に近い形で、膝を畳んで深々とお辞儀をしてくるきりたん。
まるで高級旅館の女将みたいな丁寧さだ。家でこれは勘弁してほしい。
「お、おい待て、やめろってば。顔あげろ」
「ですが……」
「あのな、編集を手伝ってもらうってのは以前からも言ってただろ? パソコンは必需品なんだから買うのは当たり前のことだろうに」
「ま、マスター……!」
なんだかきりたんが感動しているように見えるが、油断してはいけない。
この行為は慇懃無礼というか、皮肉交じりにめちゃくちゃ堅い態度をとって、俺を煽っている可能性もあるのだ。ツイッターでよく言われてる京都人の皮肉みたいなアレで。よく知らんけど。
心の中では『はー、このユーザーまじでチョロいですね。この調子でどんどん貢がせて金を搾り取ってやりましょう』とか、そんな事を考えているに違いない。
「…………よし」
さっそく試してやる。
マスターという立場を盾にして、突然セクハラをされでもすれば、きりたんの化けの皮も剥がれることだろう。
「きりたん」
「あ、はい」
俺の前で正座しているこのロリっ子をセクハラしてやるぞ。
一度本性が明るみに出れば、それ以降は猫を被る事も出来なくなるし、開き直って俺に対して横暴に接してくるはずだ。
そこをズドン。
謝らせながら濃いのを一発ブチ込んで矯正完了、対戦ありがとうございました、だ。
いくぞ、やるぞ。
「……」
そっと手を伸ばし、俺はきりたんの頭の上に手を乗せた。
「え、マスター?」
舐めるなよ、もうなにを言われたってやめねえからな。
脳細胞がトップギアだぜ……もう考えるのやめた!
俺はもう迷わない……迷っているうちに分からせが遠のくなら……きりたんが猫を被るなら、俺が暴いてやる!
(ガキを分からせる大人に)変身!
「っ……!」
「……あ、ぇ?」
そのまま頭をゆっくりと撫でてやった。
どうだ。
なんの脈絡もなく急に髪を撫でられる感覚は。
心の中で見下している相手にこんな事をされた日には、腹の底がとてつもなく煮えくり返ることだろう。
俺の予想では『ちょっと、突然なにするんですか変態。通報されたくなかったら早くを手を離した方がいいですよ、このロリコン不審者』とか、そんな感じのニュアンスのセリフを吐いてくるはずだ。
さぁ、かかってこい。
「ん……」
──あ、あれ、何も言ってこない。
刺激が足りなかったか?
この程度ならまだまだ余裕で耐えられるってのか。
……なるほど、俺はこのきりたんを見誤っていたらしい。
なかなかやるじゃないか、素直に褒めてやるぜ。俺はお前の強靭な忍耐力とやらを舐めていたようだな。
であれば手加減は無しだ。
キサマの強さに敬意を表して、こちらも本気を出すとしよう。
必殺、ほっぺ揉みだ──ッ!
「っ? ……♪」
な、んだと…………。
バカな、そんな。
俺のほっぺ揉みをくらって、目を細めるだけだと……!?
それに何だか少しだけ笑っている。余裕の笑みだ。まるで飼い猫の様に撫でられているというのに、目を細めて喉を鳴らしながら明らかにこちらをあざ笑っていやがる。
そして回していた洗濯機が終了の音を鳴らした瞬間、俺は心の中で敗北を認めてしまい、彼女の頬から手を離してしまったのであった。
「……ぁ。……う、ぁ、せ、せっ、洗濯もの、風呂場に干してくれるか……」
「あ、はい。了解です」
「頼んだ……」
きりたんが視界から消えた途端、膝から崩れ落ちて絶望した。
俺が、負けた。
余裕の差を見せつけられ、完全に敗北してしまった。
こっちなんてボディタッチはおろか、耳元で囁かれただけで肩が跳ねて冷静さを欠いてしまうというのに。
大人の俺が……敗けた。
「ち、ちくしょう……っ」
頭を撫でても、直接ほっぺを揉んでもダメだった。
では、彼女の余裕を崩せるレベルのセクハラとは何なのか──皆目見当もつかないまま、俺は語録満載の実況動画を眺めて、きりたんが戻ってくるまで一人傷心を癒すのであった。