Nighthawk   作:憑き燈

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おや?様子が...


第A話:挑戦状の解答(チェザロ平均)

「じゃ、最後に極限の問題も解説しておくか」

 

「数Ⅲの予習である程度はやったが、あの問題は解けなかった」

 

「そりゃそうだよ。高校数学で習う極限では、あの問題は解けない。ちゃんと厳密な定義に基づかないとね」

 

$\displaystyle \lim_{n \to \infty } a_n =0$ のとき $\displaystyle \lim_{n \to \infty } \frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n}$ を求めよ

 

ただし

$\displaystyle \lim_{n \to \infty } a_n = \alpha$

の意味は

$\forall \varepsilon \gt 0, \exists N \in \mathbb{N} , \forall n \in \mathbb{N} , n \geqq N \implies | a_n - \alpha | \lt \varepsilon $

 

「まず、問題そのものよりも定義の解説からだね。意味は簡単で、どんな$\varepsilon$をとってきても、$N$番目以降の項においては、$a_n$と$\alpha$との距離が$\varepsilon$よりも小さく抑えられる」

 

「なんだかよくわからないな...」

 

「慣れの問題だね。ここで重要なのは、$N$は$\varepsilon$よりも後にとるんだから、$\varepsilon$に依存しても構わないってことだ」

 

「つまり、例えば$\varepsilon$を10倍小さくしたら、それに合わせて$N$の取り方も変えてやればいいってことか」

 

「例を出そう」

 

$a_n = \frac{1}{n} $ とおく

$\displaystyle \lim_{n \to \infty } a_n =0$ だから

$\forall \varepsilon \gt 0, \exists N \in \mathbb{N} , \forall n \in \mathbb{N} , n \geqq N \implies |a_n| \lt \varepsilon $

 

「ここで、$\varepsilon = \frac{1}{10}$とすれば、$|\frac{1}{n}| \lt \frac{1}{10}$、すなわち$n \gt 10$だ」

 

「つまりそのときは$N=11$とすればいいわけだな?」

 

「そういうこと。じゃあ元の問題に戻ろう」

 

「しかし、これをどう使って考えればいいのかさっぱりだな」

 

「まず、予想をたてなきゃいけないね。今紹介したのはあくまでも答えを出す方法じゃなくて、厳密に証明する方法だから。$a_n =( \frac{1}{2})^n $を使って考えよう」

 

「$\frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n}$だから...」

 

「まず、総和は$1-(\frac{1}{2})^n$で、これに$\frac{1}{n}$をかけてから$n$を無限大に送ると」

 

「...0だな」

 

「そうだね。じゃあ一般の数列についても0になると予想して、それを示してみようか」

 

「ええっと、まずは$\varepsilon$に対する$N$を...」

 

「そこら辺は後で見つければいいよ。ある程度不等式で進めていって、最後に逆算すれば見つかるから」

 

「なるほど」

 

$|\frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n}|=\frac{1}{n}|a_1 + a_2 + \cdots + a_n|$

$\lt \frac{1}{n} (|a_1| + |a_2| + \cdots + |a_n|)$

$= \frac{1}{n} (|a_1| + |a_2| + \cdots + |a_N|) + \frac{1}{n} (|a_{N+1}| + |a_{N+2}| + \cdots + |a_n|)$

 

「ここで、$\displaystyle \lim_{n \to \infty } a_n =0$の条件を使ってあげると」

 

$\forall \varepsilon \gt 0, \exists N \in \mathbb{N} , \forall n \in \mathbb{N} , n \geqq N \implies | a_n| \lt \frac{\varepsilon}{2} $

 

より

 

$\frac{1}{n} (|a_1| + |a_2| + \cdots + |a_N|) + \frac{1}{n} (|a_{N+1}| + |a_{N+2}| + \cdots + |a_n|)$

$\lt \frac{1}{n} (|a_1| + |a_2| + \cdots + |a_N|) + \frac{(n-N) \varepsilon}{2n}$

$\lt \frac{1}{n} (|a_1| + |a_2| + \cdots + |a_N|) + \frac{\varepsilon}{2}$

 

「ここで更に極限の追い討ち。$\displaystyle \lim_{n \to \infty } \frac{k}{n}=0$だから」

 

$\forall \varepsilon \gt 0, \exists M \in \mathbb{N} , \forall n \in \mathbb{N} , n \geqq M \implies \frac{|a_1| + |a_2| + \cdots + |a_N|}{n} \lt \frac{\varepsilon}{2} $

 

より

$\frac{1}{n} (|a_1| + |a_2| + \cdots + |a_N|) + \frac{\varepsilon}{2}$

$\lt \frac{\varepsilon}{2} + \frac{\varepsilon}{2}$

$= \varepsilon$

 

ただし、$n \geqq L := \max \{ N,M \}$

 

「以上を総括すると」

 

$\forall \varepsilon \gt 0, \exists L \in \mathbb{N} , \forall n \in \mathbb{N} , n \geqq L \implies |\frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n}| \lt \varepsilon $

 

「これで$\displaystyle \lim_{n \to \infty } \frac{a_1 + a_2 + \cdots + a_n}{n} =0$が示せたね」

 

「お前、これをアイツに解かせようとしたのか...」

 

「ちなみに、この数列$a_n$の値を第$n$項まで足して$n$で割ったものをチェザロ平均と呼称する。$a_n$の極限が0じゃなくって他の適当な有限の値の場合でも、そのチェザロ平均は$a_n$の極限と同じ値に収束するよ」

 

「$a_n$が発散する場合も同じように発散するのか?」

 

「実は発散のときはそうとは限らないんだよね。つまり、$a_n$が$\alpha$に収束するなら、チェザロ平均も$\alpha$に収束するんだけど、その逆は成立しないってこと」

 

「なんか不思議だな」

 

「実は$a_n$の値が常に正で、正の無限大に発散するときだけ、チェザロ平均も同じように発散するんだけど」

 

「...もうわけがわからん」

 

 

次回に続く

 

 




本当は続きまで書ききりたかったけど、あまりにも筆が進まなかったため一旦投稿。
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