Nighthawk 作:憑き燈
「さて、僕の華麗な解法をお伝えしよう」
~前回のあらすじ~
上杉君は「$c \equiv 0 \pmod g $ $\implies$ $ax+by=c$が整数解を持つ」を全く華麗ではない方法で示してしまった!この人でなし!
「そこまで言われるようなことか!」
「ちなみに解けなかった武田君は哺乳類である資格を失いました。今日からは鳥にでもなってください」
「ひどい...」
「返事はコケコッコーだ!」
「鳥の中でも飛べないやつ!」
そんな冗談は置いておくとして、僕がどうやって解いたかを説明していこう。
「まず、$a \mathbb{Z} +b \mathbb{Z}$はイデアルだ」
「...え?」
「ちょっと待て、イデアルってなんだ」
「そして、$\mathbb{Z}$は単項イデアル整域だから、ある$\mathbb{Z}$の元$n$が存在して$a \mathbb{Z} +b \mathbb{Z} = n \mathbb{Z}$と表せる」
「おい!止まれ!話をきけ!」
「このとき$n$は$a$と$b$の公約数になるから、$c$は$n \mathbb{Z}$の元、すなわち$a \mathbb{Z} +b \mathbb{Z}$の元だ」
「もうだめだこいつ」
「つまり、ある$\mathbb{Z}$の元$m,k$が存在して$c=am+bk$と表せる」
「...最後だけはわかったよ」
「まずイデアルという単語の説明から始めろ」
「えー?もう時間ないけど?」
「間に合わせろ」
「上杉君はヘビ使いが荒いなぁ」
「お前も哺乳類じゃなかったのか!」
「初見で解けなかったからね」
「恐ろしいシステムだな...」
「冗談はこれくらいにして...まず、環の説明からしよう」
環の定義
集合$R$(環は英語でringなので、通常その頭文字をとる)と、2つの二項演算$+$と$\times$の組が次を満たすとき、環という。
・$(R,+)$が可換群
・$(R,\times)$がモノイド
・分配法則 $x \times (y+z)=x \times y + x \times z$と$(x+y) \times z=x \times z + y \times z$が成立
「モノイドは結合法則と単位元があるやつ。可換群はそれに加えて逆元と交換法則があるやつね」
「整数とか有理数は環になるんだったよな」
「今回使うのは有理整数環だけだから、整数のことだと思っておいていいよ。あ、そうそう。イデアルの定義のときに面倒ごとが生じるから、$\times$に関しても交換法則が成立している可換環だけを考えることにしよう。次、整域の説明」
整域の定義
零因子を持たない可換環
「零因子っていうのは、0以外で掛け算して0になるような要素のこと。式で書くと」
$( a,b \neq 0 \implies a \times b \neq 0 )$
$\iff$
$( a \times b =0 \implies a=0 or b=0 )$
「この条件がないと地味に困るんだよ」
「確かに、0を扱う上では重要そうだな。ただ、これが成り立たない例なんてあるのか?」
「行列のかけ算を思い出してみなよ。$AB=O$のとき、$A$か$B$が零行列になるとは限らなかったよね?」
「言われてみれば......」
「まだまだ修行が足りないね。じゃあ次、イデアルの定義」
イデアルの定義
可換環$R$の$+$に関する部分群$I$が次を満たすときイデアルという。
・$\forall r \in R, \forall a \in I, ar \in I$
「ぶっちゃけて言えば、これは“倍数”の概念そのものなんだけど」
「どんな整数も2の倍数をかければすべて2の倍数になるからな」
「んで、次に単項イデアル整域ね。あ、それと、$2$の倍数を$2 \mathbb{Z}$みたいな感じで書くのはいいよね」
単項イデアル整域
任意のイデアル$I$について、ある$a \in R$が存在して$I=aR$となる整域。
「つまり、“倍数っぽい”概念が、ちゃんと倍数になってるってこと」
「この回りくどさがまさに数学だよな...」
「整数が単項イデアル整域であることの証明は宿題にしよう。逆に倍数$aR$は必ずイデアルになることも、定義から簡単に導かれるよ」
2つのイデアル$I,J$に対して、$I+J=\{i+j | i \in I,j \in J \}$もまたイデアルとなる。
「ここから$a \mathbb{Z} +b \mathbb{Z}$はイデアルっていう話になったんだけど、伝わった?」
「ようやく話が見えてきたな」
「これの証明も宿題ね。で、整数環のイデアルは“倍数”になるんだったよね?」
「宿題多いな...これで、最後はその倍数がなぜ$a$と$b$の公約数になるのかだけだ」
「んー、実はこれ最大公約数になるんだよね。まぁ公約数になることさえ示せば問題自体は解けるんだけど。それも簡単だから宿題で」
「説明端折りすぎだろ!」
「いや、だってもうそろそろ到着するよ?というか、問題なのはそこじゃなくって、むしろこれが最大公約数の定義になっちゃうんだよね」
「え?」
「まぁ、だから乱暴な言い方をすれば“定義だから当たり前”で、最大公約数の定義を往来のものとするのであれば、整数環の上で同値な定義であることを示せってだけの話なんだけど。あ、ついた」
「いや、その話もうちょっと詳しく」
「よし!降りる準備するぞー」
「おい!」
「結局会話についていけなかった...」
哀れな武田...
...まず、環の説明からしよう」で書くの止まってました。
定義から書き下すのめんどくせーってなってましたね。自分で始めたことですが。
結局“可換群”とか“モノイド”とか書いて、詳しく書き下さなかったんですが、そこらへんは調べりゃ出てくるので勘弁してください。
初学者向けに書こうとして色々端折った結果、全く初学者に優しくない上に中途半端に雑、という誰に向けて書いたかわからないようなものになってしまった。
3つの宿題は本当に簡単です。わからなければ調べてみてください。
よくわからなければ、最近動画を出していない某数学系Y〇uTuberが「素因数分解と環論」というタイトルの動画を8本くらい出してるので、それを見るといいんじゃないでしょうか。