Nighthawk 作:憑き燈
第10話:改葬
月明かりが見える。
思えば、後悔の多い人生だった。
たくさんのものを犠牲にして、その度に抱いた感情は心の奥底に押し込めていた。
「どうせ明日には忘れるから」
だから言葉など不要で、形には残らないようにって、そうやって生きてきた。
いつしか自分の失くしたものがわからなくなっていた。
僕はとっくに狂い切っていたんだと思う。
最期に彼に伝えた言葉は僕自身の後悔であり、彼への戒めだ。
もっともそんなものがなくたって、今の彼にはあの五つ子達がいる。
もし道を間違えそうになったなら、彼女たちが引き戻してくれるだろう。
僕の言葉は単なる自己満足だ。偽善と同じだ。
そろそろ時間だ。
もういい加減疲れた。
これでやっと
終われる
ふと目が覚めると、自分の部屋の天井が見えた。
目が覚める?
いや、そんなはずはない。
死後の世界だとでもいうのか。
それとも夢か。
呼吸が苦しい。これはここ最近ずっと感じていた感覚だ。
つまり僕は死んでいない。そしてこれは夢じゃない。
今自宅にいるということは、あの修学旅行が夢だったのか?
ダメだ。頭が回らない。とりあえず日付を確認しよう。
スマホの電源を入れて、ロック画面で日付を見る。
「ついに頭がおかしくなったのか」
そこに表示されていた日付は
半年以上も前、高校2年生の2学期
何が起こっているのか本当にわからなかった。
思考が停止すること数分、ようやく再起動を果たしたが、それでも混乱はなくならない。
いよいよ精神に異常をきたして、幻覚のような夢を見続けていた可能性がある。何が現実で何が夢だったのか、僕にはもう何もかもがわからなかった。
ふと時計を見る。朝8時を過ぎている。
そういえば、僕はこの日学校には行かなかったはずだ。
翌日登校したらなぜか転校生が5人もいて、上杉が早くもそこに巻き込まれていったのを覚えている。僕はそれをただ呆れたように眺めていた。
どこへ行くべきか迷う。本当は憧れた京都の地で死ぬつもりだった。今もう一度同じことをしようとすれば、今度こそ誰にも止められることなく、僕は……
またこの部屋で目覚めてしまったらどうしようか。いや、そんなバカなことはあるわけがない。今この瞬間が夢なのか現実なのかはわからないが、もし夢であるならば目覚めるまで待とう。現実だった場合は……
やっぱりもう一度死に場所を探そう。
希死念慮と漠然とした不安感が僕を襲い続け、呼吸の邪魔をする。こんな状態でまともに数学なんてできるわけがない。頭が働かない。辛い。
もしもここが現実だった場合、これからまた毎日不眠に怯えながら過ごすのかもしれないと思うと、余計に気分が沈みそうだった。とりあえず、外に出よう。