Nighthawk 作:憑き燈
学校に着いた。正直、どうやって辿り着いたのか、道中の記憶がない。そして、学校に来たはいいものの、何をすればいいのかもわからなかった。
気が付いたら、昼休みだった。
午前中は、ひたすら息苦しさに耐え、何も考えられない頭で何かを考えようとしていた......気がする。
とりあえず、上杉を探して......
探して、どうする?こんな状態で、いつものように、呑気に数学の話なんてできるわけがない。
とりあえず、食堂へ。いや、食欲はない。ただ、喉が渇いている。水を飲みに行こう。
フラフラと歩いていくと、いつもの席が見えた。
そこにいたのは上杉と、五つ子の一人。誰かはわからないが、山奥で上杉と一緒にいたやつとは雰囲気が違うように思えた。互いに睨みあっている。
僕がそこへ近づくと、
「お、本堂か。遅かったな。俺はもう昼飯食い終わりそう...って、おい、どうした!?なんかやつれてるぞ」
「み、見るからに体調が悪そうですが大丈夫ですか?!」
「......」
何と返せばいいのかわからなかった。大丈夫とでも言えばいいのか?残念ながら、嘘でもそんなことを口にできるような心情じゃない。かといって、目の前の人間に不調を訴えたところでどうにかなるものでもない。黙るしかなかった。
「今日のお前、なんか変だぞ?本当にどうした?」
「気分が優れないのなら、すぐにでも保健室に......あ、でも私、この学校に来たばかりで保健室の場所が」
「......あぁ、いや。水を、水を飲みに来たんだ」
辛うじて絞り出した言葉がそれだった。
「水って......」
「み、水だけですか?!」
「そうか!お前もやっと節約に目覚めたんだな!」
「バカなこと言わないでください!この人、今にも死にそうなくらい顔色が悪いじゃないですか!......あの、お金がないのなら、私のを少しわけましょうか?」
「いや、金はある...はず。単に食欲がないんだ」
今何かを食べてもすぐに戻してしまいそうだ。
「でも、何か食べないと身体に悪いですよ?」
「アンタは食いすぎだろ。太るぞ」
「なっ!?」
「上杉、その辺にしておきなよ。後に響く」
思わず言ってしまったが、今の上杉には意味不明な言葉にしか聞こえないだろう。
「後って......お前、やっぱり今日は何か変だぞ。こんな奴とは金輪際かかわることはない!」
「それはこちらのセリフです!」
「っ......いい加減にしてくれないか?頭に響く」
食堂に来たのは......いや、学校に来たのは失敗だったのかもしれない。
結局、上杉は妹から連絡が来たとかでさっさと食堂を出て行ってしまった。
「あの、やっぱり何か食べた方がいいのでは?」
「気にしないで。胃の調子も悪いんだ」
「それは......お大事になさってください。でも、私だけこんなに食べているというのも、なんだか申し訳ないような......」
「ああ、昼食の邪魔だったみたいだね。僕はそろそろ戻るよ」
立っているのが辛くなってきたので、目の前の五つ子――名前は中野五月というらしい――に水をとってきてもらい、先ほどまで上杉が座っていた席を使用することにしたのだが、確かに昼飯を食わない人間の前で自分だけ食べ続けるというのも気が引けるだろう。その割には随分と食べ進んでいるような気がするが......
後ろから何かを言っている声が聞こえるが、さっさと立ち去ってしまおう。