Nighthawk   作:憑き燈

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第13話:眠る

その後、他の3人の説得には参加しなくていいと言われ、僕はリビングに降りた。

 

そこには装いを変えた次女がいた。

 

「キミ、なんでまだいるの?さっき用が済んだら帰るって言ったよね?」

 

「僕の用事は中野五月を説得する上杉の付き添い。用が済んだかどうかを判断するのは僕じゃなくて上杉らしい。誠に遺憾だけど」

 

「あっそ」

 

やることがなかったので、リビングの端にうずくまるように座った。

 

今更ながらに、先ほど説得の際に放った言葉を後悔しはじめている。僕の言葉はいつだって自己満足だ。偽善と同じだ。

 

きっと彼女はこう思ったのだろう。「お前のようなゴミに言われたくはない」と。そりゃそうだ。

 

僕自身が無価値な言葉を吐いているのだ。特大ブーメランでしかない。

 

心が荒んできた。死の直前に見たはずの月明かりを思い出そう。

 

 

 

ボーッとしていると、いつのまにかリビングには人が増えていた。勉強をしている様子はなく、みんなでクッキーをつまんでいる。

 

「キミはクッキー食べないの?」

 

次女に唐突に話しかけられた。というか、あの上杉が食べているのが衝撃なのだが......焼肉定食焼肉抜きで腹減ってたのかな?

 

「食欲がないんだ。放っておいて」

 

「ふーん。じゃあ喉渇いてない?お水いる?」

 

「あぁ、もらうよ」

 

なんか、この姉妹から水もらうこと多いな。僕は植物か何かなんだろうか。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

上杉も水をもらって飲んでいる。

 

僕は喉の渇きに耐えられず、もらった水を一気に飲み干した。

 

「バイバーイ」

 

意識が落ちる。最後に聞いた声は、次女の......

 

 

 

 

 

 

 

何か、周囲が騒々しい。

 

非常に眠たく、このまま二度寝してしまいたい。

 

「いい加減に起きなさい!」

 

「痛っ......え?」

 

「ちょ、ちょっと二乃!?」

 

「あ、やっと起きた」

 

状況が飲み込めない。というか、日の光が眩しい。

 

太陽の位置がおかしいことに気付く。これは、朝日?

 

「何が起こった?」

 

「朝までずっと寝てたんだよ?家まで送ろうにも生徒手帳が見当たらないし、何度起こしても目覚まさないし。二乃が本当に人を殺めちゃったのかと思って焦ってたんだ」

 

「ビックリさせないでよ!もう!」

 

次女が涙目だ。しかし、殺めたと勘違いするとは一体何をされたんだ?背後から鈍器で殴られたとか......いや、血がついていたり腫れているような感触はない。

 

「二乃に睡眠薬入りの水を飲まされたんですよ。覚えてませんか?」

 

「睡眠薬...水...あぁ、そういう」

 

我ながら古典的な手に引っかかったな、などと感心してみるが、普通に薬事法違反かつ暴行罪である。下手すりゃ傷害罪も適用されるし、そのまま死んだら傷害致死罪...そりゃあ焦るわな。

 

「ハハ、いっそそのまま殺してくれればよかったのに」

 

そんな言葉が口をついて出る。

 

「なっ?!」

 

姉妹全員ドン引きしてるよ。

 

「これだけ金持ってれば、死体の処理くらいわけないでしょ?」

 

「何をバカなことを言ってるんですか?!」

 

「あんた頭おかしいんじゃないの!?」

 

「他人に睡眠薬盛るやつとどっちが頭おかしいか、比べてみようか?」

 

「ぐっ...」

 

「いや、冗談だよ。逆に助かった。ありがとう」

 

「......はぁ?」

 

「本堂さんって......ドM?」

 

四女にとんでもない勘違いをされている。説明しないと伝わらないか。

 

「ずっと不眠気味でね。久しぶりにぐっすりと寝られた気がするんだ。欲を言えば永眠の方がよかったけどね」

 

穏やかで深い眠りだったような気がする。心なしかいつもより少し体調がいい。

 

「き、きみ、変わってるね」

 

「そうかな?そういえば上杉は?」

 

「彼なら昨夜のうちに私が家まで送り届けました。今日の午後にまた来るとか言っていましたが」

 

「そう。じゃあ僕は帰るよ。頑張ってね」

 

「あなたに一つだけ言っておきます」

 

「ん?」

 

「私は結果を出します。絶対に」

 

「......そっか。じゃあそのとき僕がまだ生きていたら、報告しにきてよ」

 

「縁起でもないこと言わないでください!というか、そんなに時間をかける気はありません!」

 

時間がないのは僕の方なんだけどな。まぁいいや。

 

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