Nighthawk   作:憑き燈

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平面グラフは4彩色可能である(四色定理)。

時系列:期末試験後、温泉旅行前


第4話:バーンサイドの補題(前編・主張)

「なんだい?突然」

 

「続きを教えてくれ」

 

「教科書を買って自分で、と言いたいところだけど、君の家はそんな余裕がないんだっけ。それにしても、本当に突然だね。てっきり家庭教師の方が忙しいものだと思っていたけれど」

 

「アイツら、この前の期末試験で全員赤点を回避したんだ」

 

「だから余裕ができたんだね。じゃあ続きを話してしまおうか。といっても、あとはもう定理そのものの説明と、証明だけだ」

 

ポケットに四つ折りで突っ込んだままの裏紙と、シャープペンシルを取り出す

 

 

バーンサイドの補題

$ \vert X/G \vert = \frac{1}{\vert G \vert} \displaystyle \sum_{g \in G}\vert X^g \vert $

ただし

・$ \vert G \vert \lt \infty $

・群$G$は集合$X$に作用している

・$ X^g $は$ g \in G $によって不変であるような$X$の元の集合

 

 

「これ自体は前も見せたよね」

 

「正直何を言っているのかさっぱりだ」

 

「じゃあ定理の主張そのものは置いておいて、注釈の1行目から見ていこう」

 

「これは分かる。$G$の要素の個数が有限ということだ」

 

「正解。じゃあ次2行目。作用についてはまだ説明していなかったよね?」

 

「あぁ、初耳だ」

 

「作用っていうのはね」

 

 

写像$ f:G \times X \rightarrow X $

・$G$の単位元$e$, $ \forall x \in X $, $ f(e,x)=x $

・$ \forall g,h \in G $ , $ \forall x \in X $ , $ f(gh,x)=f(g,f(h,x)) $

 

 

「こういうのを満たす写像のことだね」

 

「イメージがつかめないな」

 

「じゃあ具体例をとってこようか。正四面体群を考えよう」

 

「正四面体群?」

 

「あぁ、君は正多面体の塗り分け問題の計算をしたいんだろう?必須になるから、ここでやっておこう」

 

「お前が正八面体の塗り分け問題で使ってたのもそれだったのか」

 

「そうだね。5種類すべての正多面体に群がある。正多面体群っていうのは、正多面体を回転させてそれ自身に重なるような、回転操作全体を集めて群にしたものだ。ここでいう回転は三次元回転のことで、3次正方行列のうち、直交行列かつdeterminantが1のものを考えればいい」

 

「所謂回転行列だな?たしか、回転行列全体も群になるんだったよな?」

 

「そう!つまり、正多面体群は三次元回転群の部分群なんだ」

 

「回転して元の多面体に重なるってなると、かなり限られてくるよな?」

 

「そうだね。でも、ここで一度正多面体群の話を置いて、元の話に戻ろう。今度は正四面体を4つの色すべて使って着色して、その塗り分け方全体の集合$X_4$を考える。ただし、回転操作等による重複はすべて別物として扱うんだ」

 

「なるほど、話が見えてきたぞ。正四面体群で回転操作を扱うからだな?」

 

「正解だ!だから、今は関係ないけど$|X_4|$は順列と一緒で4!=24ね。そして、ここに正四面体群$G_4$を作用させる」

 

「ここでいう$G$の単位元$e$は回転しないこと、つまり単位行列$E_3$だな。そして塗り分けられた正四面体を回転しなければ、必ず元の正四面体が出てくる」

 

「作用における1行目の条件は満たしてるね。2行目に関しても、先に回転を合成してから正四面体に作用させるのと、1回ずつ別々に回転させるのは同じことだよね?」

 

「わかってきたぞ!だが、元の式を見る限り$G_4$の元の個数を計算しなきゃいけないんだろう?骨が折れそうだ」

 

「そこらへんに関しては、裏技がいくつかあるよ。とりあえず、今は注釈3行目を見よう」

 

「今の例で考えると、回転しても変わらない元の個数ってことだよな?」

 

「そうだね。つまりこう書ける」

 

$X^g=\{ x \in X | f(g,x)=x \}$

 

「見えてきたな。つまり、式の右辺は各回転操作におけるそれの個数を足し合わせて、群の要素の個数で割るってことだな」

 

「そうそう。じゃあ左辺を見よう。$|X/G|$は軌道の個数なんて呼ばれたりする。軌道の定義を書こう」

 

 

$x \in X$の軌道

$Gx=\{ y \in X | g \in G, y=f(g,x) \}$

 

 

「$G$の元を$x$に作用させたもの全体ってことか」

 

「ここで、$x$と$y \in Gx $の間に同値関係$\sim$を定義できる」

 

$x \sim y \iff y \in Gx$

 

「同値関係?これって対称律とか成立するのか?」

 

「ここで作用の性質が効いてくるんだ。まず、$G$は群だから適当に元$g$をとると、逆元があるよね。それを両辺に作用させればいい」

 

「ええっと、$y=f(g,x)$が成立している場合は$f(g^{-1},y)=f(g^{-1},f(g,x))$で……そうか、先に$g^{-1} g$を計算していいことになるんだな。だから$x=f(g^{-1},y)$だ」

 

「だから、$y \in Gx \iff x \in Gy$が言えるよね。つまり対称律$x \sim y \iff y \sim x$ は成立する。反射律と推移律の証明をやってもいいけど、簡単だから宿題ってことにしようか。話を戻そう。軌道から同値関係を定義できたんだから、商集合$X/ \sim$が定義されるよね」

 

$ X/ \sim = \{ Gx | x \in X \} $

 

「軌道自体が同値類になってるのか」

 

「だから、軌道全体の集合は$X/ \sim$の代わりに$X/G$って書いてもいいよね」

 

「まさに左辺が軌道の個数になったな」

 

「これをさっきの正四面体の具体例にあてはめてみようか」

 

「……回転操作で同じになるものどうしの間に同値関係があるから、重複するものを軌道としてまとめられる?」

 

「そういうことだね。つまり、回転を認めることによって出てくる重複を区別しない場合の塗り分け方の総数ってことだ」

 

「それが右辺で計算できるのか」

 

「じゃあ証明に移動しよう」

 

 

 




(第五話、第六話の後書きと同一の文章です)

第四話から第六話を今日で一気に書き上げたんですが、一度投稿しないとTeXの確認ができないんですよ。まだTeXに慣れていないのでちゃんと機能しているのか不安でして(実際ミスだらけでした)、一度完全非公開設定にして、1000字までいったら途中で投稿して確認、その後は確認しつつ編集で仕上げていくという形をとりました。今後の更新も、閑話はともかく数学回はそのような形式になります。
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