Nighthawk   作:憑き燈

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5次以上の代数方程式に、代数的解法による解の公式は存在しない。

時系列:前回の続き


第5話:バーンサイドの補題(中編・証明)

「さて、証明だけれども、細かい話を抜きにして、大まかな式変形だけを先に書いてしまおう」

 

 

$ \displaystyle \sum_{g \in G}\vert X^g \vert $

 

$= \displaystyle \sum_{x \in X}\vert G_x \vert $

 

$= \displaystyle \sum_{x \in X}\frac{|G|}{|Gx|} $

 

$=|G| \displaystyle \sum_{x \in X}\frac{1}{|Gx|}$

 

$=|G||X/G|$

 

 

「さて、こんなもんかな」

 

「なんかヤバいことになってないか?」

 

「気のせいだよ。まずは1行目から2行目ね。詳しく書き下すとこういう手順を踏んでる」

 

$ \displaystyle \sum_{g \in G}\vert X^g \vert $

 

$= |\{(g,x) \in G \times X | f(g,x)=x \}|$

 

$= \displaystyle \sum_{x \in X}\vert G_x \vert $

 

ただし$G_x=\{ g \in G | f(g,x)=x \}$

 

「ここでいう$G_x$は$G$の部分群になるんだけど、固定群という名称がついている。$X^g$が$x \in X$を集めたものだったのに対して、こっちでは$G$の元を集めているよね」

 

「なるほど、数え方を変えるわけか」

 

「そう、ここでは別に大したことはやっていない。2行目から3行目を見よう。シグマ記号の部分はいじらないから、中身だけを取り出すと」

 

$|G_x|=\frac{|G|}{|Gx|} \iff |Gx|=\frac{|G|}{|G_x|}$

 

「式変形で使うのは左側だけど、式の意味は右側にある。もう少し書き方を変えよう。ラグランジュの定理は覚えているよね?今$G_x$は$G$の部分群だから」

 

$|G|/|G_x|=|G/G_x|$

∴$|Gx|=|G/G_x|$

 

「こうなるわけだ。この式は、軌道$Gx$と固定群による左剰余類$G/G_x$の間に全単射写像を構成することで証明できる」

 

「結構面倒だな」

 

「そうだね。具体的な方法としては、まず$G$から$Gx$への全射写像を構成する」

 

$ \phi_x : G \rightarrow Gx$, $\phi_x(g)=f(g,x)$

 

「次に、$G$上に同値関係$\sim$を定義する」

 

$a \sim b \iff \phi_x(a)=\phi_x(b)$

 

「このとき、$G/\sim$から$Gx$への単射写像が存在するって話は、前に同値類を教えたときにやったよね?」

 

「あぁ、そういえばあったな。well-definedの話が出てきたところだろう?」

 

「そうそう。で、今回は$\phi_x$が全射であるおかげで、全単射写像$h:G/\sim \rightarrow Gx$が存在するってわけだ」

 

「あそこの話も伏線だったのか……」

 

「この補題の証明の最短ルートでやってたからね。無駄話は極力省いたんだよ。で、後は$G/\sim$と、$G/G_x$の関係を見てあげればおしまい」

 

「そこ、どうつながるんだ?」

 

「案外簡単だよ」

 

$a \sim b \iff \phi_x(a)=\phi_x(b) $

$\iff f(a,x)=f(b,x) \iff f(b^{-1}a,x)=x$

$\iff b^{-1}a \in G_x \iff a \in bG_x \iff aG_x=bG_x $

 

「これで、$G/\sim$における$\sim$と、$G/G_x$における同値関係が対応していることが分かったから、この2つの集合の間に全単射が存在するよね」

 

「2つの全単射の合成で、$G/G_x$から$Gx$への全単射ができたから、これで証明できたわけだな」

 

「じゃあこれがラスト」

 

$|X/G|=\displaystyle \sum_{x \in X}\frac{1}{|Gx|}$

 

「といっても、ちょっとした工夫で解決するよ」

 

「さっぱり見えてこないが……」

 

「まぁまぁ、捉え方を変えてみるのさ」

 

$\displaystyle \sum_{x \in X}\frac{1}{|Gx|} = \sum_{\mathscr{A} \in X/G}\sum_{x \in \mathscr{A}}\frac{1}{|\mathscr{A}|} = \sum_{\mathscr{A} \in X/G}\frac{|\mathscr{A}|}{|\mathscr{A}|} = \sum_{\mathscr{A} \in X/G}1 = |X/G|$

 

「まず、$X$の元$x$をとるってところを、一度軌道$\mathscr{A}$をとって、その$\mathscr{A}$の中から$x$をとるっていう風に書き換えてあげる」

 

「ここまでであれば、単に手順を増やしただけだな」

 

「で、軌道$\mathscr{A}$の中では、$\frac{1}{|Gx|}$の値は常に$\frac{1}{|\mathscr{A}|}$で一定になるよね」

 

「なるほど、つまりすべての$x \in \mathscr{A}$について和をとるというのは、$|\mathscr{A}|$をかけることと変わらないな」

 

「あとはすべての$\mathscr{A} \in X/G$について和をとるだけ。これはそのまま$X/G$の個数$|X/G|$に一致するよね」

 

「おぉ!これですべて証明できたな!」

 

「ちょっと長い道のりだったけど、これでやっと応用に入れるね」




(第四話、第六話の後書きと同一の文章です)

第四話から第六話を今日で一気に書き上げたんですが、一度投稿しないとTeXの確認ができないんですよ。まだTeXに慣れていないのでちゃんと機能しているのか不安でして(実際ミスだらけでした)、一度完全非公開設定にして、1000字までいったら途中で投稿して確認、その後は確認しつつ編集で仕上げていくという形をとりました。今後の更新も、閑話はともかく数学回はそのような形式になります。
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