Nighthawk 作:憑き燈
時系列:前回の続き
「さて、証明だけれども、細かい話を抜きにして、大まかな式変形だけを先に書いてしまおう」
$ \displaystyle \sum_{g \in G}\vert X^g \vert $
$= \displaystyle \sum_{x \in X}\vert G_x \vert $
$= \displaystyle \sum_{x \in X}\frac{|G|}{|Gx|} $
$=|G| \displaystyle \sum_{x \in X}\frac{1}{|Gx|}$
$=|G||X/G|$
「さて、こんなもんかな」
「なんかヤバいことになってないか?」
「気のせいだよ。まずは1行目から2行目ね。詳しく書き下すとこういう手順を踏んでる」
$ \displaystyle \sum_{g \in G}\vert X^g \vert $
$= |\{(g,x) \in G \times X | f(g,x)=x \}|$
$= \displaystyle \sum_{x \in X}\vert G_x \vert $
ただし$G_x=\{ g \in G | f(g,x)=x \}$
「ここでいう$G_x$は$G$の部分群になるんだけど、固定群という名称がついている。$X^g$が$x \in X$を集めたものだったのに対して、こっちでは$G$の元を集めているよね」
「なるほど、数え方を変えるわけか」
「そう、ここでは別に大したことはやっていない。2行目から3行目を見よう。シグマ記号の部分はいじらないから、中身だけを取り出すと」
$|G_x|=\frac{|G|}{|Gx|} \iff |Gx|=\frac{|G|}{|G_x|}$
「式変形で使うのは左側だけど、式の意味は右側にある。もう少し書き方を変えよう。ラグランジュの定理は覚えているよね?今$G_x$は$G$の部分群だから」
$|G|/|G_x|=|G/G_x|$
∴$|Gx|=|G/G_x|$
「こうなるわけだ。この式は、軌道$Gx$と固定群による左剰余類$G/G_x$の間に全単射写像を構成することで証明できる」
「結構面倒だな」
「そうだね。具体的な方法としては、まず$G$から$Gx$への全射写像を構成する」
$ \phi_x : G \rightarrow Gx$, $\phi_x(g)=f(g,x)$
「次に、$G$上に同値関係$\sim$を定義する」
$a \sim b \iff \phi_x(a)=\phi_x(b)$
「このとき、$G/\sim$から$Gx$への単射写像が存在するって話は、前に同値類を教えたときにやったよね?」
「あぁ、そういえばあったな。well-definedの話が出てきたところだろう?」
「そうそう。で、今回は$\phi_x$が全射であるおかげで、全単射写像$h:G/\sim \rightarrow Gx$が存在するってわけだ」
「あそこの話も伏線だったのか……」
「この補題の証明の最短ルートでやってたからね。無駄話は極力省いたんだよ。で、後は$G/\sim$と、$G/G_x$の関係を見てあげればおしまい」
「そこ、どうつながるんだ?」
「案外簡単だよ」
$a \sim b \iff \phi_x(a)=\phi_x(b) $
$\iff f(a,x)=f(b,x) \iff f(b^{-1}a,x)=x$
$\iff b^{-1}a \in G_x \iff a \in bG_x \iff aG_x=bG_x $
「これで、$G/\sim$における$\sim$と、$G/G_x$における同値関係が対応していることが分かったから、この2つの集合の間に全単射が存在するよね」
「2つの全単射の合成で、$G/G_x$から$Gx$への全単射ができたから、これで証明できたわけだな」
「じゃあこれがラスト」
$|X/G|=\displaystyle \sum_{x \in X}\frac{1}{|Gx|}$
「といっても、ちょっとした工夫で解決するよ」
「さっぱり見えてこないが……」
「まぁまぁ、捉え方を変えてみるのさ」
$\displaystyle \sum_{x \in X}\frac{1}{|Gx|} = \sum_{\mathscr{A} \in X/G}\sum_{x \in \mathscr{A}}\frac{1}{|\mathscr{A}|} = \sum_{\mathscr{A} \in X/G}\frac{|\mathscr{A}|}{|\mathscr{A}|} = \sum_{\mathscr{A} \in X/G}1 = |X/G|$
「まず、$X$の元$x$をとるってところを、一度軌道$\mathscr{A}$をとって、その$\mathscr{A}$の中から$x$をとるっていう風に書き換えてあげる」
「ここまでであれば、単に手順を増やしただけだな」
「で、軌道$\mathscr{A}$の中では、$\frac{1}{|Gx|}$の値は常に$\frac{1}{|\mathscr{A}|}$で一定になるよね」
「なるほど、つまりすべての$x \in \mathscr{A}$について和をとるというのは、$|\mathscr{A}|$をかけることと変わらないな」
「あとはすべての$\mathscr{A} \in X/G$について和をとるだけ。これはそのまま$X/G$の個数$|X/G|$に一致するよね」
「おぉ!これですべて証明できたな!」
「ちょっと長い道のりだったけど、これでやっと応用に入れるね」
(第四話、第六話の後書きと同一の文章です)
第四話から第六話を今日で一気に書き上げたんですが、一度投稿しないとTeXの確認ができないんですよ。まだTeXに慣れていないのでちゃんと機能しているのか不安でして(実際ミスだらけでした)、一度完全非公開設定にして、1000字までいったら途中で投稿して確認、その後は確認しつつ編集で仕上げていくという形をとりました。今後の更新も、閑話はともかく数学回はそのような形式になります。