勝手に俺を殺すな。目の前の美少女が俺だぞ。   作:PGM-2

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ガチのマジで初投稿です。


バ フ ォ メ ッ ト って知ってる?

 世の中には大きく分けて2種類の怪異がいる。キリスト教的怪異の「悪魔」と、日本古来の怪異である「妖怪」だ。もちろん彼らは怪異の名に恥じず、人間に危害を加えたり争いを起こしたりする。そんな怪異との争いを調停し、危害を加えるものを討ち祓うのが、平安時代の陰陽師に始まり現代まで脈々と続く対怪異のエキスパート、「魔法使い」である。

 

 今の高校じゃ対魔術を習わないところはない。文科省の定めた必修科目に入っているからだ。しかし悲しいかな、対魔術の授業をまともに受けるやつはごく一部。理由は簡単で、要は才能がないと本当にどうしようもないから。才能があるやつはトントン拍子に力をつけていって異能力を制御できるまでに成長するが、俺たち才能ナシはまずそもそも異能力がないか、あってもめちゃくちゃ弱いかのレベルであり、どれだけ練習したりしても強くなることはない。結局は生まれ持っての才能で全てが決まるのだ。バカバカしい。だから、俺の知り合いでこの授業をまともに受けてるやつなんていない。1人の例外を除いて。

 

 対魔術の授業をまともに受けるクソ真面目な彼の名前は土御門 晴(つちみかど はる)。土御門の名の通り彼はどうやら安倍晴明の末裔らしい。安倍晴明といえば誰もが知る陰陽師の中の陰陽師、マスター・オブ・陰陽師だ。もうこれ主人公だろ。

 彼は自分の実力をひけらかすことは無いものの、端々で彼が安倍晴明の末裔の名に恥じぬ活躍を見せていることは誰もが知っている……こともない。うまく隠し通せているっぽい。有能すぎて俺なんかが勝てる要素が見えない。

 そもそも安倍晴明の末裔とかいう主人公補正バリバリに入りそうな血筋もいかがなものか。物語の中盤で晴明の力に覚醒するとかなんとかありそう。

 いやもうそれだけに止まらないのが土御門さんのすごいところである。

 

 彼は他人を寄せ付けない。俺がしつこく会話を試みようとしても、「俺に関わるとロクなことにならないからやめてくれ……」の一点張りである。しかし、さらにしつこく遊びに誘ってみたりすると少しづつ心を開いてくれた。ような気がする。今でもまだ距離は感じるが。いまだに遊びに誘ったら3回に1回は断られるし、学校で喋らないこともままある。それでもそんな俺が彼の一番の友達なんだからなんか哀しくなるな。

 

 俺の気に食わないことを、ご紹介しよう。ヤツのハーレムだ。そりゃまぁ主人公みたいなやつのまわりには女の子を侍らすっていうのは古代から相場が決まっているものだ。でもなんとな〜く、そこはかとな〜く気に食わない。日替わりヒロインはやめた方がいいと思うよ、いつか刺されそうやし。何人いるかなんて考えたことすらない。考えるだけで腹立つし虚しいから。うらやまけしからん。高校生の不純異性交友なんておじさんがお仕置きしちゃる!イチャイチャしくさりやがって。腕に密着されたって、正面切ってハグされたって土御門くんは全く動じない。EDか疑いたくなるほどだ。たが俺は知っている。あぁ見えて内心穏やかではなく、必死に理性を保っているということを。滅多に話しかけてこない彼が俺にはじめて話しかけてきた時の相談が「異様に距離が近い女の子との接し方を教えて」だった。張り倒そうかと思った。その時は、「もう流れに任せちまえよ」ってテキトーに対応したらめちゃくちゃ嫌そうな顔をされた。

 

 平和だった。特に怪異による人死にも悶着もなく、高校生活をエンジョイできるぐらいには。

 それと同時に、つまらなかった。所詮俺は主人公ではなくたまに出てくるモブ。たまに怪異が現れてもどこかの誰かさんたちが片付けてくれるおかげで俺みたいな無能の出番も特になし。毎日毎日、薄く引き伸ばされたような同じ日々を送るだけの生活だ。どっかにおもしろいモノでも転がってねぇかなぁ……

 

 なんて考えるのは今日限りでよそうと思った。明日からはこの平和さに感謝して生きようと深く反省した。まぁ、生きて帰れればだけど。

 

 学校からの帰り。普段とは違うルートの帰り道で。目の前の交差点で、信号を振り回して暴れ回る怪異に目をやる。人間のような身体の割に、顔と足は羊のような形をしている。背中にはコウモリのような翼が生えていて、なんというかめちゃくちゃ気持ち悪い。アンバランスさに目を背けたくなる。

 

『ウォォアォアアアアア!!!!!』

 

 怪異が勝鬨を上げるように吼えると、身体が言うことを効かなくなる。腰が抜ける。眼前の様相はまさに地獄だ。人間が何人も折り重なるように倒れており、道路は至る所が派手に凹んで隕石のクレーターのようになっている。異常事態に駆けつけた魔法使いもつい先ほどワンパンされちゃった。こんな地獄を見せられてしまえば、俺にできることなんて路地裏に息を潜めて隠れるぐらいしかできない。死ぬ前にせめて親に連絡でもしようと震える手で携帯を取り出そうとする。クソ、もどかしいな。全然取り出せ……

 

 カシャン、と呆れるほど軽い音を立てて携帯が転げ落ちる。

 

『……!そコの、路地裏にイる人間、出テこい……』

 

 あ、バレてる!

 わりぃ、俺死んだ!w

 でもよく考えれば、俺が時間稼ぎすれば土御門たちがこいつぶっ殺してくれるまでの時間潰しになるか。そう思えばなんか気が軽いような気が……やっぱしないわ。生きたい逃げたい帰りたい。死ぬならハンター×ハンターの最終話が出てからがよかった。でもよく考えたら俺、ハンター×ハンター読んだことなかった。ダメだやっぱ。思考が追いつかないし空回りしてわけわからんことが頭ん中でぐるぐる回り続けてる。そんな頭の中で考え出した結論、それは。

 

「俺はここだ!逃げも隠れもしない!」

『ほぅ、度胸ガあルな……』

 

 度胸なんてねぇよ。頭をオーバークロックさせたら訳の分からない答えにたどり着いたんだよ。あぁ俺、今から死ぬんだなぁ。死ぬ前に一回女装でもすりゃよかったな……ん?何言ってんだ俺?女装?どっからこんな考え出てきたんだよ。もういいや。どうせ死ぬし。

 

『え、いや女装癖持ちはちょっと……』

「お前普通に喋れるんかい!」

『あ……いや少シ動揺しテしまってナ。問題ナい』

「もうお前問題しかないよ。てか俺、声漏れてた?」

『それはもうばちこり』

 

 もう殺してくれ。いや嘘、死にたくはない。もうなんか感情がごちゃまぜになって放心しそうになってきた。

 にしても何なんだよこいつは。こんないかつい見た目でキャラ作ってんのかよ。もうこれほぼ放送事故だろ。俺が視聴者ならキレてる自信がある。クソ作品間違いナシだ。

 

『お前、取り引きをしないか?実は俺も暴れ疲れてそろそろ帰りたいんだよ』

 

 何を言い出すんだこいつは。悪魔らしいことをいいやがって。あ、そういえばこいつ悪魔か。じゃあ仕方ないなアッハッハ。いや笑い事ではない。

 

「拒否する……と言えば?」

 

 悪魔との取り引きなんて大抵はロクなことになりやしない、と昔に本で読んだことがある。例えば永遠の命の代わりに自分の精神を持っていかれて永遠にノイローゼで生きることになったり。例えば敵対する国の征服の代わりに自国民の半分の命だとか。つまり悪魔とはそういう生き物だ。

 

『殺す』

「最初から拒否という選択肢はナシか……」

『で、どうする?』

「わかったわかった。受けるから条件を言ってくれ」

 

 どうせ拾った命だ。大事にしたい。あまり刺激せずに落とし所を探すしか無さそうだ。気を取りなおして悪魔との取り引きの内容を聞こうとすると、ニヤリと、まさに悪魔のような笑みを浮かべて口を開いた。

 

『俺を見逃す。代わりにお前にはその辺の人間よりもずっと長い命をやろう。好きに生きろ。拒否する場合は、殺すかそれに匹敵する呪いをかける』

「イヤだね。ていうか、どうせもうそろ土御門が来るだろうし。お前祓われるよ」

『俺を祓う?ハッハッハ!!!!はぁ……ふぅ……ひーっ、片腹痛いわ。現に今さっき襲ってきたエクソシストだって歯が立たなかっただろう?』

 

 事実だ。しかしこいつは土御門をナメている。ぜひナメたまま死んでほしいところではある。だってあの土御門だぜ?妖怪の首領的な、ぬらりひょんを祓うことはついぞ叶わなかったものの、対等に戦った男だぜ?なぜ俺が知っているのかって聞かれると耳が痛い。休日何してるんだろ、と思ってストーカーしてたらガチバトルしてる現場にエンカしちゃいましたなんて口が裂けても言えない。

 

 閑話休題。俺は時間さえ稼げれば……

 

『まぁその土御門?とやらがもし強いとするのであれば、弱っている今祓われるのは不快だな。お前を殺して疾く去るとしよう』

 

 言うが早いが悪魔は俺の顔を持ち上げてギリギリと締め上げてくる。言葉にならないほど痛い。

 時間さえ稼げないのか俺は。無情すぎる。

 

 しかしここでようやく俺の命に価値が出てきそうだ。どうやらアレを使うしかないようだ。

 俺はおもむろにズボンのポケットから取り出したロケットペンダントを悪魔に見せつける。

 

「ほへぇがなんひゃかわかりゅか?(これがなんだかわかるか?)」

『な、お前それは……!』

「ひゃっひゃっひゃっ!ほへとほもにひねぃ!(ハッハッハ!俺と共に死ねぃ!)」

 

 どうやらコイツはわかっているらしい。このペンダントが自決用の小型爆弾内蔵だということを。ペンダントを開けると起爆スイッチが作動して、俺の身体を跡形もなく消し去るという算段だ。親戚が対魔過激派宗教に入っててよかった。好奇心でこれを家からくすねてこなきゃ俺は人類の役に立てなかった。ちなみにこのペンダントは家にまだ1ダース分ぐらいある。

 

「ひゃあな!ふほはふま!(じゃあな!クソ悪魔!)」

『クソ人間風情がぁぁぁぁぁぁ!!!!呪ってやるぞ!!!!』

 

 圧倒的力を持つ生物の怨嗟というのは存外に心地良いモノだな、と考えながら俺はペンダントのスイッチを押した。

 

 瞬間、走る閃光。それと同時に轟く爆音。

 

『グガァァァァァァァァァァ!!?!!!!?』

 

 じゃあな。クソ悪魔。天国で待ってるぜ。

 

 

 

 

 目を開く。ハテ、ここはヴァルハラかと思えば空は青いし地面はアスファルト。足元には羊顔の悪魔。右にはひしゃげて折れた信号機。左には倒れた人の山。

 

 …………アレ!?俺、生きてる!?

 

「よかった……!?」

 

 なんだ?自分の喉から女の子の声がする。ヘリウムガスでも吸ったか?

 

「あーあーあ……ウソでしょ……」

 

 いや、そんなもんじゃない。これはどっからどう聞いても"本質的な"女の子の声だ。

 ありえない。こんなことありえるのか?ガタガタと震えながら歩いて、道路に転がっている自分の携帯を拾う。よかった、まだ起動する。画面のガラスはバキバキに割れているけど、修理すりゃ直る。カメラを起動して内カメラに切り替える。恐る恐る覗いてみると────

 

 銀髪赤目の少女が写っていた。

 

 あぁクソ。これが。

 これが、悪魔の呪いかよ────

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