勝手に俺を殺すな。目の前の美少女が俺だぞ。   作:PGM-2

6 / 7
更新遅れてすみません、ウイポやってたら1週間過ぎてました


お料理、得意なんです!

 絶望の起床。寝覚めは最悪。

 どこかのアホ悪魔との死闘でバキバキに画面が割れたスマホの内カメラで自分を写してみると、もちろん身体が元に戻っているハズもなく、目付きの悪い眠そうな少女が写っている。腰まで届いている髪はハッキリ言って邪魔でしかないが切るのも抵抗がある。どうすっかなこれ……処遇に悩む。もし教師とかに長すぎるから切れって言われたら大暴れしてやろう。学校で大暴れするのが夢だったんだ。夢、叶えます。

 

 これは余裕があるからふざけているのではなく余裕がなさすぎてふざけているのだ。いや、ふざけている場合ではない。たとえ俺の身に何が起ころうとも学校は日曜日と長期休暇以外行かねばならない。それが社会というものだ。まぁ、高校生が社会について語るなと言われれば黙らざるを得ない。

 

 布団を被ったままぼーっと虚空を見つめていると、最初はぽつぽつと、しかしいつの間にかばたばたと激しく窓を叩く音が聞こえてきた。ひょっとしなくても雨だろう。2割増しぐらいで学校に行きたくなくなってきた。俺は片手が塞がるから傘が嫌いなんだ。あと単純に少しづつ濡れるのが嫌すぎる。友達からは風呂に入るのを嫌がる猫みたいだと笑われるほどに、雨という自然現象が嫌いなのだ。

 

 ごろりと頭を転がして机の上の時計に目をやると、6時30分を指したまま秒針がコチコチと動いている。もう一眠りしようかなと目を閉じようとしたところで、机の上の違和感に気付く。ど真ん中に鎮座している目覚まし時計は違和感なし。乱雑に積み上げられた参考書……はいつも通り。PCのモニターもキーボードも普通。机の隅っこにある白いセーラー服も……ん?セーラー服!?

 

「ドワァ!?なんじゃこりゃ!!」

 

 セーラー服です。

 俺はこんな物に見覚えはないぞ。たしかにセーラー服を脱がせたいなと思ったことはあるけど、着たいと思ったことはない。本当に。少なくとも、俺に女装癖はない。

 

 しかしこのセーラー服、よく見てみるとどこかで見たようなデザインをしている。そう、さっきまで俺と話をしていたバフォメットが着ていたような……。……ん?バフォメットの着ていた服?

 改めてセーラー服に目を向ける。なんとびっくりデザインほぼ一緒。ほぼ?いやもう一緒です。対戦ありがとうございました。

 

 オォイどうなってんだ一体?あいつは俺の意識の中でしか存在し得ないって言ってたよな?じゃあどうしてこんなものが?なんかもう考えたくなくなってきた。バカになりたい。あ、もとからバカか。バカで弱くて無能力で脳内で悪魔飼ってるとか役満超えて国士無双でしかない。せめて俺にも何か能力があればなと思う。だがしかし悲しいかな、現実は非情。そんなものはない。

 

 もう考えるのもめんどくさいので、尺取り虫のように布団から這い出て一階の居間に降りる。母上と父上は明日から北海道かどこかに行くらしいけど、俺学校あるんだよな。休みたかったけど、親には多大なる借りがあるから無理は言えない。でもなぁ……行きたかったなぁ……北海道。うまい魚が食べたいよ俺は。中学校の時に修学旅行で行ったけど、自由時間の散策中に同じ班の人からはぐれてずっと1人で行動してたのを思い出すと悲しくなる。あ、いかん、涙が。視界がぼやけてあやうく階段を踏み外して落ちるところだった。

 

 

「おはようございま〜す」

 

 ……?

 

「おっはよ〜ございま〜?」

 

 返答ナシ。

 おかしい。俺が起きてくる頃にはリビングにはもう父さんも母さんもいて、起床の遅さに毎朝白い目で見られるのに。あれやめてほしいんだよ、朝ごはん食べづらいしなんかちょっと、ほんの少しだけ申し訳なさがあるから。

 

 静寂。もはや静かすぎて耳鳴りがするほどの、静寂。聴こえてくるのは自分の心臓の音のみ。

 これでは埒があかない。天を仰ぐようにしてリビングをぐるりと一通り見回した俺は、その瞬間、稲妻に打たれたようにあるひとつの恐るべき仮説にたどり着いた。学会追放も覚悟の上の、その仮説とは────。

 

 本日祝日説。

 

 え、もしかして今日休み!?休日っすかぁ!?学校行かないでいいってマジ!?

 

 そんなわけないだろ。何言ってんだ俺。今日は金曜日だぞ。バリバリ学校あるわ。なんなら明日も半ドンであるぞ。じゃあ、なんで?もしかして早く起きすぎた?いやそんなハズがない。俺が起きたのは6:30あたりだぞ。遅すぎず早すぎずのいい時間だと思うんだけど、一体全体どうなってるんだ?

 わけがわからん。俺にドッキリでも仕掛けてるのかと疑うほどに音すら出さない。己自身は朝にとてつもなく弱いので、今ドッキリなんてされたらイライラしすぎて扉のひとつふたつブチ壊してしまいそうな気がする。

 

 冗談ならとっとと出てきてくれ、と思いながらリビングをウロウロしようとすると、ふと食卓の上の紙に目がいく。さては親父がまたとりとめのないチラシなんかを家に持って帰ってきやがったな、なんて思いながら手に取って一通り読むと、俺はその紙をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に勢いよく叩きつけて。吠えた。

 

「な〜にが置き手紙じゃ!俺の緊張感を返せ!」

 

 置き手紙。そう、置き手紙でした。ふざけんな!本気で怖かったんだぞ!しかもめちゃくちゃテキトーな、いかにも急ぎで書きましたみたいな字しやがって。その割に内容は『実は向こうに行くの今日ってこと忘れてました!w』だし、あとは本当に食費とかの話だった。……ん?そういえば追伸って書いてるところがあったけどあまりにも怒りが強すぎて読み飛ばしてたな。

 あくびをしながらキッチンに向かい、手紙を丸めて叩きつけたゴミ箱を漁る。まぁ漁ると言ってもゴミの一番上に置いてるみたいなモンだし、誤差誤差。

 

 丸めた手紙を引き伸ばし、砕けた字で最後の方にボソボソと書いてある、人に読ませる気があるのかすらわからないような追伸を読もうとする。親父よ、もっと字は綺麗に書かんかい。

 

「『追伸。制服はあなたの机の上に置いておきました。白いセーラー服です。かわいいですね。ワケアリですがやましいことには何も使っていないらしいので文句は言えるならお母さんに言ってください。お身体にだけは気をつけて。敬具。』…………親父、やましいこととか性癖のことついてはもういっそ割り切るからワケアリの理由を教えてくれよ……」

 

 いまさら知りたく無かった父親の性癖。これもう犯罪者だろ、通報ですよ通報。

 

 しかしまぁ謎だ。謎でしかない。なぜ母上がバフォメットの着てたヤツと同じ制服を?と、そこまで考えて気がついた。そういえば母君が自分の学校生活のことに言及した時などあったろうか。いや、ない。見えたぜ!隙の糸!だとするならば、ここから導かれる結論は────。

 

 

 わからん。さっぱりわからん。もう考えるだけ無駄な気がするので、二度漬けと深読みは厳禁にします。IQ30ぐらいまで低下させます!

 

「ま!シリアスなこと考えなくていっか!」

 

 こうやってわざわざ口に出して言うあたり、気にしてんだろうな〜と頭の片隅では思うのだが、無理矢理気が付いていないフリをして蓋をする。臭いものには蓋理論が大好きなのだ、俺は。「臭いものに蓋」は簡単に言うと「めんどくさいものは頭の中から削除」だと信じて疑っていないので、昔のいい加減な人間に感謝している。ありがとな!こんな便利な言葉作ってくれて!

 

 ぐぅ。と場違いなほどかわいい音が鳴ったので、あたりをキョロキョロと見回す。なんだ今の女の子みたいな腹の鳴る音は。ここに女の子なんていないぞ。

 ……あっ、俺かぁ!

 

 腹が減っては戦ができぬ。

 料理がうますぎて友達から、かの有名なシェフである『リョウ・リー・ウマイ』のごとき腕とさえ呼ばれる、俺の料理を見せて進ぜよう。

 

 まず冷蔵庫から昨日の白米の残りを取り出します。それを茶碗に食べられる量だけ入れ、ラップをして電子レンジで温めます。次に、また同じく冷蔵庫から卵を取り出し、調味料の棚に置いてある醤油も一緒に食卓に置きます。最後に、温めた白米の上に卵を落とし、醤油と一緒に混ぜたら完成です。ライスオンエッグ、またの名を卵かけご飯という料理の。

 

 手を合わせて、いただきます。勢いよくかき込む。うまい。相も変わらず、うまい。ただそれ以上でもそれ以下でもなく、常に合格点を出してくれるこの卵かけご飯には、素直に感謝です。負けました、卵かけご飯、好きです。

 

 何言ってんだ俺は。食べ終わったところで賢者タイムが発動し、呆然としたまま食器を片付ける。洗うのめんどくさいし家帰ったらやろう、と思いながら歯を磨いて顔を洗う。顔を上げると、洗面器の上にある鏡に自分の顔がハッキリと写る。いつ見ても慣れない、慣れたくないこの顔。前はもっとつまんねぇ顔してたのになぁ……。こんな個性バチバチマンみたいな可愛い顔になっちまった。そもそも顔うんぬん以前に一番困るのは視点が低くなったことだけど。頭ひとつ分視点が違うから色々と不便すぎる。前が175cmピッタリだったけど、今はどれぐらいだろうか。バフォメットを見てると160cmぐらいだと思うんだけど、あいつと俺は身長も一緒なのか?

 

 身長で困るなら服のサイズとかも色々変わるしなぁ。昨日はタンクトップだけで寝たから大して気にしなかったけど、今後は普通の服も着るわけだし丈が違うとブカブカになって着れたもんじゃない。服を買うのに崩すか、俺が小学生の頃から一度も手を出さずに貯めていたヘソクリを。

 嘆息しながら階段を登り、自分の部屋に戻ってセーラー服さんと対戦よろしくお願いしますしたところでハタと気が付いた。

 

 俺、この服の着る方法、しらねぇわ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。