ゆるホロの日常。   作:窓風

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剣友との激闘やいかに。




vs輝竜

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮とも呼べる2つの気合い充分な声がアリーナ全体を包み、大会役員や決勝Aブロックで試合中の選手さえ一瞬振り向くほどに会場の視線を集めた決勝Bブロック3回戦。その迫力に観客席のフブキ達も驚愕する。

 

「ふ、2人ともあんな声出せるんだ………。」

「久々に2人の試合見るなー!どうなるんだろ!」

「そっか、ノエルちゃんは2人の先輩なんだもんね。」

「ほぅ、そうなんですか。」

「剣道の少年団が同じだったんだよ。始めたての頃はそりゃもう可愛くてな……。」

「ノエル、鼻の下伸びてる。」

「いけね。」

 

 

 

「「うぉっ!?」」

「隣スゲェな。」

「負けたら余のパシリだからな〜。頑張れ〜。」

 

 

 

決勝(てっぺん)で会おうや、舎弟君。」

「お、何してんのココ。」

「おー天使公。舎弟君の試合見てんだよ。」

「あー愛川君。去年はココにボコされたからね。今年はリベンジできるかな?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

何も技を使わない純粋な合い面はすんでのところで躱され、互いの左肩を少し抉る程度のダメージを負った。火花が散っていると錯覚するほどの激しい鍔迫り合いを経て牽制しあいながら一旦距離を取る。

 

(この感覚……久しぶりだな。)

 

剣道の試合をしたときと似た緊張感に、思わず口角があがる。内心楽しくてしょうがないのだ。それは竜も同じようで、構えは崩さずにぴょんぴょん飛び跳ねて身体で表現している。可愛い奴だ。

 

「竜!こっから手加減なしだかんな!」

「はいっ!!」

 

いつも以上に元気な返事をすると、竜は両手で持っていた鋼鉄の剣を右手に持ち替えて肩に担ぐようにして構えをとった。それに合わせて俺は両手持ちのまま左足を一歩前に出して上段の構えをとる。ここからは自分のスタイルで闘おう。

 

「はぁっ!」

 

距離をつめて上段からの重い縦一閃を放つが、竜が一歩引いて躱しすかさず俺の左肩目掛けて剣を振り下ろす。そこに振り下ろした刀を急激に斬り上げる『燕返し』で迫る剣をいなす。その勢いのまま身体を左回転させて再度袈裟斬りを試みるがそれも防がれる。

 

「おらよ!!」

「うおっ?!」

 

鍔迫り合いから腹を蹴って竜の体勢を僅かに崩すと、喉目掛けて刺突を放つ。仕返しとばかりに喉元に迫る剣先を首を傾け、互いに首筋を掠らせながらも回避する。そして袈裟斬りをしながら退くと竜の身体に左肩から右脇腹にかけて浅く傷がつくが、竜も同じことを考えたようで俺の身体にも同じような傷ができる。

 

実力はほぼ五分(イーブン)。両者一歩を譲らない闘いが続くが、残り時間3分、互いのHPが残り3割となった頃でその差が開く。

 

抜刀術発動のために一度納刀すると、竜は剣を天に掲げる。すると軽めの黒雲が発生し、剣に雷が落ちると稲妻の剣が出来上がる。それを身体の左側に構え横一閃の光の刃を放つ用意をする。予選ブロックでぺこらが放ったもの自体威力が高いものだが、それの上位互換かつ雷を纏うこれは威力が段違いに上がっているはずだ。まともに食らってみな、飛ぶぞ。

 

 

 

「ぺこら、杏君の対戦相手をよく見てな。」

「えぇ?杏じゃなくて?」

「そ。勇者になりたいならアレくらいやんなきゃ。」

「うえぇ……」

 

 

 

「『ドラゴンブレイク』!!」

 

竜が技名を叫ぶと一回転…………せずに、そのまま横一閃に剣を振り抜いた。予想外のことに一瞬だけ動きが止まり、辛うじて回避するが左腕に技をモロに受けてしまい、俺のHPが減り黄色から残り2割を示す赤色に変色する。

 

剣の技の中で奥義級として登録されている『ドラゴンスラッシュ』(ぺこらはなぜかぺこスラッシュと言ってたが。)と『ドラゴンブレイク』は通常は一回転してから技を放つ。それを構えからすぐに放たれたため、反応が少し遅れてしまったのだ。やりおる。

 

(ニヤリ)

「こいつっ……!!」

 

してやった、と顔に書いてるぞお前。見ない間に生意気になったな?

 

なんてことを考えてる時間はない。抜刀しつつ衝撃波を5つ、それぞれ別角度で放つが稲妻の剣に全て弾かれる。だがこれで剣を帯びていた雷を取り除けた。すかさず顔のすぐ右側で構え直し左手で照準を定める。一気に距離を詰めて間合いに入ると、神速の刺突『刹那』を放ちすぐに後退する。

 

体勢が整わないまま『刹那』を食らい大きくバランスを崩すが、剣を立てて強引にその場にとどまる。竜の左肩には握り拳程度の大きさの負傷エフェクトがかかり、HPは俺と同じく2割を下回り赤く色を変えている。残量的には俺の方が若干多いくらいか。

 

(さすがに、しんどっ!)

 

試合開始してからおよそ8分が経過する。その間でほぼ全力で互いにHPを削り合っていればそりゃ息も切れる。しかし疲れを見せては相手に攻撃の機会を与えるだけなのは剣道でよくわかっているのでできるだけ相手に悟られないように呼吸を整える。まぁ剣道経験者同士だから竜もそれはわかってるだろう。

 

次の一太刀で勝負が決まるかもしれないことも。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

観客席から後輩(ナイト)2人の激しい攻防を見守る。ちょっと見ない間に逞しく成長している姿に、少し感動を覚える。

 

「え、あれって回んないで出せんのぉ?!」

「そうみたい。すごいね彼。」

「愛川君もあそこから反撃したよ!」

「「頑張れ〜!!」」

 

ぺこらは竜君の『ドラゴンブレイク』に驚き、それをフレアが賞賛して、フブキ先輩が杏君の反撃(カウンター)に尻尾を振りながら興奮し、ミオ先輩とまつり先輩が声援を送る。愛されてるなぁ、と思う。

 

「ノエル、また顔緩んでる。」

「たるんどる?」

「言ってない言ってない。」

 

軽くボケる。また無意識にニヤついてしまっていたようだ。

 

試合場に視線を戻すと2人も次が最後なのを悟ったのか、竜君は先程と同じ構え、杏君はやや前傾姿勢で刀を握る両腕を下げている独特の構えで睨み合っている。竜君は構えこそ『ドラゴンブレイク』と同じだが剣には風を纏っている。杏君は腕を脱力させて最小限の力で刀を握っているが、切先はしっかりと竜君の方を向いていて、刀には同じく風が纏っている。2人とも速度と貫通力がある風属性の技で決着をつけるようだ。

 

「残りHP的に次が最後になりそうだね。」

「そうだね。さて、どっちが勝つかな。」

 

フレアとそう話し終わったタイミングで、2人が動き出した。

 

タイマーが示す時間は、残り30秒を切ったところだった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

残り時間が30秒を切ったタイミングで突き上げるように腕を竜の胸元目掛けて放つ。それを読んだ竜はその腕ごと斬り飛ばす。結果、切断された俺の右前腕(・・・)が竜の左後方に飛んでいく。

 

「なっ!?」

 

竜の反応に思わずニヤつく。刀を両手で握っていたのに斬られたの右腕だけ。そして自分の胸を貫通して刺さる刀。さてこれはどういうことか。

 

構えの段階では確かに俺は両手で刀を握っていたが、技を放つ寸前で右手を離して何も持っていない右腕だけで突きを繰り出した。竜は速度と貫通力がある風属性の技で俺の両腕を飛ばして無力化しようと考えるとこまで読んで、俺はあえて右腕を差し出した。

 

そしてコンマ何秒差で刀を持つ左腕を突き出してやれば剣を振り抜く途中である竜は防ぐ手段がないため、そのまま胸にヒットする。

 

まぁつまりだ。少しHPが減るリスクがあったが竜よりもHPが高いことを利用して右腕を囮にして、本命の左腕でトドメをさしたってコト。以上。

 

残り時間はあと20秒ほど。竜のHPはあと1割もない量に対して、俺のHPはあと1割弱。本当にギリギリの闘いだったが、なんとか追い込んだ。

 

竜の顔を見ると、悔しさと嬉しさが半々といった複雑な表情をしていた。……待て、嬉しさって何?何に対する嬉しさなん?

 

「…………経験の差、って言うんですかね。」

「かもな。」

「いやぁ、でも楽しかったです。杏君と全力で闘えて嬉しいです!もう負けは許されませんからね!」

「まぁうまくやるさ。」

 

互いに笑うと、試合終了を知らせるブザーが鳴った。

 

決勝Bブロック3回戦、勝利。

 

 

 

 

「ところで、その刀に名前あるんですか?」

「え、一応あるけど。その剣は?」

「これは一応『鋼鉄の剣』っていう店に売ってそうな感じです。」

「まぁ特に装飾とかないもんな。」

 

試合終了後、4回戦が始まる間に竜と主に服装類(スキン)の話で雑談をする。竜の剣は確かに何の変哲もないフツーの鋼鉄製の剣だ。比べて俺の刀は柄が緑、刀身には風を模した数本の波線が刻まれている。

 

「杏君の刀は結構凝ってますよね。聞いた話だと、相当ハッキリイメージしないと正確な武器の形にならないみたいですけど。」

「あー……。」

「ま、そういう趣味もあっていいんじゃないですか?俺はカッコいいと思いますよ。」

「ありがとな……。」

「で、なんて名前なんですか?」

「逃がしてくれぇ。」

 

 

 

 




刀の銘は「疾天・隼丸」やで。

「バラすなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
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