…………3ヶ月ぶりってマ?
6月中旬、武術王決定戦が無事に終わってから1週間。先週同様、梅雨の季節を感じさせない晴れやかな木曜日の4限。俺たち2年生は学校の2つある体育館の一つ、2号体育館(通称:新体)に集められた。
「この学校ってホントにイベントには全力だな。」
「俺らとしちゃこれでもかってくらい青春できて嬉しいけどな。」
「それ。学校に感謝だわ。」
誠やクラスメイト達と雑談をしながら先生のアナウンスを待つ。話を聞いた感じ、やはりみんなそわそわしているようだ。まぁそれは俺もなんだが。
今2年男子は新体のアリーナ部分の半分に待たされている。フブキやまつり達女子は新体アリーナのもう半分に集まっている。男女の間には『見てからのお楽しみだ』と言わんばかりに白いカーテンがかかっており、男女間のコンタクトがとりにくい状態になっている。
『お前ら聞こえるかー。これから
「おわ、3秒前とか無いんだな。」
「スッときたな。」
紫水先生がアナウンスしてものの数秒で新体全体を覆うようにフィールドが展開された。必然的にフィールドに入った野郎共は白いスーツに着替えさせられた。いや違うわ。タキシードだこれ。横目で周りを見ると、何人か袴姿も見受けられる。
「おー、誠似合ってんじゃん。」
「ほー、馬子にも衣装。」
「お前あとで覚えとけよ。」
特殊固有空間を知らん人のために簡単に説明すると、今実際に着てるのは制服だけど服の見た目がタキシード、袴になっている状態になっている。イメージは
誠に喧嘩売られたのは一旦置いとくとして、男子がこんな格好になったということはだ。女子の方はもう言うまでもない。
はい、今日のイベントはJune bride。対象は2年生のみで、未来に輝く学生に先行体験してもらおうというものだ。フィールド内では和洋両方の花嫁/花婿衣装を試着でき、あとは好きに写真を撮るなりする時間だ。なんだこの神企画。
『じゃー後は時間まで好きにしてくれー。』
紫水先生は最後にそうアナウンスすると、男女間を隔てていたカーテンが一気に引かれ、向こう側にいる花嫁候補達と目が合う。
純白のドレスや白無垢に身を包んだ彼女たちは、嬉しさと緊張、そして照れが混ざった表情でこちらを見つめていた。互いに3秒ほど情報を処理するのに固まっていると、背後からパシャリとシャッター音が。
振り向くと、紫水先生がどこから取り出したのかガチのカメラを体育館の隅で構えていた。あの人目がガチだ。
紫水先生のシャッター音のおかげで現実に戻った俺たちは、それぞれいつものメンバーで集まって記念にと写真を撮り合う。中にはガチの告白をしてる奴もいた。メンタル強すぎる。
というわけで俺、誠、フブキ、まつりの同クラスいつメンで集まってます。
「2人ともカッコいいじゃん!」
「まつりもいいな。スカート部分の丈が短いのがいい味出してる。」
「でしょー!」
「で、その後ろに隠れてる赤い狐さんは?」
「ひゃうっ」
観念したのか、まつりの後ろからもじもじしながらフブキが現れた。
ウェディングドレスは脚が隠れてギリギリ引き摺らないくらいの丈のいわゆる標準的なものだが、頭の上に乗ってる花冠が良い。加えて照れで耳がへにゃってるのがギャップでより良い。
「綺麗だぞ。」
「あ、ありがと……」
「神企画を用意してくれた学校に感謝ぁ!」
「誠君は平常運転だね。」
「かぷかぷー!」
「ちょこも混ぜてー!」
後ろから別クラスのアキとメル、遅れてぺこらとこより、そして何故かちょこ先生が参戦。多分アキメルにでも釣られてきたのだろう。ぺこらはまつりと同じミニスカートタイプ、こよりは背中が開いて尻尾の付け根が見え……そうな感じと、みんな自分らしさがドレスに現れていてとても良いです。特にメルキスの2人はむ、胸が…………。痛い痛い痛いですまつりさん。
「みなさん揃ってますね。」
「お、そらにえーちゃん。すいちゃんも。」
「やっほー!」
「すいちゃんはー?」
「今日は特に可愛いー!」
「ありがとうー!」
「やっぱちいs『ゴッ』」
さらにまた別クラスのそら、えーちゃん、すいちゃんが加わる。そらもすいちゃんもやはりドレスが非常に似合うし、えーちゃんは普段ジーパンなのもあってギャップがありとても良い。最後の鈍い音は恐れを知らないというか、学習しない誠がギリギリ見える手刀ですいちゃんに倒された音。憐れなり。
「フンッ」
「こいつはさぁ…………」
「あはは……」
「あれ、ミオさんとあやめさんは?」
「さっきクラスメイトに囲まれて写真撮られまくってるの見ましたよ。」
「あのクラスって一部だとあやミオ推進派クラスとも言われてるぺこ。」
「あの2人もなんだかんだ大変なんかな。」
その後も各々写真を撮っていると、ようやく解放されたのかあやミオが到着。その2人の衣装を見て思わず見惚れた。
着物などの和装が似合う2人のことだから間違いないだろうとは思っていたが、白無垢がこれほどまでにマッチするとは。ミオに至っては白無垢に獣耳ポケットがあることによってより可愛さを引き立てている。
「わぁ!!ミオちゃんもあやめちゃんも綺麗!!」
「やっぱりお2人には白無垢が似合うわぁ〜!!」
「えへへ、ありがと。」
「あれ、誠君は?」
「そこで伸びてるぺこ。」
「なんで!?」
「自業自得。」
あやミオも加えて計13名(内1名気絶)でワイワイしていると、撮影スペースとなっているステージが空いたためそこで撮影会をやろうということになった。あやふぶみなりメルぺこなりメジャーだったり意外なペアで写真を撮っていく。アッ、そらの笑顔が眩しい……。
「いやぁ〜、みんなの花嫁衣装綺麗だなぁ。」
「でも何か足りないんだよね…………」
「気づいちゃいましたかまつり様。」
「えっ、ちょこ先生何かわかるの?」
「もちろん!そ、れ、は………」
え、なんかこっち見られたんだけど。
「花嫁には花婿!つまり愛川様とツーショットよ!」
「!!!!!!!!!!!」
待って急に寒気がしてきた。役得なのはわかっているが彼女達の視線が一斉にこっちに向けば流石に狼狽えるというもの。いやもう逃げる気なんてないが。というよりこのメンツから逃げられる気がしない。
「ということでぇ!これから愛川様とのツーショットタイムでぇす!!」
「癒月先生、あんま時間ないんで2人くらいにしといてくださいね。」
「えー。」
「えーじゃないです。」
紫水先生から救いの手が……まぁ無いよりはいいだろう。あざます。ところでその俺に向けられたサムズアップはなんですか。いや、グッ!じゃなくて。
「それじゃ恨みっこなしのジャンケンで決めますか。希望する方はこっちに来てください。私が審判をしましょう。」
「えーちゃんはいいの?」
「私はそらの衣装が見れて満足なのでみなさんに譲ります。」
「ちょこも皆様の可愛い花嫁姿もっと見たいので〜!」
てことで11人の花嫁が俺の為に争うことになった。これなんてラノベ?
「人数が多いので、ある程度減るまで私に勝った人だけ残る形式にしますか。いきますよー…………ジャンケン!」
『ポン!』
果たして結果は……
「うぇ?!アキちゃん1人勝ちだ!」
「アキアキすごー!!」
「やったぁぁ!!」
「おめでとうございますー!!」
アキの1人勝ち。どんな確率やこれ。素直にすごいが。
ともかく、相手が決まったのなら迎えに行くか。
「俺でいいんか?」
「あれあれ?照れてるの?」
「そりゃあ、なぁ。」
「ふふ、嬉しいな。」
「アキ様ー!武術王2位の愛川様なら何でもリクエスト聞いてくれますよー!」
「おい待てそこ余計なこと言うなぁ!!」
ちょこ先生の
「で、何かリクエストはありますか。」
「え、いいの?」
「あんなとこで言われたら断れんよ。」
「えーと、じゃあ………コショコショ」
「…………マジか。別にいいけどさ。」
「よっしゃ!」
アキからリクエストを耳打ちで聞き、時間も惜しいので早速撮影会をしよう。ギャラリーがいるのがとても恥ずかしいがもうどうにでもなれ。
「いくぞ……ほいっ!」
「きゃっ!?」
アキのリクエストは、誰もが夢見るであろう『お姫様抱っこ』。抱き上げた瞬間ギャラリーからは黄色い悲鳴とシャッター音が。芸能人の会見かな?俺個人としては、いずれはお姫様抱っこをしたいと密かに思っていた。まさかこういう形で叶うとは思わなかったが。
「ねぇねぇ、杏君。」
「な、なんだ、アキ。」
突然名前で呼ばれてびっくりしたが、平静を装いつつアキの顔を見る。同時にぬるっと首に腕を回してきたし、心なしか少し照れてる?
「左手の指…………気づいてるよね?」
「…………さぁな。」
意識しないようにしてたのに、と内心呟きながら左手薬指にあった指輪を思い出す。フィールドが展開されてから指輪も標準装備として身につけてあったそれにおそらく全員気づいているだろうが、誰一人として話題に出すことはなかった。それを今改めて認識させられたことにより顔が熱くなり、心臓の鼓動が速くなる。できるだけ動揺を見せないようにして相槌を打つも、予想通りの反応だったのか、意地悪な顔をして左手の指で俺の左頬をツンツンしてきた。可愛いなちくしょう。
「素直じゃないなぁ〜。うりうり。」
「んぅ」
「……ありがとね。」
「……どうも。」
互いに貴重な経験をしたところで結局俺とアキの撮影会で4限が終わり、高校3年間でたった1回の行事が幕を閉じた。こんなことやってんのウチくらいだろ。
なお、アキとのツーショットをネタにトワ様やねねち、おかゆさんなど色んな人に7月に入るまでしばらく擦られました。
ホロライブ・オルタナティブ2nd PVのアキロゼが美しすぎてな
holox3D衣装出始めましたね!めでたいめでたい!!