ゆるホロの日常。   作:窓風

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ホロメンとの出会い、邂逅編もあるぞよ。


邂逅
白上フブキ


 

 

 

 

 

地元から離れた高校で新しく友達を作るというのは案外難しいのだ。

 

だってそうじゃん。幼稚園の頃から付き合いがある同級生がいない環境って結構おっかないぜ?しかも幼稚園とか小学校の時とは色々状況が違うから余計。相手のことをホントに0の状態から知らなきゃいけないから大変なのよ。

 

そんなわけで、今俺はクラスで浮くのではないかと内心冷や冷やしている。1人だけ知り合いがいるが、残念ながらそいつは別のクラスだ。つまり自力で友人関係を築かなければならない。

 

そして俺の性格上、自分から初対面の人に話しかけるというのが難易度高めなのだ。つまり受け身で話しかけられるのを待つほかない。これからの学校生活で多少の友人関係は必要になるだろうから、せめて1年生の時に何人か友人を作るべきなんだろうけど……。いや、ちょっと勇気を出せば済む話なんだけどさ。その勇気を出すのに勇気がいるのよ。二段構えなの。わかる?

 

「あーいみんな、入学式とオリエンテーションお疲れさんー。軽くホームルームやったら今日はもう解散だから、午後は好きに過ごしていいぞー。」

 

担任の紫水(しみず)(しょう)先生がホントに軽くホームルームを済ませて今日はもう解散になった。自己紹介は入学式前に済ませてあったため、周りには共通の趣味がある人や同じ中学出身の人同士がわいわい会話している。

 

友達を作るならとりあえず周りの席から、と思い左隣を見る。うん。いい天気だ。校庭の奥に植えられた桜が満開に咲いている。

次に前。黒板だ。受け皿に何本もあるチョークは長いものから欠けてもはやチョークと呼べるか怪しいものがある。今までに幾度となく使われてきたのだろう。

そんで真後ろ。出席番号だと俺の次にあたる生徒は、教室の後ろ側で同じ中学出身の奴数人と楽しそうに話している。

 

…………もうおかわり、いやお分かりだろう。名前の関係上、幼稚園の頃からずっと俺は出席番号1番だった。『愛川』の前に来る名前と同じクラスになったことなど一度もない。だから必然的に俺の最初の席は最前列の1番窓側だった。それは今回も同様で、また何ヶ月かの間はこの席で勉学に励むことになる。

 

幸いにも右隣の席の女生徒はまだ座っているようだ。横目でチラリと見ると、狐の獣人が携帯で何か調べ物をしているようだった。普段から手入れをしているのだろう、よく整えられた白い毛並みはまるで雪のように美しい。名前は確か……白上だったか。

 

さっきも言った通りの性格だからいきなり女子に話しかけるというのもやはりハードルが高い。うーむどうしたものか…………。

 

「……はぁ。」

 

一旦脳を休ませよう。ひとまず思考を整えるために昨日ツッタカター(SNS)で見かけたDGOとかいうソシャゲを起動する。

 

しかしここでやってしまう。携帯のサイレント機能をOFFのままで起動したため、ゲームの起動音が鳴る。本体の音量が下から5番目程度だったため教室中に爆音で響き渡ることはなかったのが幸いだった。

 

「ねぇ、君DGOやってるの?」

 

鈴の音を鳴らしたような可愛らしい声が右隣から聞こえ、振り向くと白上が俺の携帯を覗くように立っていた。おそらくさっきの起動音(小)を聴かれたのだろう。

 

「あ、あぁ。昨日ダウンロードしたばっかだけど。」

「じゃあ初めてなんだ!私もDGOやってるから、色々操作教えてあげるよ!」

「それは助かる。チュートリアルやったけどバトルシステムがイマイチよくわからんくてさ。」

 

白上も同じゲームをやってるみたいで色々教えてくれた。とりあえず共通の話題ができてよかった。

 

「フブキー!いるー?」

 

一通り教えてもらったタイミングで、廊下から白上を呼ぶ声が聞こえてきた。その声に時計を確認するも白上は立派な狐耳を立ててハッとする。

 

「あっ、もうそんな時間か!まつりちゃん、今行くー!……じゃあね、愛川君!」

「おう、ありがとな!」

 

白上は鞄を取って軽く手を振ると、長い尻尾を揺らしながら教室を出て行った。

 

ひとまず友達……とまではいかないだろうが、今後話しかけやすくなった。これからも仲良くしていけたらいいな。

 

 

その日の夕方、部屋を借りてるアパートの前でまた会うことになるとは思ってもなかったが。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「ねぇフブキ、一緒に話してたのって彼氏?」

「ひえぁっ?!違う違う!!そんなんじゃないよ!!」

「でもフブキ楽しそうに話してたし。」

「ゲームの話してたの!始めたてだから色々教えてあげてたの!」

「へぇー…………。」

「なんでニヤニヤするのー!!!」

「あ、アキアキー!フブキが入学初日に彼氏とイチャイチャしてたよー!!」

「にゃぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「愛川君ー。聞いてるー?」

 

フブキの呼びかけで飛びかけた意識が呼び戻される。

 

確か今はテスト勉強のためにフブキと図書室に来ていたはず。周りを見ると問題集やノートを広げてテスト勉強をする生徒がちらほら。もちろん図書室では静かにしなきゃいけないため、わからないところは互いに小声で教え合っていた。それがいつの間にかボーッとしてしまっていたらしい。

 

「悪りぃ、なんも聞いてなかった。」

「もうそろそろ17時になるから帰ろ?」

「うぇ、もうそんな時間か。」

 

外を見ると日は傾いてオレンジ色に焼けている。今日は15時に授業が終わってからここにいるから、大体2時間は経っている。ちなみにまつりやミオにも声をかけたが、用事があると言われタイミングが合わなかった。

 

「愛川君、さっきボーッとしてたけど何かあったの?」

 

勉強道具を鞄にぶち込み図書室から出て生徒玄関に向かっていると、フブキから話しかけられた。

 

「え、いや特に。」

「そう?ならいいんだけど。しばらく虚空を見つめてたから遂におかしくなっちゃったかと思ってさ。」

「遂にって何だ。今も少しおかしいみたいな言い方すんな。」

「え?違うの?」

「おうコラ。」

「あだっ。」

 

何を言うかと思えば軽くディスられた。仕返しとばかりに左手人差し指でフブキの額を軽く小突き、上靴から外靴に履き替える。

 

「無意識で去年のこと思い出してた。入学式の日。」

「へぇ〜。そういえば去年も同じクラスだったもんね。」

「だな。他にも話せるクラスメイトはいたけど、フブキと一番話してたかもな。」

「そうだねー。確かに愛川君と一番話してたかも。」

 

学校を出て家に帰る途中、ふと気になることがありフブキの方を見る。俺の視線に気づいたフブキは狐耳をピコっと動かして振り向く。そのピコって耳動くの好きよ。

 

「………………。」

「愛川君?またおかしくなった?」

「またって言うな。フブキってさ、俺のこと名前で呼んだことないよな?」

「えっ。」

「正確に言うなら俺の前では、か。」

「あっ、ちょ、」

 

おお動揺しとる。耳もピーンと立ってるし。いい機会だ。ちょっと悪戯してやろう。

 

「知り合ってもう1年以上経つんだからそろそろ名前で呼んでくれないかな〜。」

「い、いやぁ白上にはまだちょっと早いかなって……。」

「でもミオから聴いたぞ?『2人で通話してる時は名前で呼んでる』って。」

「ミオーーーー!!!!!何バラしとんじゃー!!!!!」

 

夕陽に照らされてなのか、はたまた恥ずかしさからなのかフブキの顔は赤く染まり、どういう感情なのか尻尾はブンブン左右に振っている。

 

「なんかまだちょっとフブキと距離を感じるんだよなー。」

「えっと、その、うぅ…………。」

 

おっと、少し意地悪が過ぎたか。可哀想は可愛いとも言うが、このくらいにしておくか。

 

「悪りぃ悪りぃ、ちょっとからかっただけだ。気にしなくていいぞ。」

「…………うーーー!!!愛川君の意地悪ぅー!!!」

「ごめんて。」

 

真っ赤な顔はそのままでうーうー言いながらポカポカ叩いてくる。はっはっは、愛い奴よの。

 

「フブキ、ごめんてー。」

「…………。」

「白上さーん?」

「……………………。」

 

どうやら少しやり過ぎてしまったようで、家に送るまでしばらく口を聞いてくれなかった。オイオイ完全に拗ねちまったよ。なんなら早歩きで俺を置いて行こうとしてるようだったが、残念ながら置いてかれるなんてことはない。

 

「じゃあお嬢様の護衛任務も終わったことだし、俺も帰るわ。………………んおっ?」

 

フブキを家に送り届けたので俺も帰ろうとすると制服の裾を引っ張られる。引っ張っている張本人は、俯いた顔を少し上げて多少マシになった赤い顔を見せるとはにかんで笑った。

 

「…………()()。また、明日ね。」

「…………あぁ。また明日。」

 

右手でフブキの頭をポンポンと優しく叩き、緩んだ顔を見られないように足早にその場から去る。とんでもなく破壊力のある仕返しをされたなぁ。

 

(名前で呼ばれるの、なんかむず痒くて慣れんわ…………。)

 

何?顔が赤いって?バッカお前、ちげぇよ。

夕陽に照らされてそう見えるだけだ。これは。

 

 

 

 

 

 




出会いのきっかけは、ゲームでした。



更新頻度は少し落ちるかもしれやせん。
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